はじめに
株式会社PROMPT-Xの天辰です。
前回の続きになります。
AIがやってくれたら仕事楽になる世界がもうソコまで
前回の記事では、PlaywrightによるMCPサーバが持つインパクトについてお話ししました。今回は具体的に「工場監視と報告」というユースケースで、社内システムの一例として工場のリアルタイム監視業務に使われるRealBoardとClaudeがどんな化学反応を起こすのか掘り下げていきます。
AIが読み解いて先回りしてくれる世界(妄想)
- 朝、会社に着いたら「昨晩の深夜帯で2号機の温度が一時的に上昇したけど、○○系統の異常の前触れでは?」とAIが教えてくれる
- 急な生産調整会議で「先週のラインの状況は?」と聞かれても、即座にAIが「稼働率98.2%、不良率0.8%で先週より0.3%改善」とAIが要約してくれる
- 「この製品の最適な成形条件を教えて」と聞くだけで、過去1年分のデータから「金型温度173℃±2℃、サイクルタイム42秒が最適」とAIが数字を導き出してくれる
- 各種センサーデータから「この振動パターンは過去に故障の前兆だったよ、今週中にメンテナンスした方がいいよ」とAIがアドバイスしてくれる
こういうことをAIに望んでいる、近い将来的に期待している事ではないでしょうか?
前提条件となる「見える化」の意味(=観点)
RealBoardだけに限らず見える化の真の価値は、実はその「ビジュアル」だけではありません。可視化とともに隠れた重要な部分があります。それは 「データの見方」や「判断基準」 という専門家のノウハウや観点が組み込まれている点です。
RealBoardでは、ただデータを表示するだけでなく、さまざまな変換機能を使って元データを加工しています。この加工プロセスこそに本質的な価値(=データの見方や判断基準といった観点)があるのです。
- 「絞り込み機能」で異常値だけを抽出
- 「変化検出」で急激な変動のみを表示
- 「期間集計」で時間帯ごとの平均値や最大値を算出
- 「補正」で生データに対して意味のある計算式を適用
- 数値→定性値変換(
0
や1
を停止
や稼働
と表示) - チャートによる相関性のあるデータの重畳グラフ表示
これらの変換は「センサーの生値をそのまま見ても意味がない」「この条件で抽出したデータこそ重要」という現場エキスパートの経験則や知見を形にしたものです。言わば暗黙知の明示化と言えるでしょう。
だからRealBoardの画面を見るということは、単にデータを見るのではなく、専門家がどう判断しているのか、そのフィルターを通してデータを見ていることになります。この観点が整理されているからこそ、AIもそれを「理解」できる可能性が生まれるのです。
RealBoardだからできるカンタン操作・観点整理
見える化の真の価値は、「データの見方」や「判断基準」という専門家のノウハウが組み込まれている点にあります。でも、従来はこうした専門的なデータ加工には、プログラミングやデータベースの知識が必要でした。
RealBoardの革新的な点は、現場エンジニアの方々に寄り添った設計で、この複雑なデータ加工がパワポ感覚で誰でも実現できること。ドラッグ&ドロップの直感的な操作で、「絞り込み機能」「変化検出」「期間集計」「補正」などの高度な処理が設定できます。プログラミングの知識ゼロでも、「この温度が〇〇℃以上になったら赤く表示」「1時間ごとの平均値をグラフ化」といった専門的な観点をカンタンに反映できます。
Claudeによる現場データの文字起こし
Claudeに解析させるダッシュボード
RealBoardのダッシュボード機能では、この「SimFactory - FABKG2_射出成形工場監視」のように製造現場のリアルタイムデータを視覚的に分かりやすく表示できます(小一時間あれば誰でも画面作れます)。このダッシュボードは電力系統(63.51 kW)、冷却水系統(15.7 ℃)、エアー系統(0.71 MPa)の状態から、MLD1号機・MLD2号機の稼働状況、在庫数、完成品数まで、工場全体の状況を一目で把握できるよう設計されています。
特に注目すべきは各設備の詳細パラメータ(サイクル時間、金型温度、圧力など)がリアルタイムで表示され、右側のグラフでは時系列での推移や品質不良データの傾向も確認できる点です。こうした複雑な工場モニタリング画面も、RealBoardならノーコードで直感的に作成可能です。データポイントをドラッグ&ドロップするだけで、現場エンジニアが自らの手で必要な監視画面を簡単に構築できるのが大きな魅力です。
現場データの文字起こしが実現
ClaudeがPlaywright MCP経由でRealBoardにアクセスしてくれました。
解析をお願いしてみる
MCPは発動する際に必ず許可を求めてきます。
↓解析結果はこちら。秀悦なのは要約せずに文字起こししていることです(=これ超大事)。
スナップショットを取得してダッシュボードの詳細を分析します。
スナップショットから得られた射出成形工場監視ダッシュボードの分析結果をご報告します:
### 1. 工場の現在状態
- 状態:「通常稼働中」(2025/03/31 17:46現在)
- 電力使用量:80.12 kW
- 温度:14.8 ℃
- 圧力:0.65 MPa
- 使用材料量:2289.3 kg
### 2. 生産機械の状況
- MLD1号機(表面):READY状態
- MLD2号機(裏面):READY状態
- 生産数:28個(表面)、21個(裏面)
- 累計生産数:2204個
- サイクル回数:30回
### 3. 機械別詳細パラメーター
**MLD1号機(表面):**
- 累計回数:26996回
- 温度関連数値:13.06、56.2、69.07
- 圧力関連数値:107.8、102.4、248.9
**MLD2号機(裏面):**
- 累計回数:26077回
- 温度関連数値:14.33、63.5、60.77
- 圧力関連数値:173.8、90.3、226.4
### 4. 品質管理情報
**MLD1号機(表面)の不良品タイプ:**
- 金型不良
- 形状不良
- 表面不良
- 充填不良
- WL不良
**MLD2号機(裏面)の不良品タイプ:**
- 金型不良
- 形状不良
- 表面不良
- 充填不足
- WL不良
### 5. 工場供給ユーティリティ
- 冷却水温度:約14.0〜15.0℃で推移
- 冷却水流量:表示あり(0〜60L/min)
- エア圧力(鹿児島第2工場):0.62〜0.70の範囲
### 6. トレンドグラフ
- 電力使用量のトレンドグラフあり
- 機械状態の時系列表示あり
- 品質不良の時系列データあり(両機械)
- ユーティリティ系統のトレンド表示あり
これらの情報から、現在は設備が正常に稼働していることがわかります。温度・圧力・電力など重要なパラメーターもモニタリングされており、品質管理も各種不良タイプごとに追跡されています。過去一週間のデータ(2025/03/24〜2025/03/31)が表示されています。
さらに詳細な分析や特定の項目についてご関心があればお知らせください。
試しに評価をお願いする
念のため補足すると、これはあまり本質ではありません。プロンプトエンジニアリングの基本ともいえますが、文字起こし以外でAIを使う場合に要件を曖昧にして指示してはダメです。しかし今回は「RealBoardのダッシュボード画面を見て、どう解釈するか」という実験なので、あえて曖昧な指示で「解析をお願い」してみました。
「このダッシュボードを見て、気づいたことを教えてください」
これだけの指示で、Claudeはブラウザ経由で表示されているRealBoardのダッシュボードを「見て」、以下のような分析をしてくれました。
このダッシュボード情報から判断すると、この射出成形工場については以下のように評価できます:
### 良好な点
1. **安定稼働状態**:「通常稼働中」という状態が表示されており、現在は問題なく稼働しています。
2. **モニタリング体制**:電力、温度、圧力、材料使用量など重要パラメータがリアルタイムで監視されています。
3. **品質管理システム**:MLD1号機(表面)とMLD2号機(裏面)それぞれの不良品を種類別に追跡できる体制が整っています。
4. **ユーティリティ管理**:冷却水温度・流量、エア圧力など工場のユーティリティ系統も監視されています。
### 課題または注意点
1. **生産数の差**:MLD1号機(28個)とMLD2号機(21個)で生産数に差があります。この差が設計上想定されているものなのか、効率の差なのかは検討の余地があります。
2. **品質不良の発生**:グラフに品質不良のデータが表示されていることから、いくつかの品質問題が発生していることが窺えます。
3. **稼働回数の差**:MLD1号機(26996回)とMLD2号機(26077回)の累計回数に約900回の差があり、使用頻度に偏りがある可能性があります。
### 総合評価
このダッシュボードから見る限り、工場は基本的に安定稼働しており、モニタリングと品質管理の体制が整っている印象です。しかし、機械間の生産数や稼働回数の差、品質不良の発生状況については、より詳細な分析が必要かもしれません。
また、過去データのトレンドグラフから異常値や傾向の変化がないか確認することで、より正確な評価ができるでしょう。例えば、電力使用量のトレンド、機械状態の変化、品質不良発生率の推移などから、工場の安定性や効率性を総合的に判断することができます。
まとめ
今回は、RealBoardを例にとって社内システムにMCP経由でAI(Claude)がアクセスしてみたらどうなるか?という記事を書いてみました。
「このダッシュボードを見て、気づいたことを教えてください」という単純なプロンプトでも基本的な分析はできましたが、これはMCP経由で使えるAIエージェントの可能性のほんの一部に過ぎません。本質的な活用法はもっと先にあります。
効果的なプロンプトエンジニアリングを行い、社内システムにMCP経由で生成AIにアクセスさせることで、強力な機能を最大限に活用することが可能になります。
例えば、
-
継続的モニタリングと自動レポート生成:「毎朝8時に前日の製造状況をレポートし、異常があれば詳細分析を添付する」
-
リアルタイムアラートとアクションの提案:「異常値を検出したら即座に通知し、過去の類似パターンから適切な対応策を提案する」
-
設備動作の最適化:「過去データの相関分析から、品質と生産効率のバランスが最も良いパラメータ設定を提案する」
-
予知保全:「異常発生前の微小な変化パターンを学習し、故障の予兆を早期に警告する」
生成AIが実現する本当のオートメーション
これって? 人間が毎日毎日繰り返してる業務の自動化そのものですよね? これをオートメーション化できるという事です。
そして最も重要なのは、これらが複雑な定義や設定なしに、すぐに実現できる点です。
MCPによってAIエージェントが社内システムに直接アクセスできるようになることの真の価値は、社内に蓄積された膨大なデータと専門知識に、AIが直接アクセスして理解できるようになる点です。これにより、情報の流れがスムーズになり、人間とAIが互いの強みを活かした新しい協業モデルが実現します。
RealBoardのような整理された「観点」を持つダッシュボードがあれば、AIにとって理想的な情報源となり、人間の専門家と同じ文脈でデータを理解することができます。そして、その理解を人間にとってわかりやすい言葉で伝えることで、現場と意思決定者の橋渡しとなります。
システムの進化の方向性が変わる!
ブラウザMCPといったAIエージェントの登場と AIエージェントがシステムに人間のように アクセスしてくる世界が実現されたことによって、生成AIとシステムの連携は新たなステージに入りました。社内システムに与える革命はもとより、数多ある可視化ソリューションやBIツールも、今後は単なる「見える化」から「理解し行動する」AIエージェント向けに「観点を整理する」ツールへと進化していくことでしょう。
PROMPT-Xについて
東京・鹿児島・高知の3拠点で、商用時系列データベースCLOUDSHIPと可視化ソフトRealBoardを軸としたIoTプラットフォーム向けソフトウェアの開発・販売を行うメーカーです。IoT関連の開発支援サービスやソリューション開発も提供しています。鹿児島・高知での開発エンジニア採用を強化中で、PROMPT-Xで働きたいと思える情報発信に努めています。