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自然非言語処理第15日目: 障がい者のための非言語処理(応用編)

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今回は本当に真面目な話なので茶番はありません。また、治療目的で書いているわけではないので、治療したいお方は病院へ行ってください

障がい者とは障がいを持つ人のことを言いますが、その障がいとはWHOの定義[1]によると以下の通りとなります。

Disabilities is an umbrella term, covering impairments, activity limitations, and participation restrictions. An impairment is a problem in body function or structure; an activity limitation is a difficulty encountered by an individual in executing a task or action; while a participation restriction is a problem experienced by an individual in involvement in life situations.
障がいとは、欠損を補完すること、活動の制限、参加の制限、これら3つの総称です。欠損とは身体の機能や構造の問題のことであり、活動の制限とは一人で課題や行動を実行するときに直面する困難のことであり、一方で、参加の制限とは様々な生活の場面で集団と関わり合うときに個人が経験する問題のことであります。

Disability is thus not just a health problem. It is a complex phenomenon, reflecting the interaction between features of a person’s body and features of the society in which he or she lives. Overcoming the difficulties faced by people with disabilities requires interventions to remove environmental and social barriers.
したがって、障がいとはただの健康だけの問題ではありません。障がいとは、複雑な現象、つまり、ある人の体の特徴とその人が属する社会の特徴が相互に反映される現象といえます。障がいを持つ人が直面する困難を克服するには、社会的・環境的障壁を取り除くための介入が必要とされます。
(以下略)(和訳:alfredplpl)

今回は、「障がいを持つ人が直面する困難を克服する」ための非言語処理について説明します。
これまでに紹介した感覚、感情、運動のメカニズムや非言語処理すべてが現れる総復習回となります。
ここでは全ては紹介できませんが、一部の障がいについて紹介します。

(以下では、障害者基本法などの用語に合わせるために障がいを障害と表記しますが、それ以外の意味はありません)

身体障害を克服するための非言語処理

日本において、身体障害者福祉法第4条とその別表から、身体障害とは「視覚障害や聴覚または平衡機能の障害、音声機能、言語機能、または咀嚼機能の障害、肢体不自由、心臓、腎臓または呼吸器の機能障害で永続するもの」と解釈できます。

身体障害を克服するには大きく3つのアプローチがあります。

1つ目は失われた部位を別の部位で補う方法です。
この方法は先天的に障害を持った人に向いています。
なぜならば、感覚を知覚し、認知するはずだった脳の部位が別の感覚のために使われていることがあるためです。
仮にここでは補完アプローチと呼ぶことにします。

2つ目はセンサと信号処理を行い、欠損していない部位に電気刺激を与える方法です。
この方法は後天的に障害を持った人に向いています。
なぜならば、感覚を知覚し、認知する脳の部位がすでに発達しているためです。
仮にここでは疑似再生アプローチと呼ぶことにします。

3つ目はiPS細胞などの万能細胞を使って部位を再生させる方法です。
この方法は後天的に障害を持った人に向いていますが、
もしかしたら先天的に障害を持った人に向いていますかもしれません。
なぜならば、感覚を知覚し、認知する脳の部位が新たに発達する可能性があるためです。
仮にここでは再生アプローチと呼ぶことにします。

今回は視覚障害、聴覚障害、肢体不自由に焦点をあて、説明します。
ただし、再生アプローチは先端医学であるため、ここでは詳しく説明しません。(というか著者ができません)

視覚障害を克服するの非言語処理

視覚障害とは文科省によると「視力や視野などの視機能が十分でないために、全く見えなかったり、見えにくかったりする状態」[3]のことをいいます。

視覚障害を克服するの非言語処理の補完アプローチ例は、点字でしょう。
視覚で読み取るはずだった言語を、触覚の刺激パターンで代わりに表現する技術です。
点字の点を任意に出っ張らせたり凹ませたりするデバイスもあります。
他には白杖があります。
視覚で読み取るはずだった距離や周囲の情報を、杖の抵抗力や音の跳ね返りなどで取得できる道具です。
最近ではスマートフォンを使うために、音声読み上げを用いることがあるそうです。
これはタッチしたところが文章であれば、文章を読み上げ、
ボタン機能がある場所ではボタンであることを読み上げる、
そういった内容からスマートフォンの画面表示を脳内で想像するそうです。

一方、視覚障害を克服するの非言語処理の疑似再生アプローチ例は、人工視覚があります。
人工視覚とは、視覚に関係する神経細胞を電気刺激することで、欠損していない神経網の活動を再開させる技術のことを言います。
人工視覚には、網膜に電極を刺す網膜刺激型と視覚野に電極を指す脳刺激型があります。
いずれも基本的にはセンサとしてカメラを用います。
カメラから入力された信号をもとに電極アレイの刺激方法を計算するようです。
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視覚障害を克服する特殊なアプローチとして、盲導犬があります。
ロボットでも盲導犬の役目を果たすことができるのでしょうか・・・?
ちなみに、何かに引っ張られるような感覚を生み出す技術として、
擬似力覚という技術があります。
擬似力覚と盲導犬の賢さが組み合わせれば、
ちっこい盲導犬みたいなデバイスができそうですね。

聴覚障害を克服するの非言語処理

聴覚障害とは「身の回りの音や話し言葉が聞こえにくかったり、ほとんど聞こえなかったりする状態」[3]のことをいいます。

聴覚障害を克服する非言語処理の補完アプローチ例は、手話や筆談、字幕でしょう。
聴覚で感じ取るはずだった音声を、視覚の刺激パターンで代わりに表現する技術です。
テレビの字幕に関しては現代では人間が手動でリアルタイムで文字入力して作っていますが、
今後は音声認識機能の発達とともに機械が字幕をつくってくれるかもしれません。

一方、聴覚障害を克服するの非言語処理の疑似再生アプローチ例は、人工聴覚があります。
人工聴覚とは、聴覚の認知するメカニズムを考えて鼓膜以降の部位に刺激を与えることで聴覚を再生させる技術のことを言うようです。
今のところ、人工内耳が主に活躍しているようです。
人工内耳とは本来鼓膜が受け取って蝸牛が変換する電気刺激を機械が電気刺激してしまうという知覚経路をすっ飛ばすような装置です。
原理自体はボルタの時代から発見されていたようです。

肢体不自由を克服するの非言語処理

肢体不自由とは「身体の動きに関する器官が、病気やけがで損なわれ、歩行や筆記などの日常生活動作が困難な状態」[4]のことをいいます。

肢体不自由を克服する非言語処理の補完アプローチ例は、足は杖や車椅子でしょう。
杖や車椅子は手を使い、足の機能を補間する道具です。
最近では電動車椅子が発展してきたため、電動車椅子から個人用の自動車、パーソナルモビリティに発展していくのではないかと期待している人もいるようです。ちなみに電動車椅子とパーソナルモビリティの真ん中ぐらいの存在として、whillがあります。

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図 whillの写真([8]より引用)

一方、肢体不自由を克服する非言語処理の疑似再生アプローチ例は、義肢でしょう。
義肢の中でも発展が期待されているものは筋電義手とパワードスーツなどの装着型ロボットでしょう。
筋電義手は残った二の腕や肩の筋電から欠損した腕や手の動きを予測して動かす装着型ロボットの一種です。
一方、パワードスーツは体の外に金属の骨格とアクチュエータを装着して、筋電をもとに体の動きを予測しつつ体全体を動かす装着型ロボットです。
なお、パワードスーツの良い点として、パワードスーツを使っているうちに神経網が再生していくという謎の現象が起こるところです(c.f. 強制使用)。
このため、CYBERDYNEのHALは医療機器として認定されています。パワードスーツなのに

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図 医療用のHALを装着した写真([9]より引用)

精神障害を克服するための非言語処理

精神障害とは「統合失調症、精神作用物質による急性中毒又はその依存症、知的障害、精神病質その他の精神疾患」(精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第五条)のことをいいます。。
精神障害(Mental disorder)は障害(disability)とは若干異なります。
だからといって、疾患(Disease、Illness)と違います。
しかし、日本の障害者基本法には障害者の区分に含まれるため、
今回障害者(people with disability)として取り扱います。

うつ病を克服するための非言語処理

うつ病とは「抑うつ気分、意欲・興味・精神活動の低下、焦燥(しょうそう)、食欲低下、不眠、持続する悲しみ・不安などを特徴とした精神障害」のことをいいます。
うつ病を引き起こす原因はさまざまで、ストレスもあれば、寝不足もありますが、最も有力なのはモノアミン仮説だと考えられています。
モノアミン仮説とは、新薬を開発している途中で脳内のノルアドレナリンやセロトニンの濃度を上昇させる薬がなんかしらんがうつ病を治したので、うつ病ってノルアドレナリンやセロトニンの濃度が下がったから起きるんじゃないかなぁというふわっとした仮説です。

モノアミン仮説にもとづき、うつ病の薬物療法には、脳内のノルアドレナリンやセロトニンの濃度を上げる「選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)」や「セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)」が用いられます。

うつ病を克服するための非言語処理として経頭蓋磁気刺激法と光療法があります。
経頭蓋磁気刺激法とは強い磁気とその変化を使い、脳内に発生させることで電流を発生させることで、
脳内の神経細胞を活性化する手法です。
光療法とは朝の時間帯にものすごい強い光を体に当て、目の中に入ることで、
脳内のメラトニンを分泌させ、サーカディアンリズムを元に戻す手法です。
ものすごい強い光が必要なので、病院に行かないと光療法を実践するのは難しいです。

発達障害を克服するための非言語処理

発達障害とは、「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」(発達障害者支援法)のことをいいます。
発達障害(Developmental disability)は精神障害(Mental disorder)にも含まれることがありますが、
一応障害(disability)に含まれます。

注意欠陥・多動性障害(ADHD)を克服するための非言語処理

注意欠陥・多動性障害とは「多動性(過活動)、不注意(注意障害)、衝動性を症状の特徴とする神経発達症もしくは行動障害」のことをいいます。
要するにうっかりさんがうっかりさんレベルで済まされない障害です。

現代の工学では注意欠陥・多動性障害を克服する技術はほぼ存在しません。

注意欠陥・多動性障害の薬物療法には「ストラテラ」、「コンサータ」、「インチュニブ」を用います。
特に「コンサータ」はかなりリスクが高い薬で、ドーパミンの濃度を間接的に上げる薬効があります。
使い方を誤ると覚醒剤と同じ扱いになります。
一方、「ストラテラ」は間接的にノルアドレナリンの濃度を、「インチュニブ」は間接的にアドレナリンの濃度を上げるため、そんなにやばくはないです。

自閉スペクトラム症を克服するための非言語処理

自閉スペクトラム症とは「社会的コミュニケーションおよび社会的相互作用の障害」と「限定した興味と反復行動ならびに感覚異常」の2つの特徴を持つ障害[11]です。
診断基準が乗っているDSMでは自閉スペクトラム症と呼ばれ、WHOの基準だと自閉症と高機能広汎性発達障害に分解されます。

さて、現代の工学では自閉スペクトラム症を克服する技術は存在しません。
自閉スペクトラム症は現代でも原因がよくわかっていません。
感情の日に説明したミラーニューロンシステムがあまり機能していないからではないかという仮説はあります。
仮にもしそれが原因だとすれば、ミラーニューロンシステムを作って脳に接続すれば克服できるかもしれません。

医療では、オキシトシンを使用することで社会性の障害などが軽減するとの研究[10]がかろうじて出てきました。
一体どうしてそれでよくなるのか・・・。今後の研究に期待です。

実装

現代の科学では自閉スペクトラム症を克服する技術は存在しません。
ミラーニューロンシステムを作って
次回のヒントです。

まとめ

今回は「障がいを持つ人が直面する困難を克服する」ための非言語処理を紹介しました。
ふと、思うのですが、近視って実は治らない疾患ですよね。
でも、メガネをつけることで視力は改善するので、特段世の中の人は困ったりしていません。
もし、メガネがなかったら、近視は視覚障害の一部に区分されていたことでしょう。
我々エンジニアが目指す「障がいを持つ人が直面する困難を克服する」技術とは、メガネのような存在なのではないでしょうか。

次回は、自閉スペクトラム症を持つ障がい者が欠損しているとされる「心の理論」を一部実装してみることにしてみます。

参考文献

[1] http://www.who.int/topics/disabilities/en/
[2] https://www.nidek.co.jp/company/artificial_sight/about_artificial_sight/type.html
[3] http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/004/001.htm
[4] http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/004/002.htm
[6] http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/004/004.htm
[7] 岩崎 聡,"最近の人工聴覚機器," https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibiinkoka/118/5/118_636/_article/-char/ja
[8] https://whill.jp/
[9] https://www.medgadget.com/2013/08/cyberdyne-hal-robosuit-cleared-in-europe-for-lower-body-rehab.html
[10] https://www.amed.go.jp/news/release_20160823-01.html
[11] DSM-5
[5] http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/shougaishatechou/dl/toukyu.pdf