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社内FAQボットを作っていたら、"エージェントハーネス"が出来上がっていた話

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Last updated at Posted at 2026-04-04

社内FAQボットを作っていたら、"エージェントハーネス"が出来上がっていた話

はじめに

いえらぶGROUPの開発部で執行役員を務めています、和田です。わだけんです。

社内SaaSプロダクトに関する問い合わせ対応が、地味に開発チームの時間を食いますよね。
「管理画面のこの計算って合ってます?」「この機能の仕様ってどうなってますっけ?」みたいな調査依頼が、社内チケットシステム経由で日々やってきます。

そこでやはり考えるのは「LLM+社内ナレッジで自動回答するボットを作ろう」でした。

当然ですがいきなり精度はでず。結局人間が確認し直す必要があって、工数削減になっていない。しかしそこからの 1ヶ月間の試行錯誤が、段階的にハーネスを整備していたことに結果なった 面白い話だったので記事にしています。

最初にやったこと:ボット本体を頑張る

Week 1: パイプラインを組む

  • チャットツールの質問 → 社内GitLab Issue自動起票 → LLMが定期巡回 → 回答コメント → チャット通知
  • 「対象画面のURLがないと回答できない」ことに気づき、URL必須化
  • 情報が足りない質問には追加ヒアリングを自動コメント

パイプライン整備ができたので、精度上げるか~、という感じ。

Week 2: ボット本体をいじる

  • LLMモデルの切替
  • エージェントのアーキテクチャ再設計
  • メモリ管理の高度化、テナント分離の検討 → めんどくさすぎて断念

もしかしなくても、LLMの賢さの問題ではないな?という仮説。

気づき:ポイントは周辺

精度が出ない原因を分析してみると、ボット本体(LLM呼び出し)の問題ではありませんでした。

  • 質問の分類が雑で、適切なナレッジが注入されていない
  • ナレッジはあるが、LLMが「どのファイルを見ればいいか」分からない
  • 精度を測る仕組みがないから、改善ループが回らない

「LLMを正しく動かすインフラ」のほうの整備に方針を変更。

福島良典氏(LayerX CEO)のnote記事にこういう記述があって、これだなあと思いました。

本質的な価値は「AIエージェント」そのものではなく、エージェントを包み込むインフラストラクチャにある

整備した5つのハーネス要素

Week 3以降、精度改善のために周辺を整備していったら、結果的に5つの「ハーネス要素」を整備していた形になっていました。

Gemini_Generated_Image_ndufjbndufjbnduf.png

# 要素 問題 対処
1 ルーティング 質問が「その他」に分類→ナレッジ注入されない 分類キーワード追加
2 知識基盤 ナレッジはあるがLLMが見つけられない 各ファイル冒頭にエントリポイント標準化
3 学習ループ 解決済みパターンが蓄積されない resolved案件からFAQ自動追加
4 オーケストレーション 単一カテゴリの視点でしか調査しない 横断調査ルール+複数方向性の提示
5 監視・改善 精度が上がっているか分からない 週次自動評価+改善提案のcronサイクル

以下補足。

1. ルーティング

質問が「その他」に分類されると、ナレッジが注入されない。LLMが素の知識だけで回答するのはそりゃ精度悪い。分類キーワードを追加して正分類率を上げました。

2. 知識基盤

数千行のナレッジドキュメントがあるが、参照すべきコードのパスが本文中に散在していて、LLMが「まずどこを見ればいいか」を判断できていなかった。全ファイルの冒頭に主要エントリポイントを統一フォーマットで追加しました。

3. 学習ループ

過去に60〜94時間かけて人間が解決した質問パターンが、FAQ化されていなかった。同じ質問が来るたびに再調査していた。resolved案件を分析して、頻出パターンをFAQに追加するループを追加しました。

4. オーケストレーション

密接に関連する複数の業務領域があるのに、単一カテゴリの視点でしか調査していなかった。横断調査ルールと、「設定変更で解決可能か」「コード上の仕様制約か」の両方向を提示するルールを追加しました。

5. 監視・改善

Bot回答と人間の最終回答を突き合わせて精度を評価する仕組み(ABC定義)を作り、週次で自動実行するcronを設定。改善提案も自動生成されるようにしました。

Before / After

Gemini_Generated_Image_vk40acvk40acvk40.png

指標 Before After
「その他」分類 頻発 正分類
ナレッジ未使用率 50%(8件中4件) エントリポイント標準化で改善
頻出質問の解決時間 60〜94時間 FAQ即答
精度改善サイクル 手動・不定期 週次自動

振り返り:fukkyy「エージェントハーネス」との照合

改めて福島氏の「エージェントハーネス」の概念と照らし合わせてみると、自分がやっていたことがそのままハーネスの構成要素でした。

ハーネスの概念 実際に作ったもの
エージェントの監視・管理 週次精度評価、Bot回答vs人間回答の突き合わせ
セキュリティと信頼性 分類ルールによるナレッジ注入制御
組織プロセスとの統合 チャット→チケット→GitLab→LLM→通知のパイプライン
継続的改善メカニズム cron精度チェック→改善提案→ナレッジ更新の自動サイクル
スケーラビリティ 別モジュールへのパターン横展開

エージェント本体(LLM呼び出し)にかけた工数は、全体の10%以下だったと思います。ほぼ周辺。

面白いのは、「ハーネスを設計しよう」と思って作ったわけじゃなく、精度が出なくて困って、一個ずつ周辺を整備していったら、振り返ったときにハーネスが出来上がっていた、という流れです。

おわりに

なので「エージェントハーネスを設計してから作れ」、ではなくて精度改善をメンバーにやらせる感覚でやれば、ハーネスは自然にできる気がします(と、思っています)。

社内FAQボットに限らず、AIエージェントを組織に導入しようとしている方の参考になれば。

おわり。

CM

こんな感じで泥臭くAIと格闘してくれる方を、いえらぶは常に募集中です。

新卒採用サイト:
https://www.ielove-group.jp/recruit/newgrad/

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