はじめに
先月、AWS Summit Japan 2026が開催されました。例年同様、セッション動画が公開されています。
検索する際は、以下の資料ページに記載のコードを検索キーとして指定すると、楽に見つけられます。
その中で自分が気になったセッションを備忘録的にまとめました。
まとめ
AIM146 ランサム危機を転機にーアスクルが加速させた AI-DLC
- スピーカー
- 吉岡 晃 様
- アスクル株式会社 代表取締役社長CEO
- 吉岡 晃 様
- 内容
- ランサムウェア感染からの復旧と、それを機に導入したAIーDLCの効果
- ランサムウェア復旧までも道のり
- 侵害エリア、侵害無しエリア
- どのエリアが侵害されたか
- 一部オンプレ
- 物流システム:全物流センターがストップ
- 社内システム
- 一部SaaS
- お問い合わせ管理システム
- 一部オンプレ
- 侵害無し
- クラウドエリア
- 基幹業務システム
- フロントシステム
- その他システム
- クラウドエリア
- どのエリアが侵害されたか
- 当時の復旧への判断軸
- 01.被害の拡大防止
- お客様の仕事、事業、システムを止めてはいけない
- 02.安全かつ安心な再開
- 復旧、再開後に、もう一度使って安全なのか
- 03.一刻も早いサービス再開
- 01.被害の拡大防止
- いつ、何を判断したのか
- 発生4日目で進むべき道を確定
- 25.10.19 発生当日
- AM 発覚
- 対策本部設置(14時)
- 本部長をCEO
- 基本的な大方針
- 本当にGOするのか:サービス、順序、プレスリリースの中身
- 基本的な大方針
- 各部を設置、責任者を任命して権限移譲
- IT復旧部会
- 事業継続部会
- 本部長をCEO
- サービス停止(売上がゼロになる判断)
- ネットワーク遮断
- ご注文、出荷停止
- 透明性高い情報開示
- ランサムウェアであることを当日にプレスリリース
- ありのままに正直に、適宜発信
- 25.10.23
- 自力で再構築(侵害の範囲が特定できたので、判断できた)
- 攻撃者とは接触せず
- 企業倫理、再攻撃抑止
- AWSクラウドへの移行
- 攻撃者とは接触せず
- 自力で再構築(侵害の範囲が特定できたので、判断できた)
- AWSクラウドとAIで再構築
- クラウド移行:1週間
- AI活用で再構築:2週間
- 自力構築から全面復旧まで
- 新ネットワーク構築:28日後
- 物流拠点の全面復旧:108日後
- 全国に10か所の物流拠点で時間がかかった
- 理由
- サーバ、PCで7,000台以上:物理的な機器が存在
- 一つ一つ除染、更新
- これを1日で行う必要あり
- 一つ一つ除染、更新
- 拠点ごとにOSのバージョン等が異なる
- サーバ、PCで7,000台以上:物理的な機器が存在
- 学び
- 現場機器は詳細な仕様管理と継続的な更新が不可欠
- 今後のBCP対策として不可欠
- 現場機器は詳細な仕様管理と継続的な更新が不可欠
- 侵害エリア、侵害無しエリア
- AI-DLCへの挑戦
- 復旧作業と並行して、限られた人員で新たな価値創造
- AI-DLC(AI-Driven Development Life Cycle)で仮説->判断の速度が劇的に向上
- 人が目的と仮説を指示
- AI(kiro)が高速で 調査・生成・提案
- 課題発見・解決策設計・価値提供
- 人が判断し方向を決める
- 方針決定以外をAI主体で
- AI-DLC(AI-Driven Development Life Cycle)で仮説->判断の速度が劇的に向上
- 小さな事例から挑戦、事例づくり
- メルマガ、広告
- ビジネス側、エンジニア側も参加
- 小さな成功体験で、体感知を得られる
- 挑戦1:品揃えスピードを超速にする
- 課題
- 商品をつかさどる商品担当が、色々な関係者の窓口になり、色々なツールを使って管理している
- 人に暗黙知が集中、低スピード
- あるべき姿を設計
- データ、ツールを一元化して、その中で連携させる
- それをスクラッチで開発
- 商品担当は本来業務に注力
- AI-DLCで、ビジネスメンバーとエンジニアが一体で推進
- 一同に会し、その場でAIに壁打ち、フィードバック、即断即決
- エンジニア側のビジネス理解が深くなる
- 結果
- 開発期間:50%短縮
- 商品掲載スピード:2倍
- 課題
- 挑戦2:ナフサ機器による供給不安を緩和する
- 課題
- どんな商品が枯渇するのか
- どんなお客様へどれくらいの供給が必要になってくるのか
- 供給元に早めに調整可能
- 対応
- 方針決定もAI-DLCに任せる:需要分析から提案まで
- 従来の人出であれば2週間
- 需要分析、世界情勢分析、商品・お客様特定、提案資料作成
- 上記が直列で、各フェーズで要レビュー、手戻り、待ち時間
- AIで、3時間
- 各々が高速
- 各々が並列に実施
- AIの中で連携、レビュー
- 人間は、AI-DLCで構築したメカニズムと対話しただけ
- 従来の人出であれば2週間
- 方針決定もAI-DLCに任せる:需要分析から提案まで
- 結果
- 厚労省備蓄の医療グローブの対応
- シンナーの直接供給の対応
- 課題
- 学び:AI-DLCを成功させる4つ
- 目的目標を共有し覚悟を決める
- 何のために何をしようとするのか
- 本丸に行くのであれば、本丸を捨てる覚悟
- 全関係者を巻き込む
- ビジネス側とエンジニアが一体化して動く
- 重要案件ほど、エースを投入する
- 会社の本気度が周りに渡る
- 現場に権限と責任を委譲する
- 目的と目標、明確なビジョンを共有後、権限移譲でスピードが加速
- AI活用に十分な環境を整備する
- エンジニアが安心して開発できる環境
- それらに投資
- 目的目標を共有し覚悟を決める
- 復旧作業と並行して、限られた人員で新たな価値創造
- ランサムウェア復旧までも道のり
- ランサムウェア感染からの復旧と、それを機に導入したAIーDLCの効果
ANT325 LINEヤフーが挑む大規模 DWH 基盤のクラウド化の軌跡 / LINEヤフー株式会社
- スピーカー
- 田中 章宏 様
- LINEヤフー株式会社
- 田中 章宏 様
- 内容
- オンプレミスのデータウェアハウスで管理していたデータを、Amazon Redshiftに移行
- サイズ:3PB、ユーザ数:約3,000、クエリ/日:約7.25億
- CTOからの「新技術と比較しているか」の指摘がスタート
- 技術面、コスト面で比較評価
- PoCを1年半経て、決定
- PoC
- PoC クライテリア(技術検証項⽬)
- 機能要件や、一般的な非機能要件では差がでない
- 性能要件での検証に注力
- クラスタ別に、性能検証に使う代表クエリ群を選定
- クエリタイプ、クエリの複雑さ、データ量で分類して選定
- 必要なデータをすべて移行した状態で検証
- 機能要件や、一般的な非機能要件では差がでない
- 結果
- SELECTは早いが、大量行のインサートや特定の術語を含むクエリは極端に遅い
- クエリ書き替えで対処。書き替えコストも移行工数としてTCOへ加算
- SELECTは早いが、大量行のインサートや特定の術語を含むクエリは極端に遅い
- PoC クライテリア(技術検証項⽬)
- 移行
- アーキテクチャ
- 2つのVPC:Redshift用のVPC(豊富なIPアドレス空間)と、エンドポイント用のVPC
- クラスター間でdata sharing構成することで、データコピーなどが不要
- 性能課題
- 「負荷の高い時間帯に、高負荷のクエリのレスポンスが担保されるのか」
- 疑似的に再現して検証
- 当初想定の構成ではレスポンスが2倍以上に
- 疑似的に再現して検証
- 改善
- 許容できる条件を定義:「95%が現行以下」「平均応答時間が現行以下」
- Multi-AZと自動ワークロードマネジメントで性能向上
- Multi-AZ側にSecondaryクラスタがActiveで実行
- Primaryのキュー待ちが多くなると(可能なクエリのみ)Secondaryにルーティング
- Multi-AZ側にSecondaryクラスタがActiveで実行
- 最適な構成を模索
- クラウドサービスなのでリサイズして検証が容易
- ノード数と予算の兼ね合いを模索
- 「負荷の高い時間帯に、高負荷のクエリのレスポンスが担保されるのか」
- アーキテクチャ
- 恩恵
- 全体で高速化:26%
- クラスタ構築スピード向上:CloudFormation活用
- 物理メンテからの解放
- AWSエコシステム利用
- オンプレミスのデータウェアハウスで管理していたデータを、Amazon Redshiftに移行
IND215 三菱UFJ銀行のオントロジー×ナレッジグラフを活用した海外事務プロセスの効率化
- スピーカー
- 溝口 直樹 様
- 株式会社三菱UFJ銀行 執行役員 国際事務企画部長
- 溝口 直樹 様
- 内容
- オントロジーとナレッジグラフを活用して海外事務プロセスを効率化(標準化・集中化・自動化)
- 約30か国 3,000人超が、一日20万件の取引をシステムに記帳入力
- 送金業務が約8割
- 事務プロセスを標準化し、インドに集中化し、自動化していく
- 国ごとにQCDのバランスが大きくばらついている:事故発生率・事務経費・取引件数
- 各国の商慣習や規制等に対応してきた結果
- 国ごとにQCDのバランスが大きくばらついている:事故発生率・事務経費・取引件数
- 事務プロセスの標準化に着手
- 以前から行ってきたが、苦戦続き
- 事務標準化の難所
- 各拠点の固有手続きが膨大
- 本部作成の、抽象的な標準手続き(600ページ)
- 各国固有の、具体的な手続き(1拠点当たり数百~数千ページ)
- 方法や担当など、具体的なプロセスが規定
- 各国でプロセスが異なる / 同じであっても表現が揺れている
- 熟練した知見者のリソースに制限
- 以下作業を、従来は知見者の人海戦術で対応
- ①フローチャートを作成
- ②他拠点のフローチャートと比較
- ③関係者協議
- ④プローチャート修正
- AIで①、②、④を代替
- 以下作業を、従来は知見者の人海戦術で対応
- 各拠点の固有手続きが膨大
- AIフローチャートの難所
- プロトタイプの品質不芳
- 生成AIがプロンプト・手続きを誤って理解し、的外れや不正確なフローチャートが散見
- カラフルなだけのフローチャート、過度に単純化した短いフローチャート、複数人を一人と読み間違える
- 生成AIがプロンプト・手続きを誤って理解し、的外れや不正確なフローチャートが散見
- プロトタイプの品質不芳
- AWSからオントロジーとナレッジグラフの提案
- オントロジー
- 概念と関係性を、ノードとエッジで定義した、設計図
- 本部の標準手続きを表現
- 概念と関係性を、ノードとエッジで定義した、設計図
- ナレッジグラフ
- 実態と関係性を、ノードとエッジで定義した、実データ
- 上記のオントロジーを通して、各拠点の事務プロセスを表現
- グラフ化することで、AIで比較可能に
- 実態と関係性を、ノードとエッジで定義した、実データ
- オントロジー
- オントロジー・ナレッジグラフを構築する流れ
- 生成AIで本部標準手続きをトリプル(主語・述語・目的語)に分離
- 知見者がトリプルの分類を確認・修正
- 知見者がトリプルの欠落・不足を補充
- トリプル一覧からオントロジーを構成(AWSによる支援)
- 約2万件のトリプルから生成
- ナレッジグラフを構成する拠点固有手続きを選定
- ナレッジグラフを構築(AWSによる支援)
- 約30か国 3,000人超が、一日20万件の取引をシステムに記帳入力
- オントロジーとナレッジグラフを活用して海外事務プロセスを効率化(標準化・集中化・自動化)
MAM202 創業 100 年の酒屋カクヤスが挑む、生成 AI で実現するシステム革命
- スピーカー
- 石井 伸明 様
- 株式会社ひとまいる グループシステムサービス部 特命担当
- 石井 伸明 様
- 内容
- 業種変更に伴う、基幹システム刷新
- 酒類卸から物流業へ
- 課題
- 30年間動き続けたシステムは、建増しを重ねて膠着化
- VB.NET、Oracle初版
- 自社ではわからず、保守ベンダー依存
- 基幹システム
- 画面 2,200
- 誰も全数を把握していない
- テーブル 3,000
- 命名規則は時代ごとに揺れ
- 意味の重複が常態化
- ストアド 1,200
- 業務ロジックの大半がここに
- 検証環境が本番環境と異なる
- 本番環境
- 毎日稼働し、停止不可
- 30年分のバッチ
- DBダンプしても、意味が読めない
- 検証環境
- 外部連携は停止
- 部分的な検証のみ
- 保守ベンダーの検証環境頼み
- 自分たちで検証できない
- 本番環境
- 画面 2,200
- 30年間動き続けたシステムは、建増しを重ねて膠着化
- 取り組み
- ストアド
- AI駆動開発:AIにて、ストアドを解析
- Amazon Bedrockでロジック抽出
- 依存・呼び出し関係を図表化
- 「読めないコード」を読む手法を獲得
- 本番Oracleと、AWS上に再現したOracleとで 元新比較
- 業務駆動開発:AIの解読を現場の言葉に翻訳
- 営業・商品・店舗・物流・経理の各部門の協力のもと、業務フロー作成
- 業務フロー単位でストアドに意味を付け、要不要を判断
- AI駆動開発:AIにて、ストアドを解析
- 画面
- 画面の数は、業務の数ではない
- AIと現場とでそぎ落とし:2,200から800に
- 画面ではなく、業務として再定義
- 200の業務フローとして再設計
- 明確になった業務ロジックから、システム設計思想を定義
- 以前はクライアントが低スペックであったため、すべてDB側で計算
- 新設計思想
- 金銭計算とテーブル間移動は、ストアド
- データの登録・フラグの変更は、人が画面から実施
- ストアド
- 用いた技術
- Claude Code on Amazon Bedrock
- プロンプトの資産化
- セキュア環境下で生成AIを実行
- プロンプトを共有・蓄積・継承
- 個人技を組織知に変えていけた
- プロンプトの資産化
- Oracle on AWS
- 元新比較を高速で実施
- ストアドの挙動を本番と突き合わせ
- 解読用の足場として利用
- 元新比較を高速で実施
- Claude Code on Amazon Bedrock
- AI開発の感想
- AIの癖・限界と直面
- 自分たちでAIを動かす:外部知見より大事
- 「記憶」は設計対象:AIは「覚えている」前提は通用しない
- 「記憶」の補強:AIに思い出させる仕組みの構築
- ルールの外部化:ルールはファイルに記述し、AIに参照させる
- AI制御の確立
- AIに「作らせる」と「説明・検証」をセットに
- 何を参照して作ったのかを説明させる
- AIに役割と経歴を付与
- 思考の土台を定義
- 二段階プロンプト方式
- 業務要件から「”コード開発のプロンプト”を作るためのプロンプト」を作らせる
- AIに「作らせる」と「説明・検証」をセットに
- AIが解釈できる要件に整理
- 5W2Hの型を定義
- 依頼は本質的に、雑
- 依頼者は、困りごとを完全に言語化できないため、翻訳作業が必要
- 5W2Hで抜け漏れを機械的に発見
- 属人化を排除し、誰でも再現可能に
- 依頼は本質的に、雑
- 流れ
- INPUT:雑な依頼
- 構造化:5W2Hで構造化
- 空欄になったところが、依頼者に要確認
- OUTPUT:AIプロンプト
- 目的・機能・入出力・制約を含むプロンプトに翻訳
- 5W2Hの型を定義
- AIの癖・限界と直面
- 業種変更に伴う、基幹システム刷新
おわりに
今年は、昨年以上にAIがテーマのセッションが多い印象でした。
都合がつかず参加できなかったので、例年より長期間アーカイブを配信してくれていたので、一通り確認することが出来ました。
この記事がどなたかのお役に立てれば幸いです。