本記事では、弱結合型シングルモードマルチコアファイバ(MCF)における光導波路のコア間クロストーク解析 XT: Crosstalkを行うための一連の手順をまとめます。
解析は主に Ansys Lumerical MODE (FDE solver) を使用し、必要に応じて Python / Lumerical Script / Excel などを組み合わせて実施しています。
この記事では、以下の3ステップでクロストーク解析を進めます。
固有モード解析
モード結合係数の算出
クロストークの計算
解析対象と目的
弱結合型マルチコアファイバでは、隣接コア間にわずかな結合が存在し、クロストーク:XTとしてシステム性能に影響します。
本記事では次のワークフローに基づいて算出することにしました。
以下が解析ワークフローになります。
解析ワークフロー
各コアが単独で存在する場合の固有モードからコア間モード結合係数 κmnを求めて、
クロストーク量:XTの解析式にシミュレーションで得られた結果を代入し、
クロストーク量の評価を行います。
ファイバ曲げ半径依存性についても検討を実施しています。

Step 1: 固有モード解析(Lumerical MODE FDEで実施)
まず、対象となる コア m, コア n をそれぞれ単独で配置したモデルを作成し、FDEソルバーで固有モード解析を行います。
得られるデータは、着目しているモードの
導波路モードの電場分布 E(x,y)
ポインティングベクトル P(x,y)
実効屈折率 neff
になります。
これらは後続の結合係数およびクロストーク計算に使用します。
Step 2: モード結合係数 κmn の算出
次にモード間の結合係数を求めます。

理論背景は Coupled Mode Theory (CMT) に基づきます。
(参考: https://empossible.net/wp-content/uploads/2020/01/Lecture-Coupled-Mode-Theory.pdf
)
使用するデータは
Step1 の固有モード解析でもとめた光導波路の固有モードの電場分布E(x,y)と
比誘電率分布 ε(x,y)になります。
解析の手順は以下になります。
①コア1を単独配置 → 固有モード解析
②コア2を単独配置 → 固有モード解析
③コア1 & コア2 を配置した構成 → 比誘電率 ε(x,y) の抽出
④κmn 理論式に代入して計算
この一連の処理は Lumerical Script で統合することも可能です。
Step 3: クロストーク計算
以下に論文に基づいたクロストークの解析式を示します。

クロストーク解析には CMT や CPT の手法がありますが、ここでは
平均化手法を用いる解析的アプローチ(Koshiba ら 2012)を採用しています。
参考論文
Analytical Expression of Average Power-Coupling Coefficients for Estimating Intercore Crosstalk in Multicore Fibers,
Koshiba, Saitoh, Takenaga, Matsuo, IEEE Photonics Journal, 2012.
計算条件(例
解析条件の一例として以下を使用します。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 波長 λ | 1550 nm |
| コア屈折率 | 1.4558 |
| クラッド屈折率 | 1.45 |
| ファイバ長 | 100 m |
| 相関長 | 50 mm |
| コア番号 | 中心座標 | コア径 |
|---|---|---|
| コア1 | (0, 0) | 8.05 μm |
| コア2 | (39.2 μm, 0) | 7.63 μm |
結果例:クロストークの曲げ半径依存性
ファイバ曲げ半径 R を変化させた際のクロストーク XT の計算結果を示します。
曲げ半径が小さいほど XT が増加する傾向は弱結合型MCFらしい指数的変化であり、
解析が妥当であることが確認できます。
まとめ
本記事では、マルチコアファイバにおけるクロストーク解析の流れを次の3ステップで整理しました。
固有モード解析(FDE)
モード結合係数 κ の算出
解析的モデルによるクロストーク算出
これらについては、
Lumericalを活用することで、これらの工程を統合的かつ自動化して実行することができます。
※本記事は筆者個人の見解であり、所属組織の公式見解を示すものではありません。
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