はじめに
私は海外の工場で工場長をしていたときに、Raspberry Pi(以下Raspi)を10台ほど導入してきました。
この記事では、工場へのRaspi導入事例・設定ノウハウ・トラブル対策を紹介します。
デバイス構成
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Raspberry Pi 5
→ 5以前のモデルは電源不足や発熱問題で安定性が低いため非推奨 -
カメラ
→ 市販のUSBカメラでOK。顕微鏡タイプは画角が狭く精密検査に向く -
照明
→ USB給電タイプで十分。ただしRaspi本体からの給電は避ける(チラつき防止) -
PLC接続
- ソケット通信機能があればLANケーブル接続
- 機能がなければSSR(ソリッドステートリレー)経由で制御
導入したシステム事例
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OK/NG判定カメラ
→ Keyenceなどの市販カメラの約1/10のコスト -
画像補正システム
→ Matching Template機能で市販システムの約1/30のコスト -
NGデータ自動集約
→ 日時・シフト・品番・人・NG画像を自動収集(ビッグデータ化) -
温度測定システム
→ 空調制御に反映し電気代削減 -
受入検査システム
→ 部品の違いを画像で色付けして不具合早期発見
ネットワーク設定のポイント
- RaspiとPLCは有線LAN(固定IP)で接続
- 編集はVNC Viewerでリモート操作
- セキュリティ対策として DNSサーバ欄は空欄に設定
- 必要なときだけアドレスを入力 → インストール後に再び空欄へ
現場教育の工夫
- 導入初期:再起動方法だけ覚えてもらう
- 次の段階:PLCラダーが書ける人にパッケージプログラムを展開
- ChatGPT活用:非プログラマーでも新システムを開発できるようになった事例あり
トラブルシューティング
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プログラムエラー
→ コードをChatGPTにアップロードし、エラー内容を入力すれば改善案を提示してくれる -
通信エラー
→ まずPingで確認
→ ソケット通信を使う場合はPLC側で通信許可設定が必要
強制シャットダウン対策
- Raspi3Bは電源不足・発熱で不安定 → Raspi5で解決
- 純正アダプター推奨
- ファン設置で温度を60℃→50℃に抑制 → デバイス寿命延長
- USBケーブルやカメラを振動で抜けないよう結束バンドで固定
その他Tips
- VNC Viewerのコピペは100行程度が上限
- 大きなファイル転送は
scp
コマンドを利用
scp C:\Users\あなた\Desktop\bigfile.txt pi@192.168.xx.xx:/home/pi/