GitHub社はMicrosoft社に買収された
元々VSCode(Microsoft社製)とAtom(GitHub社製)は競合関係にあるエディタでした。しかし、2018年にGitHub社がMicrosoft社に買収されたことで、両者ともにMicrosoft社が維持管理を行うことになりました。
当時は「AtomはVSCodeに吸収されて消滅するのではないか」との憶測も出回りましたが、次期CEO(当時)が否定しています。
しかし、VSCodeとAtomの間には差がついてしまっているのも事実です。
VSCodeに比べて開発速度が遅い問題
2021年1月1日から12月1日までに公式リポジトリ上で開かれ、マージされたプルリクエストの数を、VSCodeとAtomの間で比較してみます。
https://github.com/atom/atom/pulls?q=updated%3A%3E%3D2021-01-01+-author%3Aapp%2Fdependabot+is%3Amerged
https://github.com/microsoft/vscode/pulls?q=updated%3A%3E%3D2021-01-01+-author%3Aapp%2Fdependabot+is%3Amerged
記事執筆時点では、Atomが238件、VSCodeが1889件と、VSCodeに大差を付けられてしまっています。
また、これは筆者の体感ですが、GitHubにissueを上げた時の対応速度も遅い気がします。
GitHub Copilotが来ない問題
GitHub CopilotはVSCode、Neovim、JetBrainsIDEでサポートされているものの、Atomのサポートはありません。
そもそもAtomはGitHub社のものだったので、GitHubのサービスが真っ先に導入されてしかるべきだと思うのですが…
パッケージのメンテナンスが終了している問題
例えば、私が愛用しているatom-runnerパッケージ(8万DL)は5年前に更新が止まっています。Go言語向けのコード補完などを実装したIDEパッケージであるide-goパッケージ(7万DL)は2年前に更新が止まっています。他にも、更新が止まっているパッケージはそこそこの頻度で見かけます。
上で紹介した2つはそれぞれ代替パッケージは出ているのですが、ユーザーが十分移行しているかというと不完全だと思います。
Atom自体の更新が緩やかなので、パッケージが今すぐ使えなくなるといった事態には陥っていませんが、コミュニティの規模が縮小しているのを感じます。
まだCoffee Script使ってる問題
▲Atomのコードに含まれている言語の割合(githubより)
Atomの内部コードにはまだCoffee Scriptを使っている箇所があります。
TypeScriptで開発されているVSCodeとは対照的です。
このように、Atomを取り巻く状況はあまり良いとは言えない状況です。しかし、AtomはOSSなので、有志によって継続的な更新を行おうという取り組みがあります。それが、次に紹介するAtom Communityです。
Atom Communityの誕生
Atom公式チームとは別に、Atom周りの開発を行うコミュニティが誕生しています。その名もAtom Communityです。
Atom Communityでは、
- Facebookが放棄したatom-ide-uiパッケージの更新の引き継ぎ
- リポジトリを更新が終了しそうなパッケージの管理をAtom Communityで引き受けることで、主要パッケージの更新停止を防ぐ
- Atom本体のForkを作成し、Community版として維持
といった活動が行われています。
Atom Communityからリリースされているパッケージは、TypeScriptでの開発やCIによるテスト、リリースなどが行われており、これからAtomパッケージを開発しようとしている方にとっては参考になると思います。
まとめ
- AtomはVSCodeに押され気味
- 開発は続いている
- コミュニティ主導でAtom周りのエコシステムを維持管理していこうというプロジェクトもある
Vim対Emacsの話題はTwitterでよく見かけますが、Atom対VSCodeの話はめったに聞かなくなりました。みんなもっとAtomで盛り上がりましょう。