はじめに
この記事では MacユーザーがAWS上にWindows Server 2022を立てる手順 を解説します。
「AWSにサーバーを立てたいけど、何から始めればいいかわからない」
「Windows環境をMacから使いたい」
そんな方に向けて、VPCの作成 → サーバー起動 → リモート接続までの流れを整理しました。
この記事で学べること
- AWSの基本用語(VPC、サブネット、EC2など)
- Windows Server 2022 をAWS上に立てる方法
- Macからリモートデスクトップで接続する手順
全体像(イメージ)
- Macを使っていても、AWSにサーバーを建てれば「クラウド上のWindowsパソコン」を用意できます。
- Macからは リモートデスクトップ (RDP) でそのWindowsにログインできます。
AWS関連の用語と意味
用語 | 意味 | なぜ必要か |
---|---|---|
AWS | Amazonが提供するクラウドサービス | サーバーやネットワークを借りる基盤 |
VPC (Virtual Private Cloud) | 自分専用のネットワーク空間 | 家でいう「土地」に相当 |
CIDR | IPアドレス範囲の表記(例: 10.0.0.0/16) | ネットワークの広さを決める |
サブネット | VPCをさらに区切った区画 | 一軒分の敷地 |
パブリックサブネット | インターネットに直結するサブネット | 外部から接続するために必要 |
EC2 (Elastic Compute Cloud) | AWSの仮想サーバー | 家の中の「パソコン」 |
Windows Server 2022 日本語版 | サーバー向けWindows OS | 今回使うOS |
m4.xlarge | EC2のインスタンスタイプ(4vCPU/16GB) | 実用的に使える構成 |
タグ (Tag) | リソースに貼るラベル | 管理・識別に便利(例: example_ ) |
業務終了時に停止 | EC2は時間課金 | 夜は停止してコスト削減 |
ステップ1: VPCを作成(ネットワークの土地)
サーバーを建てる前に、まず「土地」にあたるネットワーク空間を用意します。
AWSではこれを VPC (Virtual Private Cloud) と呼びます。EC2(仮想サーバー)は必ずVPCに所属するため、最初にこの作業をしないと何も始まりません。
VPCを自分で作ることで「どの範囲に何があるか」を把握でき、学習でも運用でも管理しやすくなります。
操作手順
-
AWSマネジメントコンソールで「VPC」を検索し、サービスを開く
-
左メニューで「VPC」→「VPCを作成」
-
入力内容を設定する:
-
名前タグ:
example_vpc
(個人名ではなくexample_
を付けると識別しやすく、匿名性も保てます) -
IPv4 CIDR ブロック:
10.0.0.0/16
(約65,000個のIPアドレスを使える広い範囲)
-
名前タグ:
-
「VPCを作成」をクリック
👉 これで「自分専用のネットワークの土地」が完成です。
なぜこの作業が必要なのか
-
EC2を置くための場所が必要
→ VPCがないとサーバーを起動できません。 -
デフォルトVPCを使わない理由
→ 自作した方がネットワーク構造を理解でき、後々の本番環境でも応用可能。 -
CIDRを/16にする理由
→ 後から広げることはできないため、最初は余裕を持たせておく。
→/16
にしておけば10.0.1.0/24
、10.0.2.0/24
… と細かく区切れる。
ここでできたもの
- VPC本体(10.0.0.0/16 のネットワーク空間)
- 初期ルートテーブルやネットワークACL(ただしまだ外部と通信できない閉じた空間)
👉 このあと「サブネット」を作って、サーバーを置く場所を決めます。
ステップ2: サブネットを作成(サーバーを置く区画)
VPCは広い土地ですが、そのままではサーバーをどこに置くか決まっていません。
そこで「区画」を切ってサーバーを配置します。これが サブネット です。
さらに今回はMacから接続するためにインターネット接続が必要なので、パブリックサブネット を作ります。
操作手順
-
左メニュー「サブネット」→「サブネットを作成」
-
入力内容を設定する:
-
VPC:
example_vpc
(ステップ1で作成したVPC) -
名前タグ:
example_public_subnet
-
アベイラビリティゾーン:例
ap-northeast-1a
(どれでもOK、統一すると管理が楽) -
IPv4 CIDR ブロック:
10.0.1.0/16
(256個のアドレスを割り当てられるサイズ)
-
VPC:
-
「サブネットを作成」をクリック
👉 これでVPCの中に「サーバーを置ける区画」が完成しました。
なぜこの作業が必要なのか
-
EC2は必ずサブネットに配置される
→ VPCだけではサーバーを起動できません。 -
パブリックサブネットにする理由
→ 今回はMacからRDPで接続するため、外部と通信できる区画が必要。 -
CIDRを/24にする理由
→/24
は256アドレス → サーバー254台まで置ける。
→/16
から切り分ければ整理された「住所体系」を作れる。
ここでできたもの
-
example_vpc
内にexample_public_subnet
が完成 - まだインターネットへの出入口(IGW)がないため、外とはつながっていない
👉 次は「インターネットゲートウェイ」を作って、外への門を開けます。
ステップ3: インターネットゲートウェイ (IGW) を作成(外との門)
サブネットまで用意できましたが、まだ閉じた空間です。
Macから接続するには「外との出入口」が必要です。これが インターネットゲートウェイ (IGW) です。
IGWをVPCに取り付け、さらにルートテーブルで「インターネットに出る道」を設定することで、サーバーは外部と通信できるようになります。
操作手順
-
左メニュー「インターネットゲートウェイ」→「インターネットゲートウェイを作成」
-
名前タグ:
example_igw
- 「作成」をクリック
-
名前タグ:
👉 これで「門」が土地に取り付きました。
👉 これで「外に出る道」が開通しました。
なぜこの作業が必要なのか
- IGWがないと:サーバーは外と通信できない → Macから接続不可、Windows Updateも失敗
- ルート設定がないと:門はあるけど道がない状態 → 通信できない
ここでできたもの
-
example_vpc
に外部への出入口(IGW)が追加 -
example_public_subnet
からインターネットに出られるルートが完成
👉 これで、サーバーを建ててもインターネットにアクセスできる環境が整いました。次はいよいよ EC2インスタンス(Windowsサーバー)を起動 します。
ステップ4: EC2インスタンスを起動(Windowsサーバーを建てる)
ここまでで「土地(VPC)」「区画(サブネット)」「門(IGW+ルート)」ができました。
次はいよいよ、その上に 家=サーバー(EC2インスタンス) を建てます。
EC2(Elastic Compute Cloud)はAWSの仮想サーバーサービスです。
今回はここに Windows Server 2022 日本語版 をインストールして、Macからリモートデスクトップ接続できる環境を用意します。
操作手順
-
AWSコンソールで 「EC2」 を検索 → サービスを開く
-
左メニュー「インスタンス」→「インスタンスを起動」
-
入力内容を設定する:
-
AMI(Amazon Machine Image):
→ 検索欄に「Windows Server 2022 Japanese」と入力
→ 検証済みプロバイダーから以下を選択:
Windows_Server-2022-Japanese-Full-Base-2025.08.13
👉 日本語で操作できるWindows Server 2022がインストールされます
-
インスタンスタイプ:
m4.xlarge
→ vCPU 4コア、メモリ16GBの構成。学習や検証で快適に使えるサイズ。
→ もし料金を抑えたいならt3.large
(2vCPU / 8GB) でもOK -
キーペア:
→ 「新しいキーペアを作成」を選び、.pem
ファイルをMacに保存
→ 後で管理者パスワードを復号するために必須。紛失するとログインできません
-
ネットワーク設定:
- VPC:
example_vpc
- サブネット:
example_public_subnet
- 自動割り当てパブリックIP:有効(外部から接続するために必要)
- VPC:
-
セキュリティグループ:
- RDP (TCP 3389) → 自分のグローバルIPのみ許可
👉 全世界から開けるとすぐに攻撃対象になるので必ず制限する
- RDP (TCP 3389) → 自分のグローバルIPのみ許可
-
ストレージ:100GB
→ Windows Serverの初期値(30GB)ではすぐ足りなくなるため拡張推奨
4 「起動」をクリック
👉 これでクラウド上に「日本語版Windowsサーバー」が完成しました!
なぜこの作業が必要なのか
- AMIの指定:OSを選ぶ作業。英語版ではなく日本語版を選ぶと初心者にも扱いやすい
- インスタンスタイプ:性能とコストのバランスを取るため。小さすぎると遅く、大きすぎると高額
- キーペア:AWSが暗号化している初期パスワードを復号するために必須。紛失したら再接続不可
- パブリックIPの有効化:外部から接続するには必須設定
- セキュリティグループ:RDPは攻撃されやすい。必ず自分のIPに制限する
- ストレージ拡張:Windows Updateやアプリ導入で容量不足にならないため
やらないとどうなるか
- AMIを誤る → 英語版になり操作が難しい
- キーペアを失くす → サーバーに二度とログインできない
- パブリックIPを無効 → サーバーは起動するが外部から接続不可
- RDPを全世界開放 → 数分で攻撃ログが流れる危険性あり
- ストレージ不足 → 数週間でOSアップデートすらできなくなる
ここでできたもの
-
example_vpc
内のexample_public_subnet
に Windows Server 2022 日本語版のEC2インスタンスが起動 - パブリックIPが割り当てられ、外部からアクセス可能な状態になった
👉 次はMacから リモートデスクトップで接続 して操作します。
ステップ4.5: VPCでDNSを有効化(パブリックDNS名を使えるようにする)
EC2には「パブリックIP」だけでなく「パブリックDNS名(例: ec2-54-xxx-xxx.ap-northeast-1.compute.amazonaws.com
)」が割り当てられます。
これを使うと、インスタンスを再起動してIPが変わっても同じ名前でアクセスできます。
ただし、そのためにはVPCの DNS解決 と DNSホスト名 を有効化する必要があります。
操作手順
-
AWSコンソール → VPC を開く
-
example_vpc
を選択 -
右上「アクション」→「VPCの設定を編集」
-
以下を有効化する:
- DNS解決を有効化
- DNSホスト名を有効化
-
「保存」をクリック
👉 これでEC2インスタンスにパブリックDNS名が割り当てられます。
なぜこの作業が必要なのか
- パブリックIPだけで接続すると、再起動でIPが変わり毎回調べ直す必要がある
- DNS名を使えば常に同じ名前で接続可能
- Elastic IPを後から設定する場合も、このDNS設定は有効化しておくのがベストプラクティス
ステップ5: Macから接続(RDP: リモートデスクトップ)
ここまで準備できたら、いよいよMacからクラウド上のWindowsサーバーへ接続します。
AWSではRDP(リモートデスクトッププロトコル)を使ってWindowsにログインできます。
操作手順
1. Microsoft Remote Desktopをインストール
- Macの App Store を開き、「Microsoft Remote Desktop」を検索してインストール
2. Administratorパスワードを取得
- AWSコンソール → EC2 → 対象インスタンスを選択
- 上部「接続」ボタン → 「RDPクライアント」タブを開く
- 「パスワードの取得」をクリック
-
.pem
ファイルを指定して「パスワードを復号」 - Administratorの初期パスワード が表示されるのでコピー
3. Remote Desktopで接続設定
-
Macで Microsoft Remote Desktop を起動
-
入力内容:
4. 接続開始
補足(おすすめ設定)
- Elastic IPを割り当てると、IPが変わらず安定して接続できる
- 接続後すぐに Administratorパスワードを変更 → セキュリティ強化
- Windows Update を実行して最新状態にしておく
- サーバーの時刻を 日本時間(JST) に設定すると運用が楽
ここでできたこと
- Macからクラウド上のWindows Serverにログインできるようになった
- これで「クラウド上のWindowsパソコン」を自分のMacから操作できる
注意点
ここまでの手順で、MacからAWS上のWindows Serverに接続できるようになりました。
しかし、実際に使う際にはいくつかの注意点があります。これを理解していないと、思わぬ料金が発生したり、セキュリティリスクにつながるので要注意です。
1. コスト管理
AWSのEC2は 利用時間に応じて課金 されます。
起動したままにしておくと、使っていなくても料金が発生してしまいます。
👉 必ず「使い終わったらインスタンスを停止」しましょう。
(削除ではなく「停止」なら再度起動して同じ環境が使えます)
2. セキュリティ
-
RDP (3389) を 全世界に公開するのは厳禁。
必ず「自分のグローバルIPアドレスのみに制限」してください。 -
接続後はすぐに Administratorのパスワードを強力なものに変更 しましょう。
AWSの初期パスワードはランダムですが、それでも変更しておいた方が安心です。 -
定期的に Windows Update を実行して脆弱性を塞ぐことも重要です。
3. ストレージ容量
Windows Serverはアップデートやアプリケーションのインストールでどんどん容量を消費します。
30GBではすぐに枯渇するため、最初から 100GB以上 にしておくのが安心です。
4. ネットワーク安定性
-
Elastic IP を使わない場合、インスタンスを停止・起動するたびにパブリックIPが変わります。
そのたびに接続先を調べ直すのは不便なので、必要に応じてElastic IPを割り当てると良いです。
おわりに
この記事では、
- VPCを作成(ネットワークの土地を用意)
- サブネットを作成(サーバーの区画を切る)
- インターネットゲートウェイを設定(外との門を作る)
- EC2インスタンスを起動(Windowsサーバーを建てる)
- Macからリモートデスクトップで接続(実際に操作する)
という流れで、AWS上にWindows Server 2022を立ててMacから利用する方法 を解説しました。
クラウドを使うと、自宅にハイスペックなPCがなくても「必要なときだけ高性能なWindows環境を用意」できます。
学習・開発・検証など幅広いシーンで活用できるでしょう。
最初は少し複雑に感じるかもしれませんが、
一度体験してみると「クラウドにサーバーを建てる」という感覚がつかめるはずです。