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AI HACK2026で終活支援アプリ『カエルム』を作った話

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Last updated at Posted at 2026-08-15

この記事について

飲み友達と2人で「AI HACK 2026」というAIハッカソンに参加し、終活支援Webアプリ「カエルム(ラテン語で"天国"の意味)」を作った。AI HACK 2026は東京で開催された、生成AI・LLMを使った9日間の開発型ハッカソンで、必須ツールとしてスポンサーの OrcaRouter が指定されている。

テーマは「本番で通用する次世代のAI Productを作る」。審査は次の8項目、各5点満点の40点満点で行われる。

  1. 課題の実在性
  2. ビジネス成立性
  3. 完成度・デモの説得力
  4. AIである必然性
  5. 技術的な作り込み
  6. LLMコスト
  7. セキュリティ
  8. 次世代性・独創性

「面白い」よりも「本番で通用するか」が問われる場だったので、企画の各段階でこの8項目を意識しながら考えた。

カエルムは、大切な人へ向けて自分の思いを語る動画を残すためのアプリだ。

  • 誰に向けて残すのかを登録できる
  • 何を話せばいいかわからない人には、AIが撮影テーマを提案してくれる
  • 撮った動画は内容ごとに自動でチャプター分けされ、あとから見返しやすい
  • 録画データはローカルにエクスポートでき、ブラウザさえあれば手元で完結して動かせる

大きな特徴は、AIが動画や写真から新しい何かを"生成"することは一切しないという設計方針だ。AIは文字起こしやテーマ提案など、あくまで本人が話しやすくなるための下支えに徹している。この制約は後述する議論の結果、意図的に選んだものだ。

この記事では、プロダクトの中身だけでなく、私たちがなぜこのテーマに行き着いたか、そしてなぜ「AIに生成させない」という制約を選んだのかという思考プロセスを中心に書く。発表は明日。結果はまた後日追記する。

対象読者は、ハッカソンや短期開発でアイデアの絞り込みに悩んだことがある人。特に「発散はできるけど収束できない」というタイプの人には参考になるかもしれない。

提出期限に追われて必死に作業中!

どう進めたか:発散→収束を2周する

最初に、今回の進め方を一言で。

社会課題を発散させて出す → 自分ごとにできるテーマへ収束 → 解決策の方向性を発散(理想の世界を描く)→ 倫理的な線引きと評価軸で収束

「アイデア出し→即プロトタイプ」ではなく、発散と収束を2セット挟んだのが今回のやり方だ。以下、それぞれのステップを具体的に書いていく。

STEP1(発散):社会課題を洗い出す

いきなり「何を作るか」を決めるのではなく、まずは2人でそれぞれ気になっている社会課題を出し合った。

飲みの席の延長のような雑談交じりのブレストで、教育のあるべき姿、働き方改革、飲食店の食事、家族のかたち……気になっているテーマを片っ端から一覧化していく。ここで意識したのは、プロダクトから発想しないこと。技術的に面白いことができそうか、ではなく、そもそも誰がどんな課題を抱えているのか、という問題ファーストの視点を最初に固定した。

簡単なアイデアシートを作成して、2人で熱い議論を交す

STEP2(収束):一番「自分ごと」な課題に絞り込む

出揃った課題の中から、最終的に選んだのは終活領域だった。理由は単純で、私たちは2人とも最近、近しい親族を亡くしていた。

想定していなかった別れが訪れたとき、もちろん本人と直接話せることが一番いい。でも、残される側としては、気持ちを整理したり、思い出を振り返ったり、交わした言葉を忘れないように残しておきたかった、という気持ちが強く残った。他のどのテーマよりも、自分たちが当事者として語れる課題だった。

STEP3(発散):「課題がなくなった世界」を描く

終活というテーマに絞ってから、解決策を考える前に「この課題がなくなった世界はどんな世界か」「そこに行くには何が必要か」を検討した。

このタイミングで、最近話題になっていたある種のサービスが議論に上がった。故人の写真や動画からAIで姿や声を再現し、本人らしく"話させる"タイプのアプリだ。話題になると同時に、賛否も分かれていた。生前には話すつもりのなかったことまで、AIが本人の代わりに語ってしまえる危うさがあるのではないか、という論点だった。

私たちはこの議論を踏まえて、AIに故人を演じさせるのではなく、本人が生きているうちに、自分の言葉で語ったものをそのまま残すという方向に舵を切った。理想の世界は「AIが誰かを演じる世界」ではなく、「本人の実際の言葉と表情が、ちゃんと残っている世界」だと言語化できたのが、このステップの一番の収穫だった。

STEP4(収束):倫理的な線引きと評価軸で機能を絞る

方向性が固まったところで、機能をひとつずつ「これはAIに生成させて良いことか」という基準で見直した。

検討の過程で、当初アイデアに入っていた「白黒写真のカラー化」機能は保留にした。カラー化も広い意味でAIによる生成にあたり、今回定めた「生成しない」という方針とぶつかるためだ。最終的にAIの役割は、次の4つに限定した。

  • 動画からの文字起こし
  • 動画へのタグ付け・チャプター・メタデータの付与
  • 質問候補の生成
  • 動画撮影にあたってのテーマ提案

いずれも、本人が語った内容を扱いやすくする・話すきっかけを作るための機能で、AIが新しい発言や見た目を作り出すことはない。

この線引きは、審査項目にも照らして意味があると考えている。「AIである必然性」は、生成に頼るほど説明しやすくなるが、そこに逃げず「文字起こし・提案・整理」という地味な役割にAIを絞ったことは、むしろ「課題の実在性」と「次世代性・独創性」を両立させる選択だったと思う。カラー化のような生成寄りの機能を削ったことで、「セキュリティ」や「LLMコスト」の観点でも説明しやすい構成になった。

できたもの:終活支援アプリ「カエルム」

こうして生まれたのが「カエルム」だ。ラテン語で"天国"を意味する言葉をそのままプロダクト名にした。

主な機能は次のとおり。

  • 誰に向けて動画を残すのかを登録できる
  • 何を話せばいいかわからない人のために、プロフィール情報をもとにAIが撮影テーマを提案する
  • 撮影後、内容に合わせて自動でチャプターが付き、見返しやすい形で再生できる
  • 録画データはローカルにエクスポートでき、ブラウザさえあれば手元の環境で動かせる(プライバシーへの配慮から、サーバーに預けきりにしない設計にした)

AI HACK 2026のスポンサーである OrcaRouter を使い、文字起こし・タグ付けやチャプター生成・質問候補の生成・撮影テーマの提案という4つの処理を実装した。用途の異なる処理をひとつの基盤でまとめて任せられたことで、限られた時間の中でも機能を積み上げやすかった。

IMG_6705.JPG

実装:Claude Codeで、非エンジニアと一緒に手を動かす

企画がまとまった後は、私と友人でそれぞれClaudeを使って企画をmdファイルにまとめ、共有し合った。文章で書き出すことで、頭の中でなんとなく一致していたつもりのイメージのズレに気づけたのがよかった。

ある程度自分たちで設計を固めたあとは、Claude Codeを使って実装し、テストと修正を繰り返しながら形にしていった。この進め方の一番良かった点は、エンジニアではないメンバーとも、コードそのものに向き合いながら一緒に話し合って実装を進められたことだ。実際の作業は、たとえば次のようなものだった。

  • LLMへのプロンプトを直したり、使うモデルを変えたりして、出力内容を微調整する
  • デザインやUIを、話し合いながらその場で変更する

役割を完全に分けて後で統合するのではなく、非エンジニアのメンバーも実装の意思決定に加われたのは、Claude Codeを使ったからこそだと思う。

IMG_6704.JPG

お腹が空いたので、食べながらPC触っちゃう様子

おわりに

飲みながら雑談していた友人と、まさか一緒にハッカソンに出ることになるとは思っていなかった。しかも、2人とも近しい人を亡くしたばかりというタイミングで、終活というテーマに向き合うことになるとは想像していなかった。

「AIに何をさせないか」を決めるところに一番時間を使ったハッカソンだった。発表はいよいよ明日。結果はまた後日書きたいと思う。頑張ります。

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