はじめに
ACCESS Advent Calendar 14日目です。
社名が「アクセス」なので、EPUB のアクセシビリティについての話をしようと思います。
今年5月、EPUB 3.3がW3C勧告(Recommendation)となりました。正式な仕様となる上でさまざまな変更点があるのですが、そのうちの一つがアクセシビリティ対応です。
EPUB 3.3では、アクセシビリティへの対応は「推奨」となっています。これは「必須」とするとこれまでのEPUBが仕様違反となってしまうためではあるものの、重要視されていることには変わりありません。
では、アクセシブルなEPUBとは何か? 簡単にではありますが考えてみたいと思います。
定義
EPUB 3.3のアクセシビリティはに関する要件は、同時に勧告となったEPUB Accesibility 1.1で定義されています。また同時に、 EPUBに埋め込むべきメタデータについても定められています。
要件
WCAG に準拠したコンテンツの作成
コンテンツはウェブコンテンツにおけるアクセシビリティのガイドラインであるWCAG(Web Content Accessibility Guidlines)への適合が求められています。WCAG2.0のレベルAへの適合が必須条件であり、最新版(現在はWCAG2.2)のレベルAAへの適合が強く推奨されています。EPUBはHTMLやSVGなどWebの技術で構成されているため、これを参照しよう、ということですね。
EPUBとしての要件
EPUB固有の要件としては、ページナビゲーション(目次)やテキストとオーディオの同期再生があげられます。これらは必ずしもなくても出版物やコンテンツとしては成立しますが、含める場合はEPUB仕様に沿った記述が求められます。
メタデータに記載
出版物としての情報を定義するOPFファイルに、どのアクセシビリティに対応しているかなどを表すためのメタデータを記載する必要があります。これによって、ユーザはアクセシビリティに対応している電子書籍を探すことができ、ま
ビューアもメタデータを読み取ることで、ユーザにアクセシビリティの機能を提供できるようになります。
未来へ
今年9月、芥川賞を受賞された市川さんは、読書バリアフリーの普及を訴えました。
紙という物理的なくびきから解き放たれた電子書籍は、紙の本では難しかった文字サイズの変換や分かち書きといった様々な方法を提供できるはずです。
また、フィーチャーフォンがケータイ小説を生み出し、スマートフォンがウェブトゥーンと呼ばれる縦スクロール漫画を生み出したように、本というコンテンツは媒体によって形を変えています。逆に言えば、ユーザが求める形の新しい本もまた、EPUBというフォーマットの中で実現できると私は考えています。
一方、それを実現するためには、コンテンツだけでなくビューア(リーディングシステム)の対応も必要です。今回はリーディングシステムに対する仕様も制定されましたが、どのビューアがどういった機能に対応しているかは分かりにくいのが現状です。
卵が先が鶏が先か、という話にもなりますが、物理本の再現が重視されてきたEPUBビューアはまだまだやれることがある、と考える次第です。
参考資料