はじめに
IBM Cloudでは、Carbon Calculatorという新サービスを通じて二酸化炭素(CO2)を含む温室効果ガス(GHG)の排出量を確認することが可能になりました。
特に、企業がクラウドを利用する際、オンプレミス環境と比較して、間接的な電力消費に起因する温室効果ガスの計算は困難です。Carbon Calculatorは、これらのCO2および温室効果ガスの排出量を正確に把握するための有用なツールです。
またこの記事では、裏側ではどのような計算ロジックで算出されているのかも記載しています。
Carbon Calculatorの概要
このサービスでは、ユーザーのIBM Cloudアカウントが利用する各サービスによって発生する温室効果ガスの排出量を確認できます。アカウント全体の排出量に加え、個別のサービス、ロケーション、リソースグループごとにフィルターをかけて排出量を確認することが可能です。
計算の基本的な考え方は、データセンターでの電力消費とそれに伴う温室効果ガス排出量に焦点を当てることです。特徴的な点として、ユーザーが直接使用するサービスだけでなく、間接的に利用する機器などの電力消費も計算に含まれます。データセンター全体の総排出量は、それぞれのサービスの使用率に基づいて各アカウントに配分されます。
Carbon Calculatorを使ってみる
IBM CloudのCarbon Calculatorページにアクセスします。
または、IBM Cloudポータルから「Manage」→「Billing and Usage」→「Carbon Calculator」へと進むことができます。
ここでは、アカウント全体の排出量だけでなく、サービス、ロケーション、リソースグループ別に排出量を確認できます。期間やサービス、ロケーションごとのデータフィルタリングも可能です。「Export」機能を使用すると、データをCSVファイルとして出力し、追加分析が可能です。
表示される排出量は、請求サイクル終了後のデータに基づくため、最新のデータが表示されるまでに約2ヶ月かかります。
さらに詳細なESGレポートについては、IBM Enviziを利用することもできます。
排出量の計算方法とは
ロケーション、サービス、アカウントごとの温室効果ガス排出量は以下の式で求めることができます。
「IT電力消費量」とは、特定のアカウントが特定のロケーションで使用する特定のサービスに関連する電力消費量を指します。たとえば、東京リージョンで仮想サーバーを使用する利用者アカウントの電力消費量がこれに当たります。
この計算においては、まず、仮想サーバーの全ロケーションにおけるIT電力消費量を推定します。次に、この推定値を基にして、東京リージョンにおける具体的なIT電力消費量を算出します。その後、このロケーションでの消費電力を、そのロケーションを利用している各アカウントに割り当てることにより、個々のアカウントごとのIT電力消費量を最終的に算出します。
この計算方法は、一つのロケーションの消費電力を、そのロケーションを使用するすべてのアカウントに分配するという考え方に基づいています。
次に「電力使用効率(PUE:Power Usage Effectiveness)」というものは、IBM Cloudのデータセンターは通常は第三者のデータセンター事業者の共有施設でホストされているので、施設のインフラはIBMの管理下にはありません。そのため、データセンターの中の設備で発生する追加的な非IT電力消費を考慮に入れるために、電力使用効率という指標を使ってオーバーヘッドを反映します。
電力使用効率は各データセンターから提供されるデータを基に計算されます。
最後に「炭素排出係数(CEF:Carbon Emission Factor)」は、CO2排出量を測定するための指標で、地域固有の排出係数を用いて計算されます。これは、地域ごとの異なるエネルギー源や電力の需要供給差を考慮しています。
また、計算の対象外となる要素には、IBM Cloudサーバールームの外にある共用部分の電力消費、サーバールーム外で稼働するサービスの電力消費、機器の製造や原材料製造に伴う電力消費、機器の運搬や廃棄、再利用に伴う電力消費などが含まれます。
まとめ
本記事では、IBM Cloud Carbon Calculatorの概要、利用方法、計算方法の裏側を紹介しました。
このツールは簡単に利用開始でき、さらに無料で利用可能です!
是非、自身のアカウントで温室効果ガス排出量を確認してみてください。