動画広告のVTRは「最後まで見られた率」ではありません。この記事を読むと、VTRの分子と分母が媒体・フォーマットごとにどう変わるかを言い分けられるようになり、レポートに「半分以上が完視聴」と書いてしまう取り違えを防げます。数式と再現用のサンプル計算まで載せているので、自分のアカウントの数字をそのまま当てはめて確認できます。
VTRの分子と分母を確認する
VTR(View Through Rate)は、広告が表示された回数のうち、媒体が視聴されたと判定した回数の割合です。Google広告のヘルプはTrueView視聴率を次のように定義しています。
TrueView視聴率 = 視聴回数 ÷ インプレッション
分子に入るのは「再生が完了した回数」ではなく、媒体が定めた条件を満たした再生の回数です。 ここを確認しないかぎり、この比率が何の割合なのかは決まりません。
ちなみに同じヘルプは、この指標を「TrueView 視聴率(旧称「視聴完了率(VTR)」)」と表記しています。かつて完了率の名で呼ばれていたことが、いまの読み違えの出どころです。
同じYouTube広告でも、視聴と数える条件はフォーマットごとに違います。
| フォーマット | 「視聴」と数える条件 |
|---|---|
| スキップ可能なインストリーム | 30秒の視聴(30秒未満の広告は最後まで)、またはクリック等の操作 |
| YouTubeショート | 10秒の視聴(10秒未満の広告は最後まで)、またはボタンのクリック |
| インフィード動画 | サムネイルをクリックして動画再生ページへ移動、またはインラインで自動再生される動画を10秒以上視聴 |
| バンパー・スキップ不可インストリーム | TrueViewの視聴回数としてはカウントされない |
Meta広告には「VTR」という名前の列がありません。近い位置にあるのはThruPlay(15秒以上の再生。15秒以下の動画は最後まで再生された回数)で、率で見たい場合は自分で割り算をすることになります。Googleの30秒とMetaの15秒を、同じ「視聴」として横に並べることはできません。
完全視聴率と分けて記録する
完全視聴率は、最後まで再生された回数を分子に取る別の指標です。媒体の管理画面には再生の到達率を示す列(25%・50%・75%・100%)が用意されていて、100%の列から出るのがこちらにあたります。
分子が違うので、両者が一致することはまずありません。そして、どちらを見ているかで打ち手の向きが逆になります。
- VTRが高く、完全視聴率が低い … 入口は通っているのに後半で離脱している。素材を短く詰める
- VTRが低く、完全視聴率が高い … 届いた人には効いているのに入口で弾かれている。冒頭のカットを差し替える
再現用のサンプルデータで確かめます。45秒の商品紹介動画を、表示回数10,000回ぶん配信したとしましょう。30秒まで届いたのが3,000回、10秒まで届いたのが5,500回、最後まで届いたのが1,200回だったとします。
スキップ可能なインストリームのVTR : 3,000 ÷ 10,000 = 30%
YouTubeショートのVTR : 5,500 ÷ 10,000 = 55%
完全視聴率 : 1,200 ÷ 10,000 = 12%
素材も露出量もひとつなのに、並ぶ数字は30%・55%・12%になります。この中から「VTR 55%」だけを抜き出してレポートに書けば、実際には12%しか最後まで届いていない動画が、好調な素材として翌月の予算を持っていきます。
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VTRが落ちたときの切り分け手順
VTRが落ちたときは、素材に手を入れる前に、分子と分母のどちらが動いたかを切り分けます。上から順に確認してください。
- 配信フォーマットの構成比を確認する … ショートの比率が下がれば、素材が同じでもVTRは下がります。判定秒数の違いがそのまま比率に出るためです
- 表示回数だけが伸びていないか確認する … リーチ拡大の局面では分母が先に増えます。視聴回数が横ばいでも率だけ落ちます
- 素材の冒頭を差し替えていないか確認する … 1と2で説明がつかず、完全視聴率も同時に落ちている場合に、初めて素材側を疑います
1と2で説明がつく場合、素材には手を入れません。ここを飛ばして冒頭を差し替えると、配信構成が元に戻ったときに何が効いたのか分からなくなります。
分母を揃えれば媒体間の比較が成立するわけでもありません。揃うのは計算の形だけで、視聴と判定する秒数と、配信面そのものの性質は残ったままです。媒体横断のVTRは順位づけではなく、同一媒体・同一フォーマット内の時系列変化として扱うほうが安全です。
まとめ
- VTRは「視聴回数 ÷ インプレッション」であり、分子は媒体が定めた条件を満たした再生の回数。完了数ではない
- 判定条件はフォーマットごとに違う(YouTubeのインストリームは30秒、ショートは10秒)。Metaには同名の列がなく、近いのはThruPlay(15秒)
- VTRが落ちたら、フォーマット構成比 → 表示回数の増減 → 素材、の順で切り分ける。最初の2つで説明がつくなら素材は触らない
よくある質問
VTRと完全視聴率はどちらを見ればいいですか?
入口の反応を見たいときはVTR、最後まで届いているかを見たいときは完全視聴率です。VTRは媒体が定めた秒数(YouTubeのスキップ可能なインストリームなら30秒、ショートなら10秒)に届いた回数の割合で、完全視聴率は最後まで再生された回数の割合です。素材の冒頭を直すか、尺そのものを詰めるかの判断が変わるため、片方だけを見て決めないほうが安全です。
VTRの目安は何%ですか?
媒体とフォーマットで基準が変わるため、横断で使える目安の数字はありません。同じ動画でも、30秒を視聴と数えるインストリームと10秒で数えるショートでは率が大きく変わります。目安を持ちたい場合は、他社の平均値ではなく、自分のアカウントの同一フォーマット・同一配信面での過去3か月の中央値を基準にしてください。
Meta広告のVTRはどこで見られますか?
Meta広告の管理画面に「VTR」という名前の列はありません。近い指標はThruPlayで、15秒以上再生された回数(15秒以下の動画は最後まで再生された回数)を示します。率で見たい場合は、ThruPlayをインプレッションで割って自分で計算することになります。この計算値をGoogleのTrueView視聴率と並べても、視聴と判定する秒数が違うため優劣の比較にはなりません。
VTRが下がったら素材を差し替えるべきですか?
差し替える前に、配信フォーマットの構成比と表示回数の増減を確認してください。ショート配信の比率が下がったときや、リーチ拡大で表示回数だけが先に増えたときにも、素材を変えていないのにVTRは下がります。この2つで説明がつかず、かつ完全視聴率も同時に落ちている場合に、冒頭の差し替えを検討する順番になります。
図解・表つきの完全版はこちら:広告のVTRとは|「最後まで見られた率」ではない理由と、完全視聴率との使い分け
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