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ユニークビジョン株式会社 Advent Calendar 2019の記事です。

ここ最近、データ出しの依頼や集計機能の実装など、業務で必要になることが多かったので、今回はSQLでの集計について書こうと思います。

当方はPostgreSQLを使うことが多いためこれを基準に書きますが、多くのRDBMSで同様の行為が行えるはずです。


1 単純集計

単純集計とは1つ1つの項目に標本nの内どれだけが該当したかを集計する方法です。
例えば、朝食を取っているかという質問に対する回答を単純集計表にするとこんな感じ。

表1 単純集計例

回答 回答数 割合
欠かさない 6,155 88.3%
欠食する 807 11.6%
全体 6,962 100%

このようなものを単純集計と呼ぶそうです。

一応、厚生労働省 平成29年国民健康・栄養調査報告からデータを持ってきたのですが、端数の取り扱いの関係で割合の合計が合いませんね。まぁ、今回は大きな問題ではないです。
ちなみに、厚労省的には「何も食べない」「錠剤などのみ」に加え「菓子・果物などのみ」も欠食に入るらしいです。
私は文句なしの欠食ですね。


これをSQLで出すならばおそらくこんな感じ。
かなり適当ですがこのようなテーブルを用意。

1-1
CREATE TABLE public.peoples(
  	id BIGSERIAL NOT NULL
  	,breakfast_flag BOOLEAN -- 食べる(t) or 食べない(f)
  	,PRIMARY KEY(id)
);

一応IDも置いて主キーにしておきましょう。ここに上記の6,962人分の情報が入っているとします。


ここから朝食フラグを取り出し、集約してcountすることで各回答の回答者数が出せます。

1-2,単純集計
SELECT
  	breakfast_flag
  	,COUNT(id) -- 回答数
FROM
  	public.peoples
GROUP BY
  	breakfast_flag
UNION ALL
SELECT
  	NULL AS breakfast_flag
  	,COUNT(id)
FROM
  	public.peoples
;

これで出る結果はこんな感じ。割合も一緒に出そうとすると面倒なので今回は申し訳ありませんが割愛しています。
全件のCOUNTをUNIONして合計数を出しています。
合計数を出すにはもっと便利な方法がありますがそれは後述。

表2 SQLによる単純集計結果

breakfast_flag count
TRUE 6,155
FALSE 807
[NULL] 6,962

このように単純集計は変わったことをせず普通にSQLで出せます。


2 クロス集計

クロス集計とは複数条件を持った集計表を出す集計方法です。
上記の単純な回答数の結果をさらに性別や年齢で分類すると表現できます。

表3 クロス集計例

男性 女性
欠かさない 2,867 3,288
欠食 452 355
全体 3,319 3,643

ちなみに、一般的な表計算ソフトは読み込んだデータからクロス表を出力する機能を普通は持っているため、これを利用できるならこちらを使った方が楽だと思う。
googleスプレッドシートやExcelならピボットテーブルという機能です。

それは置いておいて、SQLで表現しましょう。


2-1 CASE式

よくやるのはCASE式を使った方法です。
このようなテーブルがあると想定します。

2-1-1
CREATE TABLE peoples(
	id BIGSERIAL NOT NULL
	,breakfast_flag BOOLEAN -- 食べる(t) or 食べない(f)
	,gender TEXT -- 男性(m) or 女性(f)
	,PRIMARY KEY(id)
);

先ほどのものに性別カラムが増えました。


これに対しこのようなSQLを実行します。

2-1-2,CASE式によるクロス集計
SELECT
	breakfast_flag
	,SUM(CASE gender WHEN 'm' THEN 1 ELSE 0 END) AS male
	,SUM(CASE gender WHEN 'f' THEN 1 ELSE 0 END) AS female
FROM
	public.peoples
GROUP BY
	breakfast_flag
UNION ALL
SELECT
	NULL AS breakfast_flag
	,SUM(CASE gender WHEN 'm' THEN 1 ELSE 0 END) AS male
	,SUM(CASE gender WHEN 'f' THEN 1 ELSE 0 END) AS female
FROM
	public.peoples
;

この方法の良いところは出力結果がそのままクロス集計表の形で得られることだと思います。

表4 CASE式によるクロス集計結果

|breakfast|male|female|
|:-:|:-:|:-:|:-:|
|TRUE|2,867|3,288|
|FALSE|452|355||
|[NULL]|3,319|3,643|

SQLの実行結果を大した後処理もなく利用できます。
DBからの単純なデータ抽出の依頼ならDBツールでCSVに出力すればほとんど仕事は終わりです。


2-2 クロステーブル

他の方法として、プログラマのためのSQL 第4版ではクロステーブルを作成する方法も記載されていました。
良書です。読みましょう。

この方法は使ったことがなかったので実際に動かしてみました。

製品名、製品価格、販売個数、販売年というカラムを持つsalesテーブルを用意します。

CREATE TABLE public.sales (
	product_name TEXT NOT NULL DEFAULT '' -- 製品名
	,product_price NUMERIC NOT NULL DEFAULT 0 -- 価格
	,order_qty BIGINT NOT NULL DEFAULT 0 -- 注文数量
	,sales_year BIGINT NOT NULL DEFAULT 0 -- 売り上げ年
);

こんなデータも放り込んでおきましょう。適当です。

INSERT INTO public.sales VALUES
	('a',100,25,1990),
	('a',100,250,1991),
	('a',100,348,1993),
	('b',180,125,1990),
	('c',230,400,1992),
	('d',520,420,1994);

こんなテーブルになりました。

product_name product_price order_qty sales_year
a 100 25 1990
a 100 250 1991
a 100 348 1993
b 180 125 1990
c 230 400 1992
d 520 420 1994

次にクロス表テーブルを作成します。

CREATE TABLE public.crosstabs (
	sales_year BIGINT NOT NULL
	,year1 BIGINT NOT NULL
	,year2 BIGINT NOT NULL
	,year3 BIGINT NOT NULL
	,year4 BIGINT NOT NULL
	,year5 BIGINT NOT NULL
	,row_total BIGINT NOT NULL
);

INSERT INTO public.crosstabs VALUES
	(1990,1,0,0,0,0,1),
	(1991,0,1,0,0,0,1),
	(1992,0,0,1,0,0,1),
	(1993,0,0,0,1,0,1),
	(1994,0,0,0,0,1,1);
sales_year year1 year2 year3 year4 year5 row_total
1990 1 0 0 0 0 1
1991 0 1 0 0 0 1
1992 0 0 1 0 0 1
1993 0 0 0 1 0 1
1994 0 0 0 0 1 1

その上で、集計対象テーブルとクロステーブルを結合して売上額にクロステーブルの値をかけます。
結合部を少し改造しています。

SELECT
  s1.product_name
  ,SUM(s1.order_qty * s1.product_price * c1.year1) AS year1
  ,SUM(s1.order_qty * s1.product_price * c1.year2) AS year2
  ,SUM(s1.order_qty * s1.product_price * c1.year3) AS year3
  ,SUM(s1.order_qty * s1.product_price * c1.year4) AS year4
  ,SUM(s1.order_qty * s1.product_price * c1.year5) AS year5
  ,SUM(s1.order_qty * s1.product_price * c1.row_total) AS total
FROM
  public.sales AS s1
  INNER JOIN public.crosstabs AS c1 ON
    s1.sales_year = c1.sales_year
GROUP BY
  s1.product_name
ORDER BY
  s1.product_name
;

このような結果が得られました。

product_name sum sum sum sum sum sum
a 2,500 25,000 0 34,800 0 62,300
b 22,500 0 0 0 0 22,500
c 0 0 92,000 0 0 92,000
d 0 0 0 0 218,400 218,400

集計対象テーブルとクロステーブルを販売年が一致することろで結合して、年毎の倍率をかけることで、該当する年と合計以外は0にしてしまう作りです。

それを製品名でGROUP BYすることで、製品毎に何年にいくら販売されたかの表になります。

これも合計を出すならUNIONをしろとのこと。

テーブルを1つ用意しなければならないし、使い捨て集計用SQLなら普通にCASE式を使えばいい気がしますね。

ただし、集計対象が限定されており、今後も大きく変更されることが無いことが判明している場合は、クロステーブルの行をINSERTするだけでSQLのコードを改造せずに集計結果を拡張することができるのでそういった場合は有用なのかと思います。


3 GROUPING演算子

毎回UNION ALLして合計件数を出すのが面倒な時にこのGROUPING演算子を使うと楽になるかもしれません。
GROUPING演算子には基本となるGROUPING SETS とその拡張であるROLLUP, CUBEがあります。
PostgreSQLでは9.5から使えるようになったようです。

実際にテストデータがあった方がわかりやすいので適当なテーブルを作っておきます。

peoplesテーブル

id gender age breakfast_frag
1 m 10 true
2 m 20 true
3 m 30 false
4 m 10 true
5 m 10 false
6 m 10 true
7 f 10 true
8 f 10 true
9 f 10 true
10 f 10 true
11 f 10 true
12 f 10 true

GROUPING SETS

GROUPING SETSはどのカラムを集約の単位にするかを指定できます。

実際に動きを見るのが一番理解しやすいと思います。

SELECT
    breakfast_flag
    ,gender
    ,age
    ,COUNT(*) AS total
FROM
    public.peoples
GROUP BY
    GROUPING SETS (breakfast_flag, gender, age)
;
breakfast_frag gender age total
false [NULL] [NULL] 2
true [NULL] [NULL] 10
[NULL] m [NULL] 6
[NULL] f [NULL] 6
[NULL] [NULL] 30 1
[NULL] [NULL] 10 10
[NULL] [NULL] 20 1

指定したそれぞれの項目だけで集約されました。
breakfast_fragで集約するときは他の要素は無視して集約されています。他も同様です。


また、集約する要素の組み合わせを指定することもできます。

SELECT
    breakfast_flag
    ,gender
    ,age
    ,COUNT(*) AS total
FROM
    public.peoples
GROUP BY
    GROUPING SETS (breakfast_flag, (gender, age))
;
breakfast_frag gender age total
false [NULL] [NULL] 2
true [NULL] [NULL] 10
[NULL] m 30 1
[NULL] m 10 4
[NULL] f 10 6
[NULL] m 20 1

朝食の有無で集約した後、性別と年代の組み合わせがユニークになるように集約されました。


また、集約セットを空で指定することで無条件で集約を行い、つまり合計が出ます。
これを使えば、クロス集計と合計の算出が一気にできます。

SELECT
  breakfast_flag
  ,gender
  ,age
  ,COUNT(*) AS total
FROM
  public.peoples
GROUP BY
  GROUPING SETS ((breakfast_flag, gender, age),())
ORDER BY
  breakfast_flag,gender,age
;

全ての要素の組み合わせが集約対象となり、最終行に合計が出力されます。

breakfast_flag gender age total
false m 10 1
false m 30 1
true f 10 6
true m 10 3
true m 20 1
[NULL] [NULL] [NULL] 12

ROLLUP

ROLLUPは小計と合計を出してくれます。

SELECT
    breakfast_flag
    ,gender
    ,age
    ,COUNT(*) AS total
FROM
    public.peoples
GROUP BY
    ROLLUP(breakfast_flag, gender, age)
;
breakfast_flag gender age total
[NULL] [NULL] [NULL] 12
true f 10 6
false m 30 1
true m 10 3
true m 20 1
false m 10 1
true f [NULL] 6
true m [NULL] 4
false m [NULL] 2
false [NULL] [NULL] 2
true [NULL] [NULL] 10

ORDERをかけていないので合計が最上段にきていますね。

ROLLUPでは指定する順番が重要になります。

ROLLUPでは先に指定した要素に対して、後に指定した要素の全組み合わせが集計されます。


また、GROUPING SETSの拡張なので、全てをGROUPING SETSで表現することができます。

SELECT
    breakfast_flag
    ,gender
    ,age
    ,COUNT(*) AS total
FROM
    public.peoples
GROUP BY
    GROUPING SETS (
        (breakfast_flag, gender, age)
        ,(breakfast_flag, gender)
        ,(breakfast_flag)
        ,()
    )
;

##CUBE
CUBEはROLLUPと違い要素の順番が重要ではありません。
これは与えたれた要素に関して全ての組み合わせで集約するからです。

SELECT
    breakfast_flag
    ,gender
    ,age
    ,COUNT(*) AS total
FROM
    public.peoples
GROUP BY
    CUBE(breakfast_flag, gender, age)
;
breakfast_flag gender age total
[NULL] [NULL] [NULL] 12
true f 10 6
false m 30 1
true m 10 3
true m 20 1
false m 10 1
true f [NULL] 6
true m [NULL] 4
false m [NULL] 2
false [NULL] [NULL] 2
true [NULL] [NULL] 10
[NULL] m 30 1
[NULL] m 10 4
[NULL] f 10 6
[NULL] m 20 1
[NULL] m [NULL] 6
[NULL] f [NULL] 6
true [NULL] 10 9
false [NULL] 30 1
false [NULL] 10 1
true [NULL] 20 1
[NULL] [NULL] 30 1
[NULL] [NULL] 10 10
[NULL] [NULL] 20 1

これもGROUPING SETS で表現が可能です。

SELECT
    breakfast_flag
    ,gender
    ,age
    ,COUNT(*) AS total
FROM
    public.peoples
GROUP BY
    GROUPING SETS (
    	(breakfast_flag, gender, age)
    	,(breakfast_flag, gender)
    	,(breakfast_flag, age)
    	,(gender, age)
    	,(breakfast_flag)
    	,(gender)
    	,(age)
    	,()
    )
;

GROUP BYとUNIONを使うよりも簡単に小計や合計が計算できるのがGROUPING演算子の良いところだと思います。
また、需要に応じてはROLLUPやCUBEを使うことでさらに簡単にクロス集計が可能になると思います。

ただし、先ほどから表に大量に出現しているのを見る通り、GROUPING演算子はNULLを対象に生産します。

DBがしっかりとNOT NULL制約の上設計されており、「そんなものはGROUPING演算子のせいだ。」と断言できるなら問題は無いのですが・・・。

ではnullに登場していただきましょう。

INSERT INTO public.peoples(
  gender, age, breakfast_flag
)VALUES(
  NULL, 20, TRUE
)

齢20の毎日朝食を欠かさない健康な、性別不詳さんです。


ではGROUPING演算子でもって、それぞれの性別が何人回答してくれたか集計して、ついでに回答総数としてレコード数も一気に出しましょう。

SELECT
  breakfast_flag
  ,gender
  ,age
  ,COUNT(*) AS total
FROM
  public.peoples
GROUP BY
  GROUPING SETS (breakfast_flag, gender, age,())
ORDER BY
  gender, age, breakfast_flag
;
gender total
f 6
m 6
[NULL] 13
[NULL] 1

さて、注目していただきたいのは最下段の2行。
集約条件は全く同じ、性別に関して条件を問わず集約した、すなわち合計を出した行に見えます。

もちろん1つの結果が2つに分裂したわけではありません。
性別NULLというジェンダーフリー(?)なレコードが生まれた結果、性別を男性・女性・NULLで集約した3レコードが生まれ、最後のNULL集約が合計行と見分けがつかなくなったわけですね。

この場合は、合計回答が1な訳は無いので下から2つ目が合計でしょう。きっと。


##SELECT GROUPING

この問題への1番の対処法はNULLを生じないDB設計を徹底することです。
回答者には必ず性別を聞きましょう。
SQLのNULLはこれ以外にも様々な問題を引き起こします。忘れた頃に、ひっそりと。

せっかくなのでこちらのリンクを置いておきますね。
NULL撲滅委員会

しかし、そうはいってもNULLを使わなければならない状況もあるわけです。
最近は性別も殊更デリケートな話題です。

そんな時にはGROUPINGを使いましょう。

こいつは集約の結果生まれたNULLと本当にDBに登録されているNULLを見分けてくれます。

厳密には集約の結果生まれたNULLとそれ以外を見分けてくれます。

SELECT
  GROUPING(gender)
-- こうしておくと集約で生成されたNULLなら1、そうでなければ0が返ってきます。

では、先ほどの集約SQLに組み込んでみましょう。

SELECT
  (CASE GROUPING(gender) WHEN 1 THEN 'total' ELSE gender::TEXT END)
  ,COUNT(*) AS total
FROM
  public.peoples
GROUP BY
  GROUPING SETS (gender, ())
ORDER BY
  gender
;

性別が集約NULLなら"total"と、
そうでないなら内容をTEXTにキャストしてそのまま報告させます。

|gender|total|
|:-:|:-:|:-:|:-:|
|total|13|
|[NULL]|1|
|m|6|
|f|6|

うーんこの並び順。
ともあれ、合計行と性別不詳行を見分けることには成功しました。


ちなみに個人的にはこっちの方が好みですね。

SELECT
  (CASE WHEN GROUPING(gender) = 0 AND gender IS NULL THEN 'Unknown' ELSE gender::TEXT END)
  ,COUNT(*) AS total
FROM
  public.peoples
GROUP BY
  GROUPING SETS (gender, ())
ORDER BY
  gender
;

実際のレコードのNULLだったら"Unknown"
それ以外はそのままTEXTキャストして表示させます。

gender total
Unknown 1
f 6
m 6
[NULL] 13

#あとがき
という名の与太話

この記事は以前社内勉強会に向けて作成し発表したものの、不慮の事故により半壊させた記事を書き直したものです。

書き直さなきゃと思いつつも面倒が勝って手が動かなかったのですが、先日集計用の使い捨てSQLにGROUPING SETSを使い他人にコードをみてもらったところ、
  「なにこれ?」
と言われたのでついに重い腰が上がりました。
やはり資料は残さねば。

書き直してみると自分でも忘れていることの多いこと多いこと。
結局普通に1記事書くカロリーを使った気がします。

ユニークビジョン株式会社 Advent Calendar 2019もどうぞよろしく

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