前書き
自作キーボードは沼ですが、3Dプリンタも沼です。(どちらも、界隈によっては沼ではなく温泉かもしれません)
三台目の3Dプリンタ(内訳、一台目FDM方式、二台目光造形、三台目光造形)を我が家に迎えようとしている筆者がいうのだから、間違いありません。
そんなふたつの沼に足をつっこんで、もはや自作キーボード沼と3Dプリンタ沼はつながっているのではないかと思い始めた筆者は、このたび、キーキャップのモデリングをはじめました。
元は市販品のキーキャップのシリコン型で自作キーキャップをつくっていましたが、それでは飽き足らず、光造形プリンタでのキーキャップ製造に手を出したのです。
この記事では、そのキーキャップのモデリングから印刷までの大雑把なおはなしをしたいと思います。
この記事は、キー部5%( https://keeb.connpass.com/event/287060/ )が開催されること、参加できることを記念/祈念して、 非公式で書かれました。
自作キーボード趣味者に多大なる幸があらんことを。
後、記載された内容を参考に何かをして、どんなことが起こっても、筆者は責任を持ちません。自己責任でどうぞ。
概要
ステップは以下のとおりです。
- キーキャップのサイズを計測
- Blenderでキーキャップをモデリング
- 光造形プリンタでキーキャップを印刷
道具や材料をそろえておけば、トータル作業時間は二三時間(印刷時間をのぞく)くらいだと思います。
以降の記事では、各ステップで使う道具/材料、手順や注意事項などを記します。
キーキャップのサイズを計測
道具/材料
- (メジャーじゃなくて、キャリバーじゃなくて、えーとなんだっけ、この測るやつ……あ、そうだ)ノギス
キーキャップをはかるので、分解能は0.1mmくらいのが多分いい。筆者は分解能が0.01mmのデジタルノギスを使いましたが、無駄な能力でした。
シンワ測定(Shinwa Sokutei) デジタルノギス 大文字 2 150mm 19995
- 測りたいキーキャップ、キースイッチ
主にステム(軸部分)を測るために使うので、一般的なキーキャップ、キースイッチならなんでも。プロファイルも再現したいのであれば、そのキーキャップを準備することになるのかな。
やること
モデルにするキーキャップ、キースイッチの各サイズを測定します。
各サイズを測定したら、手元に図面を書くのがいいでしょう。
自分がわかればいいので、このくらいの簡単なものでいいです。
ステムのサイズはキーキャップやキースイッチによって違いがあるので、だいぶ適当です。
後で印刷して微調整を繰り返しましょう。
ステムを測るのが面倒な方は、このサイズをご参考。
軸:5.6mm
クロスの縦:3.9mm
クロスの一辺の横幅 1.3mm
Cherry MXスイッチの十字は縦横で長さが違います。
今回は面倒くさいので縦横同じ長さにしていますが、厳密につくりたい方はその点に気をつけてください。
プリンタやレジンにより、造形の太り、細りがありますので、上記値はご参考まで。場合によっては、これよりもクロスを大きくして、ステムがスイッチにゆるくはまるところから、詰めていくのがおすすめだったりします。
Blenderでキーキャップをモデリング
道具/材料
- Blender
これを使ってモデリングします。以前はFusion360を使っていましたが、キーキャップ頒布を考え、有償化するかどうかを迫られたため、Blenderに移行しました。頒布するものはすべてBlenderで作り直しているのですが、めんどくさくて、最初からBlenderにしておけばよかったなあと思っています。
やること
ここではモチーフを載せるシンプルな土台をつくるため、立方体と円柱をベースに作っていきます。
手順は別記事に詳細を載せる予定ですが、Blenderの基礎がわかる方は以下の概略でわかると思うため、別記事を待たずに作業してみてください。
20230714追記: 書きました!
Blenderでキーキャップのモデリングをしたはなし
https://qiita.com/TanqDesign/items/1878ff33c0143207f2b5
概略としては、
- キーキャップのサイズの立方体を作る
- 立方体の底に面の差し込みと押し込みをおこない、ステムのへこみを作る
- ステムとして円柱を配置
- 立方体でクロスの一辺を作り、配列を使って、クロスにする
- ブーリアンモディファイアを使って円柱からクロスを引く
以上のような感じです。
光造形プリンタでキーキャップを印刷
道具/材料
- 光造形プリンタ
筆者はPhrozen Sonic Miniを利用しました。
入門機のSonic Miniでも使用に耐えるキーキャップを印刷できますので、今流通している光造形プリンタであれば、たいていなんでも大丈夫なはずです。
- レジン
素材となる光硬化レジンです。筆者はSK本舗の水洗いレジンを利用しています。理由は作成後の取り扱いの簡単さ、溶剤を用いる必要が無い点です。色は透明を多く使っています。
やること
スライスソフトでモデルをスライスします。筆者はChituboxを使っています。使っているプリンタとレジンにあわせて、設定しましょう。
Z方向である層の厚さを薄くするほどに印刷の精度はあがりますが、印刷に時間がかかるようになります。
またプリンタの精度にもよるのですが、スライス時はステムの精度を重視するため、モデルのステムが水平垂直になるように配置する場合がありました。
光造形プリンタといえば、印刷時に斜めにモデルを配置するのが定番ですが、それでキーキャップがうまくキースイッチに入らないときは、配置を変更してみましょう。
(20230713追記: 斜めにしても精度に問題がなければ、定番の斜めがおすすめです。垂直にするとレジンの逃げ道がなくて、印刷がうまくいかない場合があります)
印刷自体は各プリンタの手順にそっておこないましょう。
Sonic Miniで2時間かからないくらいで印刷できました。
後はキースイッチに装着してみて、サイズ感を調整していく作業です。
0.1~0.2mm単位でステムのサイズを調整し、ちょうどよいサイズを確認しましょう。
これは、使用するプリンタの精度やレジンの種類にも左右されるため、一概にこの数字で印刷するとよいと言いがたいです。
基本的にはゆるめにつくって、少しずつ小さくしていくのが調整しやすい手順だと思います。
終わりに
以上の手順で、キーキャップが気軽につくれます。
そうです、3Dプリンタさえあれば、気軽に自作キーキャップが作れるのです。
是非皆さんも自作キーキャップを作ってみてください。
それによって、自作キーボードを飾りたてましょう。
(ちなみに、筆者は自作キーキャップを飾るようにキーボードを準備していますので、実用に耐えないキーキャップも気軽に作っています)
それから
この記事は7sPro(https://shop.yushakobo.jp/products/7spro )で書きました。
キーキャップはお気に入りのAcid Caps JP - Red on Black( https://booth.pm/ja/items/4450974 )です。
追記(20230709)
実際につくったキーキャップのモデリング図と印刷結果です。
出来上がりがきれいじゃないのは、筆者の不器用さの結果とプリンタの調整不足です。
みなさんはもっときれいにつくってください。