「AIを使うとバカになる」への反論。コードが書けない私が、バイブコーディングで「賢くなるためのLLMツール」を3日間で作った話
はじめに:「退化」への違和感と、LLM時代のリアルな課題
よく動画メディアなどで、著名な大学教授が「AIなんて使ったら人間の思考力が落ちる」「バカになる」と問題提起されているのを見かけます。
確かに、そろばんを弾いていた時代に比べれば、現代人の暗算能力は落ちているかもしれません。しかし、情報が溢れる現代において、情報の取捨選択や処理スピードは、老化を差し引いても今の10代の方が圧倒的に早いと感じます。新しい技術が生まれるたびに「退化」の議論は起きますが、それは時代に合わせて能力の偏りが調整されているだけで、全体としての「知の総量」が減っているわけではないのではと考えております。
ただ一方で、毎日LLMを使い倒している私自身、ある「違和感」を抱えていました。
LLMから自分の知らない新しい知識をインプットし、「へえ、面白い!」と驚きながら質問を重ねていく。しかし、よくよく深掘りしていくと、**「あれ、これ前にも似たようなことを聞いたな」**と思い出す瞬間があるのです。
情報は得ている。でも、自分の脳内で知識が構造として紐づいていない。チャットが流れるにつれて、理解もするすると流れていってしまう。「情報は増えるが、理解は深まらない」という問題です。
AI時代に本当に求められるのは「問う力」と「没頭」
これからのAI時代、人間に求められるのは正解を出す力ではなく。**「問う力」**ではないでしょうか?
AIが提示する、隙のない美しいロジック。その中にある「ささくれ」のような些細な違和感に、自分が納得いくまで深く深く問い続けること。 矛盾があれば、AIの論理的戦闘力なんて無視して、徹底的に問い詰める。
そんな、フラフラと行き当たりばったりで、でも気になったことに没頭できる体験。それこそが、AIを「答え合わせの道具」ではなく「知能の拡張ツール」として使うための最適解だと思います。
しかし、既存のチャットUIは「線形」です。深く掘り下げた後、元の大きなテーマに戻ろうとしても文脈が迷子になり、またイチから前提を説明し直すハメになります。
「ないなら、理想の環境を自分で作ればいい」
そう思い立ちました。プログラミング言語は一切書けない、非エンジニアの私が、です。
MVP10回分の無茶振りを叶えた、驚異の3日間(バイブコーディング)
開発手段として選んだのは、自然言語のみでのシステム開発を行う「バイブコーディング」です。ツールは Antigravity と Gemini 3.1 Pro を使用しました。
結果から言うと、驚愕の体験でした。
普段、企業のDX企画としてシステム要件に向き合っている身からすると、震えるようなスピード感です。開発に割けたのは、4歳の子どもを寝かしつけたあとの、夜の1〜2時間だけ。トータルで3日間です。
その短い時間の中で、「Google Driveと連携して、ナレッジ書き直せるようにして」「LLMの回答をドラッグ&ドロップでナレッジに追加できるようにして」など、思いつきのままに指示を出しました。実業務なら開発チームが確実にキレ散らかすような、MVP10回分に相当する無茶なピボットです。
しかしAIは、文句一つ言わずにほとんどの思いつきを一撃で実現してくれました。
世に出す前のウォークスルー(動作確認と修正指示)さえサボらなければ、**「本当に誰でも、自分の頭の中にあるサービスを構築できる時代になった」**と、自らの体験を通して確信しました。
そうして生まれたのが「GraphTerminal」です
こうして、非エンジニアの私が3日間で作ったのが、LLMとの対話を「履歴」ではなく「理解の構造(Tree/DAG)」として扱うコグニティブ・インターフェース、**『GraphTerminal』**です。

▶ Try it Now | GitHub
「答え生成機」から「理解エンジン」へ。現在の主な特徴は以下の通りです。
1. 思考をTree/DAGで可視化し、「深く問う」を止めない
画面左でLLMと対話しながら、右側に概念ツリー(Concept Matrix)が自動で構築されます。
気になった「ささくれ」があれば、そこからノードを分岐させて、別の思考パスを並行探索できます。
2. ワンボタンで元の文脈へ復帰(コンテキスト再投入)
これが一番やりたかったことです。
深く深く問い続けた後、元の大きなテーマに戻りたくなった時。GraphTerminalなら、構造化されたツリーからマークダウン(md)化されたファイルをワンボタンで抽出し、それをコンテキストとしてLLMに渡して元の議論に復帰できます。思考の迷子になりません。
3. ### 3. 知識を繋ぎ、育てる(Google Drive連携)
Googleドライブのフォルダを連携することで、ワンボタンでツリーやノードをmd保存できます。さらに、以前別テーマで作成したmdファイルを今のツリーに取り込めば、mdファイルの書き換えや「知識の継ぎ足し」が可能です。一度きりの会話で終わらせず、時間をかけて理解を積み上げていくことができます。
🛠 実装済みの機能一覧
デモ画面(GIF)には映しきれていませんが、非エンジニアの無茶振りの結果、実は結構ギークな機能まで実装されています。
💬 チャット・セッション管理
- マルチセッション: 複数の会話を作成・切り替え・削除。タイトル自動生成
- ファイル添付: 画像・テキスト・コード(.py, .md等)をD&Dで添付
- 生成中止: STOP ボタンでいつでも中断可能
🌳 概念ツリー(CONCEPT_MATRIX)
- 自動概念抽出: AI回答後にバックグラウンドで概念を抽出し、ツリーへ自動追加
- コンテキスト適用 [CTX_ON]: ノードを選択すると次のプロンプトに内容を注入
- AI要約 [SUMMARIZE]: ノードに溜まったメモをAIが1つの要約に再構築
- D&Dでノード追加: チャット本文をツリーにドラッグして直接ノード化
- Undo: 最大20件の変更を元に戻せる
📚 ナレッジ・Google Drive連携
- Google Drive同期: 指定フォルダのmd/txtファイルをインデックス化
- LLMによるファイル推薦: 入力内容から関連ファイルをAIが最大10件自動提案
- RAGスタイルの知識適用: 選択ファイルの本文をプロンプトに結合して回答精度を向上
📤 Import / Export
- Markdownエクスポート: ツリー全体または個別ノードをMDとして出力(Drive直接保存も可)
- Markdownインポート: 以前書き出したファイルからツリーを復元
- カスタムメタデータ: エクスポート時に任意のメタ情報を自動付与(RAG連携向け)
おわりに:自ら証明したいからこそ、意見が欲しい
GraphTerminalは、**「LLMを使えば使うほど、自分が賢くなれる仕組み」**を目指しています。
と同時に、このツール自体が「コードが書けなくても、熱量とバイブコーディングがあればここまで形にできる」という一つの証明だと思っています。
ただ、コンセプトには確信があるものの、UIの正解やDAGのノード操作のUX(分岐・マージのインタラクションなど)については、まだまだ Experimental な段階です。
「完成品」としてドヤ顔で出すよりも、「一緒に作る」モードで皆さんの知見をお借りしたいと思い、公開に踏み切りました。
「こういう機能が欲しい」「ここが使いにくい」「この発想は面白い(あるいはイマイチ)」など、どんな些細なことでも構いません。ぜひ実際に触ってみていただき、コメント欄やGitHubのIssue/Discussionで辛口の意見を聞かせてもらえると嬉しいです!
"Understanding that compounds. Not conversations that vanish."