こんにちは、実装は速いのにレビュー待ちで一日が終わるアーキテクトのやまぱん!です 😅
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この記事は 2026/09/14 時点の公式情報です。きっかけは Anthropic の The AI-native SDLC playbook(Louis Claxton、2026/08/21)です。playbook は Anthropic の Applied AI チームの実践をまとめたもの、と原文にあります(著者の肩書きは LinkedIn では Member of Technical Staff)。
全訳ではなく、コーディングエージェントをすでに使っている人向けの読み解きです。一部機能は beta / research preview です。
Claude Code でも GitHub Copilot でも Codex でも、実装そのものは速くなりました。なのに開発全体は、同じ速度では進まない。その違和感を、長い公式 playbook が先に書いています。
タイトルにある intent.md は、仕様を書く前に「誰が、何に困っていて、どうなればよいか、どんな制約があるか」を残す短い文書です。エンジニア向けの実装指示ではなく、まだ仕様になっていない意図を次の担当者と AI に渡します。
TL;DR
- 実装は時間単位まで縮み、計画・レビュー・デプロイが人間速度のまま残る。行単位の人手レビューはもう追いつかない
- 各ステージは次が読める成果物を Git に残す。人はゲートで判断する
- Spec Kit / Kiro の SDD と前半はほぼ同じ。違うのはリリースと運用まで入っていること
- 知識を
CLAUDE.md/ skill / eval に置くと、モデルを替えても学びを失いにくくできる(Satya Nadella 氏の learning loop と重なる点) - Jira や変更管理は捨てない。成果物ごとに正本を 1 つ決める
- 最初に置くのは 6 ステージ全部ではなく、意図・作業手順・検証・承認ゲート
何が変わったか
従来のソフトウェア開発ライフサイクル(以降は SDLC)は、コードを書くことが一番高くて遅かった前提で組まれています。要件定義、見積もり、セキュリティレビューは、「何週間もかかる実装」のあいだに揃えるための装置でした。
原文の主張はこうです。エージェントが実装を時間単位まで縮めたあと、ボトルネックは左右へ移る。計画、レビュー、テスト、デプロイです。ここが人間速度のままだと、実装が速くなっても開発全体は速くなりません。
セキュリティを例にします。レビューチームの人数は人間の出力に合わせて決まっています。エージェントが差分を何倍にもすると、キューが伸びるか、レビュー不足のまま出すかの二択になります。規制のある組織はどちらも取れません。だから実装だけでなく、左右の工程もエージェント前提に組み直す、というのが playbook の出発点です。
人を外す話ではありません。判断が要る決定の責任は人に残ります。人が見る対象が、全部の行から成果物とゲートに移るだけです。
6 ステージを「成果物のリレー」として読む
原文は 6 つのステージを置きます。Plan / Design / Build / Test / Deploy / Maintain です。
ステージ名は覚えなくていいです。仕組みは 1 行で済みます。各ステージは成果物を 1 つ Git に置いて終わり、次のステージはそれを読んで始まる。これだけです。
役割分担まで開くと、こうなります。AI は成果物の作成と機械的な確認を進め、人は意図・例外・リスクを判断します。
| ステージ | AI がすること | 人がすること | 次へ渡すもの |
|---|---|---|---|
| Plan | 会話から問題、期待する結果、制約、未決事項を整理し、intent.md の下書きを作る |
言い出した人が背景を説明して誤解を直し、プロダクトオーナーが採用するか決める | 承認済み intent.md
|
| Design |
intent.md と組織の方針を読み、要件と設計を spec.md にまとめ、矛盾や懸念を挙げる |
プロダクトオーナーが意図とのずれを直し、必要ならセキュリティや UX の責任者と懸念を解消して承認する | 承認済み spec.md
|
| Build |
intent.md と spec.md から変更箇所、順序、リスク、テストを含む plan.md を作り、承認後に実装する |
エンジニアが計画を問い直して修正し、通常変更を承認する。高リスク変更はテックリードも確認する |
plan.md、コード差分、テスト |
| Test | テスト、ビルド、lint、必要なら画面比較を繰り返し、失敗を直す。エージェント設定の変更には eval も回す | エンジニアが合格条件を先に決め、コードオーナーがテストを弱めていないかと証拠を確認する | テスト結果、ビルドログ、画面差分 |
| Deploy |
spec.md、plan.md、テスト結果に照らして PR をレビューし、指摘への修正や CI の失敗原因調査を進める |
コードオーナーが意図とリスクを確認し、リリース責任者が本番投入を承認する | 承認済み PR、レビュー・リリース記録 |
| Maintain | 監視のしきい値超過やチケットを受けて診断し、小さな修正は PR を提案し、大きな問題は次の intent.md として起票する |
サービスオーナーやオンコール担当が、今直す、後で直す、棄却するを判断する | インシデント記録、PR、次の intent.md
|
ここで人が毎回ゼロから資料を書くわけではありません。AI が作った成果物を、人がそのステージの責任に合わせて直し、通すか止めるかを決めます。一方、テストや監視のしきい値のように機械で判定できる部分は、人の感覚ではなくコードに寄せます。
前半 3 つは Markdown です。
-
intent.md— やりたいことを、言い出した人の言葉で書いたもの。困っていること、よくなった状態、影響範囲、制約、未決 -
spec.md— その意図から起こした要件と設計。方針どうしが矛盾するなら、ここで表に出す -
plan.md— 実装計画。変えるファイル、作業の順番、何をもって証明するか
Build から先は、コードとその記録が成果物になります。Build はコード差分、Test はテスト結果、Deploy は承認の付いた PR とレビュー記録、Maintain はインシデント記録です。
前半が Markdown なのは、プロダクトオーナーもエージェントも同じファイルを読めるからです。仕様を見るために別のツールを開かなくていい。
そして最後が最初に戻ります。本番で異常を検知したら、それが次の intent.md になる。だから原文はこれを工程表ではなくループと呼びます。agentic SDLC や AI SDLC と呼ばれているものも、同じ動きの別名だと書いてあります。
チェーンが残ると、コミット列がそのまま監査証跡になります。誰が頼んで、エージェントが何を出して、誰が承認したか。
なお intent.md も spec.md も plan.md も、Claude Code の必須ファイルではありません。playbook が提案している運用上の置き方です。
「これ SDD と同じでは?」に先に答える
ここまでで、GitHub Spec Kit や Kiro を触ったことがある人はこう思うはずです。それ Spec-Driven Development(SDD)では?
どちらも、実装の前に仕様・設計・タスクを作らせる、AI コーディング向けの SDD 系ツールです。
半分は同じです。
| 観点 | GitHub Spec Kit | Kiro | AI-native SDLC playbook |
|---|---|---|---|
| 実装前に文章を固める |
/speckit.specify → /speckit.plan → /speckit.tasks
|
requirements.md → design.md → tasks.md
|
intent.md → spec.md → plan.md
|
| 置き場所 | specs/<feature>/ |
.kiro/specs/ |
リポジトリの成果物チェーン |
| 人のレビュー | フェーズごとに確認 | フェーズごとに承認 | ステージごとのゲート |
| 本番の結果を次へ戻すか | 仕様へ反映すると methodology に記載 | spec 単位が中心 | Maintain が次の intent.md を書く |
「what と why を先に書き、how を分けて、Git に置き、人が確認する」。実装前半の考え方は、この 3 つでほぼ同じことを言っています。成果物チェーンを見て SDD を連想するのは、正しい反応です。
違うのはスコープです。
-
Spec Kit と Kiro は、機能や修正 1 個を作り切るワークフロー。コマンドとテンプレートがあり、
tasks.mdまで落ちたら実装に入ります - playbook は組織のプロセス。Deploy と Maintain、つまり承認ゲート、本番リリース、インシデント対応、定期スキャンまでが 6 ステージに入っています
大きな違いは、仕様の前に intent.md があること
Spec Kit の /speckit.specify も、自然言語で説明した機能から spec.md を作れます。ただし、中心的な成果物として独立した intent.md はありません。
playbook は spec.md の手前に、エンジニアではない人が自分の言葉で書く 1 枚を置きました。困っていること、よくなった状態、影響を受ける人やシステム、制約、まだ答えが出ていない質問を intent.md に残します。プロダクトオーナーは、それを仕様へ進めるか、ここで止めるかを判断します。
大きいのは、AI が自然言語を読めることではありません。まだ仕様になっていない困りごと自体を、レビュー可能な成果物として残すことです。従来なら、言い出した人の話をプロダクト担当が聞き、チケットやユーザーストーリーへ書き直していました。intent.md があれば、元の問題意識を次の担当者とエージェントが同じ場所から読めます。
ひとつ注意があります。原文は自分を SDD と呼んでいません。取得した本文に spec-driven development という語は出てきませんでした(2026/09/14 時点)。呼び名は AI-native SDLC、または agentic SDLC です。SDD の一種として読むかどうかは、読み手の整理になります。私は「SDD の考え方を、リリースと運用まで伸ばしたもの」として読みました。
現場で回らないところ
ただし、呼び名を整理しても、導入で詰まる場所は別にあります。原文も「レガシーを捨てろ」とは書いていません。詰まるのは、だいたい次の 4 箇所です。
正本が二つある
既存の SDLC は、すでに成果物を持っています。作業項目は Jira、要件はトレーサビリティ付きのツール、デザインは Figma、変更承認は変更管理です。監査がそこを正本にしているなら、Markdown だけ増やしても回りません。
原文の最低ラインは、成果物ごとに正本を 1 つ決めることです。リポジトリを正本にしてレガシー側はコミットへのリンクでもよい。Jira を正本にして Markdown は作業コピーでもよい。移行の最初は、レコード ID とコミット SHA を相互に書く「紐づけ」でもよい、とあります。怖いのは、どちらが正本か決まっていない状態です。
レビューが行単位のまま
実装が速くなると、最初に壊れるのはレビューです。人が差分の全行を読む前提は、人間が書いていた時代のものです。原文は、エージェントによるレビューを先に走らせ、人は意図とリスクを見る、と書きます。書いたエージェントが自分の PR を承認できない、という分離も残します。
skill は助言、必須は hook か CI
組織の方針を skill に書くのは有効です。ただし skill は助言です。セッションが必ず従う保証はありません。例外なく守らせたい方針には、操作を止める hook か、PR で再確認する決定論的なチェックが要ります。原文も「skill で違反を減らし、hook でほぼ不可能にする」と分けています。
本番ゲートなしの auto は危ない
Claude Code の auto は、計画を承認したあと、編集ごとの確認を減らすモードです。公式 Docs でも安全保証ではなく、Team / Enterprise では管理者が無効化できます。ガードレール(短い作業手順、方針、hook、テスト)が薄い状態で、本番まで自動で通す話ではありません。原文も、エージェントは本番ゲートの手前まで動き、ゲートは人が残す、と書いています。
Claude 用語を他ツールに翻訳する
ここからが対応表です。1 対 1 ではありません。名前が似ていても、置き場所もイベント名も違います。公式名が無い欄は「近いもの / 公式未確認」のまま残します。
以降、GitHub Copilot は VS Code 上のエージェント利用を中心に書きます。Codex は OpenAI のコーディングエージェントです。
作業手順と skill、hook
| playbook / Claude Code | GitHub Copilot / VS Code の近いもの | Codex の近いもの | 注意 |
|---|---|---|---|
CLAUDE.md |
custom instructions(.github/copilot-instructions.md、AGENTS.md)。VS Code は CLAUDE.md も読む |
AGENTS.md |
常時オンの作業手順。権限や hook の代わりではない |
skill(SKILL.md) |
Agent Skills | Agent skills | オープンな SKILL.md に近い。必須ポリシーの強制力はない |
| hook | VS Code の Agent hooks(Preview)、GitHub の Copilot hooks | Hooks | 形式は近い。イベント名は一致しない。VS Code は Claude の matcher を無視する |
方針を文章で渡す層と、操作を止める層は、どのツールでも分けた方がよい、というのが対応表から見える共通点です。
計画とレビュー
| playbook / Claude Code | GitHub Copilot / VS Code の近いもの | Codex の近いもの | 注意 |
|---|---|---|---|
plan mode(permission modes の plan) |
VS Code の Plan agent(/plan)、Visual Studio の Plan agent
|
公式の同名モードは未確認。experimental の $create-plan skill がある |
Claude の「編集できない計画モード」そのものではない |
| auto mode | 公式の同名モードは未確認 | 公式の同名モードは未確認 | agent のツール承認とは別物として扱う |
| Code Review(research preview) | Copilot code review |
AGENTS.md の Code Review Rules など |
別製品。書いた側が承認できない分離は残す |
計画を先に文章で固める、という運用自体は移植できます。モード名まで揃える必要はありません。
成果物と、埋めない欄
| playbook / Claude Code | GitHub Copilot / VS Code | Codex | 注意 |
|---|---|---|---|
intent.md / spec.md / plan.md
|
公式の必須ファイルではない | 公式の必須ファイルではない | 運用上の成果物。ツール固有の入力形式ではない |
| evals(エージェント設定の回帰) | 公式製品名は未確認 | 公式製品名は未確認 | CI で非対話実行する、という実践 |
| managed settings | org instructions や enterprise policies は近いが、キー一式の対応は未確認 | 同名の対応は未確認 | 埋めない |
| sandbox / worktrees(同名) | 同名機能は未確認 | 同名機能は未確認 | 埋めない |
対応表で大事なのは「同じファイル名を置け」ではありません。次の人が、次のエージェントが、同じ成果物を読めることです。
最初に置く最小セット
6 ステージを一度に導入しなくてよい、と原文も書いています。依存のない play から始めてよい。現場向けに削ると、最初のセットはこれで足ります。
-
意図の 1 ファイル
問題、よくなった状態、影響範囲、制約、未決。書いた人の言葉でよい。ツール必須のファイル名ではない。 -
リポジトリの作業手順
ビルド、テスト、lint、やってはいけないこと。1 ページ以内。Claude Code ならCLAUDE.md、Copilot なら instructions /AGENTS.md、Codex ならAGENTS.md。 -
検証コマンド
セッションが自分で回せる 1 本。失敗したらコードを直し、テストを弱めない。 -
人が残る承認ゲート
本番、保護パス、変更管理が残る操作。助言の skill ではなく、止める hook かブランチ保護。
ここまで揃うと、エージェントを増やす前に「何を残して、どこで人を挟むか」が見えます。並列セッションや本番監視の閉じたループは、そのあとでよいです。
モデルを替えたとき、何が残るか
モデルを替えるたびに、チームで積み上げた知識までリセットされたら困ります。この問題は、Satya Nadella 氏の論考 A frontier without an ecosystem is not stable にある learning loop とつながります。
そこでは、企業が育てるものを 2 つに分けていました。人の知識と判断が human capital、企業が自ら構築して所有する AI の実行能力が token capital。この 2 つを往復させて育てるのが learning loop で、一般的なモデルを交換しても「会社のベテラン」の知識を失わない状態かがコントロールのテストになる、という話でした。
playbook は、同じテストを開発プロセスの側で具体化しています。
- 組織の知識は
CLAUDE.mdと skill に置き、バージョン管理してコードと同じようにレビューする - その設定が変わったら eval が回る
- 原文はこう書いています。新しいモデルに差し替えたときやプロンプトを書き換えたとき、eval スイートが「エージェントは同じ水準で仕事をしているか」を答える
知識を自分側に置き、失われていないことを機械で確かめる。論考が「そうあるべき」と言っているところに、playbook は「どのファイルに置き、どこで検査するか」を書いています。
ただし Anthropic は token capital という言葉を使っていません。論考のほうは経済やエコシステム、国の話まで含みます。重なるのは中心の 1 点、学びを自分側に残して、モデル交代に耐えさせるところだけです。対応づけは私の読みです。
learning loop 側は前に 1 本書いたので、詳しくはそちらへ。AI を使うほど強くなる企業は何が違うのか? 「トークン資本」と Learning Loop で育てる知の基盤
まとめ
コードが速くなった話は、もう出尽くしています。足りないのは、その左右です。ボトルネックは実装ではなく、人間速度の計画とレビューとデプロイ。見るべきはステージ名ではなく、次が読める成果物と、人が残るゲートです。
SDD をすでに回しているなら、前半はもう持っています。足すならリリースと運用側です。まだなら、エージェントを増やす前に成果物チェーンを 1 本置くところから。そこを残しておけば、モデルを替えても学びは手元に残ります。私は次に、自分のリポジトリでそこを試します。
参考
- Louis Claxton, The AI-native SDLC playbook(2026/08/21)。著者プロフィール: LinkedIn(肩書きの出典)
- Jason Clinton, How Anthropic secures its AI-native software development lifecycle(2026/07/21)
- Sachin Malhotra, AI incident response for CI/CD: Claude on call at Anthropic(2026/08/18)
- GitHub Spec Kit
- GitHub Blog: Spec-driven development with AI(2025/09/02)
- Kiro Docs: Specs
- Satya Nadella: A frontier without an ecosystem is not stable
- 拙稿: AI を使うほど強くなる企業は何が違うのか? 「トークン資本」と Learning Loop で育てる知の基盤
- Claude Code: Permission modes
- Claude Code: Hooks
- Claude Code: Skills
- Claude Code: Memory (CLAUDE.md)
- VS Code: Custom instructions
- VS Code: Agent Skills
- VS Code: Agent hooks (Preview)
- VS Code: Plan agent
- Visual Studio: Copilot plan agent
- GitHub: About hooks for GitHub Copilot
- GitHub: Copilot code review
- Codex: Custom instructions with AGENTS.md
- Codex: Hooks
- Codex: Save workflows as skills

