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みちびき5号機打ち上げ日(だった)に、測位衛星について振り返る

Last updated at Posted at 2025-12-06

はじめに

2025/12/07は、H3ロケット8号機、打ち上げ日でしたが、
https://news.yahoo.co.jp/articles/a96dcecc0cec57053a3427d56ebfbd00cae332ac
のニュースで報じられた通り、延期になってしまいました。
このロケットには、みちびき5号機が搭載される予定で
その機会に合わせて、測位衛星を振り返ろうと思い書きました。

みちびきは、日本版の全地球測位システム(GPS)に使われる測位衛星の愛称です。
準天頂衛星とも呼ばれ、8の字軌道を描いて、日本上空に8時間滞在できる設計の測位衛星です。

ちなみに私は衛星の専門家ではありません。
15年前に、みちびき初号機(もう退役済み)の実証実験に参加させていただいた経験があるくらいです。

測位の原理

宝探しで理解する衛星測位(3)衛星3機での測位
三辺測量という仕組みを利用して、地上の位置を割り出します。
原理上は上空に3機衛星が見えていれば良いことになります。

みなさんが普使っているスマホにも、もちろんGPS受信機は付いていていますが
実は、厳密に言うとGPSだけ使っているのでは無いのです。
各国(経済圏)で、測位衛星システムを展開しています。

主要な測位衛星システム(GNSS)

1. GPS (Global Positioning System)

  • 運用国・地域: アメリカ合衆国 🇺🇸
  • 特徴: 世界で最初に実用化され、最も広く普及しているシステムです。現在も世界標準として多くの機器で利用されています。
  • 31機

2. GLONASS (Globalnaya Navigatsionnaya Sputnikovaya Sistema)

  • 運用国・地域: ロシア連邦 🇷🇺
  • 特徴: GPSに対抗してソ連時代から開発が進められたシステムです。GPSと同様に全世界をカバーしています。
  • 24機

3. Galileo (ガリレオ)

  • 運用国・地域: 欧州連合 (EU) 🇪🇺
  • 特徴: 民間利用を重視して開発されたシステムで、より高精度な測位を目指しています。他のGNSSと比べて、より精度の高い信号を提供できる点が特徴。
  • 28機

4. BeiDou (北斗 / BDS)

  • 運用国・地域: 中華人民共和国 🇨🇳
  • 特徴: 元々は国内向けとして開発されましたが、現在は全世界をカバーするグローバルシステムとして運用されています。
  • 35機

なぜ独自の国(経済圏)で測位システムを立ち上げるのか?

  • 相手国の都合で、システムを止められた時のリスク対策
    • 地域ごとに精度を変えることもできる
      • 2011/12/17から3日間ぐらい、東アジア地域は、GPS単独でもメートル級の精度出てました
        (その周辺複数日にGPSのデータを同じ位置で取ってましたが、この数日だけ精度がよかったです。この日は北朝鮮のトップが亡くなった日です。公式には認められていないので、あくまで都市伝説ですが。)
      • 精度上げられるということは、下げられるということ。=運用国の手のひらの上ということです

我が国、日本はどうしてるの?

GPS等が運用国の都合で、精度がコントロールされる可能性があるので
日本独自の衛星測位システムを目指しています。

地域の補強システム

1. QZSS (Quasi-Zenith Satellite System)

  • 名称: 準天頂衛星システム(みちびき)
  • 運用国・地域: 日本 🇯🇵
  • 特徴: 日本およびアジア・オセアニア地域を対象としています。衛星が日本の真上付近(天頂)に長時間留まるような軌道を取ることで、山間部や都市のビル街など、GPSの電波が届きにくい場所での測位精度と安定性を大幅に向上させることを目的としています
  • 4機(7機目標)
    • 8時間日本上空滞在できるので、7機あれば理論上QZSS単独測位できる想定

みちびき(準天頂衛星システム:QZSS)公式サイト - 内閣府

JAXA|準天頂軌道とは

始めは、補強から始めて、機数を増やして単独測位を目指しています。
現在は4機体制+1。
準天頂衛星は8時間しか日本上空に滞在できないので、常に日本上空にいるのは2機ということになります。
(単独測位には、3機以上が必要)

2. NavIC (Navigation with Indian Constellation)

  • 運用国・地域: インド 🇮🇳
  • 特徴: インド国内およびその周辺地域での利用を目的としています。
  • 7機

測位精度について

システム名 (略称) 運用国・地域 標準的な精度(水平方向) サービスの特徴
GPS アメリカ 🇺🇸 3~10メートル程度 世界標準。最も広く利用されている。
GLONASS ロシア 🇷🇺 3~10メートル程度 GPSと同等の精度・カバレッジ。
Galileo 欧州連合 🇪🇺 3~8メートル程度 衛星が多い分、GPSより若干良いとされる。高精度な有料サービスも提供。
BeiDou (BDS) 中国 🇨🇳 3~10メートル程度 全球をカバー。最近のデバイスはBDS信号の利用が増加。
技術名 (システム例) 活用システム 精度目安 役割・用途
マルチGNSS GPS + Galileo + BDS + ... 2~5メートル程度 複数の衛星からの信号を同時に利用し、測位衛星の捕捉数を増やして安定性を向上させる。
QZSS (みちびき) 日本 🇯🇵 センチメートル級 日本地域限定。L1S信号による**補強情報(測位誤差の補正情報)**を送信し、高精度測位を実現する。
RTK (Real-Time Kinematic) GPS, Galileoなど 数センチメートル 地上の基地局(既知の正確な座標点)からの補正情報を利用し、誤差をリアルタイムに補正する。農業、測量、自動運転などで利用される。
PPP (Precise Point Positioning) 全GNSS 数十センチメートル 基地局を使わず、精密な衛星軌道情報などを使って広域を高精度に測位する。
SBAS (衛星ベース補強システム) GPSなど 1~3メートル程度 航空機など広域利用のために、衛星から補強情報を送るシステム(例:MSAS, WAAS)。

なぜ補強システムが必要?

  • 精度を上げるため、天頂(空が見えて衛星かならず見える)
    • マルチGNSSでも、元の誤差があるので限界がある。
  • 他システムで精度変更が有った時アラート通知する
  • 独自の情報を配信するため
    • 災害時等
    • 最近はスマホでも衛星経由で通信できる世になりましたが・・・。

センチメータ級測位補強サービス

衛星って、寿命がある

  • 主に軌道修正用の燃料
  • 標準的な設計寿命は10年~15年の範囲内
  • 寿命過ぎても動いているけど、それを当てにしては行けないので、10年ごとに打ち上げ続けなくてはいけない・・・。

なので、定期的に衛星を打ち上げなくてはイケないのです。
ちなみに、
初号機後継:準天頂軌道
2号機:準天頂軌道
4号機:準天頂軌道
3号機:静止軌道
(5号機:準天頂軌道)
6号機:静止軌道
(7号機:準静止軌道)
となっており、いろんな軌道で工夫して、日本上空にいつでも3機飛んでいる体制を目指しています。
これにより、日本の測位衛星システム単独でも位置が分かることを目指しています。

皆さんの手元のデバイスの対応状況は?

iPhone

iPhone(例:iPhone 15シリーズ)は、以下の複数のGNSSに対応しています。

  • GPS(アメリカ)
  • GLONASS(ロシア)
  • Galileo(欧州連合)
  • QZSS(準天頂衛星システム、みちびき、日本)
  • BeiDou(北斗、中国)
  • NavIC(インド)

Andoroid(Pixel )

最新のGoogle Pixelスマートフォン(例:Pixel 8、Pixel 8 Pro、Pixel 9aなど)が対応しているGNSSは以下の通りです。

  • GPS(アメリカ)
  • GLONASS(ロシア)
  • Galileo(欧州連合)
  • QZSS(準天頂衛星システム、みちびき、日本)
  • BeiDou(北斗、中国)
  • NavIC(インド)

というわけで、手持ちのデバイスには、iPhoneとAndroid系に大差はありません。

ちなみに、携帯電話の測位には、
キャリア基地局からの距離も考慮されていたりしますがそれは別の話。

まとめ

というわけで長々と書きましたが
みちびき7機体制を目指していますが、将来的には11機体制を目指しているそうです。
5号機打ち上げ成功!!で締めるつもりの記事でした。

日本(東アジア、オセアニア)で、一般のスマホで、センチ級の測位ができる日も夢では無いかもしれません。

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