0
0

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?

Xがアルゴリズムを全公開した──コードが語る「選ばれないAI画像」の条件|slop_score・NSFWフィルタ・著者多様性スコアを読む

0
Last updated at Posted at 2026-06-23

※ 本記事はGitHub上で公開されたXのアルゴリズム(xai-org/x-algorithm)のコード分析に基づく筆者個人の考察です。コードベースはRust 62.9%、Python 37.1%で構成された約600,000行規模。2026年5月15日にGroxパイプライン等を含む大規模アップデートが行われました。

TL;DR

  • Xのフィードランキングアルゴリズムがオープンソースとして公開された
  • コード内に slop_score(低品質AI検出)、NSFWフィルタ、広告安全性判定、著者多様性スコア減衰 が明確に実装されている
  • AI画像クリエイターにとって「生成して投げるだけ」はアルゴリズムが弾く対象になった
  • 量産投下モデルは構造的に不利──少数精鋭+コンテキスト付与が鍵

1. Phoenixモデル──投稿はこう採点されている

Xのフィードランキングの中核は「Phoenix」と呼ばれるトランスフォーマーモデルだ。各投稿に対してエンゲージメント確率を予測し、WeightedScorerが重み付けしてスコアを算出する。

正のシグナル(スコアが上がる行動)

シグナル 重み
リプライ
リポスト(RT)
画像クリック
プロフィールクリック
シェア / DMシェア
長時間滞在(dwell time)
いいね

負のシグナル(スコアが下がる行動)

  • すぐにスクロールされる(quick scroll)
  • 「興味なし」クリック
  • ブロック / ミュート / 通報

注目すべきは「いいね」の重みが低いこと。「いいね」を集めるだけではリーチは伸びない。画像をクリックさせ、リプライを誘発する「立ち止まらせる力」が必要。

2. シャドウバンは実在した──SafetyLabelType

「シャドウバンなんて都市伝説だ」という声がある。コードを見れば、そうではないことがわかる。

# safety_label_type 列挙型(抜粋)

# MEDIUM_RISK_LABELS(中リスク=ランク大幅低下)
NSFW_HIGH_PRECISION       # 性的コンテンツ(高精度検出)
NSFW_HIGH_RECALL          # 性的コンテンツ(広範囲検出)
NSFW_CARD_IMAGE           # カード画像内の性的コンテンツ
NSFW_TEXT                 # テキスト内の性的表現
EGREGIOUS_NSFW            # 極めて露骨な性的コンテンツ
NSFA_HIGH_PRECISION       # 広告非安全(Not Safe For Ads)
GORE_AND_VIOLENCE_HIGH_PRECISION  # グロ・暴力表現
DO_NOT_AMPLIFY            # 拡散禁止フラグ

# LOW_RISK_LABELS(低リスク=軽度の制限)
NSFA_LIMITED_INVENTORY    # 広告在庫制限
GROK_NSFA_LIMITED         # Grok判定による広告非安全
NSFA_HIGH_RECALL          # 広告非安全(広範囲検出)

「NSFA(Not Safe For Ads)」 という広告安全性専用のラベルまで存在する。「NSFWではないが広告の隣には置きたくない」というグレーゾーンまでフィルタリングしている。

AI美少女画像を「SFW」タグで投稿しても、コンテンツの実質がNSFW寄りであれば、アルゴリズムはタグではなくコンテンツそのものを見ている。

3. slop_score──AIスロップは検出されている

コードの中に BangerInitialScreenResult というクラスが存在する。

class BangerInitialScreenResult:
    quality_score: float
    slop_score: int              # ← AIスロップ検出スコア
    has_minor: float
    is_image_editable_by_grok: bool  # ← AI生成画像の分析パイプライン
    taxonomy_categories: list[dict]
    tags: list[str]

slop_score ── 「スロップ(低品質コンテンツ)」のスコアが、投稿の初期スクリーニング段階で計算されている。

「スロップ」と判定される可能性が高い条件:

  • 同じプロンプトで量産されたような類似画像の連投
  • テキストとの乖離が大きい(画像だけで文脈がない)
  • エンゲージメントパターンがbotに似ている
  • taxonomy_categories による低品質判定

4. 広告安全性──収益構造がフィルターを駆動する

has_avoid 関数がすべてのスコアリング済み投稿を safe と unsafe に分類する。

unsafe判定 → 広告の隣に表示されない → フィードの「収益に貢献しない枠」に押し込められる → リーチを伸ばす動機がプラットフォームにない。

NSFW系のAI画像は、この広告安全性フィルターに引っかかる最有力候補。

5. 連投は減衰する──AuthorDiversityScorer

# AuthorDiversityScorer
multiplier = (1.0 - floor) * decay_factor ** position + floor

同一著者の2投稿目以降は指数関数的にスコアが減衰する。

1日に10枚、20枚とAI画像を投稿しても、フォロワーのフィードで優先表示されるのは最初の1〜2枚。残りはスコア減衰によってリーチが大幅に低下する。

少数精鋭の投稿で深いエンゲージメントを取るか、量産して減衰に沈むか。アルゴリズムは明確に前者を優遇している。

6. Banger検出──「良い投稿」を積極的にブースト

PlanInitialBanger() ── Xのアルゴリズムは低品質を排除するだけでなく、「バズるべき高品質コンテンツ」を積極的に探している。

quality_scoredescriptiontagstaxonomy_categories で投稿を多角的に分析し、品質の高いものを優先的にブースト。

「排除のアルゴリズム」ではなく「選別のアルゴリズム」。良いものを見つけて伸ばす。悪いものを見つけて沈める。両方を同時にやっている。

7. プラットフォーム経済の構造的趨勢

ここまでの分析で見えてくるのは、Xだけの話ではない。プラットフォーム経済全体が同じ方向に動いている。

レイヤー プラットフォーム フィルター
制作環境 Floyo NSFWモデルのプリロード拒否、2GBアップロード上限
配信 X NSFW・slop・量産投下をコードレベルで排除
収益化 CrowdWorks等 商用品質の審査基準

3層すべてが、同じフィルターを適用し始めている。

8. AI画像クリエイターは何をすべきか

1. 「主語」を変える

AI生成物の主語が「美少女」「セクシー」であるうちは、3層すべてのフィルターに引っかかる。主語を技術・質感・素材に変えること。テクスチャ、マチエル、構図──これらは広告安全性をクリアし、slop判定を回避し、商用プラットフォームの審査を通る。

2. 量より質に転換する

AuthorDiversityScorer は量産モデルにスコア減衰を適用する。1日の投稿数を絞り、1投稿が「画像をクリックさせ、プロフィールに飛ばせ、リプライを誘発する」ものであること。

3. コンテキストを付与する

slop_score は「画像だけ投げる」行為を検出している可能性が高い。テキストで文脈を与え、タグで分類し、会話を生む投稿にすることで、slopではなくbangerとして判定される可能性が上がる。

4. 商用導線を設計する

制作 → 配信 → 収益化のパイプラインを意識的に設計し、各レイヤーのフィルターを理解した上で、すべてを通過するコンテンツを作る。


補足:アルゴリズムが見ない「もう一つの証明」

Xのアルゴリズムは投稿の品質を判定するが、「誰が、どんな意図で、何を使って生成したか」は追跡しない。slop_scoreは低品質を検出するが、高品質なAI生成物の「来歴」までは保証しない。

C2PAやSynthIDが「AIが生成した」ことを証明する技術だとすれば、もう一つ必要なのは「このクリエイターが、このLoRAで、この質感設計の意図を持って生成した」という事実の証明だ。

この「構造的ギャップ」を埋めるアプローチとして、ブロックチェーンベースの画像保護ツール AI和指紋くん がある。生成画像に不可逆の来歴情報を刻むことで、アルゴリズムの評価とは別の軸で「作品の所有と意図」を第三者検証可能な形で記録する。

プラットフォームのフィルターを通過するだけでなく、通過した先で「自分の作品であること」を証明できる仕組みが、これからのAI画像クリエイターには必要になる。


★ 2026年5月時点のコード分析に基づいています。アルゴリズムは今後変更される可能性があります。

✍️ この記事を書いた人
シツカン|質感LoRA研究所
日本画→芸術学→英国博物館学修士→AIエンジニア。キャンバスの質感をAIに刻む研究をしています。
🔬 無料LoRAを試す → CivitAI
📖 技術記事をもっと読む → 質感LoRA研究所

0
0
0

Register as a new user and use Qiita more conveniently

  1. You get articles that match your needs
  2. You can efficiently read back useful information
  3. You can use dark theme
What you can do with signing up
0
0

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?