新しいMicrosoft Copilot Studioを管理者目線で解説 - UI刷新からナレッジ、ツール、評価・公開まで
はじめに
2026年6月、Microsoft Copilot Studioに新しいエージェント作成エクスペリエンスが追加されました。
今回のアップデートは、単に画面デザインが変更されたというものではありません。エージェントの作り方そのものが、従来の「トピックや会話フローを細かく設計する方式」から、自然言語の指示を中心にエージェントの役割や能力を定義する方式へと大きく変わっています。
新しいエクスペリエンスは、2026年7月時点で「運用環境対応のプレビュー」として提供されており、従来のクラシックエクスペリエンスと並行して利用できます。
本記事では、管理者や社内のCopilot Studio推進担当者に向けて、以下のポイントを紹介します。
- 新しい作成画面とUI
- エージェント作成フローの変化
- ナレッジとツールの追加方法
- プレビュー、評価、監視機能
- 公開とバージョン管理
- 管理者が確認すべきガバナンス項目
本記事の内容は2026年7月時点の情報です。プレビュー機能のため、画面や仕様が今後変更される可能性があります。
1. Copilot Studioの新しいUI
新しいCopilot Studioでは、エージェントの作成・テスト・評価・監視が、次の4つのタブに整理されています。
| タブ | 主な用途 |
|---|---|
| Build | 指示、ナレッジ、ツール、スキル、モデルなどを設定 |
| Preview | エージェントと会話しながら動作を確認 |
| Evaluate | テストセットを使用して品質を評価 |
| Monitor | 実行されたタスクやアクティビティを確認 |
従来は「トピック」「ナレッジ」「アクション」「設定」などのメニューを移動しながらエージェントを構築していました。
新しいUIでは、エージェントを構成する要素が1つの画面に集約されているため、エージェントが「何を知っているか」「何ができるか」「どのように判断するか」を把握しやすくなっています。
2. エージェント作成方法の変化
従来のエクスペリエンス
従来のCopilot Studioでは、主に以下の要素を組み合わせて会話を設計していました。
- トピック
- トリガーフレーズ
- 条件分岐
- メッセージノード
- アクションノード
- Power Automateフロー
業務プロセスを細かく制御できる一方で、複雑なエージェントではトピックや分岐が増え、全体構成を把握しにくくなることがありました。
新しいエクスペリエンス
新しいエクスペリエンスでは、最初に自然言語でエージェントの目的を説明します。
例えば、社内ITサポートエージェントであれば、次のような指示を設定できます。
あなたは社内ITヘルプデスクの担当者です。
社員からの問い合わせに対して、社内FAQとIT運用マニュアルを参照して回答してください。
問題を解決できない場合は、ServiceNowでサポートチケットを作成してください。
回答は簡潔で分かりやすい日本語にしてください。
この指示を基に、エージェントがナレッジやツールを選択しながらユーザーの依頼を処理します。
新しい方式では、トピックやノードを中心とした設計ではなく、1つのエージェントに指示・ナレッジ・ツール・スキルを組み合わせるという考え方になっています。
また、すべての新しいエージェントで強化されたオーケストレーションランタイムが使用され、特にMicrosoft 365データを利用するシナリオで、より深い推論と回答品質の向上が図られています。
クラシック版との変換はできない
管理者が特に注意すべき点として、クラシックエクスペリエンスで作成したエージェントを、新しいエクスペリエンスへ直接変換することはできません。
反対に、新しいエクスペリエンスで作成したエージェントをクラシック版へ変換することもできません。両者は異なるアーキテクチャとオーケストレーションランタイムを使用しているためです。
そのため、既存エージェントを移行する場合は、単純な画面切り替えではなく、新しいエクスペリエンスでの再設計・再構築が必要になります。
3. ナレッジの追加
ナレッジは、エージェントがユーザーの質問に回答するときに参照する情報です。
新しいエクスペリエンスでは、Build画面から以下のようなナレッジソースを追加できます。
- ファイルのアップロード
- SharePoint
- 公開Webサイト
- Azure AI Search
- Dataverse
- Dynamics 365
- Salesforce
- ServiceNow
- Azure SQL
- その他の接続済みデータソース
ファイルは、追加画面へドラッグ&ドロップして登録することもできます。
Microsoft IQによる組織データへのアクセス
新しいエクスペリエンスでは、Microsoft IQを利用して、ユーザーのコンテキストに基づくMicrosoft 365の組織データへアクセスできます。
対象には、メール、予定表、ファイル、Teamsメッセージ、人物情報などが含まれます。明示的に登録したナレッジソースとMicrosoft IQを組み合わせることで、固定された社内文書と、ユーザーごとに異なるMicrosoft 365情報の両方を利用できます。
管理者は、エージェントがどのデータへアクセスするのかだけでなく、誰の権限でアクセスするのかも確認する必要があります。
4. ツールとスキル
ナレッジが「エージェントが知っている情報」であるのに対し、ツールは「エージェントが実行できる処理」です。
新しいエクスペリエンスでは、代表的なツールとして以下が利用できます。
Power Platformコネクタ
SharePoint、Outlook、Salesforce、ServiceNow、SAPなど、Microsoft製品および外部サービスのデータを読み書きできます。
MCPサーバー
Model Context Protocolを使用して、社内API、データベース、独自サービスなどの機能をエージェントへ提供できます。
ワークフロー
承認、データ変換、複数システムへの登録など、複数ステップで構成される業務処理を実行できます。
例えば、次のような処理が考えられます。
- 社員から問い合わせを受け付ける
- SharePointのFAQを検索する
- 解決できない場合はServiceNowへチケットを登録する
- チケット番号をユーザーへ返す
コネクタ、MCP、ワークフローを組み合わせることで、エージェントを「質問に回答するチャットボット」から「実際に業務を実行するエージェント」へ拡張できます。
スキルと接続されたエージェント
スキルは、特定の依頼に対応する再利用可能な処理や振る舞いを定義する機能です。
また、接続されたエージェントを使用すると、特定業務に特化した別のエージェントへ処理を委任できます。接続先のエージェントは、独自の指示、ナレッジ、ツールを持った状態で動作します。
将来的に複数部門でエージェントを展開する場合は、1つの巨大なエージェントを作成するのではなく、業務ごとのエージェントへ役割を分ける設計も重要になります。
5. Preview:公開前のテスト
Previewタブでは、作成中のエージェントと会話しながら動作を確認できます。
単に回答結果を見るだけでなく、アクティビティトレースを使用して、以下の情報を確認できます。
- 参照したナレッジソース
- 実行したツールやコネクタ
- フローやスキルの実行状況
- 入力値と出力結果
- 処理時間
- エラーの詳細
問題のあるナレッジやツールを選択すると、Buildタブの該当する設定へ移動して修正できます。
管理者やレビュー担当者にとっては、「回答が正しいか」だけでなく、どのデータと処理を使って回答したかを確認できる点が重要です。
6. Evaluate:テストを仕組み化する
Previewは個別の動作確認に適していますが、多数のテストケースを毎回手作業で確認するのは大変です。
Evaluateタブでは、テスト用の会話と期待する結果をテストセットとして登録し、エージェントの品質を繰り返し評価できます。
テストケースは、手動作成、AIによる生成、CSVファイルのアップロードなどで準備できます。
これにより、次のような確認が可能になります。
- 想定した質問へ正しく回答できるか
- 設定変更後に回答品質が低下していないか
- 必要な場面でツールが実行されているか
- 新しいナレッジ追加による影響がないか
新しいエクスペリエンスでは、評価機能が作成画面の一部として組み込まれています。エージェントを作成して終わりではなく、テスト、改善、再評価を繰り返す運用がしやすくなっています。
7. Monitor:公開後のアクティビティを確認
Monitorタブでは、公開後のエージェントについて、最近のアクティビティや完了したタスク、アクセスしたファイルなどを確認できます。
PreviewとEvaluateが公開前の品質確認であるのに対し、Monitorは公開後の運用状況を確認するための機能です。
管理者は、例えば以下の観点で確認できます。
- エージェントが想定どおり利用されているか
- どのようなタスクが実行されているか
- エラーや失敗が発生していないか
- 想定外のファイルやデータへアクセスしていないか
- 継続的な改善が必要な処理はないか
8. 公開とバージョン管理
作成中のエージェントは、公開するまではPreview画面内でのみ利用できます。
公開すると、現在のドラフトからユーザー向けのライブバージョンが作成されます。その後にBuild画面で設定を変更しても、再公開するまでは利用者側に反映されません。
基本的な公開フローは次のとおりです。
- 指示、ナレッジ、ツール、スキルを設定する
- Previewで個別テストを行う
- Evaluateでテストセットを実行する
- エージェントを公開する
- Microsoft 365 Copilot、Teams、Webサイトなどのチャネルへ接続する
- Monitorで公開後の利用状況を確認する
公開するたびに新しいバージョンが作成されるため、現在公開中のバージョンと、編集中のドラフトを区別できます。
9. 管理者が確認すべきポイント
新しいUIによってエージェントの作成は分かりやすくなりましたが、管理者が確認すべき項目が減ったわけではありません。
むしろ、作成者がエージェントを素早く作れるようになるほど、組織としての管理ルールが重要になります。
1. 利用するエクスペリエンスを決める
新しいエクスペリエンスは、自然言語の指示とAIの推論を中心とした設計に向いています。
一方で、条件分岐やノードを使用して会話を厳密に制御したい場合は、クラシックエクスペリエンスが適している可能性があります。
2. 開発・テスト・本番環境を分離する
エージェントの検証、利用者テスト、本番公開を同じ環境で行うと、誤公開や接続設定の混在が発生しやすくなります。
用途とリスクに応じて環境を分け、環境ごとに利用可能なコネクタ、作成者、データ保存場所などを管理することが重要です。
3. データポリシーを確認する
Power Platform管理センターのデータポリシーを使用すると、エージェントが利用できるコネクタや外部サービスとの接続を管理できます。
認証なしのエージェント公開を制限するポリシーなども設定できます。
4. ナレッジとツールの権限を確認する
ナレッジソースを追加できることと、エージェントが安全にデータを利用できることは別の問題です。
次の点を事前に確認する必要があります。
- どのデータへアクセスするか
- ユーザーごとのアクセス権が反映されるか
- 接続には誰の資格情報を使用するか
- ツール実行前にユーザー確認が必要か
- 外部サービスへ送信される情報は何か
5. 共有と公開のルールを定義する
テナント内で、誰がエージェントを作成・編集・共有・公開できるかを整理します。
Copilot Studioでは、編集者や閲覧者の権限、およびエージェントの共有範囲を管理できます。
また、本番公開前に、業務担当者、IT管理者、セキュリティ担当者によるレビューを組み込むことをおすすめします。
まとめ
新しいCopilot Studioでは、エージェントの作成方法が大きく変化しています。
特に重要な変更は次の4点です。
- 自然言語の指示を中心にエージェントを設計できる
- ナレッジ、ツール、スキル、モデルを1つのBuild画面で管理できる
- Preview、Evaluate、Monitorを通じて品質確認を継続できる
- エージェントとワークフローを組み合わせて複数ステップの業務を実行できる
管理者の視点では、UIの使いやすさだけでなく、エクスペリエンスの選択、環境分離、データポリシー、認証、共有、公開後の監視まで含めて導入計画を考える必要があります。
新しいCopilot Studioは、単なるチャットボット作成ツールではなく、組織内のデータと業務プロセスをつなぐエージェントプラットフォームへ進化していると感じました。
今後は、実際の画面を使いながら、社内ITヘルプデスクエージェントを作成する手順についても紹介したいと思います。
参考資料
- Microsoft Copilot Studioの新機能
- 新しいエージェントエクスペリエンスの概要
- クラシック版と新しいエクスペリエンスの比較
- エージェントへのナレッジ追加
- エージェントで利用できるツール
- エージェントの評価
- エージェントの公開とバージョン管理
Qiitaタグ案
Microsoft CopilotStudio PowerPlatform 生成AI AIエージェント
