「別の方針も試してみたい。でも、ここまでの相談は残しておきたい」
AIエージェントと相談していると、こんな場面が出てきます。今の会話をそのまま書き換えるのは少し怖い。でも、最初から説明し直すのも大変です。
今回使うのは、Codex CLIの codex fork --last だけです。
これを使うと、直近の会話をもとに 別の会話へ枝分かれ できます。元の会話を残したまま別案を試せるので、試行錯誤の心理的な重さが少し下がるんですよね。
この記事のゴールはひとつです。
練習用の会話を分岐し、分岐先が元の会話の「合言葉」を答えられたら成功
10分ほどで試せるよう、MacまたはLinux向けの最小手順に絞ります。
codex fork --lastとは
まず言葉をゆっくり整理しましょう。
- AIエージェント: 質問へ答えるだけでなく、目的に合わせてファイルを読んだり、コマンドを実行したりしながら作業を進めるAIです。
- CLI: Command Line Interfaceの略で、ターミナルへ文字を打って操作する方式です。
- ターミナル: パソコンへ文字のコマンドで指示を出すアプリです。macOSなら「ターミナル」アプリが最初から入っています。
- セッション: Codexとのひとまとまりの会話です。質問と回答、その会話で共有した前提が含まれます。
- fork: ある会話を出発点に、別の会話へ枝分かれすることです。
codex fork --lastは、現在の作業フォルダに関係する直近の対話セッションを選び、その文脈を引き継いだ新しいセッションを始めるコマンドです。
木の枝を想像すると分かりやすいかもしれません。幹にあたる元の会話は残る。その途中から、新しい枝を1本伸ばす。そんな機能です。
なぜ便利なのか
たとえば、Codexと「READMEを簡潔にする方針」を相談していたとします。途中で「詳しい説明を残す案も見たい」と思ったとき、同じ会話で方針を反転させると、どの案が基準だったのか分かりにくくなることがあります。
forkなら、元の相談を残したまま別案へ進めます。
人間が決めるのは、どの会話を出発点にして、次は何を変えて試すか。Codexへ任せるのは、引き継いだ文脈を使って別案を考えること。役割が分かれるので、試行錯誤を整理しやすくなります。
公開済みのcodex resumeとは目的が違います。混同を防ぐため、ここだけ押さえてください。
| コマンド | 何が起きるか |
|---|---|
codex resume --last |
元の会話そのものを続ける |
codex fork --last |
元の会話から別の会話へ分岐する |
今回は下の行だけを使います。
事前準備
対象環境
この記事はMacまたはLinuxを対象にします。Windowsにも公式インストール手順はありますが、1本の手順を迷わず進めるため、今回は広げません。
また、Codexの利用にはサインインが必要です。画面表示や利用できるモデルは契約状態や更新で変わることがあるため、表示された案内に沿ってください。
Codex CLIをインストールする
すでにcodexを使える方は、この節を飛ばして大丈夫です。
通常のターミナルで、公式リポジトリに掲載されているインストールコマンドを実行します。
curl -fsSL https://chatgpt.com/codex/install.sh | sh
インストールできたか確認します。
codex --version
筆者の確認環境では、2026年9月5日時点で次の表示でした。
codex-cli 0.150.1
バージョン番号は更新で変わります。同じ数字でなくても、codex-cliと番号が表示されれば次へ進めます。
初回サインインを済ませる
通常のターミナルでCodexを起動します。
codex
初回はサインイン方法を選ぶ画面が表示されます。公式リポジトリでは「Sign in with ChatGPT」が案内されています。認証が終わったら、いったんCtrl+Cで終了して構いません。
10分ハンズオン
ここからは、既存のプロジェクトへ触れません。練習用の空フォルダだけを使います。
1. 練習用フォルダを作る
通常のターミナルで、次の3行を順に実行します。
mkdir -p ~/codex-fork-practice
cd ~/codex-fork-practice
pwd
最後に、次のような場所が表示されれば準備できています。
/Users/your-name/codex-fork-practice
your-nameの部分は人によって違います。表示を記事と同じに直す必要はありません。
2. 合言葉を含む最初の会話を作る
同じターミナルで、次を実行します。
codex "この会話の合言葉は『青いノート』です。合言葉を覚えたら、覚えましたとだけ答えてください。"
ここで使う「青いノート」はダミー文字列です。パスワード、APIキー、顧客名などの秘密情報は入力しないでください。
Codexが応答したら、このセッションを終了します。入力欄でCtrl+Cを押し、終了しない場合はもう一度押します。通常のターミナルへ戻り、コマンドを打てる状態になれば大丈夫です。
3. 直近の会話をforkする
まだ ~/codex-fork-practice にいる状態で、次を実行します。
codex fork --last "前の会話で決めた合言葉だけを答えてください。"
この1行では、2つのことをしています。
-
fork --lastで、このフォルダの直近セッションから新しい会話を分岐する - 末尾の文章を、新しい分岐先で最初の質問として渡す
4. 成功を確認する
分岐先のCodexが、次のように答えれば成功です。
青いノート
表現に句読点が加わることはあります。それでも合言葉が一致していれば、元の会話の文脈が分岐先へ引き継がれたと確認できます。
これで、AIエージェントをただ起動しただけではなく、会話を残したまま別の枝へ進む ところまで動かせました。
どんなときに使うか
最初は、設計案を2方向で試したいときに使うのが分かりやすいと思います。
たとえば元の会話で「READMEを短くする方針」を固めたあと、fork先では「初回利用者向けの説明を残す案」を頼む。元の方針を消さず、別案だけを育てられます。
一方で、同じ作業をそのまま続けたいだけならforkする必要はありません。その場合はcodex resume --lastで十分です。枝分かれが価値になる場面でだけ使う。これくらいの距離感がちょうどいいかなと思います。
つまずきポイント
1. codex: command not foundと出る
Codex CLIが未インストールか、インストール先へパスが通っていない可能性があります。まずターミナルを閉じて開き直し、次を確認します。
codex --version
まだ見つからない場合は、公式インストール手順をもう一度確認してください。
2. forkが使えない、未知のサブコマンドと表示される
CLIが古い可能性があります。まず現在のhelpを確認します。
codex fork --help
この記事で確認した0.150.1では、fork、--last、任意のPROMPTがhelpに表示されました。更新方法はインストール方式によって異なるため、公式Codex CLIページの最新案内に従ってください。
3. forkするセッションが見つからない
最初の会話を作ったフォルダと、forkを実行したフォルダが違う可能性があります。通常のターミナルで確認します。
pwd
~/codex-fork-practiceへ戻ってから、もう一度実行します。
cd ~/codex-fork-practice
codex fork --last "前の会話で決めた合言葉だけを答えてください。"
4. 別の会話が選ばれたように見える
--lastは直近のセッションを選ぶため、ハンズオンの途中で同じフォルダから別のCodex会話を始めると、対象が変わることがあります。練習中は別の会話を挟まず、最初の会話を終えた直後にforkしてください。
5. サインイン画面へ戻る
認証が完了していないか、認証の有効期限が切れた可能性があります。画面の案内に沿ってサインインし直してください。秘密のトークンを記事やチャットへ貼る必要はありません。
6. 合言葉以外の文章も返ってくる
AIの文章は毎回まったく同じになるとは限りません。「青いノート」が含まれていれば今回の成功条件は満たしています。完全一致の自動テストではなく、初心者が文脈継承を目で確かめる練習です。
7. Ctrl+Cを1回押しても終了しない
入力中の内容を消す動作になる場合があります。通常のターミナルへ戻らなければ、もう一度Ctrl+Cを押してください。終了後にシェルのプロンプトが表示されれば次へ進めます。
8. セッションが増えて分かりにくくなった
forkは新しい枝を増やす機能です。練習では1回だけ実行し、意味のある分岐に絞るのがおすすめです。増やすこと自体が目的になると、あとで探す時間が増えてしまいます。
限界と、使わなくてよい条件
codex forkは便利ですが、Gitのブランチやファイルのバックアップを置き換える機能ではありません。会話を分岐する機能であって、すべてのファイル状態を永続的に保証する仕組みではないからです。大事なコードの履歴は、引き続きGitなどで管理してください。
また、直近セッションの選択、認証、利用枠、CLIの版に影響されます。この記事ではcodex-cli 0.150.1でhelp構文まで実機確認しましたが、モデル応答を伴うforkの完走は筆者環境では動作未確認です。
そして、別案を試さず同じ相談を一本道で続ける人には、forkは増やさなくてよい操作です。無料でできる小さな判断は、「元を続けたいのか、元を残して別案へ進みたいのか」を先に決めること。前者ならresume、後者ならforkです。
まとめ
今日覚えるコマンドは、この1行だけです。
codex fork --last "前の会話で決めた合言葉だけを答えてください。"
AIエージェントを使い始めると、正解を一発で出すことより、元へ戻れること、別案を試せること のほうが大事になる場面があります。
元の会話を残しながら、小さく枝を伸ばす。まずは練習フォルダで「青いノート」を1回引き継げたら十分です。
参考リンク
公式情報の確認日: 2026年9月5日
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