Oracle Alloy ソブリンクラウドでデータ主権を守りつつAIを利用する
~ソブリンクラウドの再整理&今後のAI利用戦略を考える~
ソブリンクラウドとは?
Sovereign Cloud 直訳では、主権クラウド!?
Sovereign は元々、君主・国王を指す言葉で、それが派生し国家や主権と代わっていった単語のようです。比較的一般に使われているのは、ソブリン債 ≒ 国債くらいであろう。
聞きなれない単語は、意味も不確かになりやすい「データ主権のあるクラウド」というのが適切なのだと思う。本稿では、ソブリンクラウドの成り立ち、意義から確認をしていきたいと思います。
ソブリンクラウドの契機
米IT大手によるクラウド市場の独占が進む中、外国の法律(米国のCLOUD法等)に基づいて自国の機密データや個人情報が海外政府に差押・閲覧されるリスクへの懸念から、欧州(EU)を中心に「データ主権」の理念が強く主張されるようになった。
2018年に米国のCLOUD法が成立し「米国の法管轄権が海外のデータにまで及ぶ」ことを明確にしたことをきっかけに、それ対抗する形で「データ主権」を守るためのソブリンクラウド構想や製品化が世界中で一気に具体化していった。
『主権を持っている』=他国にデータを侵害されない意味となる。
米国Cloud法
2018年3月に成立した米国の法律で、米捜査当局が令状を取得すれば、米系クラウド事業者に対して、サーバーが国外にあってもデータの開示を命じることができると定めている。
Oracle Alloy については、国内事業者がサービスを提供しているため、及ばない可能性があるが、完全を期すると持ち込み暗号化 BYOK(Bring Your Own Key)の利用が望ましい。
持ち込み暗号化 BYOK(Bring Your Own Key)
持ち込み暗号化をすれば、仮にCloud法に基づくデータ提供をOracle社が実行したとしても暗号キーがないため、データの中身を見られることはない。
Oracle AlloyでのAI利用について
マルチクラウド生成AI環境
基幹系のデータを複数のクラウドやサービスにコピーするというのは、データ管理が煩雑となるし、データ漏洩リスクも高まることとなります。
そのため、基幹系のデータをソブリンクラウド(Oracle Ally)に設置、データは一箇所で保管し、マルチにAIを使い分けていく以下のような構成が望ましい形ではないでしょうか。

こちらの構成の場合、ハイパースケーラーの生成AIを場面に応じて使い分けることができます。しのぎを削るAI開発競争ですが、どこかが覇権を握るとは考えにくく、使いたいAIサービスを柔軟に選択していくようになっていくのでは?と予想します。
また、既にハイパースケーラー上に、AI開発基盤があるケースも多いと思います。その財産も引き続き利用することができるため、基幹系システムをOracle Alloyに設置してAIを利用していくという形として、堅実で安全な構成のように思います。
ソブリンAI
ソブリンクラウドそのものの考え方で言えば、ハイパースケーラーのAI停止リスクも加味し、ソブリンクラウド側でAIを動かすことが求められるソブリンAIという考えがある。
一般には、ローカルLLMを利用してソブリンクラウド内でAI利用も完結しようという考えだが、ローカルLLMは、最新のLLMに比べ数世代遅れた性能であり、また、ソブリンクラウド側でGPU等のリソースも自前で用意をしなければならず、実装のハードルは高い。
Oracle AI Database 製品による広範なAI Agent製品群
Oracle AI Databaseは、Select AI+Local(DB)でのAI Agentを構築することができるため、外部に依存している技術を避け、容易かつ、用意されている標準の技術でAI Agent 環境を実装をすることができる。
2026年9月現在、以下のような包括的な技術が提供されている。
1.ReAct(Reasoning and Acting)
ループと自己修正(リフレクション)ユーザーの指示に対し、
「思考(Reasoning)→ ツールの選択・実行(Action)→ 結果の観察(Observation)」のサイクルを回します。
SQLエラーや想定外の結果が出た場合でも、自律的にクエリやアプローチを修正してリトライします。
2.マルチツール統合オーケストレーション

データベース内部で以下のツールをシームレスに組み合わせて実行可能です。
NL2SQLツール: 構造化データに対する自然言語からのSQL生成・実行。
RAGツール: ドキュメントや非構造化データに対するベクトル検索(AI Vector Search連携)。
Web検索ツール: 外部の最新情報の補完。
カスタムPL/SQLプロシージャ / REST APIツール: 独自の業務ロジックや外部クラウドサービスとの双方向連携。
通知ツール: Slackやメール(SMTP)へのアラート・結果配信。
3.マルチエージェント・チーム

編成複数の役割を持つエージェント(例: 「売上分析エージェント」と「文書検索エージェント」など)を
エージェントチームとして束ね、複雑なワークフローを分担して実行できます。
4.短期・長期メモリと対話コンテキスト

マルチターンの対話を保持する「短期メモリ」に加え、ユーザーの好みや過去の結果・文脈を引き継ぐ
「長期メモリ」を保持。対話を通じた深掘りや人間の介入・確認(Human-in-the-loop)にも対応します。
5.インデータベース実行による堅牢なセキュリティ/事前構築済みエージェント(Pre-built Agents)

個別のオーケストレーションサーバーや外部フレームワーク(LangChain等)を別途立てることなく、Oracle Database内部で完結。
データベースネイティブのアクセス制御、監査ログ、最小権限の原則をそのまま継承し、データ移動リスクを最小化します。
データベース運用、クラウドインフラ管理(OCIストレージやシークレット管理、ネットワーク等)を自然言語の対話形式で行えるテンプレートエージェントも提供されています。
Oracle DatabaseでAI Agent がそのまま利用できる形で用意されている。
これは、ソブリンクラウドとの相性も良く、推論の一部、ローカルLLMを利用するといった利用方法にとても適しているように思います。
国産のローカルLLMもいくつかサービスを開始しているが、まだ手探りな部分もあり、それに比べれば、メーカーが開発している汎用品で利用できるメリットは大きいと思う。
まとめ
以上のことから、企業における最も重要な基幹系システムをクラウドにリフトする時、何を重視するべきなのか?
1.データ主権(企業の機密情報・顧客情報等を侵害されない)を第一に考えた場合、Oracle Alloyのようなソブリンクラウド環境になると思います。
2.AIの利用戦略 こちらも今の状況から大きなウェイトを占めていると考えますが、様々なAIを利用していくことを考えると、基幹系データをソブリンクラウドに据え、マルチに利用していく構成が、AIの利用と共に、データ管理の上でも重要になると思います。
(雑感)Oracle社の本気度
ご存じのように、Oracle社は、独自のAIの開発を行わない代わりに、スターゲートプロジェクト等のデータセンター事業とともに、Oracle AI Databaseと改名を行うなど、本気でOracleをAIで使いやすい製品にすることに全力をあげているように思います。
ベクター型のデータ対応も、どのリレーショナルデータベースよりも先に実装を行い、現状は、Oracle AI Database 製品単体で、最新のAI Agent環境を構築でき、得意とするデータの管理もAIによるデータ漏洩リスクを極小化し、最も安全に基幹系のデータを保管・利用することができる環境を整えています。
これまで長年Oracle技術社として、Oracle社の製品を見てきましたが、他社に先駆けて次々とAIを使いやすくなる技術を発表していくような会社との印象は全くなかったので、初めてOracle社の本気を目の当たりにしている昨今です。
