はじめに
Amazon S3(Simple Storage Service)は、さまざまなユースケースに対応するため、複数のストレージクラスを提供しています。これにより、データのアクセス頻度や保存期間に応じて、コストとパフォーマンスの最適化が可能です。この記事では、S3のストレージクラスを用途別に分類し、それぞれの特徴と活用シーンを整理します。
ストレージクラスとは?
Amazon S3のストレージクラスは、保存するデータのアクセスパターン、コスト、耐久性、可用性などに応じて選択可能な保存設定のことです。
主な利点:
- コスト最適化:アクセス頻度に応じて保存コストや取り出しコストを調整可能
- 高い柔軟性:オブジェクト単位でストレージクラスを設定でき、ライフサイクルポリシーにより自動で移行可能
- 多様なユースケースに対応:リアルタイムアクセスから長期アーカイブまで幅広くカバー
グループ別ストレージクラス一覧
1. 頻繁にアクセスされるデータ向け
S3 Standard(STANDARD
)
- 耐久性:99.999999999%(11ナイン)
- 可用性:99.99%
- 特徴:
- 低レイテンシーかつ高スループット
- 複数のAZに冗長保存
- 主な用途:Webアプリケーション、動的サイト、コンテンツ配信、モバイルアプリ、ビッグデータ分析など
S3 Intelligent-Tiering(INTELLIGENT_TIERING
)
- アクセスパターンを自動で監視し、以下の層に分類:
- 頻繁アクセス
- 低頻度アクセス
- アーカイブインスタントアクセス
- アーカイブアクセス
- ディープアーカイブアクセス
- 特徴:
- 自動階層化によりコストを最適化
- データ取り出しに遅延なし(該当階層による)
- モニタリングコスト(月額)が発生
- 主な用途:アクセス頻度が不明または変化するデータ、ユーザー生成コンテンツ、データレイクなど
2. 低頻度アクセス向け
S3 Standard-IA(STANDARD_IA
)
- 耐久性:11ナイン
- 可用性:99.9%
- 特徴:
- 複数AZに保存
- ミリ秒単位で取り出し可能
- 保存コストが安価、ただし取り出しコストあり
- 主な用途:バックアップ、災害復旧データ、長期間保持が必要な低頻度アクセスデータ
S3 One Zone-IA(ONEZONE_IA
)
- 耐久性:11ナイン
- 可用性:99.5%
- 特徴:
- 単一のAZに保存(冗長性が低い)
- 保存コストはSTANDARD_IAよりさらに低い
- 主な用途:再生成可能なデータ、バックアップが別途存在するデータなど
3. アーカイブ用途(長期保存・めったにアクセスしないデータ)
S3 Glacier Instant Retrieval(GLACIER_IR
)
- アクセス時間:ミリ秒単位
- 特徴:
- 長期保存向けだが即時アクセスが可能
- コストはIAよりも安価
- 主な用途:医療記録、メディアアーカイブ、法的記録など
S3 Glacier Flexible Retrieval(旧 Glacier)(GLACIER
)
- アクセス時間:数分〜数時間
- 特徴:
- 保存コストが非常に安い
- 標準・迅速・大容量一括といった取得オプションあり
- 主な用途:定期的なアクセスは不要だが、必要に応じて復元したいデータ
S3 Glacier Deep Archive(DEEP_ARCHIVE
)
- アクセス時間:12時間以内
- 特徴:
- S3で最もコストが低いストレージクラス
- データ復旧に時間がかかる
- 主な用途:法的保存義務がある記録、10年以上アクセスされないデータなど
比較表
ストレージクラス | 耐久性 | 可用性 | 最小保存期間 | 取り出し時間 | 主な用途 |
---|---|---|---|---|---|
S3 Standard | 11ナイン | 99.99% | なし | 即時 | 頻繁アクセス |
Intelligent-Tiering | 11ナイン | 99.9〜99.99% | 30日など | 即時〜数時間 | アクセスパターンが不明 |
Standard-IA | 11ナイン | 99.9% | 30日 | 即時 | バックアップなど |
One Zone-IA | 11ナイン | 99.5% | 30日 | 即時 | 再生成可能なデータ |
Glacier Instant Retrieval | 11ナイン | 99.9% | 90日 | ミリ秒 | 即時アクセスが必要なアーカイブ |
Glacier Flexible Retrieval | 11ナイン | 99.99% | 90日 | 分〜時間 | 一般的なアーカイブ |
Glacier Deep Archive | 11ナイン | 99.99% | 180日 | 最大12時間 | 長期保存・法的保存データ |
まとめ
Amazon S3のストレージクラスは、アクセス頻度や可用性、コスト要件に応じて柔軟に使い分けることが可能です。アクセス頻度の高いデータには「S3 Standard」、アクセスパターンが不明な場合には「Intelligent-Tiering」、低頻度データには「Standard-IA」や「One Zone-IA」、長期保存が必要なアーカイブには「Glacier」系クラスを活用することで、コストを最適化しつつ信頼性も確保できます。