はじめに
RettyでVPoEをやっています。最近エンジニアのキャリアパスについて相談を受けたり考えたりする機会が多かったので、整理を試みてみようとおもいます。
基本WEB系ベンチャーでの話になります。
35歳定年説
最近言及されることが減った35歳定年説ですが、実のところ一つの壁として存在していると思っています。
いろいろな要因がありますが、今回は知の高速道路と賃金カーブの関係にしぼります。
賃金カーブ
[引用元](https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/timeseries/html/g0405.html) 男性の賃金を見てみるとピークは40代後半から50代前半になっています。 これは役職の上限に達する年齢と役職定年が55前後にあることが理由です。もちろんエンジニアの賃金カーブが同じようになってるわけでは無いと思います。ちょっと調べたところあまり情報は無いようです。
まだ若い業界(特にWEB)なこともあり、ここはしょうがないところでしょう。
ここで他の国を見てみましょう。多くの国が30代にピークがあります。
スキルとそこから期待される成果をベースに賃金が決定され、雇用流動性が高くなるとこの傾向が強くなると思っています。
なぜなら、雇用流動性が高いと若い頃に低い賃金で働き続ける理由がなくなるため若手の給与は上がりやすくなります。
一方で個人で出せる成果の上限が30~40ぐらいに来ることになり、成果の出し方を変えていかなければそれ以上給与を上げることが難しくなってきます。
結果として、若いうちから知の高速道路を活用しスキルを伸ばして給与も上がっていくが30代で渋滞に引っかかりそこで成長も給与も止まることになります。
これは別に悪い話ではなく、能力を発揮して活躍できる期間が長くなったとも取れますし、生涯年収も上がる可能性が高いのではないでしょうか。
成長と成果
ではなにが問題か。新しい技術を習得し続けてエンジニアとしての幅を広げていくだけでは、早い段階で成果が頭打ちになってしまうことです。
もちろん技術を高め知識を獲得し成果をどこまでも大きくしていける人もいるとは思いますが、普通にやっているといろんな事ができる人 = 色んな仕事を頼める人になりがちです。
そうした場合あるところまでは重要な仕事も任せてもらえるようになっていきますが、それぞれの技術の高さが同じだとすると出せる成果が次第に頭打ちになっていきます。
それぞれの習熟度が同じとした場合、一つの言語しか書けない人より3つの言語をかける人のほうが成果は出しやすいですが、10と30ではそんなに差は出ないでしょう。
もちろん新しいことを学習しスキルを維持し続けるだけでも大変なことであり、少しづつ成長して生涯エンジニアをやり続ける選択肢も素晴らしいと思います。
一方で、より大きな(もしくは以前とは異なる)成果を出し続け評価されることを望むのであればやり方を考えなければなりません。
価値観を整理する
では何を軸にキャリアを考えていくとよいのか?
選択肢はたくさんあると思いますが、自分がどのような価値観なのかによって選択肢を考えていくとよいのではないかと思います。
価値観も様々ですが向上心が高く、上を目指したいエンジニアのキャリアとして、「得意なこと」「好きなこと」「お金」で考えてみます。
得意なこと: できるだけ自分が成果を出しやすいこと、周りから評価されやすいことを重視する
好きなこと: 自分がやりたいことの中から選択できることを重視する
お金: 報酬の最大化につながることを重視する
この中で優先順位をつけることで、自分がどのようなキャリアを選ぶと良さそうかが見えてきます。
例えば
- 好きなこ
- 得意なこと
- お金
この順番であれば、好きな事ができる環境を重視することになりそうです。
個人開発者や、好きなサービスを運営しているベンチャーなどを選択することが多そうです。
一方で個人も組織も成長と成果を厳しく求める代わりに給与が高い会社などは避けたほうがいいでしょう。
- お金
- 得意なこと
- 好きなこと
お金を最も重視するのであれば、年齢にもよりますがフリーランスやそもそも年収水準の高い業界を選ぶべきです。
その上で自分が得意 or 向いている中で最も年収の高い職種へのキャリアアップ or チェンジを狙うのが良さそうです。その他にも起業メンバーになって一発狙うのも選択肢としては入りそうです。
選択肢
キャリアパスも会社や業界により、様々なものがあると思いますが自社サービスを運営しているWEB系ベンチャーでよくあるパターンを上げてみます。
エンジニアとして一定以上のスキルを獲得したあとの話になります。
Specialist(TL,Architect)
スキルを伸ばしスペシャリストとしてステップアップしていくパターン。テックリードやアーキテクト、今だとAIやデータのスペシャリストなど。
技術で殴れる強いエンジニア。なりたい将来像No1。
なんだかんだセンスが必要なのと、会社によってそもそもどのレベルまでどれくらい必要かが変わったりする。
先のキャリアはCTOが多い。
EngineeringManager
良いチームを作り、維持することによって成果を出す方向にシフトしていくパターン。PeopleManager。
エンジニアを成長させ、パフォーマンスを最大化させるお仕事だがプレイングマネージャーになって苦しみがち。
大変そうだし、何をすればいいのかよくわかりにくいのでなりたい人は少なめ。
組織の理解が無いとそもそも評価されなかったりする。報われにくい側面もあるが、うまくいけば成果もスケールしやすい。
先のキャリアはVPoEが多い。
ProductManager
エンジニアリングが理解できるPdMへキャリアチェンジするパターン。
日本だとまだまだ事例は少ないが、プロダクトによってはエンジニアリングを理解していないと何をするべきかわからないこともあり今後は増えていきそう。
PeopleManagementは必ずしも含まれないはずだが、含まれがちな気がする。
先のキャリアは事業責任者が多い。
その他
新たな0 -> 1を繰り返すパターンもあると思います。新規事業の立ち上げばっかやる人とか。
CAとか多いイメージ。
小さいベンチャー渡り歩く人もいますがこれも持ち味を活かす方法だと思っています。
最近はCRE、コーポレイトエンジニアなどエンジニアリングをかけ合わせた職種も増えてきました。
チャレンジングな一方で、評価されにくい側面があるのでそこは覚悟が必要だと思います。
最後に
結局の所キャリアも価値観も人それぞれです。
こうしたほうが期待値が高いという話はできますが、実際にやってみなければ当然わかりません。
実際にやってみると実は向いていたり、好きになったりする話も多く聞きます。不確実性が高いものなので、キャリアチェンジのパターンも含めて小さくチャレンジできるならやってみて判断してみてはいかがでしょうか。