はじめに
最近、銅板などの銅素材を用いヒートシンクを手作りして、その熱抵抗値を計測するというマニアックな実験にはまっています。熱抵抗を下げるほど、熱をぐんぐん吸い取りよく冷えます。市販品と自作ヒートシンクを比較して、どのような構造が熱抵抗を下げるのか調べています。
ヒートシンクの構造とその仕組み
一般的なヒートシンクは、熱伝導性を持つベースプレートとその上の複数の放熱フィンから構成されています。その仕組みは、発熱体にベースプレートを密着させることにより、その熱をベースプレートからフィンへと伝導させ、さらにフィン表面で空冷ファンから送られてきた空気中へと放散させ冷却します。
画像はRaspberry Piセットに付属してきた銅製のヒートシンクです。SoCにぴったりサイズの繋ぎ目のない銅の剛体で、赤みがかった美しい金属光沢を放ち、ずしりと重く、触るとひんやりしています。このヒートシンクをリファレンスとして使用しています。
実験
Raspberry PiのSoC (CPU) 上に自作およびリファレンスのヒートシンクを乗せて、ストレステスト(負荷試験)を実行することによりCPU温度を上昇させ、CPU温度、雰囲気温度、電力のログを取り、熱抵抗を算出しています。
【CPU温度、雰囲気温度のログ取り方法】
CPU温度:Raspberry Pi内蔵センサーからCPU温度を読み取り
雰囲気温度:MAX31865というRTD専用の温度測定モジュールを用いて、Raspberry Pi空冷ファンの吸気口付近の温度を測定
【電力のログ取り方法】
当初はINA219という電流、電圧を測定するモジュールを用いて電力データもログを取るつもりでした。しかし、Raspberry Pi電源にINA219を挟んだところ、低電圧警告が出ました。なんとかなるでしょ、と警告を無視してストレステストを実行すると瞬停が起こってしまい、負荷をかけることができませんでした。測定系が原因で肝心の実験ができないとは… 仕方なく、INA219で電力ログを取るのは諦め、USBチェッカーをRaspberry Pi電源に挟み、電圧、電流、電力を表示させて、録画して目視ログを取っています😭
【熱抵抗の算出方法】
ヒートシンクの熱抵抗Rthは以下の式で算出することができます。
Rth = \frac{Tcpu - Tambient}{P} \ [K/W]
温度が上がりきった時のCPU温度:Tcpu
その時の雰囲気温度:Tambient
その時の電力:P
本投稿ではラスト60秒間の温度と電力の平均値から熱抵抗を算出しています。
【ヒートシンクをDYI】
さて、本題のヒートシンクの作り方ですが、まずは素材選びから。熱抵抗を下げるには、熱伝導率の高い物質を選択するのが最も効果的です。
以下に熱伝導率の高い物質の一覧を示します。
| 材料 | 熱伝導率 [W/m・K] |
|---|---|
| ダイヤモンド | 1000 - 2000 |
| 銀 | 420 - 430 |
| 銅 | 390 - 400 |
| 金 | 320 |
| アルミニウム | 220 - 240 |
この中では、
・ダイヤモンド、銀、金は高価で入手しづらい
・一般的なヒートシンクによく使用されているアルミニウムはそれほど熱伝導率が高くない
・銅は金属の中では銀に次いで熱伝導率の高い物質で、しかも安価で入手しやすい。Raspberry Piセットに付属していた銅のヒートシンクとも比較しやすい。
以上より素材は銅一択でしょ!という安易なノリで銅を選びました。
次に構造です。一般的に、ヒートシンクは熱伝導性を持つベースプレートとその上の複数の放熱フィンから構成されています。しかしながら、平板タイプのヒートシンクもありますし、とりあえずベースプレートだけでも冷えるんでは?と予想しました。
早速、ベースプレートとなる銅板を入手するため近所のホームセンターに行ってみたところ、銅板の厚みの種類が0.1、0.3、0.5、1.0、1.5mmとありました。どれにするか迷いましたが、平坦性と加工のしやすさを考慮して、0.3mm厚を選びました。これをリファレンスのヒートシンクの底面と同じサイズにカットし、SoCの上に乗せてストレステストをしてみます。
実験は、Bare(SoCの上に何も乗せない)、Plate(ベースプレートのみ)、Ref(リファレンスのヒートシンク)の3条件でRaspberry Pi 4Bにて、stress-ng (cpu 4) を実行し、CPU温度、雰囲気温度、電力を測定しました。
結果と考察
熱抵抗Rthの算出値と温度推移のグラフを以下に示します。
| 条件 | Rth [K/W] |
|---|---|
| Bare | 6.42 |
| Plate | 6.30 |
| Ref | 5.26 |
Plateの熱抵抗値はBareより若干小さくはなっていますが、グラフを見るとほぼ同等で、ほとんど冷却効果がないということがわかります。ベースプレートだけではだめってことですね。やはりフィンをつけないといけません。一方、Refはこの中ではダントツで熱抵抗が小さく、Bareより5°C以上も冷えています。ヒートシンクって気休めではなく本当に効いてるんだ、と改めて実感しました。
とりあえず最初は銅板を乗せてみましたが、他にも色々とヒートシンクの構造を試しています。データをまとめたら追々アップしていく予定です。
つづく
