システム生成AIの最新動向と本質的な理解の重要性
はじめに
システム生成AI技術の進化は目覚ましく、新しいプロダクトが次々と登場しています。
弊社では4月から世界に先駆けて世界最大の2、3分で最大150ファイルを生成するシステム生成AI「Babel/Zoltraak」を開発しており、
その実装経験から解説を行いたいと思います。
* Babelリリース. アスキーさんの記事。
https://ascii.jp/elem/000/004/225/4225897/
https://ascii.jp/elem/000/004/218/4218870/
システム生成AIの国内外の動向
現在、システム生成AIのプロダクトベンダーは国内ではRinteさんと筆者(および一部の他の開発者)程度しかいないと思われます。
一方で、海外では次々と新しいプロダクトが登場し、大きな話題を呼んでいます。
今までのシステム生成AIの流れをまとめたいと思います:
- Zoltraakの登場(4月)
- Createが注目を集める(Difyとともに5月ごろ)
- Claude Artifactが登場し、UI生成として人気を集める(6月)
- 大規模システム生成AI Babelの開発着手(7月)
- Babelリリース. アスキーやYahooニュースに取り上げられる(8, 9月)
- UI生成AI v0やシステム生成AI GPT Engineerが登場し、多くの人が支持(9月)
- システム生成AI Boltの登場により、再び注目が移る(10月)
ここまで見るとかなり多くのプロダクトが登場していることがわかります。
また次から次に新しいプロダクトが登場し、その度に次々と興味が移って行っている状況でもあります。
「質量反比例の法則」とプロダクトの特性
システム生成AIプロダクトには、自分自身が提唱している「質量反比例の法則」が適用されます。
この法則は、「システム生成AIプロダクトにおいて、生成される成果物の量と質は反比例する」と定義されます。
具体的には以下のような特性を示します:
- 量が少ない(1枚のみのファイル生成):1枚ファイルの質が高い
- 例:Claude Artifact、v0
- 量が多い:1枚ファイルは60点まで、高度な技術力が必要
- 例:Bolt、Babel/Zoltraak
もしくは前者をUI生成AI、後者をシステム生成AIと呼び分けることもできます。
他にもCursorのようなAIエディタもありますが、別の機会に説明します。
この法則を理解することで、各プロダクトの特性と適した使用シーンが明確になります。
プロダクトの本質的理解と比喩による解説の重要性
UI生成AI、システム生成AIの理解を深めるために、絵を描くことに例えて説明しましょう。
まず、v0のようなツールは、美しいデザインを描くことができますが、これは全体構造を理解している人にとって最も効果的です。
想像してみてください。
デザイン教室に通っていない人が、驚くほど美しい「瞳」を描けたとしても、手足のバランスを取ることができないかもしれません。
結果として、少女漫画のような美しい瞳を持ちながら、手足の短いイケメン劇画風カービーが誕生してしまうのです。
デザイナーやCTOがv0を巧みに使いこなせるのは、「体全体」の構造を深く理解しているからなのです。
逆にBoltについて考えてみましょう。
このツールは全体のラフスケッチを行うのに非常に有効ですが、その裏で動作するviteフレームワークの理解が必要です。
これは、顔全体のラフスケッチを行うツールに例えることができます。
しかし、美しい表情を描くためには、「表情筋」(つまり、裏側の仕組み)を理解する必要があります。Boltを使いこなすには、viteというフレームワークを理解することが不可欠で、これはまさに「表情筋」を理解することに相当するのです。
しかし、ここで立ち止まって考えてみましょう。
これらのツールは確かに素晴らしいものですが、まだ「カービー」の域を出ていないのです。
Boltは顔全体のラフスケッチを、v0は瞳や眉、口の完成デザインを描くことができます。
しかし、それらはまだ「体全体」を描くことができません。
ここで、Zoltraakのようなツールの重要性が浮かび上がります。
Zoltraakは、漫画のストーリー全体を描き、登場人物の体全体のラフスケッチができるツールとして構想されています。
顔だけでなく、体全体のラフスケッチを描くものとしてZoltraakは非常に有効です。
このように、各プロダクトの特性を深く理解し、適材適所で活用することが、システム生成AIの真の力を引き出すために不可欠なのです。
背景にある技術や構造を理解し、継続的な価値を生み出すことが求められています。
それは、単に美しい瞳を描くだけでなく、全体のバランスが取れた絵を描くことができるアーティストになるようなものです。
全てのプロダクトは1つ1つ意味があります。
そして、それらはまるでさまざまな種類の自動車があるように無意味なツールなどありません。1つ1つ役割を理解して習熟することが必要です。
まとめ
システム生成AIの世界は急速に進化していますが、重要なのは各プロダクトの本質を理解し、適材適所で活用することです。背景にある技術や構造を理解し、継続的な価値を生み出すことが求められています。
開発者は、ユーザーの真の課題を理解し、それに適したソリューションを提供することに注力すべきです。一方、ユーザーは、各ツールの特性を理解し、自身のニーズに合わせて適切に選択・活用することが重要です。
システム生成AIの真の力を引き出すには、表面的な機能だけでなく、その裏側にある「表情筋」を理解し、全体像を把握する視点が不可欠です。今後も技術の進化に注目しつつ、本質的な理解を深めていくことが、この分野での成功の鍵となるでしょう。