はじめに
本記事はSAP Business Technology Platformの基本的なことのまとめの1項目の説明をなります。全体を把握した方はまずはそちらをご確認下さい。
また、本記事は概要把握や個人とトライアル利用の参考として、まとめたものなので、プロジェクトでの利用の際は、SAP社への問合せの実施や正式情報であるHelp Portalを活用して下さい。
SAP Business Technology Platformの歴史
サービス開始当初は「SAP HANA Cloud Platform」と呼ばれ、2010年代半ばに登場しました。
次に2017年頃に、「SAP Cloud Platform」に名称を変更します。この「SAP Cloud Platform」の略称が「SCP」です。(この言葉は業界には結構浸透しており、今でも、SAP社のクラウド開発基盤は「SCP」でしょ。って人にそれなりに出くわします。その後、略称は「SAP CP」に変更されたのですが、こちらはあまり浸透せずでした。)
そして、2021年に入り名称が「SAP Business Technology Platform (SAP BTP)」に変更されます。ポイントは「BTP」はサービス群としての概念(ブランド)であり、<>「SAP Cloud Platform」ということです。(SAP社の表現をそのまま使うと「BTPはDXのための単一のビジネステクノロジープラットフォームとしてブランド名称です」)よって、「旧SAP Cloud Platform」だけでなく、有名どころだと「SAP Analytics Cloud (SAC)」もBTPに含まれます。
あまりに領域が広いため、2022年12月時点では、「Application Development and Automation(アプリケーション開発と自動化)」、「Extended Planning and Analysis(拡張計画および分析)」、「Data and Analytics(データおよびアナリティクス)」、「Integration(統合)」、「Artificial Intelligence(人工知能)」に分類されます。
なお、「旧SAP Cloud Platform」は「Application Development and Automation(アプリケーション開発と自動化)」、「「Integration(統合)」、「Artificial Intelligence(人工知能)」のなかのに包含されるかたちになっています。
よって「BTPを導入する・しない、良い・悪い」の様な議論は抽象的になってしまい、「BTPのどのサービスか」という条件設定が「BTP」の話をする際には必須となります。
ちなみに、2021年末から2022年中頃までは、「Database and Data Management」、「Analytics」、「Application Development and Integration」、「Intelligent Technologies」の分類でした。古い資料などではこちらの分類が使われている場合もあるので混乱しないようにしましょう。
Leonardoってあったような。。。
2017年の後半に発表された「Leonardo(レオナルド)」って単語を覚えている方も多いかと思います。こちらも、「SCP」や「BTP」と混同されがちな用語です。
正確にはプレスリリース 等を確認して頂きたいのですが、私としての理解は、「Leonardo」は「SAP Cloud Platform」等を包含する「概念(ブランド)」でした。この頃、IBMが「Watson」と称して、先端系のIT技術群を概念化(ブランド化)して、流行ったので、Salesforceが「Einstein」、SAP社が「Leonardo」と続きました。この手の戦略はキャッチーではあったのですが、「で、何?」感もあり、徐々にフェードアウトして行き、現在は概念をBTPに引き継ぐかたちで使われなくなっています。
SAP社製品の中の位置付け
ここまでは、クラウド開発基盤としての歴史を振り返りましたが、次は位置付けです。
基本的には開発プラットフォームの位置付けですが、他の製品との関わり方についても整理していきましょう。
SAP社のサービスはざっくり下記の種類に分類されます。
- SAP Signavio 旧Business Process Intelligence (BPI):ビジネスプロセスを描画したり、分析したりするコンポーネント
- Intelligence Suite:「S/4HANA」や「Success Factors」などのビジネスアプリケーション
- Industry Cloud:Intelligence SuiteやBTPを用いて、パートナーなどが作成した、業界・業種別のテンプレート(ベストプラクティス)
BPI自身は最近登場した新領域なので一旦おいておくと、「Intelligence Suite」がアプリで、「Industry Cloud」がそれを用いたアセットのようなものなので、それ以外の領域がほぼBTPとなり、非常に広い領域であることがわかると思います。
次にあまり聞き慣れない、「SAP Signavio」と「Industry Cloud」について補足します。
SAP Signavio 旧Business Process Intelligence (BPI)
2021年から大々的にプロモーションがされ始めた新領域で、構成の大部分を占めるのは、2021年に買収した「Signavio」です。これまでは、Excelなどで書いていた、ビジネスプロセスを描画(定義)する機能とその定義したプロセスとシステムをつないで、プロセスを分析する機能(専門的な言い方をつかうとプロセスマイニングの領域)が主な役割です。BTPの文脈だと、将来的にはその分析結果をトリガーに、改善点に対してワークフローやRPAをシームレスに起動することなども視野に入れられているため、そのあたりの機能はSAP Signavioのコンポーネントとしても製品説明上は組み込まれています。これ以上の説明は長くなりそうなので、ここまでとします。
Industry Cloud
Intelligence SuiteやBTPを用いて、パートナーなどが作成した、業界・業種別のテンプレート(ベストプラクティス)になります。SAP社としては、ベーシックなアプリケーションは提供するので、業界個別要件に対しては、パートナーがベストプラクティスとして拡張し、汎用化することで、より発展的にSAP社製品を使ってほしいというスタンスだと推測され、このような概念が定義されています。
日本でどの程度のものがあるかは把握しておりませんが、勤務先のUS本社などは、それなりに現実味のあるものを作成していました。(基本のアプリケーションコンポーネントを決定した上で、それらの連携やよくあるUX改善などをBTP上でアセットとして作り上げているようなイメージになります。)
まとめ
ざっくり変遷をまとめると、元SCPと呼ばれていた開発基盤が、新しくできたBTPという拡張概念の一部になったと捉えて頂けると良いと思います。ただし、SCP=BTPのイメージが強いので、多くの場合においてBTPの「Application Development and Automation, Integration」のことをBTPの意で使っていることも多いため注意が必要です。
次の記事では、「SAP Business Technology Platformアプリケーション概要」を説明していきたいと思います。