この記事では、90度ハイブリッドの製造ばらつきを
Python + VarFDTD でモンテカルロ解析する方法を紹介します。
コヒーレント光通信で絶対に欠かせないパーツのひとつが「90度ハイブリッド」。4つの位相(0°・90°・180°・270°)に分けて受信側のDSPに渡すための要となるデバイス。今回は製造ばらつきの影響を評価できるように、シリコン導波路のMMIの幅(W)と長さ(L)をランダムに振った モンテカルロ解析を Python + VarFDTD で一気に自動化してみました。
📡 90度ハイブリッドとは?
光を 0° / 90° / 180° / 270° に分割するデバイスで、
コヒーレント受信では欠かせない部品です。
MMI寸法のズレがそのまま出力位相・強度のズレにつながるため、
ロバスト性評価が非常に重要になります。
VarFDTDについては以下のリンクを参照
🎯解析の目的:ばらつきに対する性能ロバスト性の評価
今回作りたかったワークフロー主に2つ。
1つ目は、MMI の幅と長さのばらつきが、90度ハイブリッドの出力(T1〜T4)にどれくらい効いてくるのか知りたかったので、W と L をランダムに変えて大量にシミュレーションし、その結果を全部 CSV にまとめて出力すること。
2つ目は、従来 GUI や LSF でゴリゴリ手作業していたフローを、Python API だけで自動化して高速に回す仕組みを作ること。これにより、数十〜数百ケースのバッチ解析もラクに回せるようになります。
⚙️使用した手法:VarFDTD + Python API による高速一括解析
解析方法としては、3D FDTD を使うと計算量が膨大になるので、今回は Lumerical の高速手法 VarFDTD を使用。等価屈折率法を用いて3D構造を2Dに落とし込んで 解析を行う手法だけど、90度ハイブリッドの挙動を再現するには十分実用的で、それを利用した研究報告も多数なされています(以下はその例)。
- https://ieeexplore.ieee.org/stamp/stamp.jsp?arnumber=9495107
- https://essay.utwente.nl/fileshare/file/92431/Meuleman_BA_EEMCS.pdf
- https://research.chalmers.se/publication/531714/file/531714_Fulltext.pdf
Python スクリプトでは次のような流れで自動化しています。
今回は左側の一つの入力ポートから光を入射し、4つの出力ポートの出力パワーをモニターしてみました。
✅解析手順の詳細(Pythonで自動化)
Python スクリプトでは次のような流れで自動化しています。
【Step 1:W と L を乱数で生成】
W は 10.0〜15.0 µm、L は 175 ± 10 µm を、どちらも 0.5 µm 刻みでランダム生成。今回は N=10 ですが、構造的には100以上も普通に回せます。
【Step 2:MMI やテーパー、モニター位置を自動調整】
W と L を振ると構造の位置関係も全部ズレるため、モニター位置、テーパー位置、シミュレーション領域まで全自動で追随させるようにしました。解析領域のマージンも常に一定になるように調整済み。
【Step 3:波長1550 nmでFDTD実行】
今回は単波長だけど、波長スイープにも簡単に拡張できます。
【Step 4:入力モニターで正規化して透過率計算 → CSVに保存】
各出力モニターの値を入力モニターで割った「正規化透過率」をまとめて保存。後で統計解析するのがめちゃくちゃ楽になります。
✅実行手順
使い方はシンプルで、VarFDTD のGUIプロジェクトファイルと Python スクリプト(Montecarlo_cal1.py)を同じフォルダに置いて実行するだけ。
✅得られた結果
こちらが作成したpythonスクリプトの一部とその結果のファイルです。今回はデータ解析までは実施しておりませんが、出力したcsvファイルをもとにすれば簡単に解析できます。
今回は計算メッシュなども含めて仮の値を設定して解析を行いましたが、実際のデバイスに合うように材料の屈折率調整などをして解析を行えば以下のような知見が得られます。
- MMI 幅 W の変動に対する感度
- 製造ばらつきを考慮した設計マージンの推定
✅まとめ
まとめると、
・Python + VarFDTD の組み合わせで高速なモンテカルロ解析が可能
・試行結果を1つの CSV にまとめられるので後処理が楽
・製造ばらつきに対するロバスト設計の検討に向いている
・GUI 不要なのでバッチ実行に最適
という感じで、90度ハイブリッドのばらつき評価にはかなり使えるワークフローになりました。もちろん他の素子にも適用できます。
※本記事は筆者個人の見解であり、所属組織の公式見解を示すものではありません。
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