はじめに
システム開発の業務分析をしていると、よく次のような話を聞きます。
- 「このExcelは毎日作っています」
- 「CSVをダウンロードしてExcelで加工して再アップロードします」
- 「昔からこの手順です」
しかし業務を深掘りしていくと、こういうケースがよくあります。
その業務自体の目的が誰も分からない
システム開発がうまくいかない原因の一つは
業務を疑わず、そのままシステム化してしまうこと
です。
この記事では、業務分析において
現場の「当たり前」を疑う方法を整理します。
業務はこうして増殖する
多くの業務は、最初から複雑だったわけではありません。
次のようなプロセスで徐々に増殖します。
最初は小さな回避策だったものが
- Excel
- チェック表
- 二重入力
などを生み、最終的に
複雑な業務プロセス
になります。
システム化するとさらに増える
問題はここからです。
新しいシステムを導入するとき、多くのプロジェクトは
既存業務をそのまま要件にします。
これにより
- 本来不要だった作業
- 過去のシステム制約
- 一時的な回避策
まで
正式な業務として固定化
されます。
よくある現場ストーリー
実際の現場でよくある話です。
ある会社では、毎日次の作業をしていました。
ヒアリングしてみると理由はこうでした。
「昔のシステムが連携できなかったから」
つまり
業務ではなくシステム制約の回避策
だったのです。
本来あるべき姿はこうです。
このケースでは
1日1時間の作業が完全になくなりました。
業務は3階層で見る
業務分析では、次の3層に分解すると本質が見えます。
例えば次の業務です。
| 階層 | 内容 |
|---|---|
| 作業 | Excel入力 |
| 業務 | 売上管理 |
| 目的 | 経営判断 |
ここで重要なのは
作業 ≠ 目的
という点です。
もし目的が「経営判断」なら、
ではなく
でも実現できます。
つまり
作業を疑うことが業務改善の入口
になります。
業務分析で使える3つの質問
現場ヒアリングで特に効果の高い質問を紹介します。
① なぜを繰り返す
なぜこのExcelを作るのですか?
↓
上司に提出するため
↓
なぜ上司は必要なのですか?
↓
月次集計のため
この時点で
必要なのはExcelではなく「月次データ」
だと分かります。
② 誰のための業務か
この作業は誰が使いますか?
これを聞くと
- 経理
- 管理部
- 本社
などが見えてきます。
つまり
現場の業務ではない
可能性があります。
③ ゼロから作るなら必要か
これは非常に強い質問です。
もしこのシステムをゼロから作るなら
この作業は必要ですか?
すると多くの場合
「いや、いらないですね」
という答えが出てきます。
業務分析で一番難しいこと
実は一番難しいのは技術ではありません。
人の心理です。
多くの人は
と感じています。
そのため
業務をなくす提案
は
自分の仕事を否定された
と受け取られることがあります。
良い業務分析者の説明
優秀な業務分析者はこう説明します。
業務を無くす
ではなく
作業を減らして
価値の高い仕事に集中する
つまり
というストーリーを作ります。
システム開発の本質
多くのプロジェクトは次の構造に陥ります。
つまり
悪い業務 × IT = 速く動く悪い業務
です。
本来の順序はこうです。
まとめ
業務分析で重要なポイントをまとめます。
- 業務を 作業 / 業務 / 目的 に分解する
- 「なぜ」を繰り返す
- 誰のための業務か確認する
- ゼロから作るなら必要か考える
そして最も重要なのは
「その業務、本当に必要ですか?」
という問いを持つことです。
システム開発の価値は
業務をそのままIT化することではなく
業務をより良い形に再設計すること
にあります。