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Team Canvasを使ったチームビジョン再定義


はじめに

「このチーム、なんとなくバラバラな気がする……」

そう感じていたのは、自分だけではありませんでした。

スプリントは回っている。リリースも止まっていない。でも、チームの方向性や価値観についての共通認識が薄れてきている、そんな感覚が積み重なっていました。

今回は、スクラムマスターとして企画・ファシリテートした 「ありたい姿の再定義ワークショップ」 の目的・進め方・得られた気づきを、等身大でお伝えします。


なぜやったのか(背景と目的)

チームが抱えていた課題

ワークショップを開催するに至ったのには、いくつかの兆候がありました。

  • 改善案がチームの内側に閉じがち。 ビジネスやユーザーに直結するような改善提案がなかなか出てこない。
  • 優先度についての会話が少ない。 アサインされたPBIに個々がフォーカスするあまり、「チームとして何を優先すべきか」の議論が薄い。
  • ありたい姿と現状の乖離。 以前に設定したチームのビジョンが、今の実態と合わなくなってきていた。
  • 外部との調整やリリースが特定メンバー頼みになっている。 知識の属人化が進んでいた。

これらは表面的には別々の問題に見えますが、根っこは同じでした。チームが「何のために、どう動くか」の共通認識がズレてきていたのです。

ワークショップの目的

  • チームメンバー全員の価値観・期待・強みを言語化・共有する
  • チームとしての「ありたい姿」を再構築する
  • 日々の行動と結びつく具体的なアクションに落とし込む

どんなワークショップだったのか(What / How)

使ったフレームワーク:Team Canvas

Team Canvas は、チームの状態を多角的に可視化するためのフレームワークです。個人の目標・役割・価値観・強み・弱みなどを構造的に対話することで、暗黙の前提や「言えていなかったこと」を表面化させる効果があります。

スクリーンショット 2026-02-24 18.20.33.png

今回は以下の10セクションを使用しました。

# セクション 問いの核心
0 オープニング 心理的安全性を作る
1 People & Roles 役割認識のズレをなくす
2 Goals チームの「向かう先」を揃える
3 Personal Goals 個人とチームを接続する
4 Values 判断軸を言語化する
5 Needs & Expectations 無言の期待を見える化する
6 Strengths & Assets チームの武器を認識する
7 Weaknesses & Development Areas リスクと学習を前向きに扱う
8 Rules & Action Points 話したことを行動にする
9 Purpose 「なぜやっているか」に腹落ちする

5W1H

項目 内容
Who スクラムマスター(ファシリテーター)+チームメンバー全員(8名)
What Team Canvasを使ったチームビジョン再定義ワークショップ
When 2025年12月25日実施
Where チーム定例の場(オンライン)
Why ありたい姿と現状の乖離を解消し、チームの向かう先を再合意するため
How 個人ワーク → 共有 → 対話 → アクション決定のサイクルで進行

ファシリテーションの工夫

  • 7割は個人ワーク → 共有の流れにすることで、声が大きい人に引っ張られず、全員の考えを引き出す
  • 「それは行動で言うと何?」という問いを繰り返し、抽象的な発言を具体化
  • 全部決めようとしない。1〜2つのアクションに絞ることで実行可能性を高める
  • ファシリテーター頼りにならないよう、メンバー自身が話し合いをドライブできる構成に

何が見えてきたのか(ワークの結果)

チームの強みとして再認識されたこと

対話の中で、このチームには確かな強みがあることが改めて確認されました。

  • 技術の幅広さ。 ネイティブ(iOS/Android)・バックエンド・インフラ・UIと、チーム内でカバーできる技術領域が広い
  • 心理的安全性の高さ。 「適当に発言しても誰かからアドバイスが来る」という安心感がある
  • 安全性・安定性へのこだわり。 「ここ大丈夫ですか?」という指摘が自然に出てくる文化

課題として浮かび上がったこと

同時に、率直な課題も共有されました。

  • 優先度の判断が甘い場面がある。 「アサインされたPBIを完了すること」が目的になり、優先度視点が薄れる
  • ナレッジが属人化している。 特定の技術領域やリリース・外部調整が一部のメンバーに集中
  • ビジネス・ユーザー目線の提案が少ない。 チーム内に閉じた改善が多く、POへの提案機会が少ない
  • 意見を言いづらい場面がある。 発言することへの心理的ハードルを感じているメンバーも

個人と個人が「つながった」瞬間

このワークの最大の収穫の一つは、メンバー同士が互いの価値観を初めて言語化して共有できたことでした。

「リソース効率を高めたい」という意見と「個人の学習機会を確保したい」という意見が、実は対立するように見えてぶつかる場面も。しかしその対話こそが、チームとしての判断軸を作るプロセスでした。


合意したチームのありたい姿

ワークの末に、チームとして以下のありたい姿を言語化・合意しました。

私たちは、優先度と価値に向き合いながら、学習と改善を止めずにフローを高め続けるチームでありたい。

このありたい姿を支える「チームらしさ」

  • 待ちや滞留が起きたPBIを見逃さず、事実から深掘りできている
  • 個人で抱え込まず、ペアや対話を通じて知識と経験を循環させている
  • 技術だけでなく、ユーザー・ビジネス視点でPBIを考える時間を確保している
  • ふりかえりでは感想でなく、計測結果と実態の差から改善を決めている
  • これまで作ったものを定期的に見直し、改善案をPOに提案できている

決めたアクション

ありたい姿から逆算して、以下の具体的なアクションを合意しました。

① 優先度に沿った行動の振り返りを習慣化する
振り返りで「優先度通りに動けていたか」を精査し、ポイント見積もりと実作業量の乖離を議論・改善する。

② ペアワークを積極的に取り入れる
ネイティブ・インフラを中心に、経験とナレッジ共有を目的としたペアワークを実施。

③ PBIの計測と深掘りを継続する
待ちがない状態で落としてしまったPBIの計測と、優先度に沿った行動ができていたかの確認を続ける。

④ 3ヶ月ごとの「これまでの見直し」を定例化する
過去に開発したものから改善できるものをチームで話し合い、あればPOに提案する。


やってみてわかったこと(SMとしての気づき)

「ありたい姿」は問い直してこそ意味がある

一度決めたビジョンを「そのまま使い続ける」のは危険です。チームの状況・メンバーの成長・プロダクトのフェーズが変われば、ありたい姿も更新される必要があります。定期的な問い直しそのものが、チームを健全に保つ営みです。

全員の発言を引き出す設計が鍵

ワークショップでは「発言することへの怯え」が課題として上がっていました。心理的安全性は「宣言すれば生まれる」ものではなく、構造として設計するものだと改めて感じました。個人ワーク先行・少人数共有・具体的な問い——こうした設計の積み重ねが、普段言えていないことを引き出します。

アクションはシンプルに絞る

盛り上がったワークショップほど、「あれもこれも」とアクションが増えがちです。しかし実行されなかったアクションはチームの信頼を損ないます。「今日決めたことは1〜2個」の原則を守ることが、長期的な変化につながります。


まとめ

Team Canvasを使ったチームビジョン再定義は、予想以上に「チームが自分たちを知り直す」体験になりました。

課題を洗い出すためではなく、「自分たちはどんなチームでありたいか」を自分たちの言葉で再構築するプロセスとして機能したとき、ワークショップは本当の価値を持ちます。

スクラムマスターとして、これからも定期的にこの問いをチームと向き合い続けたいと思います。


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