この記事では防災・災害情報の可視化について扱いますが、非常時の最新情報・避難情報は行政からのアナウンスやちゃんとしたメディアさんの情報を優先的にご確認ください🙇♂
Qiitaはあとでも読めます、いのちだいじに
豪雨による災害、謹んでお見舞い申し上げます。
そんななか、こんな感じでQGIS上であまり手をかけずさっくりと浸水想定図を見れたら…と思ったわけです。
出典:ハザードマップポータルサイト
GISで災害に関する情報を見る際は国土数値情報などからGISデータをダウンロード後、可視化する手順が一般的だったりします。
しかし、データがすぐ見つからなかったり、はたまたデータそのもの存在に気が付かなかったり、ダウンロードしても加工が必要だったりして、時間と脳内のリソースが大幅にが取られることもあります。
いっぽう重ねるハザードマップは国土交通省が「身のまわりの災害リスク」情報を多数提供しているwebベースのサイトです。
もちろんこのサイトだけでもすばらしく十分な情報だったりするのですが、ユーザーが持つ特別な位置データ…たとえば詳細な避難行動要支援者や、顧客の土地情報などセキュアなデータなど…とさっくり重ねることは、Web開発者ではない限り難しいところです。
また、重ねるハザードマップでは背景地図が地理院地図となっており、さまざまな背景図と重ねたくても、同様にちょっと難しかったりします。
このため、本稿ではさまざまなデータカスタマイズが可能なQGIS上で、上記の「重ねるハザードマップ」のデータ情報をさっくり読み込む手法について説明します。
一度設定しておくと、QGISではいつでもすぐ閲覧が可能になりますので、毎回国土数値情報かと格闘したり、古いバージョンのデータを見るような事態は少なくなるでしょう。
なお、今回は重ねるハザードマップの地図タイルデータを読み込むため、詳細な空間解析(たとえば、面積測定や空間結合など)は上記の、国土数値情報などの生GISデータを用いることを「強く」おすすめします。このタイルをベクタ化するなどといったa.k.a.餅から米とかすると不正確になる可能性があります。
地図タイルデータはさっくり見れてすばらしいですが、いわば美しい食品サンプルみたいなものです、ちゃんと調理するには、きれいなお野菜である国土数値情報データなどを使う選択肢も必要です、ジオジサンとのやくそくだよ!
今回検証した環境はQGIS3.28.8-Firenze/on MacOSX 12.6.3で、すきな食べ物はじねんじょです。
どんなデータがあるか
ハザードマップポータルサイトの情報によると、このサイトからは下記のデータを取得することができます。
- 洪水
- 洪水浸水想定区域(想定最大規模)
- 洪水浸水想定区域(想定最大規模)_国管理河川
- 洪水浸水想定区域(想定最大規模)_都道府県管理河川
- 洪水浸水想定区域(計画規模(現在の凡例))
- 洪水浸水想定区域(計画規模(現在の凡例))_国管理河川
- 洪水浸水想定区域(計画規模(現在の凡例))_都道府県管理河川
- 浸水継続時間(想定最大規模)
- 浸水継続時間(想定最大規模)_国管理河川
- 浸水継続時間(想定最大規模)_都道府県管理河川
- 家屋倒壊等氾濫想定区域(氾濫流)
- 家屋倒壊等氾濫想定区域(氾濫流)_国管理河川
- 家屋倒壊等氾濫想定区域(氾濫流)_都道府県管理河川
- 家屋倒壊等氾濫想定区域(河岸侵食)
- 家屋倒壊等氾濫想定区域(河岸侵食)_国管理河川
- 家屋倒壊等氾濫想定区域(河岸侵食)_都道府県管理河川
- 高潮
- 高潮浸水想定区域
- 津波
- 津波浸水想定
- 土砂災害
- 土砂災害警戒区域(土石流)
- 土砂災害警戒区域(急傾斜地の崩壊)
- 土砂災害警戒区域(地すべり)
- 土石流危険渓流
- 急傾斜地崩壊危険箇所
- 地すべり危険箇所
結構豊富ですね…経験者ならわかると思いますが、各レイヤ&各都道府県について国土数値情報からダウンロードして回答してアレしてコレして…ということを考えると、これらがタイルでサクッとQGISで閲覧できるならキムチの素くらいありがたい話です。
この一覧に配信している配信しているタイルのWMTSメタデータ(XML形式、軽量版)というリンクがあります。クリックしてもXMLの羅列ですので、びっくりされるかもしれませんが、このxmlをQGISで読ませると、最新のタイル一覧が取得できるという仕組みです。
QGISで読み込む
まず、QGISにブラウザのXYZ Tilesパネルからベースマップを読み込んでおきましょう。OpenStreetMapとかでOKです。
そのあと日本周辺にズームしておきます。
(本稿では視認性を上げるためにOpenStreetMapレイヤをやや暗くしています)
同様にパネル内の「🌍WMS/WMTS」レイヤ上で右クリック→「新規接続」
設定画面が出ますので、
- 名前
- 任意で良いのですが「重ねるハザードマップ」とでもしましょう
- URL
https://disaportal.gsi.go.jp/hazardmapportal/hazardmap/copyright/metadata_light.xml
- このXMLには重ねるハザードマップに掲載されているレイや全てが記述されています
これらを入力したら「OK」を押してください。
- このXMLには重ねるハザードマップに掲載されているレイや全てが記述されています
一見なにも変わっていないようですが、「🌍WMS/WMTS」レイヤ左の▶を押すと先程設定した「重ねるハザードマップ」が追加されています
レイヤ一覧のにある「洪水浸水想定区域(想定最大規模)」をQGISのマップキャンバスに足してみましょう。そのままレイヤドラッグでもよいですし、ダブルクリックでもOKです。そうすると、全国分の洪水浸水想定区域(想定最大規模)タイルデータがQGIS読み込まれます。
なお、この設定は「🌍WMS/WMTS」レイヤに登録されたままで保持されますので、一回あなたのQGIS環境に取り込めば、設定を消去するまでいつでも読み込みが可能です(あ、インターネット接続は必要ですよー)
執筆時(2023/7)では、すべての都道府県別レイヤもXML内に同梱されていましたが、国土地理院さんにやんわりお願いしたところ各都道府県別も同梱した全体版
と、すべてをマージしたレイヤがメインの軽量版
に分けていただけました。この記事では軽量版をもとに内容の更新を行っています。ご利用用途に応じて使い分けてみるのもよいかと
大事なこと
凡例色などはハザードマップポータルサイトにも説明がありますし、この色自体も水害ハザードマップ作成の手引きなどで厳しく指定されています。
出展:水害ハザードマップ作成の手引き 平成28年4月版P37
ですので、「こんな色よりも、ぼくのイメージカラーであるドドメ色に統一したいんだよね〜」というわんぱくな改変は避けたほうがよいです。
また、FAQにもありますように、成果物を作成した場合は出展も下記のようにちゃんと記述しましょう。ありがたくオープンデータを使わさせていただくからには、大事なお約束です。
出典:ハザードマップポータルサイト
出典:ハザードマップポータルサイト(当該ページのURL)を加工して作成
など
ほかにもいろいろ足してみる
ここまでくれば、どんなGISデータともQGISで重ねることが可能です。
駆虫写真と市町村界(+ラベル)とレイヤを重ねるとぐっと視認性もあがります。
出典:ハザードマップポータルサイト・地理院タイル・国土数値情報(行政界)
また、
地理院タイル一覧にある
令和4年8月3日からの大雨 浸水推定図 村上市坂町周辺(2022年8月4日17時作成)
https://cyberjapandata.gsi.go.jp/xyz/20220804rain_0804dansaizu/{z}/{x}/{y}.png
なども読んできて、令和4年8月の浸水推定エリアと、洪水浸水想定区域(想定最大規模)との比較なども可能です
出典:ハザードマップポータルサイト・地理院タイル・国土数値情報(行政界)
また、QGISプラグインで気象庁降水ナウキャストをアニメ表示したりする記事で開発されたNowcastToolプラグインを使って、現在までの降水推移洪水浸水想定区域(想定最大規模)アニメと重ねて見ることも可能です。
もちろん、このアニメにはあなたのほかのGISデータを乗せることも簡単です。
出典:ハザードマップポータルサイト・地理院タイル・国土数値情報(行政界)・気象庁降水ナウキャスト
おわりに
ここ数年で多くの行政のなかの方々による様々な調整や技術的解決により、「オープンデータ」として、インターネットとオープンソースツールとちょっとした工夫で、様々なデータを誰でも可視化できる時代になりました、ありがたいことです。
お米を食べるときのように、各方面に感謝して利用させていただきましょう🍚