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MCP2517FDでCAN FD通信を行う

Last updated at Posted at 2020-02-25

目的

CAN FDで送受信してみたい
CAN FDに対応しているマイコンはRH850くらいしか知らないが、車載向けなので個人で入手は難しい(多分)。
そこで MCP2517FD という外付けのCANコントローラを使用した。

CAN FDはCANの拡張である。よってCANの知識が必要。
猿でも分かるCANプロトコルの基本
CAN通信いろいろ
CANについて
CAN(controller area network)

CAN FDの概要

既存のCANではビットレートもデータ長も足りていないため、両方を改善したのが CAN FD である。

  • CAN IDなどは通常のCANと同様のビットレート
  • データ部は**最大512bit(64byte)**に拡張
  • データ部だけビットレートを上げることができる(Flexible DataRate → FD)
    image.png

はじめてのCAN/CAN FD
次世代の車載ネットワーク「CAN FD」とは
CAN FD(CAN with Flexible Data Rate)とは

ハード構成

自分で送信したCAN FDのフレームを自分で受信する。
image.png

部品 購入元 マニュアル 補足資料
CANコントローラ MCP2517FD-H/SL 20005688B_JP.pdf 20005678B_JP.pdf
CANトランシーバ MCP2562FD-E/P 20005284A_JP.pdf
オシレータ セラミック発振子 40MHz
終端抵抗 120Ω
パスコン セラミックコンデンサ 0.1μF

クロック生成

40MHz/20MHz/4MHz の外付け水晶振動子、セラミックレゾネータ、外部クロックが使える。
4MHzの場合PLLで10逓倍の40MHzにできる。特に理由がなければ40MHzか4MHzがよいだろう。

最高ビットレート SPI最高通信速度
40MHz or 4MHz(x10) 8.0Mbps 20.0Mbps
20MHz 6.7Mbps 10.0Mbps

以下が使えることを確認済み
セラミック発振子 コンデンサー内蔵タイプ 40MHz
セラミック発振子 コンデンサー内蔵タイプ 20MHz
水晶発振子 20MHz と セラミックコンデンサ(20pFくらい) x 2個
水晶発振子 4MHz と セラミックコンデンサ(20pFくらい) x 2個

MCP2517FDの制御

MCP2517FDのデータシートは以下の2つがある。
20005688B_JP.pdf : ハードやレジスタの仕様
20005678B_JP.pdf : 補足資料

SPIインターフェース

使ったコマンドは「Reset」「Read」「Write」の3つ。
image.png

SPIのクロックはSYSCLKの半分まで上げることができる。4MHzの水晶を使う場合のみ注意が必要で、
リセットからPLLのONまでの間は4MHz/2の2MHzが上限である。
image.png
上記はリセットコマンド発行時のSPIとCLKOの波形である。
マニュアルにはnCSのHIGHでリセットと書いてあるが、コマンドを書き込んだ時点でリセットがかかって
CLKODIVが10分周に戻ってるように見える。。。

初期設定

定格ビットレート: 500kbps
データ ビットレート: 2Mbps
TEF & TXQ: 使わないので無効化
FIFO1: 受信用
FIFO2: 送信用
フィルタ0: FIFO1に振り分け、全CAN IDを受け入れ
トランスミッタ遅延補償: 自動設定、TDCO=DBRP×DTSEG1
CRCとRAMのECCチェック: 使用しない

レジスタ 設定値 説明
OSC 0x00000001
0x00000000
オシレータが4MHz: PLL=1
オシレータが4MHz以外: PLL=0
C1NBTCFG 0x003E0F0F
0x00160F0F
SYSCLKが40MHz: BRP=1, TSEG1=63, TSEG2=16, SJW=16
SYSCLKが20MHz: BRP=1, TSEG1=23, TSEG2=16, SJW=16
C1DBTCFG 0x000E0303
0x00060101
SYSCLKが40MHz: BRP=1, TSEG1=15, TSEG2= 4, SJW= 4
SYSCLKが20MHz: BRP=1, TSEG1= 7, TSEG2= 2, SJW= 2
C1TDC 0x00020F00
0x00020700
SYSCLKが40MHz: TDCMOD=2, TDCO=15, TDCV=0
SYSCLKが20MHz: TDCMOD=2, TDCO=7, TDCV=0
C1FIFOCON1 0xE7600400 FIFO1: ペイロード=64byte, FIFO=8段, 受信FIFO
C1FLTCON0 0x00000081 Filter0=許可, Filter0をFIFO1に振り分け
C1FIFOCON2 0xE3600480 FIFO2: ペイロード=64byte, FIFO=4段, 送信FIFO
C1CON 0x00000760 REQOP=000, TXQEN=0, STEF=0

ビットレート

C1NBTCFG・C1DBTCFG に指定する BRPとTSEG1、TSEG2の値からビットレートが決まる。
image.png
上記は SYSCLK 40MHz, BRP=1, TSEG1=15, TSEG2=4 の例。
(SYSCLK / BRP) / (SYNC + TSEG1 + TSEG2) = (40MHz / 1) / (1 + 15 + 4) = 2Mbps
マニュアルにはBRPをなるべく小さくとあるので1にした。
SJWはなるべく大きくと記載されているのでTSEG2と同じ値にした。
SJWに指定できる値は制限がある: SJW ≤ min(DPHSEG1, DPHSEG2)。

マニュアルではTSEG1とTSEG2の値の割合をTSEG2までのTQが80%になるように調整している。
(SYNC+TSEG1) / (SYNC+TSEG1+TSEG2) = 80%

CAN IDフィルタ

CiFLTOBJm と CiMASKm で受信対象のCAN IDをフィルタリングできる。
image.png
比較はビット単位で行われ CiMASKm が0のビットは常に受け入れる。
CiMASKm が1のビットは CAN ID と CiFLTOBJm のビットが比較され、一致すると受け入れられる。

0x4** のCAN IDを受け入れるなら CiMASKm を 0x700 に CiFLTOBJm を 0x400 にする。
全CAN IDを受け入れるなら CiMASKm を全て0にすればよい。

メッセージ送信

  1. C1FIFOSTA2 を読み出し、FIFOに空きがあることを確認(TFNRFNIF==1)
  2. C1FIFOUA2 を読み出し、送信FIFOのアドレスを取得
  3. 0x400 + アドレス + 0 にCAN IDを書き込み
  4. 0x400 + アドレス + 4 にDLCなどを書き込み
  5. 0x400 + アドレス + 8 以降に送信データを書き込み
  6. C1FIFOCON2 のTXREQとUINCを1にして書き込み(転送を開始し、FIFOを進める)

メッセージ受信

  1. C1FIFOSTA1 を読み出し、FIFOにデータがあることを確認(TFNRFNIF==1)
  2. C1FIFOUA1 を読み出し、受信FIFOのアドレスを取得
  3. 0x400 + アドレス + 0 からCAN IDを読み出し
  4. 0x400 + アドレス + 4 からDLCなどを読み出し
  5. 0x400 + アドレス + 8 以降からDLC分だけデータを読み出し
  6. C1FIFOCON1 のUINCを1にして書き込み(読み出し済みのバッファを空ける)

動作結果

期待通りデータ部のbpsが上がっている。

Saleae のロジックアナライザで波形を取得した。
CAN FDには対応していないが、プラグイン を追加すれば解析できるようになる。
VisualStudio2017でビルドしたものは こちら。CANFD.dllをどこか適当な場所に置き、
Options → Preferences → Developer にCANFD.dllを置いたフォルダのパスを指定し、ソフトを再起動する。
image.png
・CAN ID :11bit 0x3FB
・DLC :4
・Data :F7 00 AA F7
・フレームフォーマット :FDF=1
・ビットレート スイッチ:BRS=1

64byteの転送にかかった実測時間

SOF から ITM までの時間を計測した結果。
データによってはビットスタッフィングでフレーム全体の時間が延びるため、
最短時間はデータ部を0xAAで埋めてスタッフビットが入らないように計測し、
最長時間はデータ部を0x00で埋めてなるべくスタッフビットが入るようにした。

フォーマット ビットレート データ長 転送時間 CANとの速度差
CAN 500kbps 8 219us ~ 250us -
CAN 500kbps 64 1752us ~ 2000us (8byte x 8回) -
CAN FD 500kbps+2Mbps 64 331us ~ 386us 5倍
CAN FD 500kbps+5Mbps 64 166us ~ 190us 10倍
CAN FD 500kbps+8Mbps 64 124us ~ 141us 14倍

計測した結果 CAN FD のほうが2Mbpsでも5倍、5Mbpsなら10倍速い
車載の開発でCANリプロ(ソフトウェア更新)をすると、CANの遅さがボトルネックとなって
大変時間かかるので、もっとCAN FDを採用してほしいと思う。

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