ふと、振り返ってみるに、
そもそもなぜ非言語処理なんてものを
私たちはまとめているのでしょうか。
アドベントカレンダーを思い出してみると、
人と機械とコミュニケーションとで
コミュニケーションをおこなうため、でした。
あらためてコミュニケーションとは
広辞苑から引いてみると、
社会生活を営む人間の間で行われる知覚・感情・思考の伝達
とあります。
このコミュニケーションの説明を記号論の観点から考えると、
コミュニケーションの媒体として使われるのは、記号、そのうち記号表現に当たりそうです。
一方で、コミュニケーションで伝達されるのは、
その記号表現と対応する記号内容、つまり、知覚、感情、思考の3つのようです。
今日はこの3つのうち、知覚について考えて見ましょう。
知覚のメカニズム
さて、知覚とは一体なんなんでしょう。脳科学辞典によると、
知覚とは、感覚器官への物理化学刺激を通じてもたらされた情報をもとに、外界の対象の性質、形態、関係および身体内部の状態を把握するはたらきのこと。
とあります。
なるほど、(厳密すぎて)よくわからん。
噛み砕くに、物理的な刺激などを感覚器官に与えられたとき、なにかしらの情報を把握することらしいですね(ほぼ変わってない)。
たとえば、ここまでで紹介してきた感覚器官は視覚を司る目、触覚を司るパチニ小体などがありました。目について考えてみると、目に与えられる物理的刺激は、可視光、つまり光な訳です。光を知覚するといえば、大体の場合で、明るさとか色とかそういうものを感じ取るような気がします。
しかし、詳しく刺激を感じ取ることを厳密に区分けすると、Sensation(感覚?), Perception(知覚), Recognition(認知)の三段階があることが知られています。
- Sensationは物理的刺激を感覚器官の受容器が受け取る段階のところをさしています。視覚で例えると、網膜内の視物質が化学反応を起こすあたりですね。この時点ではまだ意識に情報は登りません。
- PerceptionはSensationにより受け取った化学反応に質や量などの解釈を行う段階だとされます。視覚だと、外側膝状体や一次視覚野に刺激が伝わるあたりですね。この時点で意識に情報が登り、明るさや色が判別できるようになります。
- RecognitionはPerceptionの結果や記憶を元に複雑な情報を識別する段階だとされます。視覚だと、下側頭皮質に刺激が伝わるあたりですね。この時点でも意識に情報が登り、例えば、Aさんの顔とBさんの顔を識別するなど、より抽象的なことが理解できます。
このような段階を得て人間は物理的刺激を処理して、相手に知覚(や認知)の結果を伝達しているわけですね。
さて、ここで疑問が湧きます。人間は物理的刺激を受けてから何秒で知覚や認知できるのでしょうか。
一般に視覚刺激を受けてから反応するまでには0.2秒かかると言われているのですが、
本当なのでしょうか。
今回は実装もしますが、どちらかというと、科学っぽく実験装置を作りながら、
Research Questionも明らかにしていくスタイルでやってみましょう。
ちなみにこの研究分野は心理物理学と言われており、
"外的な刺激と内的な感覚の対応関係を測定し、また定量的な計測をしようとする"[1]ことを目的としています。(なお、ソースはWikipedia)
実験
せっかくなので、心理物理実験っぽくやってみましょう。
Research Question -研究課題-
- 俺は視覚刺激を知覚してから何秒で反応できるのか?(問1)
- 俺は視覚刺激を認知してから何秒で反応できるのか?(問2)
材料
実験用パソコン(Win,Macなど) 1
ディスプレイ 1
スピーカー 1
それぞれ高性能で低遅延なものにする。
PhycoPy Builder
実験ソフト:PhycoPy Builder
PhycoPy BuilderはPythonベースで書かれた心理物理実験用のソフトウェアです。
基本的にGUIで操作できますが、GUIの中身では物足りない人用にPythonで内部が動かせるようになっております。
詳しい使い方は参考文献[2,3]をご覧ください。
ここでやっとプログラミングの話が出てきたよ
実験方法
問1については、次の手順で実験しましょう。
- 画面中央に視線を固定する十字をランダム時間表示
- 画面中央に赤色の正方形が表示された時にjキー、青色の正方形が表示された時にkキーを押す
- 表示してからキーを押すまでの時間、すなわち反応時間を測定
- 以上を12回繰り返す
- 反応時間の平均を求める
問2については、次の手順で実験しましょう。
- 画面中央に視線を固定する十字をランダム時間表示
- 画面中央に有村架純が表示された時にjキー、有村架純の姉が表示された時にkキーを押す
- 表示してからキーを押すまでの時間、すなわち反応時間を測定
- 以上を12回繰り返す
- 反応時間の平均を求める
ちなみに有村架純と有村架純の姉の写真は以下の通りとなります。
図1 有村架純(左)と有村架純の姉、有村藍里(右)([4]より引用)
どことなく似ているため、認知が若干難しいタスクとなります。
最初はマナカナにしようとしたけど、あまりに難しすぎてやめた
実験結果
問1については、0.46±0.12秒で反応できました。
色の判断まで入れると0.2を超えるのでしょうか・・・?
問2については、0.59±0.19秒で反応できました。
やはり似ているので若干戸惑うのでしょうか・・・?
考察
案の定、認知の方が遅くなりました。それもそうですね。
情報処理的に難しいですもん。
Conclusion: 結論
- 俺は視覚刺激を知覚してから反応するのに平均0.46秒かかった
- 俺は視覚刺激を認知してから反応するのに平均0.59秒かかった
まとめ
今回はコミュニケーションというものに立ち返り、
知覚のメカニズムと心理物理実験っぽいことを行いました。
次回はそもそも人が感じることのできない生体信号による非言語処理について説明します。
この記事、3時間ぐらいで実験から文章を書き起こしたので誰か褒める意味でいいねしてくださいお願いしましたよ
参考文献
[1] https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B2%BE%E7%A5%9E%E7%89%A9%E7%90%86%E5%AD%A6
[2] PsychoPy Builder で作る心理学実験、http://www.s12600.net/psy/python/ppb/
[3] http://ogwlab.org/?page_id=460
[4] モデルプレス、"有村架純、姉・藍里の活動に本音," https://mdpr.jp/news/detail/1718950
[5] http://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E7%9F%A5%E8%A6%9A
[6] https://en.wikibooks.org/wiki/Introduction_to_Psychology/Sensation_and_Perception