システム開発にしてもWeb制作にしてもインフラ構築にしてもなんにしても一番初めに来るのがヒアリング。そして、失敗すると後々けっこう大変になるのもヒアリングの精度によるものです。
私は主にWebサイトのプランニングや上流工程の部分でのグランドデザインを行うことが多いですが、ヒアリングを行う中で気にしているポイントを5点記載します。新規顧客を想定した時のパターンを書きます。
1.顧客に関する情報をひたすら確認する。
これはもう当たり前ではありますが、顧客の企業情報をしっかり確認します。これをやることで顧客が話している内容でよくわからないという事が格段に減ります。それが下の項目です。
・企業の基本情報(所在地、従業員数、業界、事業など)
・どのような事業をしているか、またどの事業が中心となっているか
・企業理念や行動指針などの企業の考え方
・現状のWebサイトの状況
・顧客の業界における競合の調査
・顧客の業界の状況
・上場企業であればIR情報
・顧客の採用サイト(企業の考え方がわかりやすく掲載されている)
これらを広く浅くでも確認しておくとまず会話に困りません。事前に顧客の求めていることを知らなくてもほとんど会話に困りません。むしろこれがなかったら広い視点で顧客を理解できず、地獄のようなヒアリング時間になることもあります。
2.疑問点や不明点は持ち帰らない
顧客が考えていることは、往々にしてざっくりしてますよね。「え?それで終わり?」みたいなことも当然あります。そうするともうこちらから聞かないと話にならないわけです。そこで登場するのが、1で調べた内容です。
そこから出てくる質問としては、
・他社ではこんな風に展開していますが、御社ではそのようなことはお考えではないですか?
・他社ではこのような情報の優先順位を取っていますが、同じようにはなりますか?
・このような業界だとデータをしては、〇〇のような流れで処理されるかと思いますがいかがですか?
・このシステムは御社の組織のどの範囲で使われるものですか?
などなど
事前情報があれば、その時の話に合わせていくつか自動的に気になることが出てくるようになります。当然経験値も必要になりますが、経験値は先輩や社内の有識者に事前に確認しておくといいでしょう。
3.聞くだけでなく議論をする
ヒアリングは、顧客との接点の中で初めて膝を付け合わせて具体的な会話ができる場です。せっかくのその場で話を聞いて「うんうん、なるほど。わかりました。検討します!」って帰ってくるのはもったいなさすぎます。そして、一番ダメなパターンである「あの人たち本当にわかったのかな」という事を顧客に感じられることです。
議論というと大げさかもしれませんが、意識するのは「こちらの見解を確認する」という事です。
デザイン一つとっても「かっこいい」の選択肢は無数にありますし、システム構築にしても「使いやすい」はいくつもあります。これらの1つの単語をいかに明確にしていくかがポイントで、手を変え品を変えこちらからボールを投げて、バンバン打ってもらいます。投げては打ってそれを拾ってまた投げての繰り返し。
そうするとほとんどの確率で、こんな言葉が出てきます。
「いや、そうじゃなくてこう」
「そう、そんな感じ」
「いや、うちの社内ではこういう事があってここには気を付けてほしい」
「実はこんな事情があってこの部分の調整は時間がかかりそう」
こうなってくると要件の粒度やスケジュールで気にしなければならないこと、社内の政治上気にしなければならないことなど、様々なことが炙り出されてきます。そうすると1回の打合せの重みが格段に変わってきます。
4.目的を明確化し、「どんな状態になる」のがいいことなのかを知る
受託開発の場合には、ものを作って終わりではありません。その先には必ず使う人や見る人が存在して、その人がどのような動きをすること、またその動きによってどんな状態になるかという事が本来の目的のはずです。
ほとんどの場合は「〇〇を改善したいのでこのシステムを作りたい」とか「こんなことをしたいからサイトを新しくしたい」など、モノを使ってこうしたいという話で持ってこられます。
では、改善した先に何があるのか、やりたいことをやった先に何があるのか。
そこが見えなければ、そもそも顧客が話しているやりたいことが本当に正しことなのかわからないですよね。
私たちの目的は、「顧客の作りたいものを作る」のではなく、私たちが作ったもので顧客の事業に何かしらの形でコミットする事です。
そう考えると目の前にある作るモノの先に顧客が成功と思う状態がどのような状態なのかを知らないと正しい判断はできませんよね。なぜならITのプロはお客様ではなく私たちなのですから。
5.見えるようにメモを書く、手書きでイメージを共有する
打合せの中で会話だけしていてもなかなか思考というものはまとまってくれません。
なので、極力目に見える形で共有していくことが大切です。
1~4の工程を進めていくと何かしらの形が見えてきますが、視覚的に見ていかないと人の頭では情報処理がしきれません。(天才は除外)
私がよくやるのが、内容をテキストで残し、頭で浮かんできたフローやデザインイメージを手書きで書いたり、PowerPointやExcelで図にしたりして、こんな感じでイメージしてますっていうのを共有します。
ここまでくると最終段階ですが、またこれを元にあーでもないこーでもないと話をしてきます。
これらをやっていくとA4のよくわからん紙切れ1枚のRFPから始まったヒアリングから提案書の概要が出来て、7合目から登山をしていくような形で次のアクションを進めることが出来るようになります。
ここまで5つのポイントについて記載しましたが、このラインまでくるとお客様としてはめちゃくちゃちゃんと考えてくれて、アドバイスもくれて「ちゃんとやってくれそう!」というイメージを持ってもらうことが出来、信頼貯金を獲得することが出来ます。もしかしたらこれが一番の収穫かもしれません。
という事で色々と書いてきましたが、正直すべての顧客でこれが成功するわけではありません。
しかしながらこれをやることでコンペの勝率や細かい粒度での提案を作ることが出来るのは間違いありません。(経験上)
とにかく、やれる事はしっかりやろうという事ですね。
どなたかの参考になれば幸いです。
それではまた。