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"これ"はなんですか、コンピュータさん? -「心を読むシステム」の実装-
「心の理論」によるコミュニケーション
家族とご飯を食べていると、醤油が手に届かなくて困ることがよくありますよね。そういう場合は大体醤油の方を見て、「それとって」と家族にお願いするという場面は誰にでも出くわしたことがあります。
よくよく考えてみれば、これは不思議なことです。もし、「それとって」を自然言語処理させたら、それってなんだよという答えが返ってくるでしょう。
人は視線や指さしを使ったりして自分の意図を他人に伝えることがあります。この意図を汲み取る能力を「心の理論」と言います。そのメカニズムは現代の科学では未だによくわかっていません。ですが、部分的にわかって来ていることもあります。
今回は「心の理論」のメカニズムと、「それとって」を機械に実装してみましょう。
「心の理論」のメカニズム
心の理論とは、他人が持つ目的や意図、信念、振舞、選好などを予想する人間や類人猿が持つ機能のことです。前回話した発達障害者の人はこの心の理論が弱まっているか、そもそも物理的にないとされています。
心の理論を説明するモデルの一つにサイモン・バロン=コーエンが提案する「心を読むシステム」があります。このモデルでは他者の心を理解するために、意図検出器、視線検出器、注意共有の機構、心の理論の機構の4つから構成されるシステムが脳内にあるとしています。この「心を読むシステム」を見える化したものが図1になります。
「心を読むシステム」についてもう少し深掘りしていきましょう。システム内にある意図検出器とは、自身で動けるものがこちらに向かってくることを判別する機能のことです。意図があってこっちに近づいているかということでしょうね。視線検出器は視線をこちらへ向いているか調べるための機能です。つまり、こちらに注意を向けていないか確認しているわけですね。注意共有の機構とは、自分の注意と相手の注意を共有し、相手に自分の注意している第三者のものに向けさせる、あるいは向く機能のことです。多くの場合では共同注意と言います。アイコンタクトと目配りで実現することが多いです。他にも指さし(ポインティング)で注意を向けさせることもあります。最後の心の理論の機構ですが、目的や意図などを理解する機構と、もう俺にはわからん。あとは任せたと言わんばかりの機構です。
とにかくコーエンが言いたかったのは、意図検出器、視線検出器、共同注意が心の理論のキーパーツになるんだよってことでしょう。
「心を読むシステム」を参考にして作る心の理論のアルゴリズム
それではもっと実装寄りの話に行きましょう。
バロン・コーエンさんは意図検出器、視線検出器、共同注意が大切だよと言いました。
もし、これを最初の醤油を取ってもらうシーンで当てはめてみるとどうなるでしょう。
まず、意図検出器としては、人間が動くかどうかが重要となってきます。別に動かなければ、特に用もないですしね。次に視線検出器として、機械側を向いているかが鍵になります。これは視線計測器を使えば簡単に実装できるでしょう。次に共同注意ですが、人間の視線に合わせて機械の視線を動かす必要があります。最後に心の理論として、視線が止まっている状態で「それ」などの代名詞がでたら、相手は視線の先の物体をそれと言っていると判断する必要があるでしょう。
以上をまとめると醤油を取るための心の理論は数理モデルにすると以下の通りとなります。
(時間があったらね!)
基本的には検出器をカスケード接続します。機械学習に詳しい人は顔検出時のAdaboostみたいな構造になります。
また、機械の例としては、視線が表示できるバーチャルエージェントが好ましいでしょう。
実装: 共同注意を通じた代名詞による機械への行動命令
それではユニティちゃんに醤油を取って来てもらいましょう。
材料
開発用PC(Win) 1
視線計測器THEEYETRIVE 1
醤油を受け取るためのLeap 1
Visual Studio Community 1
Unity 1
ソースコード
時間の都合により後回し
実験結果
感想
まとめ
今回は発達障害からの心の理論の実装について説明しました。
もし、発達障害が薬学で解決できないならば、心の理論を実装した機械に手伝ってもらうことで解決するという手もありだと思います。
次回はそもそも人間と機械を統一できる見方とはないのだろうかと模索していきます。
#参考文献
[1] Premack, D. G., Woodruff, G. (1978). Does the chimpanzee have a theory of mind?. Behavioral and Brain Sciences 1 (4): 515–526.
[2] <心の理論>研究の展望 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpsy1926/68/1/68_1_51/_pdf