Microsoft Copilot Studioで「トピック」を組めるようになった次の壁が、生成AI回答です。トピックは決まった対話フローを担当しますが、マニュアルやFAQのように言い方がバラバラな質問には、あらかじめ全経路を書くのが現実的ではありません。そこで使うのが、ナレッジソースを根拠にした生成AI回答です。
この記事では、Microsoft Learnの公式ドキュメント(Knowledge sources summary は 2026-08-04 更新)をもとに、生成AI回答とナレッジソースの関係、置き場所の違い、最初に確認したい設定を整理します。
結論:先に決めるのは「どこから答えさせるか」
| 決めること | 意味 | 最初の目安 |
|---|---|---|
| ナレッジソースの種類 | 公開サイト / アップロード文書 / SharePoint / Dataverse / コネクタ | 公開FAQならWeb、社内規程ならSharePointか文書 |
| 置く場所 | エージェント全体か、トピック内の生成AI回答ノードか | 全体は共通の根拠、ノードは特定の会話だけ |
| オーケストレーション | クラシックか生成か | 件数上限が変わる |
| 根拠のない回答 | Allow ungrounded responses のオン/オフ | 最初はオフで、根拠がない応答を止める |
最小の理解は次の図です。
ユーザーの質問
↓
該当トピックがある?
├─ ある → トピックのフローで答える
└─ ない → 生成AI回答(ナレッジソースを検索して要約)
↓
見つからない → Fallback システムトピック
生成AI回答は「何でも答える魔法」ではなく、設定したソースから検索し、要約して返す仕組みです。Microsoftはこれを RAG(Retrieval Augmented Generation)として説明しています。
生成AI回答はトピックの不足を補う
生成AI回答ノードの公式説明では、ユーザーの意図がどのトピックにも一致しないとき、生成AI回答で答えようとする、とあります。これがフォールバックとしての生成AI回答です。ここでも答えられない場合は、Fallbackシステムトピックへ進みます。
つまり設計の順番は次です。
- よくある定型の会話はトピックで書く
- 資料を読んで答える質問はナレッジソースに任せる
- どちらでも無理なら人へ渡す(Fallback)
全部を生成AI回答に寄せると、根拠の範囲が広がり、意図しない資料から答えやすくなります。逆にトピックだけだと、言い回しのゆらぎに弱くなります。役割を分けることが先です。
ナレッジソースは5系統から選ぶ
Knowledge sources summary では、生成AI回答と組み合わせる主なソースが次のように整理されています。
| 名前 | 内外 | 何をするか | 生成モードの件数 | 認証 |
|---|---|---|---|---|
| Public website | 外部 | Bingで指定サイトだけを検索 | 25サイト(クラシックは公開URL 4) | なし |
| Documents | 内部 | Dataverseへ上げた文書を検索 | 全文書(クラシックはストレージ上限) | なし |
| SharePoint | 内部 | SharePoint URLを GraphSearch | 25 URL(クラシックはノードあたり4) | 利用者の Microsoft Entra ID |
| Dataverse | 内部 | DataverseのテーブルをRAGで返す | 無制限(クラシックはソース2、各15テーブル) | 利用者の Microsoft Entra ID |
| Enterprise data using connectors | 内部 | Microsoft Searchで索引されたコネクタ | 無制限(クラシックはカスタムエージェントあたり2) | 利用者の Microsoft Entra ID |
ポイントは3つです。
- 公開WebはBing経由です。組織が所有するサイトを確認したうえで指定します。
- SharePoint / Dataverse / コネクタは、質問した人の権限で見えるものだけを返します。他人のフォルダは出ません。
- 生成オーケストレーションとクラシックでは上限が違います。 ソースを増やしすぎる前に、どちらの方式かを確認します。
生成オーケストレーションでは、ソースが25を超えると内部のGPTモデルで絞り込みます。アップロードしたファイルはこの25の検索上限には入りません。一方、カスタムデータや Bing Custom Search は生成オーケストレーションのエージェントレベルでは使えず、トピック内の生成AI回答ノードへ埋め込む必要があります。
エージェント全体とノードでは優先順位が違う
ナレッジは2か所に置けます。
| 場所 | 使い方 | 向き |
|---|---|---|
| Knowledge ページ(エージェントレベル) | エージェント全体の共通根拠 | FAQサイト、共通マニュアル |
| 生成AI回答ノード(トピックレベル) | その会話だけ追加・上書きする根拠 | 特定部門の規程、機密寄りの資料 |
公式の注意として、生成AI回答ノードで定義したソースは、エージェントレベルのソースより優先されます。エージェントレベルはフォールバックです。
ノード側には Search only selected sources があります。
- オフ(既定):エージェントに設定したソースをすべて検索する
- オン:そのノードで選んだソースだけを検索する。エージェントレベルへ自動では戻らない
「このトピックは承認済みの1サイトだけから答える」といった場合は、オンにして対象を絞ります。オフのままだと、関係ない共通ナレッジが混ざることがあります。
根拠のない回答を最初に止める
Generative AI 設定の Knowledge にある Allow ungrounded responses は、ソースやツールを使わず、モデルの一般知識だけで答えてよいかを決めます。生成オーケストレーションがオンである必要があります。
- オン:ソースがなくても一般知識で答える
- オフ:そのターンでソースもツールも使っていない応答を止め、Fallback を起動する
オフにしても、ソースから取った情報と一般知識を混ぜることはあり得ます。公式は「ソースもツールも使っていない応答を止める」と書いています。また、オフのときは本文中に出典引用がある回答だけを返す、という条件もあります。正しい内容でも引用が付かないと出さないことがあります。同じ質問をやり直すと出る、という間欠的な挙動も文書化されています。
社内向けの最初の設定としては、根拠のない回答をオフにして、出典が付くことと Fallback が動くことをテストするのが安全です。
実装チェックリスト
- 定型会話はトピック、資料参照はナレッジ、と役割を分ける
- 公開サイト / 文書 / SharePoint のどれが主ソースかを1つ決める
- オーケストレーション方式(生成 / クラシック)と件数上限を確認する
- 共通ソースは Knowledge ページ、特定ソースは生成AI回答ノードへ置く
- ノードで根拠を絞るなら Search only selected sources をオンにする
- Allow ungrounded responses をオフにして、出典なしの一般知識回答を止める
- Test pane で「トピックに乗る質問」「ナレッジで答える質問」「どちらでも無理な質問」の3種を試す
- SharePoint 等を使うなら、利用者認証と Files.Read.All / Sites.Read.All の委任権限を確認する
失敗パターン
公開サイトを指定せず、一般知識でFAQを答えさせる → 対策:所有サイトを Public website に追加し、ungrounded をオフにする。
エージェント全体に何でも載せる → 対策:部門固有の資料はトピックの生成AI回答ノードへ移し、Search only selected sources で限定する。
クラシックのままURLを5本以上足して効かない → 対策:方式ごとの上限(公開URLはクラシック4、生成は25)を先に見る。
SharePointを認証なしで使えると思っている → 対策:利用者の Entra ID 委任が必要。権限のない文書は返らない前提でテストユーザーを分ける。
出典が付かないので「ナレッジが壊れた」と判断する → 対策:ungrounded オフだと引用なし回答は抑止される。同じ質問の再試行と、出典が付くソースかを切り分ける。
生成AI回答に複雑な判定まで任せる → 対策:公式ガイダンスでは、RAGは事実のQ&Aや手順の要約向きで、長文の比較やコンプライアンス判定向きではない。判定が要る会話はトピックの Condition へ戻す。
参考リンク
- Knowledge sources summary - Microsoft Copilot Studio
- Add a generative answers node - Microsoft Copilot Studio
- Enhance AI responses with Retrieval Augmented Generation
- Add knowledge to an existing agent
この記事を書いた人✏️@YushiYamamoto
ITPRODX.com代表 / AIアーキテクト
Next.js / TypeScript / n8nを活用した自律型アーキテクチャ設計を専門としています。
日々の自動化の検証結果や、ビジネス側の視点(ROI等)に関するより深い考察は、以下の公式サイトおよびnoteで発信しています。
