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自然非言語処理(一人)Advent Calendar 2017

Day 9

自然非言語処理第9日目: コミュニケーションにおける感情とは

Last updated at Posted at 2017-12-09

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みなさんは恋をしていますか?

ところで恋ってなんでしょう?
好きってことでしょうか?
一緒にいたいってことでしょうか?
Qiitaってポエムを書くところと聞きましたし、こんな質問もいいかなって思いました。

はい

われわれ人間は感情なるものを持っていると考えています。感情は人とのコミュニケーションを円滑にする一方で、コミュニケーションを破壊する力を持っています。つまり、感情はポジティブなものでも、ネガティブなものでも、いずれにせよ、コミュニケーションにとって重要な役割を果たしています。

くどいようですが、広辞苑によると、コミュニケーションとは、

社会生活を営む人間の間で行われる知覚・感情・思考の伝達

ということらしいので、今回はコミュニケーションにおける感情について考えて行きましょう。
感情とは何か、どうして感情は生まれるのか、どうして感情が伝わるのかを、認知科学、精神医学、神経科学や生理学をごちゃ混ぜにして説明することで、感情への理解を深めて行きましょう。

そして、感情っぽいものを持った機械と感情によるコミュニケーションを実際にやって見ましょう。

感情とは何か

感情とは何か。
とても闇が深い質問です。
そこで、感情が関わる具体例から帰納的に考えましょう。
科学の第一プロセスですね。

  1. お化け屋敷を歩いていたら、おばけが出てきて、びっくりしてとっさに避けた
  2. 好きな人と一緒にいたらなんだか幸せになってきた
  3. なんだか最近ずっと気が重い

まず時間で区切ってみましょう。
1番目の「びっくり」は無意識に急激に反応して、ちょっとずつ収まっていく現象だと思われます。
この現象を神経科学では情動(emotion)と呼んでいます[0]。また、認知科学だと情動(affect)と呼ばれています。ちなみに1番目の「びっくり」のような一連の動作を、急性ストレス反応と言います。
2番目の「幸せ」は意識に上ってきて、しばらく続いていく現象だと思われます。
この現象を神経科学では感情(feelings)とよんでいます[0]。
3番目の「気が重い」は意識に反復して蘇ってきて、長く続いていく現象だと思われます。
この現象を精神医学では気分(mood)とよんでいます[0]。気分障害という言葉で使われています。

通常では全部感情と呼びそうな現象ですが、このように時間で区切ってみるだけで大きくわかれてきますね。
以下では、よく研究されている情動の話をします。

どうして感情は生まれるのか

情動が発生する原因は未だによくわかっていません。
しかし、大きく3つの仮説が支持されています。

  1. ジェームズ・ランゲ説: 身体反応の認知が情動を生むという仮説
  2. キャノン・バート説: 視床が情動反応を調整する中枢であるとする仮説
  3. シャクター・シンガー理論: 情動は身体反応とその原因の認知の両方が必要であるという仮説

どれが正しいのかはわかりませんが、身体反応を引き起こす原因と脳の一部を活動させる原因が関わってきていそうです。
そこで、現代の科学でわかっている原因を紹介します。

現代の科学でわかっている原因

現代の科学でわかっている身体反応を引き起こす原因と脳の一部を活動させる原因の大体は、神経伝達物質とホルモンです。
神経伝達物質は活動電位による伝達とは違い、一方が物質を拡散させ、もう一方が受け取ることで信号を伝達する媒体のことです。みなさんよく聞くアドレナリン、セロトニンなどがこれに当たります。
ホルモンは神経内というよりかは血管を通じて他の臓器に信号を伝達するための媒体です。眠気に関わるメラトニンや恋愛に関わるオキシトシンなどがここに当たります。
ただ、その化学物質が適切な体の部位に伝わらなければ、効果はありません。
たとえば、カレーを食べると胃腸からセロトニンが分泌されます。しかし、脳血液関門により脳内に入る前にセロトニンはせき止められます。
したがって、カレーを食べてあなたが幸せになるのはカレーが美味しいからです(自明)
さて、これらの化学物質とその受容器の場所の一部を表1にまとめました。
これまでにわかっていることを全部書くと非常に時間がかかるので、ここではごく一部を載せました。

表1 情動に関わる化学物質とその受容器の場所の一部

化学物質 受容器の場所 周辺の濃度 結果
ドーパミン 大脳基底核 増える 快を感じる
アドレナリン 自律神経系 増える 急性ストレス反応を起こす
GABA 扁桃体 減る 不安になる
GABA 扁桃体 増える 安心になる

どうして感情が伝わるのか

ここまでは感情とは何なのか、感情はどのようにして発生するのかという話をしてきました。
ここからはその発生した感情をどのように相手に伝えるのかという話に入ります。

一般に、コミュケーションを介して感情を共有することを共感と言います。
たとえば、相手が笑顔になると自分も自然と笑顔になり、自分が笑顔になったことを認知することで、幸せになったりします。
この共感はミラーニューロンシステムが関わっていると考えられています。
ミラーニューロンシステムとは運動している相手をみると、運動命令は出さないものの自分で同じような運動をした時のような脳活動を引き起こさせる脳の特殊な部位です。
つまり、笑顔になった相手を見たときに、笑顔を自分の中でシミュレーションして、相手の幸せな気分を、自分の中で再現するのです。

一方で、怒りのような相手を支配させるようなコミュニケーションの場合、
共感とは異なります。進化論的に言うと原始的な威嚇に近い非言語コミュニケーションなのでしょうね。
この場合、人間が本質的に不快だと感じられることを行ったりすることで、
感情を伝えます。

実装: 感情っぽいものを持った機械と感情によるコミュニケーション

感情っぽいものを持った機械と感情によるコミュニケーションとするために、
まず感情っぽいものを実装してから、感情によるコミュニケーションを行えるようにしましょう。

情動のモデル化

ここまでの説明でいろいろな解釈やメカニズムやらが解明されています。
しかし、今なお、感情を正確に実装することは困難だと考えて良いでしょう。

それでもモデル化をがんばっている人たちがいます。Russellのモデルはその代表例でしょう。感情の中でもAffectを感情価Valence(快か不快か)と覚醒度Arousalの2次元で考えるモデルです。直感的でわかりやすいですが、脳がそんな簡単な構造しているかと言うと謎です。他にもこれを拡張した支配度Dominanceを入れたメラビアンのPADモデル、やる気度Motivational Intensityを入れたモデルもあります。

image.png
図1 情動の円環モデル([6]より引用)

Pepperは、感情のモデルを機能として持っています。
これをわかりやすく見える化したものが、感情マップというものです。

fig_emotion4.png
図2 Pepperの機能、感情マップ([3]より引用)

感情マップは見える化しただけなので、おそらく中身はこうなっているわけではないと思われます。
ロボスタの記事[4]を読むに情動に関わる物質を仮想的に生成し、表1のような特性をうまくまとめているのだと思われます。

ここでは、一番簡単そうで枯れてそうなRussellらのモデルを使って、
感情っぽいものを持った機械を作成しましょう。

ソースコード

そう、作成したかった・・・・。
しかし、実装のための下準備である本文のストーリー作りをしていたら、
間に合わなくなったのである。

image.png
図3 ちなみに途中かけの様子

でも、明日も感情の話だから、明日に実装回すよ、テヘペロ!

まとめ

今回はコミュニケーションにおける感情について考えて行きましょう。
感情とは何か、どうして感情は生まれるのか、どうして感情が伝わるのかを、認知科学、精神医学、神経科学や生理学をごちゃ混ぜにして説明することで、感情への理解を深めて行きました。

眠たいし、時間切れだし、明日も感情だし、
実装は明日に回します。

俺たちの戦いはこれからだ

参考文献

[0] カンデル神経科学
[1] 感情モデルを作る、https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcss/1/2/1_2_2_5/_pdf/-char/ja
[2] http://faq.mb.softbank.jp/detail.aspx?cid=84540&id=84540&a=102
[3] https://www.softbank.jp/robot/consumer/products/emotion/
[4] https://robotstart.info/2016/06/28/kozaki_shogeki-no27.html
[5] https://en.wikipedia.org/wiki/Emotion_classification
[6] Russell, James "A Circumplex Model of Affect," Journal of Personality and Social Psychology, 39, 1161-1178, 1980
[7] https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%83%85%E5%8B%95

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