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チャット文化の現代仕事人にこそ読んでほしい!書評:「新聞記者がネット記事をバズらせるために考えたこと」

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SlackやTeamsを開けば、朝から晩まで無数のメッセージが流れてくる。
一つひとつを「読むぞ」と意識して読むことは少なく、自然と視界に入ってくる文字を“受け取らされる”ような感覚で日々を過ごしている。
そんな「受動的に読む文化」の中に生きる人たちにこそ読んでほしい本がある。
『新聞記者がネット記事をバズらせるために考えたこと』(斉藤友彦著、集英社新書)だ。

引用:Amazon 商品ページ(https://amzn.asia/d/bZ5z9Z)

ネット記事は“受動的に読む文章”の代表例

本書の題材はネット記事だ。
タイトルだけ見ると“バズらせるノウハウ本”のように思えるが、実際はもっと地に足のついた内容である。
著者が見つめているのは、「なんとなく記事を読み始めた読者が、どこで離脱するのか」──そのような読者体験の観察と分析である。

本書の中で、読者が離脱してしまう理由はさまざま述べられている。
中でも特に印象深いのは「文節の配置やテンポで読者を迷わせない工夫」について述べている部分である。
この“迷う”という感覚は、ネット記事に限らず、私たちが日々交わすチャットや業務メッセージにも同じように潜んでいる。
全部が全部でなくとも、私たちにも応用できるエッセンスが多量に詰まっていると感じたため、以下により詳細な紹介をする。

「論理」よりも「リズム」で離脱を防ぐ

ビジネス書でよく見かける「伝わる文章術」では、論理構造やフレームワークの話題が中心になる。
この本は“文のリズム”と“読み手の理解テンポ”に注目する。

例として、本文の中で紹介されていた文章を見てみたい。
以下の場面では、新聞記者である筆者が新聞記事の表現について、読者モニターに感想を伺っている。

たとえば、こんな一文。読みにくいと感じますか?
【例】「危険運転事故についての東京地裁の判決は〜という点で問題がある」と○○弁護士は語り、憤りを隠さなかった。

新聞ではよく見かける文型だが、読者モニターの多くが「読みにくい」と感じたという。
その理由がまた鋭い。

「カギカッコの中が長いと、誰が何を言いたいのか分からないまま読み進めなければならずストレスになる。発言者や立場を先に書いてほしい」

たしかに、後から出てくるこの「誰が」「どういう立場で」「何を」という部分。これは読者に“理解の待ち時間”を強いる。
例えば以下のように書くだけで、文章は一気に軽くなるのではないか?

  • ○○弁護士は憤りながらこう語った。「危険運転事故についての東京地裁の判決は〜という点で問題がある」

この「リズムで読ませる」感覚こそが、本書の真骨頂だ。

チャットでも「迷子にさせない」工夫を

この考え方は、仕事のチャットにもそのまま応用できそうだ。
チャットは時間を選ばず目に触れることになるため、相手が受動的に読むケースが多い。
だからこそ、「何の話か」「どこがポイントか」を一瞬で伝える工夫が求められる。

たとえば、以下のような報告文を考える。

レポートの集計結果にズレが出ていました。
先日のデータ移行時に論理削除フラグが立ったデータも集計対象に含めており、本来は除外すべきレコードまでカウントされていたのが原因です。

上記のような文章も、原因がどこにあるのかが文末まで読まないと分かりにくい。

レポートの集計結果にズレが出ていました。
原因は、先日のデータ移行時に、論理削除フラグが立ったデータも集計対象に含めていたことです。
その結果、本来は除外すべきレコードまでカウントされていました。

「原因」の位置を前に持っていき、一文を分割するだけで、少し読みやすく感じる
(この程度の文ではどちらでも変わらないと感じる人も多いかもしれないが)。

このように、わずかな書き方の違いで、受け取る印象や理解スピードが変わる。
読者が「考えながら読む」負担を少しでも減らす——それが、文章の優しさだと思う。

「バズる」文章は「途中で離脱させない」文章

「バズらせる」という言葉には軽い印象があるが、その本質は“最後まで読まれる工夫”にある。
ネット記事とチャットでは長さも目的も全く異なるものだが、この工夫はチャットでも十分に活かせそうな内容である。

記事も、チャットも、メールも、結局は「読む時間を奪うコミュニケーション」である。
だからこそ、少しでも相手に優しい文を書く努力には大きな価値がある。

おわりに

この本を手に取ったのは、仕事に役立てようと思ったからではなかった。
Twitter(現X)で偶然流れてきた紹介が面白そうで、軽い気持ちで読み始めたのがきっかけだ。

けれど読み進めるうちに、想像以上に引き込まれていった。
新聞社が配信する記事に感じていた「読みにくさ」には心当たりがあり、本文内で指摘されている一つひとつのポイントが自分の体験と結びついていく感覚があった。

そして何より、この本そのものが、本文で紹介されている“読みやすさの工夫”を徹底して実践している。
気づけばページをめくる手が止まらず、気がついたら最後まで読み切っていた。

ネット記事のような長文を書く立場ではないけれど、仕事でのチャットやちょっとしたやり取りにも通じる考え方が多く、思わぬところで学びを得た気がする。

文章にこだわりがある人、そして「論理的に正しい」「フレームワークに則っている」だけでは届かない読みやすさを探している人に、ぜひ読んでほしい一冊だ。

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