はじめに
「動画をAIに作らせたいけれど、何から手をつければいいのかわからない」「試しに使ってみたいが、いくらかかるのか見当がつかない」。こうした声をよく耳にします。
動画生成AIは発表のたびに派手なデモが話題になりますが、実際に使うとなると気になるのは、もっと地味な部分です。1本あたりいくらかかるのか、どのくらいの長さまで作れるのか、作った後に直せるのか、日本語で指示していいのか。こうした疑問に答えられないまま「とりあえず試す」と、思わぬ出費や手戻りにつながります。
2026年8月27日(米国時間)に、Googleが Gemini Omni 1.1 Flash という動画生成AIを正式版として公開しました。この記事では、Googleの公式ブログと公式の開発者向け説明ページ(ドキュメント)を元に、以下のことを順番に解説します。
- Gemini Omni 1.1 Flashで「できること」と「できないこと」
- 実際に動画を作る手順(コードつき)
- 作った動画を会話で直したり、続きを作ったりする方法
- 料金の考え方と、無駄な出費を避けるコツ
- つまずきやすいポイントと対処法
想定している読者は、プログラムを少し触ったことがある(Pythonで簡単なスクリプトを動かした経験がある程度)方、あるいはエンジニアに依頼する立場で仕組みを理解しておきたい方です。
数値や仕様は2026年8月30日時点の公式情報に基づきます。この分野は数か月単位で変わるので、実際に使う前には公式ページも確認してください。
Gemini Omni 1.1 Flashとは何か
一言でいうと「文章や写真から、音つきの短い動画を作るAI」
Gemini Omni 1.1 Flashは、Googleの動画生成AIです。文章で「こんな動画が欲しい」と伝えたり、写真を渡したりすると、音声つきの短い動画を作ってくれます。
このAIの大きな特徴は、作った後に会話で直せることです。「照明をもう少し暖かくして」「テーブルの上のスマホを消して」と続けて伝えると、前に作った動画を覚えたまま、指示した部分だけを変えてくれます。写真加工アプリで一枚ずつ調整するような感覚で、動画を少しずつ仕上げていけます。
正式版(stable)とプレビュー版の違い
ソフトウェアの世界では、試験的に公開する段階を「プレビュー」、本格的に使える段階を「正式版(stable)」と呼び分けます。
Gemini Omniには以前からgemini-omni-flash-previewというプレビュー版がありました。今回の1.1はgemini-omni-1.1-flashという名前の正式版で、Googleは「本番で使える状態になった」と説明しています。プレビュー版もしばらく残りますが、これから始める方は1.1を選べば問題ありません。
基本の仕様
公式ページに書かれている仕様のうち、使う上で知っておきたいものだけをまとめます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名前(モデルコード) | gemini-omni-1.1-flash |
| 入力できるもの | 文章、画像、動画(編集や続き作りに使う動画は10秒以内) |
| 出力されるもの | 音声つきの動画 |
| 1回で作れる長さ | 3〜10秒 |
| 画質(解像度) | 360p、720p(標準)、1080p、4K |
| 動画の向き | 横長(16:9)と縦長(9:16) |
| 続きを作れる長さ | 10秒ずつ足して、合計40秒まで |
| 利用条件 | 有料プランのみ(無料枠なし) |
「解像度」は画質の細かさを表す数字で、大きいほど高画質です。360pはスマホで小さく見る程度の粗さ、720pは一般的なWeb動画、1080pはフルHD、4Kはテレビの高画質放送レベルとイメージしてください。
ここで注意したいのは、1回に作れるのは最長10秒という点です。「40秒まで作れる」という宣伝文句を見かけますが、これは10秒の動画に続きを3回足した合計です。1回の指示で40秒の動画が出てくるわけではありません。
1.1で新しくできるようになったこと
以前のプレビュー版と比べて、1.1では次の5つが加わりました。
-
続きを作る(シーン延長)
作った動画の末尾に、続きを10秒ずつ足せます。以前は直前の1秒しか見ていなかったのが、1.1では直前10秒分を見て続きを作るので、人物や照明が途中で変わりにくくなりました。 -
最初と最後の絵を指定する
「この写真から始まって、この写真で終わる動画」というように、2枚の画像の間をつなぐ動画を作れます。 -
低画質で素早く試す(360pドラフト)
標準の720pより最大6割速く、費用は約3分の1で試作できます。 -
高画質に仕上げる(1080p・4K)
完成した動画を高画質化できます。ただし後述の通り、これは「引き伸ばし」であり、細部が勝手にきれいになるわけではありません。 -
参考動画を渡す
「この動画に出てくる人物の動きを参考にして」と、短い動画(3秒以内を最大3本)を渡せます。
使い始めるための準備
必要なもの
準備するものは3つです。
-
Google AI Studioのアカウントと、有料プランのAPIキー
APIとは、プログラムからGoogleのAIを呼び出すための窓口のことです。APIキーは、その窓口を使うための「合言葉」のような文字列です。Google AI Studioという管理画面から発行できます。Gemini Omni 1.1 Flashは無料プランでは使えないので、同じ画面で有料プランに切り替えておきます。 -
Python(バージョン3.10以上)
プログラムを動かすための言語です。公式にはJavaScriptという言語でも使えますが、この記事ではPythonで説明します。 -
Google Gen AI SDK
SDKとは、APIを簡単に呼び出せるようにGoogleが用意した部品セットのことです。次の手順で入れます。
部品セット(SDK)の入れ方
パソコンの「ターミナル」(Windowsならコマンドプロンプト)を開いて、次のコマンドを順番に実行します。
# 作業用のフォルダに移動してから実行してください
# 1. この作業専用の環境を作る(他のプログラムに影響しないようにするため)
python -m venv .venv
source .venv/bin/activate # Windowsの場合: .venv\Scripts\activate
# 2. Googleの部品セットを入れる
pip install -U google-genai
APIキーの登録
発行したAPIキーは、プログラムの中に直接書かず、「環境変数」という仕組みに登録します。環境変数とは、パソコン側に一時的に覚えさせておく設定値のことで、こうしておけばプログラムを人に見せてもキーが漏れません。
export GEMINI_API_KEY="<ここに発行したAPIキーを貼る>"
APIキーが人に知られると、その人があなたの支払いで動画を作れてしまいます。動画生成は1回あたりの金額が大きいので、キーの管理は特に慎重に行ってください。
まず1本作ってみる
準備ができたら、一番短いプログラムで動画を1本作って、正しく動くか確かめます。費用を抑えるため、画質は一番粗い360pにします。
import base64
from google import genai
# Googleとやり取りする窓口を作る(APIキーは環境変数から自動で読み込まれる)
client = genai.Client()
# 動画を作る指示を送る
interaction = client.interactions.create(
model="gemini-omni-1.1-flash", # 使うAIの名前
input="木のテーブルに置かれた陶器のコーヒーカップ。湯気がゆっくり立ち上る朝の光。1カットの連続ショット、セリフなし。",
response_format={
"type": "video",
"resolution": "360p", # まずは一番粗い画質で試す
},
)
# 返ってきた動画をファイルに保存する
# (動画データは「Base64」という文字列の形で返ってくるので、元のデータに戻してから保存する)
with open("test.mp4", "wb") as f:
f.write(base64.b64decode(interaction.output_video.data))
# 後で「この動画を直して」と伝えるときに使う番号なので、控えておく
print("動画の番号:", interaction.id)
これを実行してtest.mp4ができれば準備完了です。最後に表示される「動画の番号」(interaction ID)は、後で編集や続き作りをするときに必要になるので、メモしておきます。
Base64というのは、動画のような数字の塊を、文字だけで表す変換方法です。プログラムの中でb64decodeという命令を使って元に戻しています。
動画を作る
指示の書き方のコツ
AIへの指示文を「プロンプト」と呼びます。Gemini Omniは、指示が短いと勝手に複数のカットをつなげた「ミニ物語」を作ろうとします。1カットで固定したい場合は、そのことを明確に書く必要があります。公式が勧めている書き方は次の3つです。
- 1カットの連続ショットで
- シーンカットなし
- セリフなし
音についても、何も書かないとAIが「合いそうな音」を勝手につけます。BGMが不要なら「BGMは入れない」、環境音だけ欲しいなら「音は静かな環境音のみ」と書いておくと安定します。
たとえば商品を見せる動画なら、次のように書きます。
prompt = """
白いスタジオ背景でワイヤレスイヤホンのケースが開き、
カメラがその周りをゆっくり90度回り込む。
1カットの連続ショット、シーンカットなし、セリフなし。
音は静かな環境音のみ。BGMは入れない。
"""
日本語で指示していいのかという点は、多くの方が気にするところだと思います。公式ページには「英語は完全に対応、それ以外の言語は評価していないので、動くかもしれないが結果が変わることがある」と書かれています。日本語で使えないわけではありませんが、思った通りにならないときは、同じ内容を英語にして比べてみてください。特に「1カットの連続ショット」「他はそのまま」のような決まり文句は、英語(single continuous shot / Keep everything else the same)のほうが効きやすい場合があります。
縦長の動画を作る
SNS向けの縦長動画にしたいときは、aspect_ratio(画面の縦横比)を9:16にします。使えるのは横長の16:9と縦長の9:16の2種類だけで、正方形は指定できません。
response_format={
"type": "video",
"aspect_ratio": "9:16", # 縦長にする
"resolution": "360p",
}
写真を動かす
手元の写真を元に動画を作ることもできます。input(入力)に写真と指示文の両方を渡します。
import base64
from google import genai
client = genai.Client()
# 写真を読み込んで、文字列(Base64)の形に変換する
with open("product.jpg", "rb") as f:
photo = base64.b64encode(f.read()).decode()
interaction = client.interactions.create(
model="gemini-omni-1.1-flash",
input=[
{"type": "image", "data": photo, "mime_type": "image/jpeg"}, # 写真
{
"type": "text",
"text": "この商品写真を動かしてください。ロゴに向かってゆっくり寄り、表面を光がすっと流れる。構図は写真と同じままにする。",
},
],
response_format={"type": "video", "resolution": "360p"},
)
with open("from_photo.mp4", "wb") as f:
f.write(base64.b64decode(interaction.output_video.data))
公式は「動かして」のような漠然とした指示ではなく、「カメラがどう動くか」「被写体がどう動くか」「光や風がどう変わるか」を具体的に書くよう勧めています。
最初の絵と最後の絵を決める
1.1の新機能のひとつが、2枚の画像を渡して「この絵から、この絵へ」つなぐ動画を作る機能です。画像を2枚並べ、指示文の先頭に<FIRST_FRAME> <LAST_FRAME>という目印を書きます。この目印は「1枚目を最初の絵、2枚目を最後の絵として使ってください」という意味の、公式で決められた書き方です。
interaction = client.interactions.create(
model="gemini-omni-1.1-flash",
input=[
{"type": "image", "data": first_photo, "mime_type": "image/jpeg"}, # 最初の絵
{"type": "image", "data": last_photo, "mime_type": "image/jpeg"}, # 最後の絵
{
"type": "text",
"text": "<FIRST_FRAME> <LAST_FRAME> 店の外観から店内へ、カメラが滑らかに入っていく。1カットの連続ショット。",
},
],
response_format={"type": "video", "resolution": "360p"},
)
同じ画像を最初と最後の両方に指定すると、始まりと終わりがつながる「ループ動画」になります。
作った動画を会話で直す
「動画の番号」を渡して、変更点だけ伝える
Gemini Omniの一番の売りが、この会話編集です。前に作った動画の番号(interaction ID)をprevious_interaction_idとして渡し、変えたい部分だけを伝えます。動画を送り直す必要はありません。
import base64
from google import genai
client = genai.Client()
# 1回目: 動画を作る
first = client.interactions.create(
model="gemini-omni-1.1-flash",
input="明るいカフェでバリスタがラテアートを注いでいる。1カットの連続ショット、セリフなし。",
response_format={"type": "video", "resolution": "360p"},
)
# 2回目: 照明だけ変える(1回目の番号を渡す)
second = client.interactions.create(
model="gemini-omni-1.1-flash",
previous_interaction_id=first.id,
input="照明を暖かい夕方の光に変える。他はすべてそのまま。",
response_format={"type": "video", "resolution": "360p"},
)
# 3回目: 不要なものを消す(2回目の番号を渡す)
third = client.interactions.create(
model="gemini-omni-1.1-flash",
previous_interaction_id=second.id,
input="カウンターの上のスマートフォンを消す。他はすべてそのまま。",
response_format={"type": "video", "resolution": "360p"},
)
with open("edited.mp4", "wb") as f:
f.write(base64.b64decode(third.output_video.data))
このように番号を数珠つなぎにしていくと、1回目、2回目、3回目と履歴が残る形で編集を重ねられます。
直すときの指示は「短く、ひとつずつ」
公式が繰り返し強調しているのは、編集の指示は短く、変えるものを一つに絞る、ということです。丁寧に長く書くほど、頼んでいない部分まで変わってしまいます。
| 避けたい書き方 | おすすめの書き方 |
|---|---|
| テーブルの上のコーヒーカップを、白い陶器から青いガラス製に変えて、光の反射も自然になるようにしてください | カップを青いガラスにする。他はすべてそのまま。 |
| 右側の窓から見える景色を街並みから海に変えて、時間帯も夕方に合わせてください | 窓の外の景色を海にする。他はすべてそのまま。 |
最後に「他はすべてそのまま」を付けるのが公式おすすめの型です。
自分で撮った動画を直す
AIが作った動画だけでなく、手元の動画ファイルも編集できます。この場合は先に動画をGoogleに送っておき(アップロード)、送り終わってから編集を頼みます。
import time
import base64
from google import genai
client = genai.Client()
# 1. 動画をGoogleに送る
video_file = client.files.upload(file="my_video.mp4")
# 2. 受け付け処理が終わるまで10秒ごとに確認して待つ
while video_file.state == "PROCESSING":
time.sleep(10)
video_file = client.files.get(name=video_file.name)
if video_file.state == "FAILED":
raise RuntimeError("動画の受け付けに失敗しました")
# 3. 送った動画を指定して編集を頼む
interaction = client.interactions.create(
model="gemini-omni-1.1-flash",
input=[
{"type": "document", "uri": video_file.uri}, # 送った動画の場所
{"type": "text", "text": "背景を雪山に変える。人物はまったく変えない。"},
],
response_format={"type": "video", "resolution": "360p"},
)
with open("edited_my_video.mp4", "wb") as f:
f.write(base64.b64decode(interaction.output_video.data))
ここで知っておきたい制約が2つあります。
- 送る動画は10秒以内でなければなりません。長い動画は、先に10秒以内に切り出しておきます。
- 自分で送った動画の編集と続き作りは、ヨーロッパ(EEA)・スイス・イギリスでは現在使えません。AIが作った動画の編集は全地域で使えます。日本から使う分には問題ありませんが、海外向けサービスに組み込む場合は注意が必要です。
大きな動画を受け取るときの注意
720pや1080pで作ると、動画が大きくなって、そのままの方法では受け取れないことがあります(4MBという上限があります)。その場合は「動画をGoogle側に一度置いてもらい、あとで取りに行く」方法に切り替えます。deliveryを"uri"にすると、動画そのものの代わりに保管場所の住所(URI)が返ってきます。
import time
from google import genai
client = genai.Client()
# 「保管場所を教えてもらう」方式で頼む
interaction = client.interactions.create(
model="gemini-omni-1.1-flash",
input="夜明けの棚田をドローンで飛び越えていく空撮。1カットの連続ショット。",
response_format={"type": "video", "resolution": "1080p", "delivery": "uri"},
)
video = interaction.output_video
file_name = video.uri.split("/")[-1]
# 準備ができるまで5秒ごとに確認する
while True:
info = client.files.get(name=f"files/{file_name}")
if info.state.name == "ACTIVE":
break
if info.state.name == "FAILED":
raise RuntimeError("動画の生成に失敗しました")
time.sleep(5)
# 準備ができたら取りに行く
client.files.download(file=video.uri, destination="tanada_1080p.mp4")
この「できるまで定期的に確認する」動きを、プログラムの世界では「ポーリング」と呼びます。公式の注意書きとして、保管場所の住所は最初の返事にしか含まれない場合があるので、返ってきたらすぐ控えておいてください。
動画の続きを作る
10秒ずつ、合計40秒まで
1.1の目玉機能である「続き作り(シーン延長)」は、動画の末尾に3〜10秒の続きを足します。これを繰り返して、合計40秒まで伸ばせます。AIは直前の10秒分を見て続きを考えるので、人物や動き、音が急に変わりにくくなっています。
覚えておきたいのは、足せるのは末尾だけという点です。冒頭に前置きを足したり、途中に別の場面を挟んだりはできません。「途中に説明を入れたい」動画は、場面ごとに別々に作って、後から動画編集ソフトで並べる、という使い方になります。
AIが作った動画の続きを作る
一番簡単なのは、前の動画の番号を渡して「続きを作って」と頼む方法です。
import base64
from google import genai
client = genai.Client()
# 最初の10秒
base = client.interactions.create(
model="gemini-omni-1.1-flash",
input="日の出の稜線にハイカーがたどり着く。草が風に揺れている。1カットの連続ショット、セリフなし。",
response_format={"type": "video", "resolution": "360p"},
)
# 続きを10秒足す
ext1 = client.interactions.create(
model="gemini-omni-1.1-flash",
previous_interaction_id=base.id,
input="シーンを続ける。ハイカーが腰を下ろして水筒を開ける。風の音はそのまま続く。",
response_format={"type": "video", "resolution": "360p"},
)
# さらに10秒足す
ext2 = client.interactions.create(
model="gemini-omni-1.1-flash",
previous_interaction_id=ext1.id,
input="シーンを続ける。3秒後に、同じハイカーが見える眼下の谷の引きの絵にカットする。",
response_format={"type": "video", "resolution": "360p"},
)
with open("hiker_30s.mp4", "wb") as f:
f.write(base64.b64decode(ext2.output_video.data))
続きの指示で「3秒後に」のような時間を書くと、その「0秒」は続き部分の先頭を指します。10秒の動画に「2秒後にカット」と指示すれば、全体では12秒のところでカットが入る、という意味です。
AIが作った動画に続きを足す場合は、10秒以内という制限はかかりません。この制限があるのは、自分で撮った動画を送るときだけです。
自分で撮った動画の続きを作る
手元の動画の続きを作る場合は、編集のときと同じくGoogleに送ってから頼みます。参考画像を一緒に渡して、続き部分に新しい登場人物を出すこともできます。指示文の<IMAGE_REF_0>は「1枚目の参考画像」を指す、公式で決められた目印です。
video_file = client.files.upload(file="intro.mp4") # 元の動画(10秒以内)
character = client.files.upload(file="mascot.png") # 参考にするキャラクター画像
interaction = client.interactions.create(
model="gemini-omni-1.1-flash",
input=[
{"type": "document", "uri": video_file.uri},
{"type": "document", "uri": character.uri},
{"type": "text", "text": "この動画を延長する。<IMAGE_REF_0> のキャラクターが右から歩いて入ってきて手を振る。"},
],
response_format={"type": "video", "resolution": "360p"},
)
ただし、自分で送った動画の続き作りには、AI生成動画にはない制約があります。
- 人が話している動画に、新しいセリフを足して延長することはできません(黙ったまま延長する、あるいはセリフを増やさない指示なら可能です)
- AIが作った動画に続きを足す場合は、セリフの追加もできます
- 前述の通り、ヨーロッパ・スイス・イギリスでは自分で送った動画の続き作り自体が使えません
「撮影した実写の続きを、AIにセリフつきで作らせたい」という使い方は、今のところ手元の動画を送る方法では実現できません。この用途なら、最初の動画もAIで作って、そこに続きを足していく形にする必要があります。
画質を段階的に上げる
4段階の画質、それぞれの役割
1.1では画質を4段階から選べます。ただし、1080pと4Kは「アップスケール」と呼ばれる仕上げ処理で、最初から高画質で作っているわけではありません。アップスケールとは、できあがった動画を引き伸ばして輪郭などを整える処理のことです。写真を拡大して見た目を整えるのに近く、中身の間違いは直りません。
| 画質 | 位置づけ | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 360p | 下書き用。720pより最大6割速く、費用は約3分の1 | 構図や動き、音の方向性を確認する。複数案を並べて比べる |
| 720p | 標準 | 中身の確認。人物の顔や文字がおかしくないか見る |
| 1080p | 仕上げ(アップスケール) | Webでの公開、SNSの高画質枠 |
| 4K | 仕上げ(アップスケール) | 大きな画面での表示、展示や放送 |
「最大6割速い」は、公式ブログの注釈にもある通り、混み具合や長さで変わる上限値です。いつも6割速いわけではありません。
「粗く試して、良いものだけ仕上げる」
実際の使い方は、次の3段階が基本になります。
- 360pで複数案を作る:構図・動き・音が意図通りかを、人が目で確認します
- 採用案だけ720pで確認する:人物や文字の細部に問題がないか見ます
- 納品や公開に必要なときだけ1080pか4Kにする
この順番を守る理由は、費用です。次の「料金」の節で詳しく説明しますが、動画生成は画質が上がるほど高くなります。粗い画質で失敗を潰しておけば、高画質での作り直しを避けられます。
公式ページには「作った動画の番号を渡して、画質だけ上げて出し直す」という手順そのものの例は載っていません。載っているのは「新しく作るときに画質を指定する」例と、「続きを作るときに番号と画質を一緒に指定する」例です。そのため、採用した案を高画質にしたいときは、採用した指示文をそのまま使ってresolutionを"1080p"にして作り直すのが確実です。作り直しなので完全に同じ映像にはなりませんが、指示文が同じなら大きくは変わりません。
料金の考え方
「1秒あたり約15円」が目安
Gemini Omni 1.1 Flashは有料プランのみで、無料枠はありません。料金は「トークン」という単位で計算されます。トークンとはAIが扱うデータ量の単位で、文章なら文字数のようなもの、動画なら「1秒分でこれだけ」と決められています。
公式の料金ページ(2026年8月30日時点)では、次のように決まっています。
| 項目 | 料金 |
|---|---|
| 入力(文章・画像・動画・音声) | 100万トークンあたり1.50ドル |
| 出力(動画) | 100万トークンあたり17.50ドル |
| 720p動画の換算 | 1秒あたり5,792トークン |
これを計算すると、720p動画は1秒あたり約0.10ドル(1ドル150円なら約15円)になります。10秒の動画1本で約1ドル、続きを3回足して40秒にすると動画部分だけで約4ドルです。
360pの秒単価は、料金ページの表には載っていません。公式ブログに「720pの約3分の1の費用」と書かれているので、1秒あたり0.03ドル前後と見ておけばよいでしょう。1080pと4Kは仕上げ処理が入るぶん720pより高くなります。解像度ごとの正確な金額は、公式ブログに画像として掲載されている料金表と、実際の請求明細で確認してください。
1本の動画を作るのにいくらかかるか
720pを0.10ドル/秒、360pを0.03ドル/秒、1080pを720pの1.5倍と仮定して、標準的な作り方の費用を試算してみます。あくまで概算で、実際の請求は使ったトークンの合計で決まります。
| 工程 | 内容 | 概算 |
|---|---|---|
| 試作 | 360pで10秒を5案 | 約1.5ドル |
| 修正 | 採用案を720pで確認し、会話で3回直す | 約4ドル |
| 続き作り | 720pで10秒を3回足す(合計40秒) | 約3ドル |
| 仕上げ | 40秒を1080pで出す | 約6ドル |
| 合計 | 約15ドル(約2,200円) |
見てわかる通り、費用のほとんどは720p以上の工程で発生します。最初から720pで5案作れば試作だけで5ドルかかりますし、構図の失敗を1080pで仕上げた後に見つけて作り直せば、一気に倍近くになります。「粗い画質で判断して、高画質は1回で済ませる」というルールが、そのまま費用管理になります。
Geminiアプリの月額料金とは別物
「Google AIの有料プランに入っているから、APIも使えるのでは」と思う方がいますが、これは別契約です。公式ブログによれば、Omni 1.1はGoogle Flowというツールで、続き作りはGeminiアプリで、それぞれGoogle AI Plus・Pro・Ultraの加入者向けに提供されています。しかしこの月額料金には、プログラムから呼び出すAPIの費用は含まれません。「画面上で自分が動画を作る」のと「自社サービスに組み込む」のでは、お金の払い方がまったく違います。
できないことを先に知っておく
導入を検討するときは、「できること」より「できないこと」を先に確認するほうが失敗が少なくなります。公式ページに書かれている制約をまとめます。
| できないこと | 代わりにどうするか |
|---|---|
| 動画の冒頭や途中に場面を足す | 場面ごとに別々に作り、動画編集ソフトで並べる |
| 声だけを差し替える | 音声は別の音声生成AIで作り、後から合わせる |
| 音声ファイルを「この声で」と参考に渡す | 現時点では不可 |
| 複数の動画をまとめて理解させる | 1本ずつ処理し、結果は人がまとめる |
| YouTubeの動画を元にする | 不可。手元にファイルとして用意する |
| 有名人に似た画像を渡す | 不可(安全のための仕組みで拒否される) |
| 細かい調整用の設定(temperatureなど) | このAIには存在しない。指示はすべて文章で書く |
最後の項目について補足します。他のAIでは「temperature(出力のばらつき具合)」や「system instruction(AIへの前提指示)」といった設定項目がありますが、Gemini Omniではこれらが使えません。「〜しないで」という否定の指示も、専用の欄はなく、普通の指示文の中に「画面に文字を入れない」のように書きます。
つまずきやすいポイントと対処
| 困りごと | よくある原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 実行するとエラーで止まる | 無料プランのAPIキーを使っている | Google AI Studioで有料プランに切り替える |
| 動画が大きすぎて受け取れない | 4MBの上限を超えている |
delivery: "uri"の方法に切り替える |
| 頼んでいないのに場面が切り替わる | AIが勝手に物語を作っている | 指示に「1カットの連続ショット、シーンカットなし」を入れる |
| 直してほしくない部分まで変わる | 編集の指示が長い | 変える内容を一つに絞り、「他はすべてそのまま」を付ける |
| 前の動画を覚えてくれない | 前回store=falseという設定で作った |
会話で直したいときはこの設定を使わない |
| 自分の動画を送ると失敗する | 10秒を超えている | 10秒以内に切り出してから送る |
| 日本語で結果が安定しない | 英語以外は公式の評価対象外 | 同じ内容を英語にして比べる。定型句だけ英語にするのも有効 |
| 画面内の文字が崩れる | 文字の描画は苦手分野 | 文字は短くする。必要なら後から字幕を重ねる |
「文字の描画や複雑な動きが苦手」という点は、Google DeepMindが公開しているモデルの説明書(モデルカード)にも、既知の課題として書かれています。高画質にしても、この種の間違いは直りません。
導入するなら「小さく一つ」から
最後に、実際に仕事で使うときの進め方を補足します。
台本作り、動画生成、音声、字幕、公開までを一度に自動化しようとすると、うまくいかなかったときに、どこが悪かったのかわからなくなります。最初は「ある商品の外観を見せる10秒の動画を360pで作り、人が確認する」くらいの小さな範囲に絞るのがおすすめです。
確認するときの「合格の条件」も、「良い感じ」ではなく、次のように分けておくと判断がぶれません。
- 構図:商品が画面に収まり、指示したカメラの動きになっているか
- 動き:形が歪んだり、ありえない動きをしたりしていないか
- 音:指示した音が入り、指示していないBGMや声が入っていないか
- 不要なもの:消してほしいものが映り込んでいないか
もうひとつ大事なのは、同じ指示を何度も試せる「テスト用の指示文」を先に用意しておくことです。プレビュー版から1.1の正式版まで、公式ブログの日付を見る限り2か月ほどしか経っていません。このくらいの速さで更新される分野では、長期の計画を立てるより、「同じ指示を新しい版に流して、良くなったか、安くなったかを比べる」仕組みのほうが役に立ちます。3〜5パターン(商品だけ、人物あり、文字あり、など)を固定しておくだけで十分です。
まとめ
Gemini Omni 1.1 Flashについて、使う上で押さえておきたい点を振り返ります。
- 文章や写真から、音つきの短い動画(3〜10秒)を作れる。作った後に会話で直せる
- 続きは末尾に10秒ずつ、合計40秒まで。冒頭や途中には足せない
- 画質は360pで試作し、720pで確認、必要なときだけ1080p・4Kにする
- 料金は720pで1秒約0.10ドル。粗い画質で失敗を潰すのが一番の節約
- 有料プランのみ。Geminiアプリの月額とは別
- 日本語は使えるが公式の評価対象外。安定しないときは英語で比較する
- 自分の動画を送るときは10秒以内。ヨーロッパ・スイス・イギリスでは送った動画の編集ができない
まずは本記事の最初のプログラムで360pの動画を1本作り、動くことを確かめてみてください。そのうえで、自分の仕事で使いそうな指示文を3つほど決めて試すと、「この用途なら使える」「これは無理」という感覚が短時間でつかめます。
参考リソース
- Google公式ブログ: Gemini Omni 1.1 Flash lets you build with more control(2026年8月27日)
https://blog.google/innovation-and-ai/technology/developers-tools/build-with-gemini-omni-1-1-flash/ - 公式ドキュメント: Generate and edit videos with Gemini Omni Flash
https://ai.google.dev/gemini-api/docs/omni - 公式モデルページ: Gemini Omni Flash
https://ai.google.dev/gemini-api/docs/models/gemini-omni-flash - 公式料金ページ
https://ai.google.dev/gemini-api/docs/pricing - Google AI Studio(APIキーの発行)
https://aistudio.google.com/apikey