はじめに
LoRA学習や動画生成をComfyUIで回そうとすると、ローカルGPUではVRAMが足りない場面に必ずぶつかる。RTX 4090(24GB)でも、SDXL + ControlNet + AnimateDiffの組み合わせでOOMが出るし、HunyuanVideoやWan2.1のような最新モデルは48GB以上を要求してくる。
「じゃあクラウドGPUで」となるが、選択肢が多すぎて迷う。GCP、AWS、Azure、RunPod、Google Colab、そしてComfyUI特化型のFloyo——それぞれ何が違うのか、実際に触って比較した。
本記事では 「ComfyUIをクラウドで動かす」 という一点に絞り、セットアップの手間・コスト・実用性を整理する。
対象読者
- ローカルGPUのVRAMに限界を感じているAIクリエイター/エンジニア
- CUDAドライバやPython仮想環境の構築に時間を取られたくない人
- LoRA学習や動画生成でA100/H100クラスのGPUを使いたい人
TL;DR
| サービス | セットアップ時間 | A100相当の時間単価 | ComfyUI対応 | 向いている用途 |
|---|---|---|---|---|
| GCP (Vertex AI) | 2〜4時間 | ~$3.67/h | 手動構築 | 本番API、大規模バッチ |
| AWS (EC2 p4d) | 2〜4時間 | ~$3.09/h (スポット) | 手動構築 | インフラを自前管理したい組織 |
| Google Colab Pro+ | 10分 | ~$0.50/h相当 | ノートブック経由 | 実験・プロトタイプ |
| RunPod | 15分 | ~$1.09/h | テンプレートあり | コスパ重視の個人開発者 |
| Floyo | 3分 | $0.79/h〜 | プリインストール | ComfyUIメインの制作者 |
1. 3大クラウド(GCP / AWS / Azure)
環境構築の現実
エンタープライズクラウドでComfyUIを動かすには、以下のステップが必要になる。
# GCPでの典型的なセットアップ手順(簡略版)
# 1. GPUクォータの申請(承認まで数時間〜数日)
gcloud compute regions describe us-central1 --format="json" | jq '.quotas[] | select(.metric=="NVIDIA_A100_GPUS")'
# 2. VMインスタンス作成
gcloud compute instances create comfyui-vm \
--zone=us-central1-a \
--machine-type=a2-highgpu-1g \
--accelerator=type=nvidia-tesla-a100,count=1 \
--image-family=pytorch-latest-gpu \
--image-project=deeplearning-platform-release \
--boot-disk-size=200GB \
--maintenance-policy=TERMINATE
# 3. SSH接続してCUDAドライバ確認
nvidia-smi
# 4. ComfyUIインストール
git clone https://github.com/comfyanonymous/ComfyUI.git
cd ComfyUI
pip install -r requirements.txt
# 5. カスタムノードのインストール
cd custom_nodes
git clone https://github.com/ltdrdata/ComfyUI-Manager.git
# ... 必要なノードを一つずつ追加
# 6. モデルのダウンロード
cd ../models/checkpoints
wget https://huggingface.co/...
これだけで軽く 2〜4時間 かかる。しかも、インスタンスを停止・再起動するたびに環境が壊れるリスクがある。
コスト構造
3大クラウドのGPUインスタンスは 従量課金 だが、最低利用時間の制約やストレージ課金が見落としがち。
# GCP A100 (a2-highgpu-1g) の実コスト内訳
GPU: $3.67/h
vCPU (12コア): 含む
メモリ (85GB): 含む
ブートディスク (200GB SSD): ~$0.04/h
永続ディスク(モデル保存用 500GB): ~$0.08/h
ネットワーク(モデルDL): $0.12/GB(外部→GCP)
---
実質: ~$4.00/h(GPU稼働中)+ ストレージ維持費(停止中も課金)
スポットインスタンス を使えばGPU料金は60〜70%オフになるが、学習の途中でプリエンプトされるリスクがある。チェックポイント保存の仕組みを自前で組む必要がある。
3大クラウドが向いているケース
- ComfyUIをAPIとして本番デプロイしたい(Kubernetesとの統合)
- 組織のセキュリティポリシーでGCP/AWS/Azureしか使えない
- 他のクラウドサービス(BigQuery、S3等)とパイプラインを組む
逆に言えば、「ComfyUIでLoRAを学習したい」「動画を生成したい」だけの用途には明らかにオーバースペック。
2. Google Colab Pro+
メリット
# Colabでの起動(ノートブックベース)
!git clone https://github.com/comfyanonymous/ComfyUI
%cd ComfyUI
!pip install -r requirements.txt
!python main.py --listen 0.0.0.0 --port 8188
10分で動く。A100も運が良ければ割り当てられる。月額 $49.99 で手軽。
限界
- GPUガチャ: A100が来るとは限らない(T4やL4の場合も)
- セッション切断: 一定時間操作しないと切れる。長時間のLoRA学習に不向き
- ストレージ: Google Driveマウントは遅い。大きなモデルの読み込みがボトルネックになる
- カスタムノード: セッションごとに再インストールが必要
動画生成やLoRA学習のような 長時間GPU占有タスク には厳しい。
3. RunPod
特徴
# RunPodのComfyUIテンプレート
# Webコンソールからテンプレート選択 → 15分で起動
# SSH接続も可能
ssh root@{pod-ip} -p {port} -i ~/.ssh/id_rsa
- A100 80GB: ~$1.09/h(Community Cloud)
- H100 80GB: ~$3.89/h
- テンプレートからComfyUI環境を起動可能
- ボリュームストレージ: $0.10/GB/月(モデルを永続化できる)
使い勝手
RunPodはGPUクラウドとしては優秀。ただし:
- ComfyUIは「テンプレートの一つ」でしかなく、カスタムノードの管理は自分で行う
- ワークフローの共有・管理機能はない
- UIのレスポンスはネットワーク遅延に左右される
コスパ重視でGPUを借りたい人には良い選択肢。
4. Floyo
ComfyUI特化という設計思想
Floyoは他のサービスとアプローチが根本的に違う。「GPUを貸す」のではなく、「ComfyUIが動く環境をそのまま提供する」 という設計。
# Floyoでの起動手順
1. floyo.com にアクセス
2. 「Launch ComfyUI」をクリック
3. 完了(ComfyUIがブラウザ上で開く)
セットアップ時間は文字通り 3分。以下がプリインストールされている:
- ComfyUI本体 + Manager
- 主要カスタムノード(ControlNet、IPAdapter、AnimateDiff等)
- 基本モデル(SD1.5、SDXL、Flux等)
- CUDAドライバ、Python環境、依存関係すべて
料金体系
# Floyo料金(2026年5月時点)
Free: 毎月無料クレジット付与
Basic: $12/月 — 個人制作向け
Pro: $39/月 — 本格的なLoRA学習・動画生成
時間単価に換算すると、A100相当のGPUが $0.79/h〜 で使える。RunPodと比較しても競争力がある上に、環境構築のコスト(人的工数)がゼロ。
エンジニアにとっての利点
ComfyUI特化型だからこそ、以下が「最初から動く」:
✓ CUDAドライバのバージョン不整合 → 発生しない
✓ Pythonパッケージの依存関係地獄 → 解決済み
✓ カスタムノードのインストール失敗 → Manager統合済み
✓ モデルのダウンロード待ち → 主要モデルはプリロード
✓ セッション切断でのデータロスト → ワークスペース永続化
特にLoRA学習では、kohya-ss や ai-toolkit の環境構築だけで半日潰れることもある。その時間をそのまま学習に充てられるのは大きい。
比較まとめ
セットアップコスト(見えないコスト)
環境構築にかかる時間を「エンジニアの時給」で換算すると、見え方が変わる。
# 時給5,000円のエンジニアが環境構築する場合
GCP/AWS: 3時間 × ¥5,000 = ¥15,000(初回のみ…のはずが、依存関係更新で定期的に再発)
Colab: 30分 × ¥5,000 = ¥2,500(毎セッション)
RunPod: 1時間 × ¥5,000 = ¥5,000(初回 + カスタムノード追加時)
Floyo: 0分 = ¥0
どれを選ぶべきか
「ComfyUIで画像/動画を生成したい」→ Floyo
「ComfyUI + 独自パイプラインを組みたい」→ RunPod
「GPUが必要だがComfyUIに限らない」→ RunPod or GCP
「会社のインフラポリシーで制約がある」→ GCP / AWS / Azure
「まず試したい、お金をかけたくない」→ Colab → Floyo Free
実践: FloyoでLoRA学習を回す
最後に、Floyoを使ったLoRA学習の実践例を簡単に示す。
# 1. Floyoでセッション起動(A100選択)
# 2. ComfyUI Manager → Install Custom Nodes → kohya-ss系ノードを追加
# 3. 学習用データセットをアップロード(ドラッグ&ドロップ)
# 4. LoRA学習ワークフロー(.json)を読み込み
# 5. Queue Prompt → 学習開始
ローカルでは4時間かかっていたSDXL LoRA学習(20エポック、解像度1024)が、A100環境では 約45分 で完了する。環境構築ゼロで、この速度差。
おわりに
クラウドGPUの選択は「何を動かすか」で決まる。ComfyUIを動かすことが目的なら、GPUの生貸しサービスよりも、ComfyUIに最適化された環境を選ぶ方が合理的だ。
環境構築は「エンジニアリング」ではなく「雑務」。その時間を、ワークフローの設計やLoRAの実験に使おう。
筆者: TextureLoRALab — キャンバスの質感をAIに刻むLoRA学習を研究中。厚塗りの重厚感やマチエルをデジタル資産化するワークフローを開発しています。
- X: @TextureLoRALab
- note: TextureLoRALab
この記事の内容は2026年5月時点の情報に基づいています。各サービスの料金・仕様は変更される可能性があります。