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続 テストガールRINA(指教編)

Last updated at Posted at 2017-12-17

これまでのお話

この物語の設定については昨年のAdventCalendarをお読みください。

あれから一年。“RINA”と“まりまり”は、どのくらい成長したのでしょうか。
それではさっそく、二人のオフィスをのぞいてみましょう。

シーン1. (いつもの朝)08:55

天神にあるビルの6階、二人のオフィスには今朝もダダダッと元気な足音が響いてきた。(キタキタ……と、みな笑顔になる)まりまりの出勤である。
始業時刻に遅れたことは無いが、いつもギリギリ出勤のまりまりである。境界値をねらうのはテスターのサガだろうか。そういえば初出勤日に『9時ゼロ分は遅刻ですか? セーフですか??』とあだち部長を問い詰めて目を白黒させていたっけ、とRINAは懐かしく思う。

まりまり「ピンポーン 誰か来ましたよ〜。RINA先輩! おはようございます!! 今日も寒いですね!!! けど走ってきたので、まりまりはホカホカですよ!!!!」

RINA「おまえはジャルジャルか? まりまり~。お~は~よ~う~~~。」 (:3」∠)
※ RINAは、一旦は、むくりと起き上がったものの、またデスクに突っ伏した。

まりまり「あららー。先輩、ちょっと元気なくないですか?」

RINA「なくなくなくなくないですぅ。」

まりまり「それって。どっちですかぁ。〆( ̄▽ ̄ll)」

RINA「最後の『ない』は否定の意味だから、『なく』の数が奇数なら『元気ある』し、偶数なら『元気なし』よっ! ドヤッ!
はい! もう一度!! 『なくなくなくなくないですぅ。』」

まりまり「もういいです。」1

まりまり「で、なんで元気ないんですか?」 ( ・ω・)ン?

RINA「実はね。」

※ 朝の雑談はとても大切である。人間は機械ではないのだから。

シーン2. (RINAの元気が無いわけ)09:10

そんな様子を(オフィスの奥にあるちょっと大きな机から)眺めていた課長のあさこがやってきた。

あさこ「リナァっ! なに朝から、たそがれてんのよ!!」
(あさこは、RINAの先輩。ショートヘアで意思の強い獅子座の女。新入社員だった頃にOJTトレーナーとしてお世話になった関係で、RINAは今でもあさこに頭が上がらない。)

RINA「ほら。ウチの会社には炊飯器があるじゃないですか。」

あさこ「うん。あるね。」

視線を給湯室に移すと、会社設立5周年記念に、あだち部長が買ってきたビタミンカラーの小さな炊飯器が鎮座している。
システム会社にはどうしてもリリース直前の繁忙期とリリース直後の閑散期がつきものである。業務量の平準化のために繁忙期に派遣社員を追加で雇うなど、社長も頭を悩ませているが、なかなかうまくいかない。
よって残念ながら繁忙期には多くの社員が残業をすることになるのだが、そんなときに、あだち部長自らご飯を炊き、オニギリを握ってねぎらってくれるのだ。

RINA「あさこ先輩。
実は昨日、まりまりの出身校の山崎先生が椒房庵の明太子をお土産にくださったんです。」

あさこ「いいじゃない。私、ふくやより好きよ。」

RINA「ええ。私も柚子入り明太子が大好きなんです。」

あさこ「じゃあ、何も問題ないじゃない。」

RINA「いいえ。今、私、炭水化物ダイエット中なんです。」 キリッ(๑•̀.•́ฅ✧

※ 福岡は日本で一番可愛い女の子が集まっている街なので気が抜けないのだ。橋本環奈も、まりこ様も福岡出身なのである。

あさこ「大丈夫よぉ。一杯くらい食べたって変わりゃしないって。」

RINA「一杯で止まればよかったのですが……。」

まりまり「もう食べたんですか?」

RINA「昨日、ごはん炊いたの。」

まりまり「私、食べてない!」

RINA「うん、昨日の夜8時、オフィスには私以外誰もいなかった。」

あさこ・まりまり「この炊飯器って!!」

RINA「そう。2合以上しか炊けないんですよねー。」

まりまり「で?」

RINA「食べちゃったの。だって、椒房庵の柚子入り明太子と炊き立てツヤツヤの新米ごはんがあったんだもの。」

まりまり「2合は食べすぎです。それで、後悔中というわけですか。」

RINA「そゆこと。」

あさこ「RINAよ。くよくよするが良い。」 ((((*ゝω・)†~  アーメン

RINA「だってぇ。私もご飯は一杯にしておこうと思ったわ。でも『炊飯器に半分以上も残す』って無理じゃないですか? 誰もいないし持ち帰る方法も無いから私が残したら捨てるしか無いんですよ? ご飯を捨てるなんてばち当たりなことできません? “一粒のお米には、七柱の神様がいる”んだよ? お茶碗一杯に3,000粒だよ? 計算したら神様21,000柱だよ?」

※ 言い訳が多いRINAであった。

RINA「そんなこんなを思い悩んでいたら、いつのまにか胃の中に吸い込まれてるじゃん? わかるよね? ね? ね?」

シーン3. (まりまりの元気が無いわけ)15:00

RINA「まりまりー。お客様からいただいた『通りもん』2あるよー。」

まりまり「せんぱ~い。まりまり、食欲無し、で~す~~~。」 `」 ∠)_

RINA「あららー。まりまり、ちょっと元気なくない?」

まりまり「なくなくなくなくないですぅ。」

RINA「それって。どっち!?」

(--- 略 ---)

RINA「いったい、どうした。おねーさんに言ってみなさい。」

まりまり「先週実施した、『そろそろ使いこなしたいHAYST法研修』のアンケート集計をしているのです。」

RINA「2ヶ月くらい頑張って準備してたもんね。研修が終わった後、居酒屋で杜の蔵を吞みながら『上手くできた。反応もまずまず!』ってニヤけていたじゃない。」

まりまり「はい。週末は開放感もありライブに行ってウキウキしていたんですが。」

RINA「ですが、、、というと。」

まりまり「アンケート結果を集計したら、理解度の平均が2.2だったんです。」

RINA「それって5段階だよね。」

まりまり「はい。100点満点で言えば44点。半分も理解されなかったということです。」

RINA「あとは?」

まりまり「『あとは?』というと??」

RINA「アンケートの他の項目の結果は?」

まりまり「自由記入なので、ワチャクチャで未集計です。ざっと見たところ書いてあることは、『ご苦労様でした』とか『ありがとうございました』が多いです。正直言うと、そーゆーのいらないんですけど。」

RINA「いったい。どんなアンケートシートなのさ。」

まりまり「こんなアンケートシートなのさ。

設問1: 今回の講座の理解度を5段階で教えてください。
 5:完璧に理解できた
 4:まぁまぁ理解できた
 3:理解できた
 2:消化不良のところがあった
 1:全く理解できなかった

設問2: 感想などご自由に記入ください。
 (                  )

です。」

RINA「なんと、いい加減なアンケートシート。」

まりまり「え? テキスト作成をギリギリまで頑張って時間がなくなったのでYUMO先輩に相談して、YUMO先輩作のアンケートシートをいただいたのですが……。」
(YUMO先輩とは、職歴20年のベテランテストエンジニアである。ただし、売れっ子であるため多忙を極めている)

RINA「いくらYUMO先輩作とはいえ、だめなものはだめ。」

まりまり「いったいどこがだめなのでしょうか?」

シーン4. (アンケートの作り方)15:30

RINA「じゃあ、これからアンケートの作り方について説明するね。『通りもん』食べながら気軽に聞いてね。」

まりまり「はい。(ガサゴソ)。お茶持ってきます。」

RINA「アンケートには、3つのコツがあるわ。
  ① 仮説検証
  ② 質問が正しい(2つのことを同時に聞かない)
  ③ 集計まで考える
のみっつよ。」

まりまり「一つずつお願いします。」

RINA「そうよね。では、『仮説検証』から。まりまり、今回のアンケートをとった目的は何?」

まりまり「とくにありません。アンケートの目的なんて考えたこともありません。研修にはつき物なんじゃないですか? 私も研修やシンポジウムに行くといつも最後にアンケートを書かせられるから、“そういうもの”なんだなと漠然と思っていました。」

RINA「だから、YUMO先輩作をそのまま使ったわけだ。」

まりまり「はい。でも、これまで私が書いてきたアンケートも同じようなものでしたよ。名前を記入して、5段階評価して、自由記入があって、最後の行に『これでおしまいです。研修お疲れさまでした。』って書いてあるパターン。」

(た、確かにそうだわ。相変わらず、まりまりするどい子。でも、ここはしっかり基本を教えなくっちゃ)
RINA「まりまり、アンケートは『仮説検証』のために行うの」

まりまり「はい。それはさっきも聞きました。でも意味はわかりません。なんの仮説ですか?」

RINA「『狙ったとおりに研修が成功した』という仮説よっ!」

まりまり「なるほどです。ところで『研修の成功』とはなんでしょう?」

RINA「『研修の成功』は講師によって違うわ。YUMO先輩クラスになれば『(難しい何かを)理解させることが出来たか?』かもしれない。」

まりまり「だからYUMO先輩のアンケートシートには『理解度』と『自由記入』しかないのですね。」

RINA「そうかもしれない。でも、まりまりは若手だから今回の研修に向けて他にも努力したことがあるんじゃない?」

まりまり「はい。まりまり2ヶ月も頑張りました。」

RINA「その頑張りが報われたかどうかを確認したくない?」

まりまり「ええ。だからアンケートの結果を楽しみにしていたんですよ。『スライドは読みやすいし、研修内容は明日からすぐに業務に使えそうだ。参加して本当によかったよ。まりまりくん、是非とも、うちの部に来てその才能を存分に発揮してはもらえないだろうか。』ってスカウトされたらどうしようワタシ……………って。」

※ まりまりはすっかり妄想モードに入ってしまったようだ。

RINA「いま『スライドは読みやすいし』って言ったけど、アンケートで読みやすいかどうか聞いてないよね。」

まりまり「ハッ!」( ̄0 ̄;アッ

RINA「『業務に使えそう』かどうかも、聞いてないよね。」

まりまり「きゃっ!」(*ノωノ)キャ

RINA「いい。まりまり。私はまりまりが一生懸命になって、スライドのフォントを大きくするために文章をわかり易い短文に直したことを知ってる。また、『読みやすいフォントってどれだろう?』って半日悩んでいたことも知ってる。でも、短文が良いことも、選択したフォントが正しいことも仮説に過ぎない。」

まりまり「はい。私の勝手な思い込みかもしれません。だからアンケートで『仮説検証』するんですね。」

(この子、、、本当に飲み込みが速いわ……。一を聞いて十を知るタイプね……。)
RINA「次は『質問が正しい(2つのことを同時に聞かない)』について説明するわよ。」

まりまり「よろしくお願いします。」

RINA「まりまりのアンケートの選択肢に『まぁまぁ理解できた』ってあるわよね。」

まりまり「はい。完璧とまでは言えないけど、まぁまぁ理解できたよという人用の選択肢だと思いました。アンケートシートはYUMO先輩作だけど、これで良いかどうかは一応考えましたよ。」

RINA「もう一度設問を確認するね。

設問1: 今回の講座の理解度を5段階で教えてください。
 5:完璧に理解できた
 4:まぁまぁ理解できた
 3:理解できた
 2:消化不良のところがあった
 1:全く理解できなかった

どう?」

まりまり「あれ? そういわれると変な質問かも。」

RINA「5は新しい知識を学んだ直後にはなかなか選びにくいよね。『やってみないと分からない』って思う人が多いから。4は選びやすいけど、次の3が目に入って『理解したより上のレベルかよ』って思ってこれも選びにくい。」

まりまり「すると3以下のどれかを選ぶということでしょうか?」

RINA「私の経験では、1を選ぶ人もいないわ。受けた研修が無駄とは思いたくないし、プライドもあるから。選びやすいのは2の『消化不良のところがあった』よ。技術系の研修で消化不良のところがない人のほうが珍しいから。」

まりまり「だから“平均:2.2”だったんですね。」

RINA「アンケートをとるまでも無いわ。質問自体が不適切なのよ。」

まりまり「YUMO先輩めー。」

RINA「YUMO先輩の研修は全員に理解してもらわないと困るものだったのかもしれないわ。」

まりまり「そういえば、研修のタイトルは『個人情報流出防止のためのテストデータ・クレンジング研修』だったような。」

RINA「また、選択肢4の『まぁまぁ理解できた』は、『まぁまぁなのか、理解できたのかどっちやねん?』って思った受講生が多いはずよ。『2つのことを同時に聞かない』という鉄則違反だから。」

まりまり「はい! そうですね。」

RINA「最後のコツは『集計まで考える』よ。自由記入で困っていたわよね。」

まりまり「はい。アンケートシートのオリジナルは教育部に保管すると言われて、コピーを渡されたのですが、青のカラーペンで書いた自由記入は薄くて読みにくいし、達筆すぎて判読不可能なのもあるし、苦労しています。」

RINA「ところで、自由記入をExcelに入力しているけど、なんに使うつもりなの?」

まりまり「あだち部長への報告書の添付です。」

RINA「それは、部長の指示かしら?」

まりまり「いいえ。何も仰っていません。」

RINA「確認したほうがいいわね。部長もお忙しいから読まないかもよ。」

まりまり「次の日に確認して読んでいなかったら絞めます。」ヽ(`Д´#)ノ

シーン5. 3月11日 10:00

RINA「まりまり、来週の研修の準備進んでる?」

まりまり「はい。任せてください。今度はアンケートも余裕を持って作ったので完成済みです。しかも、受講後にウェブでアンケートを入力できるようにしたんですよ。これで集計の悩みも解消です!!!」

RINA「すごいじゃない。まりまりが作ったの?」

まりまり「まっさかー。『テキトウなアンケートシートをくれたなー』ってYUMO先輩に文句を言ったら、『お詫びに何でもするから』っていうから作ってもらいました。」

RINA「え。激務のYUMO先輩に作る時間なんてないはずだけど。」

まりまり「実際には、フラフラしていたプログラマーのSekiさんを捕まえて作らせたようですよ。というか、Sekiさんが新人研修のときに作ったモノがあったとか。」

RINA「ところで、今度の研修はなんだっけ?」

まりまり「『猫の抽象化と、ドラえもんのモデリング』です。」3

RINA「そうそう。研修のアンケート結果を良くする秘策があるけど聞きたい?」

まりまり「そんなのあるんですかー。もちろん知りたいです!」

RINA「それは、受講生との会話よ。私は『話しかけ率』を毎回取っているわ。休憩時間や演習時間に参加者の何人と5分以上おしゃべりしたか。20名中16名なら話かけ率は80%よ。」

まりまり「私、講師のプレゼンだけでヘトヘトですぅ。」

RINA「そうよね。もう少し慣れてきたら60%を目指すといいわよ。」

まりまり「はーい。RINA先輩の指導には終わりがないですね。」

RINA(私も、『あさこ先輩の指導には終わりがない』って嘆いていたけど、最近は指導がなくなったことがさびしいわ。)

おしまい

  1. まりまりは、めんどくさいのが大きらいである。
     
    RINA「元気のない先輩に向かって冷たいんだからー。」 ぶー。(○`ε´○)

  2. 『通りもん』とは、博多にある明月堂のお饅頭で、モンドセレクション金賞を17年連続受賞している銘菓である。なお、2007年以降は特別金賞を連続して受賞している。

  3. 本当はこちらの話も書く予定でしたが長くなったので書きません。

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