「明日の授業は何だっけ?」から進路相談まで。担任を少し支える3D AIサポーター
学校生活では、学生が担任の先生へ相談したいと思っても、すぐに話せるとは限りません。
先生が授業中だったり、ほかの学生に対応していたり、会議で席を外していたりすることがあります。学生側も「こんなことを聞いてよいのかな」「まだ考えがまとまっていないから、相談しにくい」と感じることがあります。
相談したいのは、進路や就職のような大きな悩みだけではありません。
「明日の授業は何だっけ?」
「課題の締め切りはいつだったかな?」
「前に聞いたけれど、もう一度確認したい」
こうした、先生へわざわざ聞くほどではないと感じる質問もあります。一度説明された内容を忘れてしまうと、同じことをもう一度聞くのが申し訳なく感じる学生もいます。
そのまま後回しにすると、相談すること自体を忘れてしまったり、一人で悩み続けてしまったりするかもしれません。
そこで考えたのが、先生が対応できない時間に、学生の相談を少し受け止めてくれる3D AI担任サポーターです。
学生は、画面にいる3Dキャラクターへ話しかけるように相談できます。AIは、担任の先生があらかじめ設定した話し方や指導方針を参考にしながら、学生へ質問し、悩みや希望を一緒に整理します。
先生の代わりにすべてを決めるものではありません。先生がすぐに対応できないときの「最初の相談相手」になり、必要な相談は担任の先生へつなぐことを目指しています。
1. 「ちょっと聞きたい」にも答えられる相談の入口
このシステムで一番大切にしているのは、AIだけで学生の悩みを解決することではありません。
学生が相談を始めやすくすることです。また、ちょっとした確認を気軽にできる場所を作ることです。
もう一つのきっかけは「AI HACK」
学校で感じていたこうした課題を、実際の形にしてみようと思ったもう一つのきっかけが、AIを活用した作品を作る大会「AI HACK」への参加です。
大会に参加するなら、単にAIを使った目新しい作品ではなく、普段の学校生活で本当に困っていることを少しでも改善できるものを作りたいと考えました。
そこで、先生が何度も同じ説明をする負担と、学生が「もう一度聞きたいけれど聞きにくい」と感じる状況の両方を減らすことを、今回のテーマにしました。
たとえば、学生が次のような悩みを持っているとします。
- 就職活動を始めたいが、何から手をつければよいか分からない
- 興味のある仕事はあるが、自分に向いているか不安
- 資格の勉強と作品制作のどちらを優先するか迷っている
- 進路について先生へ相談したいが、うまく説明できない
- 明日の授業や持ち物を確認したい
- 一度説明された予定や課題の内容を忘れてしまった
AIであれば、同じことを何度聞いても、嫌な顔をせずに同じように答えられます。学生は「また聞いたら怒られるかもしれない」と心配せず、自分のタイミングで確認できます。
先生にとっても、同じ予定や連絡事項を何度も説明する回数が減ります。同じ質問への対応が続けば、先生も疲れ、ついイライラしてしまうことがあります。繰り返しの確認をAIが受け持つことで、こうした負担を減らすことにもつながります。
進路や就職など、考えの整理が必要な相談では、最初から正しい答えを出すことより、学生が何に困っているのかを少しずつ整理することが重要です。
3D AI担任サポーターは、学生へ一つずつ質問します。そして、学生の希望、現在の状況、不安に感じていること、次にできそうなことを整理します。
相談の最後には、話した内容を短くまとめます。その要約を見ながら、学生が改めて担任の先生へ相談することもできます。
2. 担任の先生が、AIの対応方法を設定する
このAIが、インターネット上の一般的な情報だけで回答するわけではありません。
担任の先生が、あらかじめ次のような情報を設定します。
| 先生が設定する内容 | 設定の例 |
|---|---|
| 対応できる相談 | 授業予定、課題、進路、就職活動、学習計画 |
| 話し方 | 丁寧に話す、短い文で説明する |
| 質問の仕方 | 一度に何問も聞かず、一問ずつ確認する |
| 大切にする考え方 | 学生自身の希望を先に確認する |
| 勧めたい行動 | 期限を決める、先生への相談につなげる |
| 先生へ引き継ぐ内容 | 休学、退学、健康、安全に関する相談 |
同じ相談でも、先生によって大切にしていることや、学生への声のかけ方は異なります。
そのため、AIが勝手に「先生らしさ」を想像するのではなく、先生自身に対応方針を設定してもらいます。
AIは先生本人ではありませんが、先生が登録した方針を踏まえて、先生がその場にいないときの相談を少しだけ受け持ちます。
[ここに担任向け設定画面の画像を掲載]
3. 学生は3Dキャラクターへ気軽に相談する
学生向けの画面には、3Dキャラクターとチャット欄を表示します。
難しい操作は必要ありません。学生は普段のチャットと同じように相談内容を入力します。
[ここに学生向け相談画面の画像を掲載]
相談は、次のような流れで進みます。
- 学生が相談したいことを入力する
- AIが内容を確認し、足りない情報を一つずつ質問する
- 学生の希望や現在の状況を整理する
- 次にできることをいくつか提案する
- 相談内容と次の行動を短くまとめる
- 必要であれば、担任の先生へ相談をつなぐ
相談のイメージ
学生が、次のように入力したとします。
就職活動を始めたいのですが、何から始めればよいか分かりません。
AIは、すぐに長い説明を返すのではなく、まず一つ質問します。
興味のある仕事や業界はありますか? まだ決まっていない場合は、「決まっていない」でも大丈夫です。
学生が「Web関係に少し興味があります」と答えた場合は、作品の準備状況や、どのような仕事に興味があるのかを続けて確認します。
最後には、たとえば次のように整理します。
- Web関係の仕事に興味がある
- まだ職種の違いは分かっていない
- まずWeb制作とWeb開発の違いを調べる
- 今週中に自分が作った作品を一つ整理する
- 次回、担任の先生へ希望職種について相談する
この状態まで整理できていれば、学生も先生へ相談しやすくなります。先生も、学生が何に悩み、どこまで考えたのかを把握しやすくなります。
4. 3Dキャラクターを使う理由
文字だけのチャットでも、相談することはできます。
それでも3Dキャラクターを表示するのは、学生が「入力フォームへ回答している」のではなく、「誰かに話を聞いてもらっている」と感じられる画面を作りたいからです。
3Dキャラクターは、相談の状態に合わせて動きます。
| 相談中の状態 | キャラクターの様子 |
|---|---|
| 学生の入力を待っている | 自然な待機動作をする |
| 学生が相談している | 話を聞く表情になる |
| 回答を考えている | 考える動作をする |
| 内容を説明している | 話す動作をする |
| 学生を励ます | 笑顔やうなずきを見せる |
表情や動きが変わることで、学生は「いま話を聞いている」「回答を考えている」と画面から理解できます。
5. 現在参考にしている3Dの仕組み
現在の試作では、3Dキャラクターを表示して動かす部分に、ハッカソンで作られているLive AI Supporterの仕組みを参考にしています。
Live AI Supporterは、YouTube Liveへ投稿されたコメントを、画面上のVTuberが読み上げてくれる配信支援ツールです。
コメントに合わせて音声が作られ、その音声に合わせて3Dキャラクターの口が動きます。サンプルキャラクターには、ずんだもんが使われています。キャラクターの画面と音声を一緒に録画することもできます。
今回のシステムでは、この「文章を受け取り、3Dキャラクターが話す」という考え方を、学生相談へ応用します。
学生との会話には、OrcaRouterを使用します。学生が入力した相談内容と、担任の先生が登録した話し方や指導方針をOrcaRouterへ渡し、その学生に確認する質問や、次にできることを考えます。
画面では3Dキャラクターが相談相手として表示され、その裏側ではOrcaRouterが会話を支えます。これによって、ただ決められた文章を読み上げるだけではなく、学生の相談内容に合わせて質問や返答を変えられるようにします。
ただし、3Dモデルの表示方法や音声、動きなどは、今後の開発に合わせて変更する可能性があります。この段階で重視しているのは特定の技術ではなく、学生が親しみやすいキャラクターへ気軽に質問できる体験です。
ログイン時にパスキーを使用していますのでセキュリティも安全です。
システムの全体像
6. 先生が対応できない時間に、少しだけ対応する
このシステムが活躍するのは、先生がすぐに対応できない時間です。
たとえば、次のような場面を想定しています。
- 先生が授業中で、すぐに話しかけられない
- ほかの学生への対応が続いている
- 放課後に学生が相談したくなった
- 学生が相談内容をうまく言葉にできない
- まず少し話してから、先生へ相談するか決めたい
- 明日の授業や持ち物を確認したい
- 前に説明された予定を、もう一度確認したい
AIは、学生の相談を最初に受け止めます。授業予定や課題などの簡単な質問であれば、先生が登録した情報をもとに、その場で案内します。
同じ質問が何度あってもAIが繰り返し案内することで、学生は聞き直しやすくなります。先生も、日々繰り返される確認への対応を減らし、本当に先生が向き合う必要のある相談へ時間を使いやすくなります。
一方で、先生が直接確認する必要がある相談については、AIだけで話を終わらせません。
- 休学や退学について相談したい
- 成績や推薦について正式に確認したい
- 健康や安全に関する不安がある
- いじめや人間関係について相談したい
- 学生本人が先生と直接話したい
このような場合は、担任の先生や担当者へ相談するように案内します。
AIは先生の仕事を奪う存在ではありません。先生が対応できない間に、学生の話を少し聞き、相談内容を整理して、先生へ渡しやすくする存在です。
7. 相談内容の保存と共有は、学生が選ぶ
学生が安心して相談するには、話した内容がどのように扱われるか分かることも大切です。
そこで、相談を保存するか、担任の先生へ共有するかは、学生がそれぞれ選べるようにします。
- 会話を保存するか確認する
- 担任へ共有するか、別に確認する
- 保存せずに相談を終了できる
- 自分の相談履歴を削除できるようにする
- ほかの学生の相談内容は見られないようにする
先生へ共有するときも、長い会話をそのまま渡すのではなく、学生の希望、現在の状況、次に相談したいことを短くまとめます。
8. ハッカソンでまず作るもの
最初から学校のすべての業務へ対応させるのではなく、まずは「学生が相談を始め、次の行動を決められる」ところまでを作ります。
ハッカソン版では、次の機能を完成させます。
- 3Dキャラクターとチャットを一つの画面に表示する
- 学生が進路または就職について相談できる
- AIが一回以上の追加質問をする
- 担任が話し方や指導方針を設定できる
- 先生の設定をAIの回答へ反映する
- 会話に合わせてキャラクターの表情や動きを変える
- 相談の最後に、内容と次の行動をまとめる
- 必要な相談では、人へ相談するように案内する
AIとの会話にはOrcaRouterを使用します。ただし、学生や先生がAIの仕組みを意識しなくても使える、分かりやすい画面を目指します。
9. まとめ
今回作る3D AI担任サポーターは、先生そのものを再現するシステムではありません。
担任の先生が設定した話し方や指導方針を踏まえ、先生がすぐに対応できないときに、学生の相談を少し受け止めるシステムです。
学生にとっては、まだ考えがまとまっていない段階でも話せる相談相手になります。先生にとっては、学生が何に悩み、何を希望しているのかを把握するための手助けになります。
目指しているのは、AIが先生の代わりに答えを決める学校ではありません。
学生が相談を始めるきっかけを増やし、必要なときには人間の先生へきちんとつながる学校です。

