はじめに
私はBIPROGYという会社で8年間、主に自社プロダクトの開発におけるプロジェクトマネージャーとして働き、3か月前から社内のデザイン組織でUI/UXやサービスデザインに携わっています。
システムの品質や機能を追求する中で、「なぜこの機能は使われないのか?」「もっとユーザーに寄り添える設計とは?」という問いが生まれたことが、UXデザインの世界に興味を持ったきっかけです。
BIPROGYにおけるUI/UXの取り組みについては、以下の記事で詳しく紹介しています。
正直なところ「UXデザインって何をするの?」「デザインツールなんて使ったことないけど大丈夫?」と不安もありましたが、「1年でUXデザインの基礎を自走できるようになる」 ことを目標に学習をスタートしました。
本記事では、私が未経験から3ヶ月間で取り組んだ学習の内容をお伝えします。これからUXを学びたい人、チームで取り入れたい人のヒントになれば嬉しいです。
UXデザインとは?を知る
学習の進め方については HCDコンピタンスマップ をベースに、OJTトレーナーと相談しながら、整理しています。コンピタンスマップは、UXに必要なスキルセットを明示したものであり、実務と並行しながら段階的に身に着けていくことが重要だと考えています。
そのため、基本コンピタンスの習得を目指した最初のステップとして、「UXデザインとは何か」という全体像を理解することから取り組むことにしました。社内にはUXに関する教材が充実しており、初学者にとって心強い環境でした。
- 研修教材で「ユーザー中心設計」「ユーザビリティ」など、UXの基礎概念を幅広く学ぶ
- 社内で展開しているユーザビリティのガイド知財を読み、「どう設計すれば使いやすさを担保できるか」を具体的に知る
BIPROGYでは社内外に対して、UI/UXの研修を提供しています。もともとは若手SE向けの社内研修として実施していましたが、好評だったことから現在は社外向けにも展開されています。座学で基礎知識を学び、ワークショップやフォローアップを通じて手を動かしながら理解を深めていく構成になっており、UX初学者でも段階的に学べる点が特徴です。
こうした研修教材を通じて、UXは「見た目だけではなく、『ユーザーの行動や感情』も含めて設計すること」だと理解しました。
この段階で、 「UXは単に見た目ではなく、使いやすさ・満足度・効率を総合的に設計するもの」 という考え方が身につき始めました。
書籍で学んだこと
次に「UXとはなにか」を体系的に学ぶために、書籍を読み進めました。
1. ユーザビリティエンジニアリング(著者:樽本 徹也 出版年:2014年)
💡ユーザビリティを「効率・有効性・満足度」と定義し、それを実現するための手順を体系的に解説した本です。ユーザー調査からプロトタイピング、ユーザーテスト、評価、改善といった反復プロセスが詳しく紹介されています。
- UX初心者でも理解しやすい言葉と構成
- 調査・テストの方法が具体的で、実務に直結する
初期段階でユーザー視点を入れること、ユーザーの使いやすさを設計に組み込むことが、結果的に品質向上とコスト削減に繋がる、という点が印象的でした。
SE時代に感じていた「仕様通りでも使われない機能」の原因を理論的に説明してくれた一冊であり、改めてユーザー視点の重要性を感じました。
2. UXリサーチの道具箱(著者:樽本 徹也 出版年:2018年)
💡UXリサーチで使える調査・分析の手法を幅広く紹介した「実務の道具箱」。インタビュー、ペルソナ、カスタマージャーニーマップ、ジョブ理論など、ユーザー理解からアイデア創出までの流れを支えるフレームワークを学べます。
- データ整理から洞察の導き方まで具体的に書かれている
- 手法が豊富なので、プロジェクトの目的に合わせて使い分けできる
- 「ユーザーの声をそのまま実装するのではなく、背景や文脈を理解する」重要性が強調されている
「ユーザビリティエンジニアリング」ではユーザー視点を設計に取り入れる重要性を学びましたが、
「UXリサーチの道具箱」では、ユーザーの声をそのまま実装するのではなく、背景や文脈を理解することの大切さ を学びました。
表面的な要望の奥にある本当の課題を見極める視点を得られたのが、大きな収穫でした。
UX Webサイトから学ぶ
UXに関する理解を深めるために、HCD の枠組みや外部資料を活用しました。
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HCD-Net公式サイト(Human-Centered Design)
UXを体系的に学ぶ上で欠かせないのが 人間中心設計(HCD) です。
HCD-Net公式サイトでは、初心者向けの読み物が公開されており、「HCDの考え方」「設計プロセス」「評価の方法」などをわかりやすく学ぶことができます。
また、HCD-Net主催のセミナー・ワークショップも数多く開催されています。 -
外部セミナーのスライド
UXを学ぶには「読む」だけでなく、「他人の実践を見る/聴く」ことも効果的だと感じています。羽山祥樹さんのスライドは、初学者にもわかりやすい内容でした。
特に、「言われたままつくるんじゃない! BtoB業務システムのUIを“ユーザー中心”にするリアルな現場のデザインプロセス」では、
- 「ユーザーの要望=解決策」ではなく、「背景/目的」を深堀る重要性
- 業務フロー全体を見直してUIを設計する姿勢
- 観察やインタビューによる“現場理解”の価値
が紹介されており、非常に印象に残りました。
この内容を通じて、「ユーザーが言葉にできない課題をどう発見するか」が、UXデザインの核であることを学びました。まだ実務でその視点を活かす場面は多くありませんが、ユーザーの行動や発言の背景にある意図を考える意識を持つようになりました。
今後は、実務の中でもヒアリングを通じて、ユーザーの“気づきから課題を見つける”プロセスを磨いていきたいと思います。
実際に手を動かしてみる
ここまで座学の内容を紹介してきましたが、実際に手を動かすことにも挑戦しました。詳しい内容は、次回以降のトピックにしたいと思います。
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ペルソナ作成
サービスの想定ユーザーを設定し、プロフィール・性格・行動・UIへの期待感を整理しました。生成AIを活用することで、一定の品質を保ちながら短時間で作成することができました。
生成AIを活用したペルソナ作成については、以下の記事で詳しく紹介しています。
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画面のワイヤーフレーム作成
既存サービスの改修案件で、デザインツール「Figma」を使用して画面のワイヤーフレームを作成しました。1からデザインするのではなく、既存の画面イメージをなぞってワイヤーフレームに起こす練習から始めました。
この過程で、フレームやコンポーネントの概念を理解し、Figmaの基礎的な使い方を習得することができました。
実際に手を動かすことで、本や資料による学習内容の一部が、知識から「感覚」に変わりました。作成したペルソナやワイヤーフレームが開発工程でどう活かせるかは、今後の課題にしたいと思います。
まとめ
この3ヶ月間を通して感じた変化を整理すると…
- UXはデザインの延長だと思っていた
→ UXとは見た目だけでなく、「ユーザー体験全体を設計すること」 - 「未経験の自分にできるのか?」という不安
→ 知識を得て、少しずつ手を動かすことで「学びながら進めれば大丈夫」と実感できた
SE時代は「要件を満たせばOK、使いやすさは多少考慮する程度…」と考えていましたが、UXでは「ユーザーの体験全体をどう設計するか」に焦点を当てることが重要だと気づきました。
今後は、実務を通じて機能や画面単位ではなく、ユーザーの行動や感情の流れを意識すること を心がけていきたいと思います。
また、HCD-Netのセミナー参加や資格(UX検定基礎)の取得を目指し、実践と知識の両面からUXデザインの理解を深めていく予定です。
異動当初は不安があったものの、この3か月間の学習を通じて、
「1年でUXデザイン の基礎 を自走できるようになる」
という目標を、現実的なチャレンジとして前向きに捉えられるようになりました。引き続き学習と実務を行き来しつつ、UXデザインに真剣に向き合っていきたいと思います。
次回は、実務を通して学んだUXデザインの実践事例を紹介します。
ペルソナ作成やFigmaを用いた画面設計をどのように進め、どんな気づきがあったのかをお伝えする予定です。
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