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今回は最新の水中と水上の高速航行技術の話題です

この記事で扱う内容について

キャビテーション現象について

スーパーキャビテーションのメカニズム

スーパーキャビテーション魚雷

Supercavitationtorpedo

ロシアのシャドウフリート/影の船団に所属しているタンカーに

対して攻撃や拿捕が続いています。

露船0.jpg

そんな中で、ロシアの貨物船ウルサマヨールが沈没したのは

魚雷攻撃で撃沈されたとする報道がありました。

2024年12月23日にスペイン沖96kmのジブラルタル海峡で

ロ貨物船ウルサマヨールがNATOのいずれかの海軍の潜水艦が

魚雷攻撃で撃沈したとする報道がCNNなどから流れました。

ウルサマヨールはウスチルガからウラジオストクに向かって

いましたが、数次の爆発を起こした後で水深3km程に沈没しました。

護衛のロシアの軍艦イワングレンもその海域にいましたが無力でした。

撃沈されたロシア船の積み荷は北朝鮮向け原子炉 

この時の積み荷は、兵士派遣の見返りとして北朝鮮に送られた

VM4SG型原子炉だったと救助された船長も認めていたとされます。

ウルサマヨールの船長

「船内には潜水艦建造用の原子炉2基の部品は確かにあったが、

核燃料は搭載されていなかった」

ところで、ロシアの影の船団の一隻が撃沈されたというだけなら、

他にも船体に巨大な穴が開くほどの攻撃を受けたケースはありました。

特殊な魚雷が使用されたのか?

ところが、面白いことにスペイン捜査当局の調査によると、

「ウルサマヨールの機関部側面の船体に開いた50センチ四方の穴は

米Mk50魚雷や英スピアフィッシュ魚雷ではなくバラクーダ型と

呼ばれていたスーパーキャビテーション魚雷によって開けられた

ものだと考えられる」という発言です。

この魚雷はドイツが開発していましたが、配備は確認されていないようです。

また船体に取り付けられた磁気機雷の可能性を指摘する筋もあるので、

スーパーキャビテーション魚雷と決まったわけではありません。

ですが、このスペイン捜査当局の発言は非常に興味深い話でしょう。

Supercavitation スーパーキャビテーショとは、世界中で注目されている

最新の高速航行技術です。

そこでこの記事では、その秘密について原理から実際に開発された

兵器まで、わかりやすく紹介してありますので最後までご覧ください。

スーパーキャビテーション魚雷とは?

Supercavitation torpedo

バラクーダ.jpg

独版スーパーキャビテーション魚雷  #Barracuda バラクーダ

スーパーキャビテーション魚雷とは、常識を超えた流体力学的な現象を

逆手に取った最新鋭の高速航行技術です。

そこで、その仕組みを理解する前にキャビテーションについて

発生の原理見ていきましょう。

キャビテーションについて

キャビテーションとは気泡という意味です。

普段、水が沸騰する時に発生するボコボコと出る泡が気泡です。

冷たい海水の中でなぜ気泡が発生するのでしょうか?

スクリュー.jpg

一見すると異なる形に感じる、船に付いているプロペラスクリューと

航空機の翼ですが、断面形を見ると同じ構造になっています。

そして、迎角が付いたプロペラが回転すると周囲に流体、

この場合には海水などの水の流れがおきます。

そうすると、プロペラの背面側に回り込む流れは速くなり

下の正面側を通る流れは遅くなります。

これは航空機の翼の上面と下面の気流の流れと同様です。

ベルヌーイの定理によれば、流体は速度が上がれば上がるほど、

その場所の圧力が下がります。

流体に速度差ができると、速い流れの方が圧力が下がります

これにより航空機の場合には揚力L=ρUΓが発生します。

ただ、ここからが水中では事情が異なります。

流れの高速化に比例して背面側の圧力はどんどん下がります。

そして、この圧力降下につれて水の沸点も下がり続け

プロペラ周りの水の温度は飽和蒸気圧以下に達します。

すると、スプロペラ周りの海水が例えば20℃程度であったとしても

一瞬で沸騰して、気体し水蒸気へと変化します。

これが水中で沸騰してキャビテーションが発生するというメカニズム

なわけです。

時には船体まで壊すキャビテーション

キャビティ.jpg

キャビテーションで損傷したプロペラ

そしてキャビテーション・エロージョンと呼ばれる

プロペラスクリューの前縁から発生した気泡が、

プロペラ後縁や翼端の高圧域に曝されると崩壊して

何百気圧にも達する衝撃圧が発生してプロペラに加わります。

すると高力黄銅のような強度の高い金属でさえ表面にデコボコが

できてしまい、ひどいときには穴まで開いてしまいます。

また損傷しないまでも、キャビティ発生量が翼面の5割程度を

越えると、スラストブレークダウンと呼ばれるキャビテーションが

発生していない時と比べて、推力や効率が大幅に低下してしまい

プロペラが空転したような状態で、エンジンの燃料噴射量を増やしても

速度が上がらなくなる現象も起きます。

このようにキャビテーションは船体やプロペラを破壊したり、

効率が悪化するなど高速航行にとって厄介な問題だったわけです。

ですが その欠点を逆手にとって水中で200km/hを超える

超高速航行を目指したのがスーパーキャビテーションです。

それでは、この次世代の技術について見ていくことにします。

スーパーキャビテーションのメカニズム

魚雷仕組み.jpg

簡単に言ってしまうと意図的に発生させた気泡で全体を

包み込んでしまうという技術です。

キャビテーションの発生方法は幾つかの種類があります。

蒸気圧型キャビテーション

前節でみたようなキャビテーションの発生原理を応用して

高速航行を行い移動速度を高めることによって、流速による

圧力低下だけで自然に物体を覆う巨大な気泡を形成させます。

ガス放出型キャビテーション

潜水艇などのノーズ/先端部に取り付けられたキャビテーターと呼ばれる

発生装置からベンチレーションという技術で高圧ガスを噴出させて、

気泡によるエンベロープ/覆いを作り出して船体全体を包み込みます。

通気(ベンチレーション)型キャビテーション

船体の先端や内部から推進用のロケットの排気ガスや圧縮空気を

強制的に噴出させて、低速時やキャビテーションが不足する環境でも

強制的に気泡を成長させて物体を包み込みます。

ガス放出型との違いはキャビテー用の気体ではないという点です。

いずれの方式でも船体を気泡で包みこむことにより、水中の摩擦抵抗は

、なんと90パーセントも低減できるというデータもあります。

強力なエンジンとの組み合わせ

しかも、これほど抵抗が減った上に発動機にヘリ用の大馬力の

ターボファンエンジンや固体燃料ロケットまで使用しているので

最高100ノット、約185km/hもの速度を出せるわけです。

この技術により、空気よりはるかに重く抵抗の大きい水中において、

従来の限界を超えた超高速航走が可能となります。

なぜ抵抗が9割も減少するのか?

普通は、これでスーパーキャビテーションの説明を終えるところが

多いんですが、気泡で包まれているから速くなるというだけでは、

ちょっと納得できないという人もいるのではないでしょうか?

そこで、もう少し原理的な部分を押さえておきましょう。

流体力学を学ぶと逆に疑問となってくるのは水である以上、

海水も気泡も物性として大きく変化するわけではないです 

レイノルズ数Re = (ρ × v × L) / μは状態により変化しますが、 

粘性項のρは流体の密度は水なら約1000kg/m³、空気なら約1.2kg/m³

と定まっています。

つまり粘性抵抗は変わらないのに、どうしてそんなに

スーパーキャビテーションは抵抗が減るのか? という点です。

対象が艦船であれ魚雷であれ、船体周囲の巨大な水の塊である

バルクから見れば、マクロな状態の水のレイノルズ数(Reynolds number)

の数値そのものは変わりません。

それなのに、なぜ水の抵抗が最大90%も減るのでしょうか?

これは決して波動米などのようなトンデモ科学ではありません。

その秘密は、レイノルズ数が前提としている流体の種類を

、物体の表面のわずか数ミリの境界で変換する点にあります。

端的に言えばスーパーキャビテーションによって船体の周囲は

水中でなく、大気中にあるような状態となるわけです。

この魔法のような方法について、もう少し詳しく見ていきましょう。

まず「水」の粘性は、空気/大気比べて約50倍〜60倍です。

水の密度(重さ)にいたっては、空気の約800倍もあります。

つまり、空気から見ると水はべっとりと張り付く高い粘度を持っています。

この高い粘度ために、船などは大きな粘性抵抗をうけるので、

巨大なガスタービンエンジンを搭載したズムウォルト級でも

最大速度は30.3ノット 約56 km/h程度しか出せません。

それに対して、スーパーキャビテーションは気泡で包み込むことで

境界層(ガスによる泡の層)の内部は空気の中を進んでいくことになります。

それにより、抵抗が水中の1/60程度に減少してしまうわけです。

従がって、スーパーキャビテーションに包まれた船体は

水中ではなく、まるで大気中を飛んでいるのと同様になるわけです。

s魚雷.jpg

Ⓒ三菱重工業

言葉だけでは分かり難いスーパーキャビテーション技術ですが、

具体的に目に見えるイメージとして、三菱重工業航空宇宙事業本部などに

よる小型の魚雷型航走体のテストの様子があります

魚雷型航走体の全体が気泡に覆われているのがよく判ります。

この航走体は先端からキャビテーションを発生させて、固体ロケットモータで

推進するなど後述のシクヴァルと同様の方式で、約75%の抵抗低減効と

100m/s 360km/h 約195kn以上の速力が測定されています。

乱流も抑えられる

また、それほど高速で船体が水中を動けば普通なら乱れ成分が増加して

周囲の流体は乱流状態となっていきます

すると、摩擦抵抗が増大して速度を上げる邪魔になります。

ですが、このスーパーキャビテーションでは境界層により

船体は周りの水から剥離している、簡単に言えば水の中にできた

「空洞」の中を通り抜けているために、乱流を引き起こさずに

素早く航行していくことができます。

re空気.jpg

大気中でのSキャビテーション魚雷のレイノルズ数

ここで、水と空気の場合のスーパーキャビテーション魚雷の

レイノルズ数について計算してみましょう。

ここでは、流速が魚雷の速度400km/hなので v= 1440000(m/s)、

代表長 L は魚雷の全長8m、それに水の密度 ρ= 1000kg/m³、

粘性係数μ= 0.001kg/(m·s)と空気の密度ρ= 1.204kg/m³、 

空気の粘性係数μ= 0.000018 を代入した結果を示しておきます。

re水.jpg

水中でのSキャビテーション魚雷のレイノルズ数

比較してみると、明らかに空気中のレイノルズ数の方が

低い数値となっています

こうしてみると、艦船が航空機にも負けない速度を達成できる

まさに夢の技術と見えますが、実は大きな落とし穴がありました。

ロシアが開発した初のスーパーキャビテーション魚雷シクヴァルには 大きなノイズなどの致命的な欠陥がありました

ですが 世界各国でスーパーキャビテーション技術の更新が進められています。

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