はじめに
金属組織は、金属の断面を平らに鏡面研磨してから、研磨面を薄い酸などの腐食液に適当な時間浸してわずかに溶かした後、水洗・乾燥して顕微鏡で観察すると見られます。金属組織は材料の強度や耐食性に関係し、熱履歴によって変化することが知られています。特に、熱処理を行う鉄鋼材料においては、同じ鋼種でも様々な金属組織が見られます。このことを利用して、鉄鋼材料で作られた部品が破損したときに金属組織を観察して、熱処理を含めた素材の良否を判定することがあります。しかし、金属組織の判定には経験が必要です。今回は、経験を補う方法として、機械学習アプリTeachableMachineを使って金属組織を判定してみます。
やり方
前回の機械学習を使った破断面の画像分類と同様です。
学習に用いたデータは
Austenite(オーステナイト)
Ferrite(フェライト)
Ferrite_Perlite(フェライト+パーライト)
Martensite(マルテンサイト)
Perlite(パーライト)
各30枚です。
図1 学習に用いたデータ
Teachable Machineによる学習
上記画像ファイルをTeachable Machineに読み込み、学習を行います。わずかな時間で学習が終了します。
図2 Teachable Machineによる学習
作成したモデル
作成したモデルのURLは次のとおりです。
また、このモデルをダウンロードして、サンプルプログラムやサンプル画像と一緒に以下に格納しております。
サンプルプログラムの実行については、以下の記事を参考にしてください。
サンプルプログラムの動作環境
- Windows11
- VSC 1.7.3.1
- Python 3.8.10
- numpy 1.20.0
- keras 2.11.0
- pillow 9.3.0
★使用結果について当方は責任は負いません。
終わりに
実務ではさらに細かい判定が必要になると思います。そういった場合は、それに応じた組織画像を用意してモデルを作成することになります。その場合、例えば以下のサイトが参考になると思います。
- 斎藤, ウェブ上での鋼の結晶粒度の評価, 新潟県工業技術総合研究所サイト, http://www.iri.pref.niigata.jp/topics/R3/3kin8.html
- 斎藤, ディープラーニングによるステンレス鋼の鋭敏化組織の認識, 新潟県工業技術総合研究所サイト,
http://www.iri.pref.niigata.jp/topics/R2/2kin5.html