はじめに
約1年前、Google Agentspace(当時GA直後)について以下の記事を投稿しました。
あれから1年経ち、AgentspaceはGemini Enterpriseという形に名前を変え、機能も大きく進化し、一つの統合プラットフォームになりました。
本記事では、
- この1年の変遷を年表で整理する
- 昨年紹介した機能が今どうなっているかをBefore/Afterで振り返る
- 2026年8月時点の最新機能を紹介する
という3本立てで、Gemini Enterpriseの1年の変化をまとめてみます。
本記事の内容は執筆時点(2026年8月)の情報です。
仕様は今後も変更される可能性があるため、最新情報は都度公式ドキュメントをご確認ください。
1. 年表で振り返るAgentspace → Gemini Enterpriseの1年
| 時期 | できごと |
|---|---|
| 2024年12月 | Google AgentspaceとしてEarly Access提供開始 |
| 2025年7月31日 | Agentspace 一般提供(GA) |
| 2025年10月10日 | Agentspace → Gemini Enterprise に改称・再発表 |
| 2026年4月22日〜25日(Google Cloud Next '26) | Agent Platform/Enterprise App/for Customer Experienceの3本柱体制に再編。Agent Designer V2、Canvas、Long-running Agents、Unified Inboxなど大型アップデート |
| 2026年6月〜8月 | Gemini 3.5/3.6/3.7 Flash GA、Model Armor GA、パートナーコネクタ拡充など継続的なアップデート |
| 2026年8月20日 | AntigravityがGemini Enterpriseの対象サブスクリプションに搭載 |
改称そのものより、2026年4月のNext '26でのリブランド+大型アップデートが実質的な転換点だったと言えそうです。
2. 「1アプリ」から「3本柱のプラットフォーム」へ
昨年紹介したAgentspaceは、検索・要約・エージェント利用ができる単体のSaaSアプリという位置づけでした。
現在のGemini Enterpriseは、公式ドキュメントで以下のように整理されています。1
- Agent Platform:エージェントの構築・テスト・ガバナンスを行う開発基盤(旧Vertex AI)
- Enterprise App:Agent Galleryを通じて従業員にエージェントを届けるフロントエンド
- for Customer Experience:顧客向けにエージェントを提供する領域
つまり、昨年は「Agentspaceというアプリ1つ」だったものが、開発・配布・運用が分離された1つのプラットフォームとして再設計された、というのがこの1年間での最も大きい変化だと感じます。
3. あの機能は今どうなった?(Before / After)
昨年の記事で紹介した内容が、現在どう変わっているかを整理しました。
| 2025年8月時点 | 2026年8月時点 |
|---|---|
| ノーコードのAgent Designerでエージェント作成 | Agent Designer2は、チャット欄での自然言語指示に加え、Flowタブによるビジュアルなワークフロー編集、Scheduleタブでの定期実行設定、Previewタブでのテスト実行までを1つのキャンバスで行えるように進化 |
| DeepResearch・アイデア生成などの既存エージェントを個別に利用 | Agent Gallery3という1つのハブに統合。「Made by Google」「From your organization」「Your agents」「Marketplace」の4カテゴリで一覧・検索できる |
| Jira/OneDrive/Salesforce/Slackなどのデータソース接続 | 左記に加え、Google Cloud Marketplace経由でSAP・Workday・AdobeなどのパートナーエージェントもAgent Gallery内から直接申請・利用できるように拡張 |
| Agentspace Enterprise Plusライセンス(月額$45) | Standard/Plus/Pay-as-you-go/Frontlineなど複数エディションに整理4。エディションごとに使える機能が異なる体系に |
特に「エージェントを探す→使う→管理する」の導線がAgent Galleryに一本化された点は、実務上かなり体感が変わるポイントに思います。
4. この1年で「新しく生まれた」代表機能をピックアップ
昨年の記事には存在しなかった、この1年で新規に登場した機能を5つご紹介。
① Canvas
Googleドキュメント・スライドをGemini Enterprise内で共同作成・編集できるインタラクティブエディタ。Microsoft 365との相互運用性もあり、作成したファイルをOffice形式でエクスポート可能です。
② Long-running Agents(長時間稼働エージェント)
昨年試した「アイデア生成」エージェントは実行に約50分かかりましたが、これが正式な機能軸として整理され、承認フローやスケジュール実行を組み込んだ長時間タスクを前提とした設計になっています。Agent DesignerのScheduleタブで定期実行を組める点もその一環です。
③ Unified Inbox
エージェントの実行結果を「対応が必要」「エラー」「完了」の3カテゴリで管理者・利用者双方が確認できる受信トレイ機能。エージェントを"作って終わり"にしない運用面のアップデートです。
④ Data Insights Agent
BigQuery上のデータに対して、SQLの知識がなくても自然言語でインサイトを得られるエージェント。利用にはBigQueryデータへのIAM権限付与が必要です。
⑤ ガバナンス機能群(Model Armor / 監査ログ / Agent Identity 等)
プロンプトインジェクションや脱獄攻撃を検知するModel Armor、エージェントへの権限付与を行うAgent Identity、エージェントやMCPサーバーを一元管理するAgent Registry、すべてのやり取りを保護するAgent Gatewayなど、エンタープライズ運用に必要なガバナンス機能が体系的に整備されました。
なお、監査ログ自体はCloud Audit Logsとして以前から存在する仕組みであり、Gemini Enterprise向けの整備も継続的に進んでいるようです。
5. 2026年8月最新:Antigravity搭載
そして直近のアップデートとして大きいのが、コーディングエージェントAntigravityのGemini Enterprise対応です。
Google Cloudの認証情報でログインするだけで、Antigravity 2.0・Antigravity CLIなどをGemini Enterpriseのライセンス・セキュリティ境界の中で利用できるようになりました。
プロンプトやコードなどのエンタープライズデータはGoogle Cloudの利用規約のもとで保護され、Workforce Identity Federation(WIF)やApplication Default Credentials(ADC)にも対応しています。
6. ADKとの関係性は変わった?
昨年の記事では、AgentspaceにおけるAgent DesignerとADK(Agent Development Kit)を以下のように対比していました。
| 観点 | Agentspace(旧) | ADK |
|---|---|---|
| 立ち上げ速度 | ノーコードで素早く開始可能 | 設計やテストなど初期工数が増える |
| 学習コスト | UIベースのため学習負荷低め | 言語・フレームワークの学習が必要 |
| 制御 | 高度なガードレールや分岐設定は不可 | tool、callback等で厳密に制御可能 |
| 拡張性 | 特殊要件への拡張は難しい | 外部APIや既存システムなどへの統合が可能 |
この構図自体は今も大枠で変わっていませんが、この1年で両者の垣根がかなり低くなったのが実態です。
- Agent Platform上でADKエージェントをホストし、そのままGemini Enterpriseに登録できるようになった(Agent Runtime経由、GA)
- Agent Designerのローコード開発でも、複数ステップのエージェント同士を組み合わせる、ADKに近い制御ができるようになった
つまり「ノーコードはAgentspace、プロコードはADK」という単純な住み分けから、同じプラットフォーム上でノーコードとプロコードのエージェントを組み合わせて使うという考え方に変わってきています。
まとめ
1年前に書いた記事を読み返しながら整理してみると、Gemini Enterpriseは
- 単体の検索+エージェントSaaSから
- 開発・配布・運用が体系化された統合エージェントプラットフォーム
へと、想像していた以上に大きく進化していました。特に、
- Agent Platform/Enterprise App/for Customer Experienceの3本柱への再編
- Agent Galleryへのエージェント一元化とパートナーエコシステムの拡大
- Model Armorや監査ログなど、エンタープライズ運用に耐えるガバナンス機能の整備
- ADKとの垣根が低くなり、ノーコード×プロコードの併用が前提になってきたこと
の4点は、この1年を象徴する変化だと感じました。