2026年5月時点の前提
この記事を読む前に、以下の提供状況を把握しておいてください。
- Microsoft Foundry は現行ブランド名(旧称:Azure AI Foundry / Azure AI Studio)
- Foundry IQ は機能によって GA(一般提供)と preview が混在
- Work IQ MCP は preview 機能
- Work IQ MCP の検証には Microsoft 365 Copilot ライセンスが必要
本番導入を前提に検討している場合は、各機能の提供状況を公式ドキュメントで個別に確認することをお勧めします。
この記事は誰向けか
この記事は、Microsoft 365 や Azure を活用して、社内問い合わせ対応・技術文書検索・営業ナレッジ活用などの AI エージェント導入を検討している方向けです。
特に次のような疑問をお持ちの方に向けて、Foundry IQ と Copilot Studio の役割を整理します。
- 「Copilot Studio でエージェントを作れば十分なのか?」
- 「社内データへの接続や権限管理はどこで考えるのか?」
- 「PoC は動いたが、本番運用でどんな課題が出るのか?」
ツールの名前だけ追っても設計の全体像はつかみにくいので、まず役割の分担から押さえておきましょう。
はじめに
Microsoft の AI 関連サービスを調べ始めると、似たような名前が次々と登場します。
- Foundry?
- Foundry IQ?
- Copilot Studio?
- Work IQ?
「どれが何をするものなのか」が整理できないまま手を動かしても、設定画面の意味が分からず迷子になりがちです。この記事では用語の役割分担を先に押さえることで、導入検討の解像度を上げることを目的としています。
Microsoft Foundry ってそもそも何?
公式ページの説明はこうです。
ビジネス コンテキストを理解し、ビジネスに影響を及ぼす AI アプリとエージェントの構築、最適化、管理がかつてないほど簡単になりました。統合された相互運用可能な AI プラットフォームにより、開発者は迅速かつスマートに構築でき、組織は統合ポータルで組織全体のセキュリティとガバナンスを実現できます。
— Microsoft Foundry 公式ページ
平たく言えば、AI アプリやエージェントを作るための土台となるプラットフォームです。旧称の「Azure AI Studio」「Azure AI Foundry」から現在の「Microsoft Foundry」に整理されています。
Microsoft Foundry の主要構成(2026年5月時点)
公式ドキュメントに沿った名称で整理するとこうなります。
| コンポーネント | 役割 |
|---|---|
| Foundry Models | 利用できる AI モデル群 |
| Foundry Agent Service | エージェントの実行・接続の中心 |
| Foundry IQ | 知識基盤(マルチソース対応) |
| Foundry Tools | エージェントを拡張するツール群 |
| Foundry Control Plane | ガバナンス・監視 |
この中で、エージェントに「知識」を供給する役割を担っているのが Foundry IQ です。
Copilot Studio はエージェントを作る場所
Copilot Studio については、公式がシンプルに定義してくれています。
エージェントとエージェント フローを構築するためのグラフィカルでローコードなツール
— Copilot Studio 概要
要するに、コードをゴリゴリ書かなくても GUI でエージェントを組み立てられるツールです。
エージェントの中身
公式の定義によると、エージェントは以下の要素の組み合わせで動いています。
- 言語モデル
- 指示(プロンプト)
- 知識源
- トピック
- ツール
- 入力・トリガー
このうち「知識源」の扱いが、Foundry IQ との関係を理解するうえで重要なポイントになります。
Copilot Studio が標準で使えるナレッジソース
Copilot Studio には、追加設定なしで使えるナレッジソースが最初から用意されています。
- 公開 Web サイト
- SharePoint
- Dataverse
- Azure AI Search
- Real-time コネクタ など
社内の SharePoint に情報があり、アクセス権さえ整理できれば、Copilot Studio の標準機能だけでも一定のエージェントは作れます。
Copilot Studio と Foundry IQ はどう違う?「知識」を扱う二つの仕組み
ここが、この記事で最も伝えたいポイントです。
Copilot Studio と Foundry IQ は、どちらも「知識を扱う」機能を持っていますが、役割が異なる別の仕組みです。
| Copilot Studio のナレッジソース | Foundry IQ | |
|---|---|---|
| 位置づけ | エージェント内に直接設定する知識 | Foundry 側で構成するマルチソース知識基盤 |
| 主な用途 | SharePoint・Dataverse など M365 環境の情報を手軽に参照 | 複数のデータソースを束ねた大規模・複雑な知識基盤の構築 |
| 連携方法 | ネイティブ(標準機能として設定) | Foundry IQ connector(preview)経由でツールとして呼び出す |
「Copilot Studio から Foundry IQ をそのまま知識源として使う」という構成は正確ではありません。
Copilot Studio から Foundry IQ を活用したい場合は、Foundry IQ connector(現時点では preview)を経由してツールとして呼び出す形になります。
つまり、構成イメージはこうなります。
「Copilot Studio だけで足りるか?」への答えはケースによります。
- M365 環境(SharePoint・Dataverse)の情報を使うシンプルな構成 → Copilot Studio の標準機能で対応できることが多い
- 複数の業務システムやデータソースを束ねた大規模な知識基盤が必要 → Foundry IQ を活用する構成を検討する価値がある
混同しがちな「Work IQ」との違い
ここでもうひとつ注意したいのが Work IQ の存在です。名前が似ているので Foundry IQ と混同しがちですが、別物です。
公式ドキュメント の定義はこうです。
組織全体のリアルタイムの共有コンテキストで Microsoft 365 Copilot とエージェントを根拠とするインテリジェンス レイヤー
Work IQ は次の 3 層で構成されています。
- データ
- メモリ
- 推論
これらが連動して、Microsoft 365(メール、Teams、SharePoint など)や業務システムから得られるシグナルをつなぎ、よりパーソナライズされた回答を返せるようにする仕組みです。
3つを並べて整理するとこうなります。
| 名前 | 担当範囲 | 提供状況 |
|---|---|---|
| Copilot Studio ナレッジソース | エージェントに直接設定する標準知識機能 | GA |
| Foundry IQ | Foundry 側のマルチソース知識基盤 | 機能により GA / preview 混在 |
| Work IQ | M365 の業務コンテキスト層 | preview |
⚠️ Work IQ MCP の検証には Microsoft 365 Copilot ライセンスが必要です。
また現時点では preview 機能のため、本番運用を前提にした利用は推奨されません。
実際の企業導入で難しくなるポイント
ツールの役割が分かっても、企業での本番導入には固有の難しさがあります。よく挙がる論点を整理しておきます。
① 情報が複数の場所に分散している
SharePoint・Teams・ファイルサーバー・業務システムなど、参照すべきデータが社内の至るところに散らばっています。何をナレッジとして連携するかを先に整理しないと、エージェントが的外れな回答を返すリスクがあります。
② 部門・役職ごとに見せてよい情報が違う
人事情報や案件情報など、全社員に開示できないデータが必ず存在します。ナレッジ設計と権限設計はセットで考える必要があります。
③ 回答の根拠をどこまで出すか決める必要がある
「どの文書を参照して答えたか」を表示するかどうかは、信頼性とユーザー体験に直結します。業務用途に応じてポリシーを決めておく必要があります。
④ PoC では動いても、運用が回らず使われなくなる
更新ルールや改善サイクルがない状態でリリースすると、ナレッジが古くなったまま放置され、やがて誰も使わなくなります。
そのため、AI エージェント導入では「ツールの設定」だけでなく、ナレッジ設計・権限設計・業務導線・運用ルールをセットで考える必要があります。
まとめ
ここまでの内容を要点だけ拾うとこうなります。
- Microsoft Foundry は AI アプリ/エージェントを作る統合プラットフォーム(旧称:Azure AI Foundry / Azure AI Studio)
- Foundry の主要コンポーネントは Foundry Models・Foundry Agent Service・Foundry IQ・Foundry Tools・Foundry Control Plane
- Copilot Studio はローコードでエージェントを組み立てる GUI ツール
- Copilot Studio には SharePoint・Dataverse・Azure AI Search など独自のナレッジソース機能がある
- Foundry IQ は Foundry 側のマルチソース知識基盤であり、Copilot Studio の標準ナレッジソースとは別の仕組み
- Copilot Studio から Foundry IQ を使う場合は Foundry IQ connector(preview)経由が必要
- Work IQ は別物。M365 の業務コンテキストを扱うレイヤーで、利用には M365 Copilot ライセンスが必要
- 本番導入では、ナレッジ設計・権限設計・運用ルールまでセットで設計することが重要
「Copilot Studio を触れば AI エージェントが完成する」は、シンプルな構成であれば半分正解です。ただし、複数のデータソースを束ねた大規模な知識基盤が必要な場合は、Foundry IQ を組み合わせる構成を検討する必要があります。どちらが適切かは、社内のデータ構造と要件次第です。
次回予告
次回は、Foundry IQ と Copilot Studio を組み合わせたエージェントの構成パターンと、ナレッジ設計の考え方について解説する予定です。
ただし、実際の企業導入では、接続するデータの選定・権限設計・回答根拠の出し方・運用後の改善方法まで事前に決めておく必要があります。「自社環境だとどこから手をつければいいか」を整理したい方は、以下のサービスページもあわせてご覧ください。
導入を検討している方へ
「概念は分かったけど、自社で使いこなせるかは別問題…」という方へ。
この記事を書いている私たちナレッジコミュニケーションでは、Microsoft の AI エージェント導入を支援するサービスを提供しています。
Microsoft AIエージェント導入支援サービス|ナレッジコミュニケーション
Microsoft AI Cloud Partner Program 認定、「AI Platform on Microsoft Azure」分野の Specializations 取得、マイクロソフト ジャパン パートナー オブ ザ イヤー 2025「AI Partner Award」受賞など、Microsoft 領域での実績を重ねてきました。
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