Agile Studio見学に行ってきました!
目次
- はじめに
- Agile Studio見学とは何か
- 当日の流れ
- 参加メンバーについて
- 見学レポート
- アジャイルQ&A——聞きたいことを全部ぶつけてみた
- まとめ——行ってよかった!
- Agile Studio(永和システムマネジメント社運営)の紹介
はじめに
先日、アジャイル開発の現場として名高い Agile Studio(運営:株式会社永和システムマネジメント)に見学させていただく機会がありました。
参加メンバーはアジャイル未経験者からスクラムマスター経験者まで様々。「実際の現場ってどうなってるんだろう?」という純粋な好奇心を胸に、福井まで行ってきました。
結論から言うと、想像の5倍、いや100倍くらいすごかったです。笑
この記事では見学で感じたこと・学んだことを、できるだけそのままお伝えしたいと思います。
Agile Studio見学とは何か
そもそも「Agile Studio見学」って何?という方のために簡単に説明します。
Agile Studioは、株式会社永和システムマネジメントが運営するアジャイル開発の専門スタジオです。自社プロダクト開発だけでなく、クライアント企業のアジャイル開発支援も行っており、日本のアジャイルコミュニティでは広く知られた存在です。
この見学プログラムは、アジャイル開発に興味を持つ企業やチームが実際の開発現場を訪問し、現場のエンジニアやスクラムマスターと直接対話できる機会として提供されています。
見学の内容はざっくり言うとこんな感じです。
- 永和システムマネジメント本社・Agile Studio Park FUKUI BASEの施設見学
- 実際に動いているプロジェクトの成果物(付箋・カンバンボードなど)の見学
- アジャイルに関するQ&Aセッション
「本に書いてあることじゃなくて、現場のリアルを知りたい」という方にとって、これ以上ない学びの場だと思います。実際に行ってみて、そのことを強く実感しました。
当日の流れ
永和システムマネジメント本社到着
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顔合わせ・自己紹介
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本社見学
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別拠点へ移動
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Agile Studio Park FUKUI BASE見学
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アジャイルQ&A
参加メンバーについて
アジャイル未経験のメンバーからスクラムマスター経験者まで、バックグラウンドがバラバラなメンバーで参加しました。それぞれが事前に「見学で知りたいこと」を整理していて、ビジネスサイドとの関係性、分析業務とアジャイルの相性、チームのコミュニケーションの実態あたりがみんな共通して気になっていたテーマでした。
見学レポート
到着——「なんか普通のオフィスビルじゃない!?」
当日は快晴!絶好の見学日和でした!!!
建物に近づいた瞬間、まず外観でちょっと驚きます。オフィスの前には落葉した大きな木が一本どっしりと立っており、その木を囲むように建物が左右に分かれている。。。
「なんかオシャレなデザインだな」というのが第一印象。この構造にはちゃんと理由があって、それが次のセクションで明らかになります。
顔合わせ——いきなりビルの建て方でアジャイルを体感する
顔合わせでは、永和システムマネジメントの代表・平鍋さんに会社の沿革や各部署の説明をしていただきました!
とにかく快活でエネルギッシュな方で、アジャイルや会社への愛が言葉の端々ににじみ出ていて、自然と引き込まれていく感じがありました。
場の雰囲気がほぐれるのがとにかく早かったです。
そこで出てきたのが本社ビルの建築にまつわるエピソード。
「最初から全部建てたわけじゃなくて、まず半分だけ建てたんです。会社が成長したらもう半分を作るという計画で。」
……え、ビルをアジャイルで建ててる!?
スモールスタートで段階的に育てるという考え方が、コードどころかオフィスビルにまで体現されていたとは。見学の出発点からいきなりやられた感じがしました笑。
本社見学——壁が全部ドキュメントだった
顔合わせの後、各階のオフィスフロアへ案内していただきました。入った瞬間、まず壁に目が釘付けになります。
壁一面にびっしり付箋が貼ってある。
ピンク・黄・青・緑と色とりどりの付箋が、整然とかつ生き生きとした密度で並んでいて、「あ、これが本物のアジャイルの現場だ」と直感的に思いました。
チームビルディングの痕跡
とあるプロジェクトでは、チーム発足時のワークの成果物が壁に残っていました!
なかでも「ドラッカー風エクササイズ」の付箋ボードが印象的で、「自分が思う自分への期待」と「他のメンバーが思うこの人への期待」が名前ごとにびっしり貼られていました。
また別のボードにはキックオフMTGのマインドマップ形式の自己紹介もあって、仕事・趣味・家族まで書かれていて温かみがすごかったです。チームを始める時に「人と人」を起点に置くカルチャーが、こういう成果物からもにじみ出ていました。
KPT振り返りボード
壁の別の一角にはKPT(Keep・Problem・Try)の振り返りボードも。
「1on1を月1回以上やってよかった」「職制定義が進まない」「マインドマップの目標がなくなることはない?」など、チームのリアルな声がそのまま残っていました。
振り返りが形骸化せず、日常の当たり前として機能しているのが伝わってきます。
天井に吊るされたバナーが面白い
さらに天井を見上げると、YOKOGAWA(横河レンタ・リース)などの大手企業のロゴが書かれたバナーがいくつも吊るされています。
各バナーの下がそれぞれのクライアントチームの開発エリアになっているとのこと。「誰と一緒に作り上げているのか」が物理空間として可視化されている仕掛け、面白いなと思いました!
廊下の地図——医療システムの導入先が地形で見える
廊下に出ると、福井の地形図が壁一面に大判で貼られていて、無数のピンが刺さっています。
これは、永和システムマネジメントが手がける医療システムの導入先をマッピングしたものだそうです。
平野から山間部まで、県全体にピンが広がっていて、「ここにも使ってくれている人がいる」というリアリティがありました。
数字の羅列じゃなくて地形で見せることで、自分たちの作ったプロダクトが色んな場所で「誰かの役に立っている」という社会的な意義が身近に感じられる仕掛けだなと感じました!
「さきのこと」——ビジネスモデルより先に、誰かの役に立つか
本社でもう一つ印象的だったのが、新規事業を担う「さきのこと」という部署の取り組みです。「使いやすい公共交通ってどんなだろう?」「病院の待ち時間が長くない?」といった社会の困りごとをイラストで描き起こした大判シートが壁に貼られていて、エンジニア自身が「自分が関わりたい!」と意思表示できる仕組みになっています。
そのプロダクト開発のスタンスが、個人的にはめちゃくちゃ刺さりました。
「最初はビジネスモデルを気にしない。まず誰かの役に立つかどうかを重視する。」
ともすると「これってビジネスとして成立する?」から議論を始めがちな自分たちにとって、すごく鮮やかな問い直しでした。
タウンデジボ——シンプルさの裏にある積み重ね
さきのことが生み出したプロダクトのひとつが「タウンデジボ」というスマートフォンアプリです。広報誌・自治会の連絡・ごみ収集日カレンダーなど、市や自治会からの情報をまとめて受け取れるアプリで、実際に画面を見せていただいたのですが、UIがびっくりするくらいシンプルなんです。
ユーザーのことを考えに考え抜いた結果たどり着いたシンプルさが、そのまま使いやすさに直結している感じ。
これ、実際に公民館まで足を運んで住民の声を直接聞き集めながら作り上げていったそうで、ユーザーインタビューを繰り返してプロダクトを育てるアジャイル開発の実践そのものでした。
壁に貼られていた実証実験のアンケート結果を見ると、4地区・1,039名のうち約89.9%が便利さを実感、93.7%が継続希望とのこと。
この数字、すごくないですか!?「誰かの役に立つか」を問い続けた結果が数字に出ていて、じんわりしました。
FUKUI BASE見学——ここで配信したい、と思った
そして、タクシーで移動してAgile Studio Park FUKUI BASEへ。
「Agile Studio Park FUKUI BASE」の文字が刻まれた正面の壁は、縦にリブが走る波打つパネル素材が使われていて、素材選びにもこだわりがあるとのこと。壁面のグリーンウォール(植栽)と合わさって、無機質になりがちなオフィス空間にちゃんと温かみが出ています。受付デスクは角のない曲線のフォルム。右手には大ぶりの観葉植物。全体的に「公園に来たような開放感」があります。
この空間のコンセプトが「ニュース番組のスタジオを意識した設計」だそうで、たしかに、正面の壁とグリーンウォール、左手の大型モニターというレイアウトはそのコンセプトそのものでした。チームが生み出したものを外に向けて発信していく場所、という意志が空間にまで込められているのが伝わってきます。
壁を見ていたら時間が溶けた
FUKUI BASEの壁も、本社に負けず劣らず付箋まみれでした笑。ただ、本社の「プロジェクトの痕跡」とはちょっと違う、チーム自体の対話や思考の積み重ねが中心に感じられました。
まず目に入ったのが「1年後・4年後・100年後」という時間軸で未来を描いたボード。「2026/7」「2029/7」「2125/9/19」という具体的な日付が大きく書かれていて、それぞれに付箋がびっしり。1年後はキャリアや業務の話、4年後はチームや事業の姿、100年後は「世界へ」「人類が」みたいなスケールの言葉まで出てきます。個人の目標からAI時代の世界観まで自由にスケールを行き来できるこのワーク、チームの余白の広さを感じました。
「アジャイル学び隊」「IPD中野」という名前のカンバンボードもありました。To Do・Doing・Doneに「POの判断力を習得したい」「スクラムとロードマップの関係性を知りたい」「資格取得」などが並んでいて、学びそのものをスクラムで管理しているんです。アジャイルのフレームを開発業務だけでなく、学習にも自然と使っているカルチャー、ここならではだなと思いました。
「わかっている/わかっていない」の2軸ボードも面白かったです。「Agile Studio ParkをアジャイルのFUKUI BASEにする」「ブランドを世に広める」が「わかっている」側にあり、「一番役立てること・想いってなんだろう」「ロールモデルがほしい」が「わかっていない」側に正直に書かれています。強みも不確実性もオープンにさらした上で前進するスタイル、これがアジャイルな思考だよなぁと。
そしてもっとも心を動かされたのが、壁の一角に貼られた一枚の大きな紙でした。
「ファンから仲間へ。私たちは歩くオアシス。仲間である アジャイルな世界を目指す 旅人に活力を与えにいこう!」
その下に「オアシスだと思った出来事(2025/4〜2025/12)」と題して、Agile Japan 2025への登壇、スクラムフェス三河・金沢への参加、リアル見学の実施、福井企業とのつながりなど、チームが実際に踏み出してきた一歩一歩が付箋で並んでいました。ビジョンと行動の軌跡が同じ紙に共存しているこのボード、とても胸に響きました!
本社でも付箋の文化に圧倒されましたが、FUKUI BASEではその質も量もさらに豊かで、「コミュニケーションが文化として根づくってこういうことか」と、実感を伴って理解できた時間でした。
アジャイルQ&A——聞きたいことを全部ぶつけてみた
見学後は、事前に集めた質問を優先度順に議論するQ&Aセッションへ。以下に各テーマと得られた知見をまとめます。
Q1. スプリント・レビューで数値の不確実性ってどう扱うの?
分析結果や数値の不確実性をスプリントやレビューの場でどう共有・合意形成しているか聞いてみました。
KPIはユーザーインタビューをもとに仮説として設定するのが基本とのこと。実績との乖離が出たとき、すぐKPIを見直すのではなく、まず「なぜ乖離したのか」を深掘りすることが先決だそうです。深掘りしても解消しない場合にはじめて、機能側の設計自体を見直す検討をする——その順序が大事というのは納得感がありました。
Q2. 小さいリリースとビジネスの粒度のギャップ、どう折り合いをつける?
「リリースを小さくすると開発期間が延びるし、一部実装でリリースするとビジネスサイドからは粒度が細かすぎると言われるし……」というあるある悩みをぶつけてみました。
MVPの基準は「ユーザーが直感的に価値を感じられる単位」が目安になるとのこと。ITリテラシーが高くない高齢者層がユーザーの場合は細かすぎるリリースがかえって混乱を招くこともあるので、リリース告知から実施まで2ヶ月程度の間隔を設けていたケースも紹介してもらいました。あと、既存サービスとの差別化ポイントはMVPとしての価値が高いので優先的にスコープに入れると良いという話も参考になりました。
Q3. Agile Studioとして、ブレないものって何ですか?
「アジャイルで日本の組織を元気にする」というビジョンが中心にあると教えていただきました。クレドのような言語化された行動規範は特に作っておらず、イベント開催や対外発表など「行動で示す」ことを重視しているとのこと。「言葉の定義は後からついてくるもの」という考え方がすごく印象に残りました。
あと、「ちゃんと権限委譲できている会社は人を大事にしている証」という話も刺さりました。人に考える機会・成長する機会を与えられているかどうかが、人を大切にしているかどうかの現れだと。「人が人のためにソフトウェアを作る」という姿勢はAI時代になっても変わらない——この言葉はその場にいた全員の心に残ったと思います。
Q4. AI時代、スクラムチームのコミュニケーションってどう変わっていく?
受託開発でもAIコーディングがメインになってきているけど、最低でもエンジニアは一人は残るだろうという見立てでした。人↔AIのコミュニケーションは「コンテキストの扱い方」が鍵になるけど、まだ模索中とのこと(ここは正直に「わからない」と言ってもらえたのが逆に信頼できる感じがしました)。
POの直下にAIエージェントで構成した仮想組織を置くケースも出てきているらしいですが、効率化だけ追求して本当にユーザー価値が出せているのか、という疑問もちゃんと持っているとのこと。「AIは既存プロダクトの亜種を作るのは得意だけど、新しいものを生み出すのはまだ人の方が強い」という見解も共有してもらいました。
Q5. レガシーシステムがあってもアジャイルってできるの?
できる、ただし工夫が要るという話でした。レガシー側がウォーターフォールで動いている場合は、そのWFを3〜4ヶ月単位に細かく刻むことで足並みを揃える方法を実践したそうです。次の改修範囲を先行して解析してブラックボックスを明らかにしておくこと、「開発チーム」と「レガシー解析チーム」の2チーム体制で進めることも有効とのことでした。
そして一番刺さった言葉がこれです。
「無理にアジャイルでやらなくても幸せになる道はある。」
アジャイルを目的化しない、という姿勢がこの一言に凝縮されていました。
Q6. 効率と品質ってトレードオフじゃないの?
まずリリース前にテスト計画を立ててテストするという基本はWFもアジャイルも変わらないとのこと。アジャイルではスプリント計画の中に結合テストも組み込むことが品質維持に効果的で、リリース単位を小さく保ちテストしやすいサイズにすることを意識しているそうです。
そしてこの言葉が印象的でした。
「効率と品質はトレードオフではない、というマインドセットが大事。」
アンチパターンとされるリリーススプリントについても、「なぜやる必要があるのかをチームで議論・合意できれば、それ自体がチームの学びになる」という考え方も紹介してもらいました。アンチパターンを避けることより、なぜアンチパターンなのかを理解することの方が大事、という視点は新鮮でした。
Q7. WFとアジャイル、どう使い分ければいいの?
判断で一番大事なのは「契約形態」と「顧客の理解度」だそうです。アジャイルへの誤った期待値を正してちゃんと合意できれば、受託でもアジャイルはできると。先を見通せるプロジェクトならWFで進めれば良いし、アジャイルを選ぶならPOが意思決定に使える時間を確保できるか(現実的には稼働の50%程度が理想)を事前に確認することが大事とのことでした。
POが開発の細かいところに口を出しすぎないよう調整することも大事、というのも実務的なアドバイスとして参考になりました。
まとめ——行ってよかった!
今回の見学、参加して本当によかったです。いくつか特に持ち帰れたものを書いておきます。
ビジョンが浸透すると文化になる。 「アジャイルで日本の組織を元気にする」というビジョンが、建物・空間・壁の付箋・プロダクトにまで一貫して体現されていました。手法の前に、何のためにやっているのかを共有することの大切さを改めて感じました。
MVPはユーザーが価値を感じられる単位で決める。 リリース粒度の悩みに対して、ユーザー目線のシンプルな基準を示してもらえたのは実践的でした。
「人が人のためにソフトウェアを作る」はAI時代も変わらない。 タウンデジボの話やQ3の会話を通じて、何度もこの軸に戻ってくる感じがありました。自分たちが何のために開発しているのかを忘れないようにしたいです。
WFかアジャイルかの前に、契約と信頼の話がある。 手法を選ぶ前の土台作りが大事というのは、すぐに現場で使える視点でした。
アジャイルを目的化しない。 「無理にアジャイルでやらなくても幸せになる道はある」——この言葉が今回の見学で一番響いた言葉かもしれません。
Agile Studio・永和システムマネジメントのみなさま、本当に貴重な時間をありがとうございました!
Agile Studio(永和システムマネジメント社運営)の紹介
今回見学させていただきましたAgile Studio Park、永和システムマネジメント様のホームページは下記となります!
アジャイル開発に興味がある方は是非問い合わせてみてください。
そして、その他アジャイルのイベントも実施しているようなので、connpassのイベントページも是非チェックしてください。















