この記事は、The Agile Guild(TAG) Advent Calendar 2018の21日目のエントリーです。
はじめに
※この記事は個人の見解であり、所属する組織の公式見解ではありません。
この記事では、
- SESメインの会社の管理職が
- 同じ部署(別々の現場、別々の案件)のメンバーで
- チームになり、そしてチームであり続ける為に考えていること、そして部署全体でやっていること
を書いていきます。
SESに対する個人的な見解
いきなり本筋からずれるのですが、この個人的な見解がないと「なぜSESにこだわるの?」という根本の疑問が払拭出来ないと思うので先に触れておきます。
ですが、あくまで今回のテーマとは異なるのでさらっとしたまとめに留めます。
昨今SESというとどうしても悪いイメージがついてしまいがちですが、私個人はSESという業態自体は悪いことではなく、むしろ今後より必要になってくる業態であると考えています。
確かに現状の日本のSES業態を取り巻く環境に問題はあります。
ですが、それは必ずしもSESという業態そのものが悪であるわけではないと考えています。
SES業態を取り巻く環境の問題については他にまとめられている方がたくさんいらっしゃるので割愛し、今回は
- SESとは
- これからのSESの未来
について個人の見解をまとめさせて頂きます。
SESとは
SESの契約を記したシステムエンジニアリングサービス契約
について、Wikipediaによると、
システムエンジニアリングサービス契約(SES契約)とは、システムエンジニアが行うシステム開発等に関する、委託契約の一種(委任・準委任契約等)で、システムエンジニアの能力を契約の対象とするものである。
こう書かれています。
上記ページにある問題点のように発注者側の立場が強くなり対等な立場で契約出来ない場合はありますが、SESという業態自体は納品等の成果ではなく、あくまで個人の能力に対して契約をするものです。
もちろん結果がでなければ個人の能力に対する評価がもらえず契約を継続することが出来ないわけですが、瑕疵担保のような直接的な損失をしてしまうようなリスクはありません。
捉え方は人それぞれだと思いますが、私はこの契約は今後の時代にとてもフィットした契約であると考えています。
次項でその理由について書いていきます。
これからのSESの未来
まず、これまでとこれからの時代を自分なりの言葉でまとめると、
これまで | これから |
---|---|
|
|
このような違いがあると考えています。
次に、これからの時代で懸念とされていることを自分なりの言葉でまとめると、
- 人口減により優秀な人材を雇用することが非常に難しくなる
- 時代の流れが早く流れに追いつけない企業が増え、企業の平均寿命が短くなる
- 終身雇用という制度が当たり前から特別に変わり、企業が従業員を守れなくなる
- 企業の肩書よりも個としての評価が重要視される
このようなことが挙げられると考えています。
このような時代を生き抜くためには、
- 正社員だけでなく外部の人材を積極的に活用する
- 正社員、外部の人材の垣根を取っ払い、皆で一緒にビジネスを成長させていく
この2点が企業活動を継続させるうえで非常に大切になってくると考えています。
これらを一文でまとめると、ただ外部の人材を活用するだけでなく、また発注者とベンダーのような上下関係でなく、互いがビジネスパートナーとなり、同じ目標に向かって走っていく必要があると言えるのではないかと考えています。
そうなると、もはやSESという業態はあったほうが良いではなく、なくてはならない業態ではないかと私は考えています。
前段であるにもかかわらず非常に長くなってしまいましたが、ここまでが私の考えるSESになります。
なお、このSESの未来についてはあくまでSESという契約に対する未来であり、企業でSESを行う必要があるかといえばそんなことはないと考えています。
また、少しずつですがリモートや短時間のSES契約も増えてきておりますので、必ずしもオンサイトで、フルコミットで行うSESだけを指しているわけではありません。
チームとは
SESでチームになる前に、まずはチームの定義を考えていきます。
チームに対する個人的な見解を「良いチームとは何か、そして良いチームであり続けるために何が必要か」にまとめていますが、私はチームを、
- 互いに成長し続け、より良い成果を挙げ続けることが出来る集団
と考えています。
異なる現場、異なる案件で業務をする中でチームになるとはどういうことか
今回は 同じ現場、同じ案件
ではなく、異なる現場、異なる案件で業務をしている同じ部署のメンバーでチームをつくる為にどうすれば良いかを考えていきます。
そこで、まずは上記2つの違いをもう少し深掘りしてみます。
同じ現場、同じ案件 | 異なる現場、異なる案件 |
---|---|
|
|
この2点が大きな違いだと考えています。
つまり、異なる現場、異なる案件でチームになるためには、別々の問題を解決していく中で、共有資産を増やし、刺激しあい、ともに成長していく必要があると考えています。
次項で、別々の問題を解決していく中で共有資産を増やし、刺激しあい、ともに成長していく為にどうすれば良いのか考えていきます。
チームになるにはどうすれば良いのか
別々の問題を解決していく中で、共有資産を増やし、刺激しあい、ともに成長していく為にどうすれば良いのか?
言葉の通りですが、
- 共有資産を増やす
- 刺激し合う
- 成長していく
この3つが必要になるので、次項以降でそれぞれを噛み砕き、実際に私が所属する部署でどのようなことをしているのかまとめていきます。
チームになるためにやっていること
所属部署のメンバーのそれぞれがやったほうが良いと思ったことを試すようにしています。
以降で具体的な説明をしていきます。
共有資産を増やす
ナレッジ共有
という言葉は前提になりすぎて今ではほとんど聞くことがなくなりましたが、共有資産を増やすということは詰まるところナレッジ共有だと考えています。
ここで難しいのは、何をナレッジとするのか
ですが、一つ一つを全て考えていると非常に大きなコストが必要となるので、まずは出来る限り情報を共有することが必要だと考えています。
とは言え情報を共有するにもコストがかかります。
そこで、所属する部署では以下のようなことを取り組んでいます。
- チャットツールを利用する
- 情報共有サービスを利用する
以降で具体的な運用方法をまとめていきます。
チャットサービスを利用する
もはや一般的になりすぎましたがSlackを利用しています。
また、そのSlackにて部署全員がこちらにあるようなtmesを利用しています。
もちろん顧客に関わる情報の共有は一切せず、技術的なスキルに対する困りごとや達成出来たこと、プロジェクト管理するうえで抱えている問題などを各自ツラツラ書いていっています。
情報共有サービスを利用する
情報共有サービスは以下の2種類を利用しています。
- Crowiを使った情報共有
- 自作のキュレーションアプリを使った情報共有
まず、CrowiはOSSでこちらを自前で立てて運用しています。
部署での決めごとや、技術情報のアウトプットなどをCrowiでしています。
次に、自作のキュレーションアプリですが、やっていることは、
- 気になる記事があったら投稿する
- 記事に対して自身の考えがあればコメントする
の2つだけです。
社内版の簡易NewsPicksのようなイメージです。
技術やマネジメントに関する情報のインプットは、慣れている人であれば苦労なく出来ますが慣れていない人からするとどこから情報を取得すれば良いんだろう
と悩むことが多いかなと思います。
また、記事を共有するだけでなくコメント出来るようにすることでそれぞれの思考も共有することが出来るのではないかと考えています。
刺激し合う
これは言葉の通りになるのですが、刺激し合うためには互いのことを知る必要があると考えています。
前項に記載した共有資産を増やす過程で刺激になっている部分はありますが、それ以外でも行っていることが2つあります。
- 部署内でOKRを運用する
- 定期的にTGIFを行う
以降で具体的な運用方法をまとめていきます。
部署内でOKRを運用する
全社的なOKRを運用するには至っていないのですが、部署と個人の2階層でOKRを運用しています。
と言っても、案件が異なるとなかなかSESの会社でしっかりとしたOKRを設定することは難しいので、部署と個人、ObjectivesとKeyResultsは緩くつながりを持たせる程度にとどめています。
ざっくりとしたイメージは、
- 部署Objectives
- 部署全体のありたい姿
- 部署KeyResults
- ありたい姿に近づく為に半期(2Q分)で目指すこと
- 個人Objectives
- 部署のObjectives、またはKeyResultsに何かしら関連する自身のありたい姿
- 長期的なものでも短期的なものでも構わない
- 部署のObjectives、またはKeyResultsに何かしら関連する自身のありたい姿
- 個人KeyResults
- ありたい姿に近づく為に1Qで目指すこと
- 個人のKeyResultsは現場の状況等によって頻繁に変わる可能性があるのでQ単位にしている
- また、KeyResultsを達成するためのKeyActionも設定している
- KeryResultsを達成するために日々行っていく具体的な行動
- ○○に関する技術を○時間/月勉強する
- ××に関する勉強会に○回/Q参加して都度Crowiにまとめる
- etc
- KeryResultsを達成するために日々行っていく具体的な行動
- ありたい姿に近づく為に1Qで目指すこと
こんなイメージで行っています。
また、決めた後では以下のような運用をしています。
- 部署のメンバー全員分のOKRを全員が閲覧可能な状態にしておく
- 月に一度、botがOKRに対する振り返りを質問し、KPTで振り返る
- 振り返った回答はSlack上で連携して、メンバー全員が閲覧可能な状態にし、自由にコメントしあう
定期的にTGIFを行う
こちらはまだ始めたばかりですが、TGIFという集まりを月イチで開催するようにしています。
具体的に行っていることは、日々感じている困りごと等に対して、メンバー同士で議論しあう
です。
また、アジェンダなしだと収集がつかなくなるのとネタがなくなる恐れがあるので、以下のような工夫をしています。
- こちらを使って、TGIFスタンプが押された内容はTGIF用チャンネルにストックされるようにしておく
- Slackのtimesの発言でそれぞれ思い思いのことをつぶやく
- 誰か「これTGIFで議論したい!」と思う内容があったら、にある方法でTGIFスタンプを押す
- TGIFではストックされたチャンネルのテーマについて話し合う
成長していく
こちらは文字通りで、上記の共有資産を増やす活動と刺激し合うことで、メンバー全員が成長していけるのではないかと考えています。
もちろんそれをやったからといって必ず成長出来るわけではないですし、施策も一度決めて終わりではなく、良いと思うことは取り組み、ダメだったらやめるということを繰り返していく必要があると考えています。
さいごに
SESで、異なる現場で、異なる案件のメンバー同士がチームになり、どうすればチームであり続けられるのかを考えて、実際に今試していることをツラツラ書いてみました。
が、どれもうまく回っている
とは思っておらず改善の余地が大いにアリアリで日々悩んでいます。
SESという業態をメインとする企業だと社内の関係は薄れ、会社と個人とが相互に成長していく関係を築くのは非常に難しいなと日々痛感しています。
が、決して出来ないことはないと思っていますし、必ず出来るとも信じています。
(本音を言うと、世間的なSESに対する逆風が一番のモチベーションだったりもします笑)
最後になりましが、当アドベントカレンダーの主催であるTAGに対して私自身全く貢献出来ていない中での投稿となってしまいましたが、TAGの目的や存在意義には非常に共感する部分が多く、自分自身新たにTAGでチャンジしていきたいと考えています🙇!!!