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コードレビューはAIを挟め!ユーザー属性に応じたAIレビューの介在でスムーズなレビューを

Last updated at Posted at 2025-12-13

あなたのコードレビュー、ギスギスしていませんか?

「このコード、全然ダメだけど指摘したら角が立つかな…」
「先輩からのレビューコメント、怖くて開くのが憂鬱…」
「自分のタスクで手一杯なのに、レビュー依頼が溜まっていく…」

image.png

開発現場において、コードレビューは品質担保の要ですが、同時に 「コミュニケーションの課題」「時間の圧迫」 が最も起きやすい場所でもあります。

そこで提案したいのが、 「コードレビューにAIを挟む(介在させる)」 というアプローチです。

AI(ChatGPTやClaude、GitHub Copilotなど)を単なる「コード生成ツール」としてだけでなく、「コミュニケーションの緩衝材」「レビューの副操縦士」 として活用することで、経験の浅いメンバーから熟練者まで、全員が幸せになれるレビューフローを構築できます。

本記事では、エンジニアの経験レベル(属性)に応じたAI活用術を紹介します。

なぜコードレビューに「AIの介在」が有効なのか

コードレビューは本来、コードの品質を高めるための建設的な場であるはずです。しかし、そこには必ず 「人間同士のコミュニケーション」 が介在します。
人間同士が直接ぶつかり合うと、悪気はなくても感情やバイアス、あるいは遠慮が混ざり込み、以下のようなディスコミュニケーションが発生しがちです。

人間同士のレビューで起こりがちな「3つの弊害」

1. 心理的障壁と「マサカリ」への恐怖
「なぜこんな書き方をしたの?」
レビュアーにとっては単純な意図確認のつもりでも、受け取る側(特に経験の浅いエンジニア)にとっては「人格を否定された」「詰められている」と感じてしまうことがあります。いわゆる「マサカリ」への恐怖心から、レビュー依頼を出すこと自体が億劫になり、開発スピードが鈍化するケースも少なくありません。

2. 権威勾配による「忖度(そんたく)」
「先輩の書いたコードだから、多分正しいんだろう...」
経験の浅いメンバーが熟練者のコードをレビューする際、明らかなバグや疑問点に気づいても、「自分の勘違いかもしれない」「指摘したら失礼かもしれない」と飲み込んでしまうことがあります。これでは、ダブルチェックとしてのレビュー機能が形骸化してしまいます。

3. 「好み」の押し付けと不毛な議論
「三項演算子は読みづらいから嫌い」「ここはガード節を使うべき」
本来の仕様やバグとは関係のない、個人の好みやルールを絶対的な正解として指摘してしまうケースです。これに対しレビューイが反論を始めると、本質的ではない議論に時間を浪費し、お互いに精神を消耗してしまいます。

そこで、AIという「感情を持たない第三者」を挟む

こうした人間特有のノイズを取り除くために、AIを 「コミュニケーションの緩衝材」 として挟むことが極めて有効です。AIが介在することで、以下のような効果が期待できます。

  1. 客観性の確保: 個人の好みを排除した、コーディング規約や一般論に基づいたドライで標準的な指摘が得られる。
  2. 心理的安全性の向上: 人間から言われると「攻撃」と感じる厳しい指摘も、AI経由なら「機械的な判定」として冷静に受け止められる。
  3. ナレッジの平準化: 忖度なしに誰に対しても同じ基準でチェックが入るため、属人化しがちなレビュー品質を底上げできる。

では、各層のエンジニアがどうAIを使うべきか、具体的な利用方法を紹介していきます。

1. 【経験が浅いエンジニア向け】AIは「最強の家庭教師」

経験が浅いうちは、レビューを依頼されたとしても「どこを見ればいいのか分からない」「自信を持って指摘できない」という悩みを抱えがちです。

ここでAIを 「家庭教師」 として使います。

image.png

活用法:レビューの「観点」を教わる

コードをAIに渡し、どこに注目すべきかを聞いてみましょう。

プロンプト例:

私は経験の浅いエンジニアです。以下のコードのコードレビューをすることになりました。
このコードの問題点や、確認すべきポイント(セキュリティ、可読性、パフォーマンスなど)をリストアップしてください。
また、なぜそこを見るべきなのか、理由も併せて教えてください。

メリット

  • 学習とレビューの同時進行: 指摘すべき内容だけでなく「なぜダメなのか」を学べるため、レビューをするたびに技術力が向上します。
  • 自信の裏付け: 「AIもこう言っている」という材料があることで、先輩エンジニア相手でも建設的な質問や提案がしやすくなります。

2. 【中堅エンジニア向け】AIは頼れる「副操縦士(コ・パイロット)」

一通りの実装はできるが、アーキテクチャ全体や保守性まで完璧に見通すには時間がかかる中堅層。
自分のタスクも重い中でレビューもこなさなければならない、いわば 「時間と品質の板挟み」 になりやすい属性です。

ここでAIを 「副操縦士」 として使い、効率と品質を両立させます。

image.png

活用法A:コンテキスト把握の高速化(時短)

他人のコードを理解するのは時間がかかります。まずはAIに要約させましょう。

プロンプト例:

このプルリクエストの変更内容を、ビジネスロジックの観点から3行で要約してください。
また、この変更によって影響を受けそうな既存機能があれば推測してください。

活用法B:盲点の発見(品質向上)

中堅層でも見落としがちな「エッジケース」や「セキュリティホール」をAIに壁打ちさせます。

プロンプト例:

この関数において、入力値が極端な場合(エッジケース)や、Nullの場合に発生しうるバグを指摘してください。

メリット

  • 脳のリソースを本質に集中: コードの読解や単純なバグ探しをAIに任せ、人間は「設計の妥当性」や「仕様との整合性」の判断に集中できます。
  • 抜け漏れの防止: 自分一人では気づかなかった視点をAIが補ってくれるため、シニアに近い視座での品質担保が可能になります。

3. 【熟練したエンジニア向け】AIは「最高の翻訳家」

技術力が高く、バグを一瞬で見抜ける熟練エンジニア。しかし、その鋭い指摘は時として「マサカリ」となり、相手を萎縮させてしまうことがあります。
「正しいことを言っているのに、なぜか空気が悪くなる」…そんな悩みには、AIを 「翻訳家」 として使います。

image.png

活用法:指摘をマイルドに「翻訳」する

厳しい指摘をそのまま書き込む前に、AIに「言い方」を加工してもらいましょう。

プロンプト例:

以下のレビューコメントは、内容は正しいですが少しきつく聞こえるかもしれません。
相手(後輩エンジニア)のモチベーションを下げず、かつ改善点は明確に伝わるような、心理的安全性の高い文章に書き換えてください。
絵文字を使っても構いません。

[自分の書いた厳しいコメント]

メリット

  • 心理的安全性の確保: 相手が萎縮せず、前向きに修正に取り組めるようになります。
  • 不毛な衝突の回避: 言い方によるトラブルを防ぎ、チーム全体の開発効率を維持できます。

まとめ:属性別AI活用マトリクス

ここまでの内容をまとめると、以下のようになります。

エンジニア属性 抱えている課題 AIの役割 具体的なメリット
経験浅(ジュニア) 何を見ればいいか分からない 家庭教師 レビュー観点の学習、技術力向上
中堅(ミドル) 時間がない、見落としが怖い 副操縦士 レビューの効率化、抜け漏れ(盲点)の発見
熟練(シニア) 言い方が厳しくなりがち 翻訳家 心理的安全性の確保、チームの雰囲気向上

自動化ツール「CodeRabbit」の活用

「毎回ChatGPTにコードをコピペして聞くのは面倒…」「チーム全体でこのフローを定着させたい」という方には、CodeRabbitのような自動AIレビューツールの導入がおすすめです。

CodeRabbitは、GitHubやGitLabなどのリポジトリと連携し、プルリクエストが作成・更新されるとAIが自動でコードを解析してくれるサービスです。単なるバグ指摘にとどまらず、「行単位での具体的なコード修正案の提示」や、プルリクエストの内容を分かりやすくまとめる「変更内容の自動要約(Walkthrough)」、さらには指摘内容についてAIとチャットで対話する機能まで備えています。

これを導入することで、人間が能動的にAIへ働きかけなくても、開発フローの中で自然にAIレビューを受けることが可能になり、各エンジニア層に以下のようなメリットをもたらします。

  • 経験が浅いエンジニア(学習)
    PRを出した瞬間に「24時間対応のメンター」としてAIからフィードバックを受けられます。AIの指摘に対してチャット機能で「なぜ?」と質問もできるため、先輩の手を煩わせることなく、修正と学習のサイクルを高速化できます。
  • 中堅エンジニア(時短)
    CodeRabbitが変更内容を自動で要約してくれるため、レビュー時に最も時間のかかる「他人のコードのコンテキスト把握」を大幅に短縮できます。また、単純なバグや構文エラーはAIが先に見つけてくれるため、設計や仕様の確認といった本質的なレビューに集中できます。
  • 熟練エンジニア(精神的負荷の軽減)
    「インデントがずれている」「不要なログが残っている」といった、細かいけれど言わなければならない指摘(Nitpick)をAIが代行してくれます。「小言」を言う精神的コストから自らも解放され、人間関係に配慮しつつ品質を担保できます。

AIレビュー活用の注意点

ただ、AIによるコードレビューにも注意点があります。

image.png

AIをレビューに活用する際の注意点として以下2点に留意しておきましょう。

  1. 機密情報の取り扱い
  2. 最終判断は人間が行う

企業内のコードをパブリックなAIサービス(学習に利用される設定のもの)に入力しないよう、セキュリティポリシーを必ず確認が必要です。SaaSを利用する場合でも、データ保護の規約を確認しましょう。CodeRabbitでは英語でのデータ処理契約、EUのGDPRに則った形でデータを取り扱うと明記されています。

また、AIはハルシネーション(嘘)をつくことがあります。どんどんAIの精度が上がり、それに応じてレビューの精度も上がっていますが、AIは責任を取ることはありません。「AIが言ったから」ではなく、最終的に人間が納得して判断を下すことが重要です。

おわりに

コードレビューにAIを挟むことは、決して「手抜き」ではありません。
それぞれのエンジニアが抱える弱点(知識不足、時間不足、対人スキル)をAIで補完し、「より本質的な議論」 に時間を割くためのハックです。

明日からのコードレビュー、まずはこっそりAIに相談することから始めてみてください。
それぞれのエンジニアのレベルに応じた、効率化できるAIレビューが見つかるはずです。

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