はじめに
私は、現在、Power Platform や AI の伴走支援の仕事をしています。前職の日本マイクロソフトを退職して独立して 2 年と少し経過して、現在会社としては 3 期目となります。当初は、なんとなく、「独立した方が自分の支援を必要としてくれる人に対して支援しやすいかな?」という気持ちで急遽思い切って独立した感じですが、結果的に、当初予測していたより沢山のお客様に対して、深い支援ができている気がします。
そんな中、最近よく、「 サポートエンジニアの経験があって良かった」と思うことがあるため、言語化してみたいと思います。
なお、私自身は、富士通時代と日本マイクロソフト時代を合わせて、トータル 10 年以上サポートエンジニアとしての経験を積んできました。
正直に申し上げると、非常に苦しい経験もたくさんしてきました。大量の案件を同時並行で追われながら対応する日々、出口の見えない重大なトラブルに対する問題対策会議や現地で時間に追われながらのトラブルシューティングなど、感情がなくなるほど辛いと感じたことも何度もあります。
ただ、現在は独立して Power Platform や AI の伴走支援をしておりますが、振り返ってみると、サポートエンジニアとしての経験が、その後のエンジニアとしてのキャリア、そして現在の仕事において、非常に大きな財産になっていると感じています。
今回は、あくまで私個人の経験に基づく見解ですが、サポートエンジニアの経験があって良かったと思う 4 つの理由を整理してみました。サポートエンジニアとして現在働いている方、これからキャリアを考えている方の参考になれば幸いです。
1. 人に教えることで、自分自身の学習効率が飛躍的に上がった
よく「学習の効率を上げるには人に教えるのが一番良い」という話があると思います。サポートエンジニアという仕事は、まさにこの「人に教える」という行為を、非常に高い頻度で繰り返す仕事です。
お客様から製品やサービスに関する相談、質問をいただき、その方に対して仕様の説明や問題の解決方法をお伝えする。これを日々繰り返していく中で、結果として、製品やサービス、テクノロジーに関して、独学で学ぶよりもはるかに、効率的に学べたと感じています。
また、直接の質問内容とは関係ないことでも、お客様からの質問やその調査を通じて「この分野について自分の理解度が足りない、基礎が足りないのかもしれない」、「これ検証したらどういう結果になるんだろう?」といった、新たな気づきや疑問も沢山生まれました。恐らく、これらの気づき、疑問は、独学で参考書や技術書を読んだり検証したりしていただけでは生まれなかったと思います。
私自身は、そのような気づき、疑問点をメモに残し、少し時間が取れたとき、場合によっては休日に調べて、ブログ記事を書くなどのアウトプットをする習慣を持つようにしていました。このように、人からの質問やその調査の過程で生まれた新たな気付きや疑問を起点に、アウトプットをして理解度を高めるという習慣を結果的に持てたことも、その後のエンジニアとしてのキャリアにおいて大きなプラスになったと考えています。
人から質問をいただくということに対して、成功体験を得て、ポジティブに捉えることができるようになったことは、サポートエンジニア経験の大きな収穫だったと思います。
2. 処理能力が鍛えられた
サポートエンジニアは、Q&A やトラブルシューティングなど、非常にたくさんの相談をいただきます。クローズしていないオープンな案件、つまり、調査中のものやお客様からの情報待ち・連絡待ちのものを含めると、多いときは 30 件以上、場合によっては 50 件以上になることもありました。私はそこまで至りませんでしたが、中には 100 件以上のオープン案件を抱えている人もいました。
また、同時に 3 件、5 件、場合によっては 10 件ほどの調査を並行して行うこともあり、すべてのお客様からかなり急ぎでの対応を求められるようなケースもありました。もちろん、急ぎ調査している最中にも、急ぎの新規案件がアサインされたり、お客様から電話連絡やメール連絡が入ったりすることは日常茶飯事でした。
正直なところ、個人的に、他の仕事ではここまでのマルチタスクを求められることはなかったです。本当に辛かった時期も何度もありましたが、結果的にこの経験を通じて、自分自身の処理能力、キャパシティがかなり鍛えられたと感じています。
実際に、サポートエンジニア以外の仕事をした際、「非常にレスポンスが早い」「しかも回答の質も高い」というフィードバックをいただくことが沢山ありました。「何人いるんだろう」と言われたこともあります。実際に市民開発者の伴走支援をしている中でも、質問をいただいた際、ほとんどのケースで即答できています。実際には頭の中ではかなりの処理速度で質問の意味を解釈して、技術的な回答はもちろん、相手に合わせた説明の構文を考えています。
サポートエンジニアでそこまで追い込まれた経験をしていない人からすると、処理能力が非常に高く見えるのかもしれません。
上記のようなメリットがあることは分かっても、なかなか自分で意図的にそこまで追い込むことはできないものだと思います。サポートエンジニアという環境に身を置いたからこそ得られた経験であり、結果的に大きな財産になっていると考えています。
3. トラブルシューティング力が血肉となった
個人的に、サポートエンジニア経験で得たものの中でも、特に大きいと感じているのがトラブルシューティング力です。
ログやトレース情報を解析し、仮説を立てて問題を解決する。事実と意見を徹底的に見極め、相手の言葉を鵜呑みにせず、あくまでログやトレース情報から事実を追求し、その上で仮説を立てて問題を解決する。この経験をかなり高い頻度で繰り返してきたことで、トラブルシューティング能力はかなり高まったと感じています。
通常であれば、トラブルには誰しも遭遇したくないものだと思います。特に昨今はクラウドサービスが主流になったことで、オンプレミス時代と比較すると、深いレベルでのトラブルシューティングの機会自体が減っている面もあると思います。そういった意味でも、サポートエンジニアとして数多くの (自分が引き起こしたわけではない) トラブルに正面から向き合ってきた経験は、それ以降の職種経験では得にくいものだったと考えています。
現在、私は Power Platform に関する市民開発の伴走支援をしていますが、市民開発者の方々は当然ながら IT のトラブルシューティングのプロではありません。トラブルが発生した際にうまく自分で解決することができなかったり、遭遇している事象を有識者にうまく言語化して伝えることができなかったりするケースが多々あります。
そのような場面で、限られたインプットからでもサポートエンジニア時代に培ったトラブルシューティング力を活かして仮説を立て、即座にレスポンスし、実際にその仮説が当たって問題を短期間で解決できたということも多くありました。
お客様の DX 担当者の方からは、「この少ないインプットでなぜそのような解決ができたのか」と驚かれることもあり、まるでエスパーのように見えているケースもあったかもしれません。
このトラブルシューティングスキルは、ある意味、私の血肉となっているものであり、なかなか真似できるものではなく、自分の付加価値の一つになっていると考えています。
4. 相手に合わせた説明スキルが身についた
サポートエンジニアとして日々たくさんの質問をいただく中で、相手のスキルレベルやバックグラウンドを察して、相手に伝わる用語を選んで説明するということを繰り返してきました。
相手に合わせて言葉のチョイスを徹底的に意識して変えていく。相手にとってわかりやすい説明を追求する。このようなことを日々繰り返してきたことは、説明スキルの向上に大きくつながったと思います。
また、単に説明するだけではなく、問題解決や意思決定につながるような説明、交渉をしてきたことも、その後のエンジニアとしてのキャリアに活かされていると感じています。
結果として、現在行っている Power Platform の市民開発者へのトレーニング講師や伴走支援において、「非常にわかりやすい」という評価をいただけるようになりました。
個人的に、サポートエンジニアとしての経験において、以下のようなスキルが磨かれたと感じており、市民開発者の方への伴走支援をする際の差別化要因にもなっていると感じています。
- 前提、質問の意図についての認識のずれを調整する
- 結論や説明の全体概要を先に話す
- ステップごとに分けて話す、疑問点がないか合間で確認する
- アプローチが複数ある場合はメリットデメリットを話す (必要に応じて私のおすすめを添える)
- 相手のスキルレベルを踏まえた言葉を選ぶ
- 抽象度を上げた補足説明などを添える
- 一度に説明する情報量を調整する、必要に応じて、後ほど整理して案内する
まとめ
以上が、私がサポートエンジニアの経験があって良かったと思う 4 つの理由です。
繰り返しになりますが、富士通時代とマイクロソフト時代を合わせてトータル 10 年以上、サポートエンジニアとしてたくさんの案件に向き合い、非常に苦しい経験もたくさんしてきました。ただ、その経験が、サポートエンジニア以外の職種でのエンジニアとしてのキャリア、そして現在の独立後の Power Platform や AI の伴走支援において、非常に活かされていると感じています。
あくまで個人的な経験に基づく主観ですが、現在サポートエンジニアとして働いている方が、自身のキャリアをポジティブに捉える一助になれば幸いです。